「私…小さい頃、この村にいた。でも、私だけ……みんなと違うのが嫌で……村を出ていったの。
それまで、自分と同じ大きさの人間見たことなかった。それが…逆に怖くなって。私……こんなんになっちゃって………」
少しだけ、自分の過去を話すフレア。それは!彼女がどうしてこの村から離れて今のようになったのか……を掻い摘んで話す説明だった。
「それでレイヴンに入ったの?」
「私、お金稼ぐ方法知らなくて……何も知らずにレイヴンに入った。そのギルドは、
「初めて出会ったギルドが悪いよ、それは。」
「もういいんです、仲直りしましょ?」
朗らかに笑うウェンディ。その笑みを見て、フレアは余計に罪悪感に苛まれる。
「うん……ごめんなさい………」
「ううん、全然気にしてないから。」
「フレアさんが久しぶりに故郷に帰ってきたら、村がこうなっていたんですよね?」
「うん……」
今の巨人の状態を思い出して、涙を浮かべるフレア。『防げなかったのだろうか』と後悔をしてしまっていた。
だが、溶かすことが出来ることを理解しているのか、その顔からすぐに悲しそうなのは消えていく。
「泣かないで!みんなまだ生きてるんだから!」
「うん……もしかしたら、永遠の炎ならみんなの氷を溶かせるかもしれない。」
「ついてきて!案内する!」
フレアの案内により、永遠の炎のところに向い始める一同。ふと、気になったのかマルクはマホーグに視線を向ける。
「……わ、私は別にこの村の出身……とかじゃない、よ?」
「……本当に、ついてきただけ?フレアさんに?」
「う、うん……ついてきただけ。だ、誰に……とは、言わない、けど……」
笑みを浮かべるマホーグ。その瞬間、妙な恐怖感がマルクの背筋に走る。今度からまともに眠れそうになりそうもないと、マルクは予感していたのであった。
「……あれ?」
ふと気がつくマルク。いつの間にか、フレアの案内から外れて1人になってしまっていた。
だが、ついてきて走っていたにも関わらず、なぜこうなったのか全く理解出来なかった。
「……声?誰かいるのか?」
遠くから聞こえてくる声。それが女性のものでは無いとだけわかるため、エルザやウェンディたちでないことははっきりしていた。
とりあえず、マルクは多少警戒しながら進んでいく。トレジャーハンターが、3人で終わるとも限らないからだ。
「っ…あれはグレイさん!?」
「マルクか!?」
近くによると、いたのはグレイと……謎の怪物だった。一瞬気圧されはしたが、すぐにマルクは敵だと判断する。
「なんですか……こいつ!!」
「うおっ!?わかんねぇよ!だが……この感じ、ゼレフ書の悪魔…デリオラと同類だ!!」
1発攻撃を回避しながら、マルク達は速攻で決めようと魔法を放とうとする。
だが、突然目の前の悪魔は口を開いて何かを発し始める。目にこそ見えないため、マルクは何をしているのか分からなかった。
「……?あいつは一体…ってグレイさん!?何でちっちゃく…てか子供になってるんですか!?」
「そういう魔法なんだよあいつのは!ん…?というかなんでお前小さくなってねぇの!?」
「いや俺にもわかりませんけど!?」
小さくなるグレイ、小さくならないマルク。グレイもマルクも、何故マルクが小さくならないのかが理解出来なかった。
「と、とりあえず!あいつの魔法は小さくなるだけじゃねぇ!魔法も、単純な力も、防御力もすげぇ下がるんだよ!」
「つまり、見た目以上に出来ること少なくなってるんですか?」
「そういう事だ!!」
「だったら……俺がやります!下がっててください!!」
そう言いながらグレイの前に出るマルク。小さくならない、ということはもしかしたら魔法の影響を受けてないのかもしれない。
だが、それ以上にマルクがこの村に来た時の体調の問題が、残っていることをグレイは覚えていた。
「「うわぁぁぁぁぁぁ!?」」
だが、それを遮るかのように2つの声が空から落ちてくる。この声は、シャルルとハッピーだった。
「っと……大丈夫か?」
「ありがとうマルク……なんか急に上手く飛べなくなっちゃって……」
「てかあんたちっさ!グレイも何その姿!」
マルクは、シャルルとハッピーを落下する前にキャッチする。だが、今は悠長に話している時間もないため、2人を地面に立たせる。
よく見てみれば、ハッピーとシャルルまでグレイと同じように小さくなってしまっていた。
「こいつ、村中に魔法を!?」
「グレイさん!援護できますか!?」
「わかんねぇよ!けど俺達が止めねぇと、みんなが危ねぇ!!」
グレイは、アイスメイクで目の前の悪魔に攻撃を仕掛ける。だが、体が小さくなって、力が弱くなっている為に全く効いていなかった。
「なら俺が……ふん!」
マルクが、顔を殴るが……後ろに軽く引いたものの、マルクの存在をまるで認知していないかのように、グレイに向かって歩き始める。
「なんで!?」
「なら足を凍らせる!!」
驚くマルクだったが、その一瞬の隙にグレイは足元を凍らせる。だが、それと関係ないと言わんばかりに、すぐに割れてしまう。
「駄目か!?」
「なんでそっちに……行くんだ、よ!!」
今度は、全力の蹴りを浴びせるマルク。だが、それも無意味だった。後ろに仰け反るものの、ダメージを与えているはずなのに、それでもグレイに向かっていく。
「…!」
「ぐぁっ!?」
「グレイさん!!」
一気に距離を詰められ、蹴り飛ばされるグレイ。何故ここまでグレイを敵視するのか、自分という存在を無視してまでグレイに敵意を向け続けるのか。
「くそっ……!」
マルクは首の後ろから飛びつき、一気に後ろに体重をかけて転ばそうとする。だが、マルクの体重では無理なのか、全く倒れる気配がなかった。
「なんでだ!?なんでこいつ……」
マルクは考えた。グレイが狙われる理由。
グレイは、目の前の敵を悪魔といった。そう、悪魔なのだ。マルクも、自分の中に悪魔がいると、なんとなくだが理解している。
それの真偽はともあれ、その悪魔が忌避するものが自分の身をもって体験していた。
「まさか、氷……!?」
グレイは氷の魔術師である。そして、この村を覆っているのも氷である。それだけでは、少し狙う理由としては足りないものを感じるが、少なくともこの悪魔は氷が苦手だと判明した。
「うぐっ!?」
マルクを抱えたまま跳び上がる悪魔。そのままいくと、グレイが次の一撃でやられてしまうのは、すぐにわかった。
「やらせるか、よ!!魔龍の咆哮ゼロ距離Ver.!!」
悪魔の背中に、そのままブレスを放つマルク。悪魔はそのままブレスの勢いで、氷の地面に叩きつけられる。
「ゴガァッッ!?」
「苦しんでる……そういう事かよ!!」
「グレイさん、こいつは…」
「分かってる!この氷が弱点なんだろ!?なら、やってやる!!」
氷の上で苦しむ悪魔。グレイは片手を氷につけて、もう片方を悪魔の方に向ける。
「何をする気ですか!?」
「この体を通して、氷の魔力をぶつける!!そうだ、俺はビビってただけだ……ガキの頃を思い出すこの光景に。だからやろうとしなかった!!
体を貸してやる!!だから、通っていきやがれぇぇぇぇえええええ!!」
グレイの体を通して、氷に秘められた魔力が悪魔に向かって放たれる。純粋な魔力だけを叩きつけられてしまったのか、そのまま吹き飛んでいく。
「……戻った!グレイさんの姿が戻った!!」
悪魔が苦手な魔力を通したためか、または倒したからなのか。ハッピーとシャルルも含めて、小さくなっていた者達は全て元の姿に戻っていた。
「グレイさん、大丈夫ですか?」
「あぁ。お前こそ大丈夫か?」
「はい!!」
「……くくく。」
倒れた悪魔から、声がする。まだ倒しきれていなかったのかと全員が身構える。
「お前らは開いちまったんだな…冥府の門を……もう後戻りはできない。そして━━━」
最後の言葉を言い終える前に、悪魔は空から降りてきた怪鳥に食べられてしまう。
「っ!?」
「出たァァァァァァァ!!」
「鳥…鳥!?」
「とりあえず、逃げるぞ!!」
グレイのその言葉に、全員がその怪鳥に背を向けて走り出す。村の場所が見えるいちだったので、少なくともエルザとは合流出来るだろうと考えたのだ。
「ていうかシャルル!こいつ知ってるのか!?」
「飛ぼうとしたら初めからいたのよ!!不気味ったらありゃしないわ!!」
「同感だ!こんなん逃げるが勝ちだ!!とりあえず誰かと合流しない限りは……」
「あれ、皆いません!?」
「お前ら逃げろー!!」
村にたどり着いたグレイ達。だが、走りながらなので説明している余裕も時間もなかった。
「なあああ!?」
「何あれ!?」
「わかんないけど、オイラ達を食べるつもりだよ!!」
「敵よ敵!!」
ハッピーとシャルルが走りながら、叫ぶ。村にたどり着いたのを確認したマルクは、一旦振り返る。
「グレイさん!時間稼ぎますから、村の氷を頼みます!!」
「おう!」
グレイとハッピー、シャルルはそのまま走り抜けていく。そして、マルクは時間稼ぎの為に怪鳥と戦い始める。
「先に行かせるか、よォ!!」
「グゲッ!? 」
大きな1つ目玉に、マルクの蹴りが直撃する。その直後に、走ってきたナツがさらに追撃でもう一撃を叩き込み、怪鳥を吹き飛ばす。
だが、吹き飛ばされた怪鳥は空中で体勢を立て直してから、ナツとマルクをに迫ってくる。
「たかが突撃で……なっ!?」
「っ!」
マルクとナツは、そのまま足に鷲掴みにされて、空中に投げ飛ばされる。そして、怪鳥はその隙を狙って喰らおうと口を開けて迫ってくる。
「ナツ!」
「マルク!」
「俺達は大丈夫だ!!」
「だから早く氷を……永遠の炎を復活させるんだ!きっと炎がこの村を救ってくれる!」
だが、吹き飛ばされた程度で2人は怯まなかった。カウンターで、怪鳥の目玉に強烈な一撃を与えて、叩き落とす。
「にしてもなんだよこい、つ!!」
「俺に聞かないでくださいよ!!あぁ、にしてもこんな体調が悪くてよく戦えるな俺……」
と、その時マルクの体に悪寒が走る。弱々しくも圧倒的プレッシャー、そしてその魔力。
どこかで感じたことのある魔力。その魔力の感じる方に、マルクは空中で戦いながらも視線を向ける。
「永遠の炎が……!?」
「いえ、あれは……あの炎は…!!」
「━━━ナツさんなら、きっとあの炎を復活出来ます!」
聞こえてくるウェンディの声、その言葉に戦っているふたりもつい笑みを浮かべていた。
「ナツー!!」
「あぁ……任せとけ!」
「援護はまかせてください!」
怪鳥は空中で一回転して、尻尾をナツとマルクに叩きつける。だが、二人とも尻尾を掴む。
ナツはそのまま回転させて投げ飛ばそうとし、マルクは巻き込まれないために尻尾を主軸にして更に上の空中に飛び上がる。
「っ!!」
「させるか!!」
だが、投げ飛ばされた怪鳥も、そのままの勢いのまま目からビームを発射する。
それに対して、マルクはついブレスを放つ。
「マルク!ブレスは……あれ?」
「オアァ!!」
そのままブレスを放ち、ビームを飲み込みながら怪鳥もまとめて飲み込んでいく。
「……ブレスが出た!?何で!?」
「なんでもいい、行くぞ!!」
「……はい!」
マルクはナツを蹴り飛ばす。その勢いのままナツは、炎を纏う。まるで打ち出された弾丸のごとく、ナツの体は怪鳥の体に直撃する。だが、それだけで終わらせるわけもない。
「火竜の……煌炎!!」
そのまま、永遠の炎があった祭壇に怪鳥を叩き込むナツ。そしてそのまま魔力の炎をひたすらに叩きこんでいく。
「まだまだァ!!」
もはや、勢いだけで空中に浮かぶほどに激しい攻撃。ありったけの炎を叩き込んだあと、ナツはトドメとして更に濃い魔力を一瞬で溜め込む。
「滅竜奥義……紅蓮!爆炎刃!」
ありったけの炎を叩き込まれた祭壇。そして、怪鳥という燃料もあったためか……勢い良く燃え上がり、永遠の炎は復活した。
「……俺が聞いた声。お前だったのか。」
「私が聞いた残留思念……そっか…」
「永遠の炎って……」
「……400年ぶりか、イグニールの子よ。」
炎が喋る。否、永遠の炎はただの炎ではなかった。体が常に燃え滾り、炎で体が構成されている……ドラゴン。
炎竜アトラスフレイム……大魔闘演武の時にエクリプスから現れたドラゴン。それが、永遠の炎の正体だった。