FAIRY TAIL〜魔龍の滅竜魔導士   作:長之助

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覚悟

シャルルがウェンディを掴んで空を飛んでいる。眼下には、ウェンディ達が頑張って1つ破壊したフェイスが山のように存在していた。

 

「私達…あんなに頑張って、1つを壊したのに……こんなに、沢山………もう、終わ━━━」

 

「言わないでシャルル。もう、絶望なんてしたくない。」

 

そう言って、ウェンディは手に風をまとわせる。マルクは何をするのかと一瞬考えたが、即座にウェンディは自身の髪を、その魔力で切って肩までの長さに揃える。

 

「ウェンディ!?」

 

「弱音も吐かないし、涙も流さない。みんな戦ってる……だから私も諦めないよ!」

 

「だな……諦めてなんかいられない。それをするくらいなら……」

 

「「冥府の門(タルタロス)と戦う!!」」

 

ウェンディとマルクの声が重なる。それは、覚悟の決まった顔であった。

ウェンディとマルクは、2人でドランバルトに向き直す。それだけで言いたいことが伝わったのか、ドランバルトは頭を搔く。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のとこに戻るんだな。」

 

「はい、これだけの数なら……ウォーレンさんの魔法を使って、他のギルドに連絡を取って破壊してもらわないといけません。」

 

「圧倒的にこっちの数が足りないからな……評議院の本部はやられちまったが、支部は生きてるはずだ。そっちにも連絡をつけてもらえるように頑張らないとな。」

 

「……」

 

「マルク?どうしたの?」

 

ふと、顔を逸らして冥府の門のギルドがあった方向を見るマルク。その顔は諦めと、悔しさが入り交じった表情になっていた。

 

「いや、本当に俺魔法が使えなくなってるんだなって。

けど、一々落ち込んでばかりもいられないんだ……それでも、戦わないといけない。」

 

「うん…そうだね!!」

 

マルクは拳を握りしめる。それは、悲観ではなく『それでも』とやる気を引き出すための言葉。

絶望にはまだ早い、諦めるにはまだ絶望が足りない。そう全員が感じ取っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが冥府の門……はっきり見ることは結局なかったな。」

 

「大丈夫ですか?ドランバルトさん。」

 

「あぁ……」

 

「あの四角い物体がバラバラになって地面に落ちてる……」

 

「みんなまだ、あの中にいるんだよ。」

 

ウェンディと達は、ドランバルトの魔法により冥府の門へと来ていた。しかし、そのギルドは既に墜落しており、バラバラになっていた。

 

「ウォーレンさんも、きっ……」

 

「ウェンディ!?おい、どうし……」

 

突然、マルクとウェンディが倒れる。2人の心臓は、高鳴っていた。何に対してかはわからない。だが、体は何ともなかった……何かに対して、2人の体は、何も起こっていないにもかかわらず異常を起こしていた。

 

「ウェンディ、マルク!しっかり!!どうしたのよ!!」

 

「ウェンディ、マルク……っ?この音は一体……」

 

「あいつが、あいつが……!」

 

うわ言のようにつぶやくマルク。ドランバルトは何か大きな音が鳴っていることに気付き、その方向に目をやる。それだけで、何がが来ていることが理解出来てしまった。

 

「ウェンディ!マルク!!どうしちゃったのよしっかりして二人とも!!」

 

「ウソだろ……奴が、来る…!」

 

その姿は正に雄々しき竜。黒い姿、青い文様……そして、その大きな翼と爪は、全てを破壊するために備え付けられているものである。

やってきたのは破壊と絶望……それら2つを体現したかのような存在。そう、『アクノロギア』である。

 

「オォォォォォォォォォ!!」

 

吠えながら旋回し、通った場所を風圧だけで破壊していく。凄まじい速度とそのパワー、何をしに来たのか、何を求めてきたのか。

そのふたつが、不明のままやって来ていた。

 

「アクノロギア!?」

 

「クソっ!なんでだ、なんで来たんだ……!」

 

シャルルとドランバルトのふたりが、驚きを交えながら悔しさやあの時の恐ろしさを思い出しながらも、拳を握りしめる。

それだけ、恐ろしい相手なのだ。

 

「……」

 

だが、その中でマルクは何かが語りかけていることに気づいた。だが、熱に浮かされた体や、高鳴る心臓の音でよく聞き取れていなかった。

 

『━━━━━━』

 

「何を、何を言ってる……!」

 

「マルク……?」

 

聞き取れない、聞き取れないが……その声は温かさに満ちているように思えた。

この声を知っている、言っていることは聞き取れないが……自分はこの声をよく知っていると、そう感じ取っていた。

だが、その声に耳を傾けられない。それほどまでにマルクとウェンディの異常は大きくなってきていた。

 

「くそっ……!今ここで狙われるとかなりまずいぞ……!」

 

「あんたの魔法で一旦離れるしかないんじゃないの!?」

 

「無理だ、飛んでいるだけで周りを破壊するんだぞ……!下手なところに逃げても、逃げきれずに終わりだ!!」

 

この危機的状況のせいか、シャルルとドランバルトは言い合いに発展仕掛ける。だが、すぐに冷静さを取り戻してお互いその時点でやめる。

事態の解決自体にはなっていないが。

 

「くそ、どうしたら……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アクノロギア…なるほどなるほど、あれは確かに人間にも…ドラゴンであっても手を焼く奴だな。

だが…それと戦うのも一興だが……さて、どうするべきかね。」

 

遥か上空から、グラトニーは見下ろしていた。アクノロギアの破壊行為を。

旋回しただけで、全てを爆散させていく。飛んでいる時の風圧だけで周りを破壊していく。

 

「強い、強すぎる……戦えば間違いなく俺は負ける……が、それでも戦ってみたい。

しかし死ぬのは困る。生き返ったばかりなのだから……む?」

 

飛びながら考えるグラトニー。しかし、ふとアクノロギア以外の…しかしアクノロギアと似たような気配を感じる。

つまりは、ドラゴンの気配というやつである。

 

「おかしいな、ドラゴンはこの時代では全滅していたはずだが……?それも、気配が…増えてきている。これは…この場にいる第2世代を除いた滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)とやらの数か…?」

 

周りを見渡すグラトニー、しかし…真下に新たにもう一体現れたことに気づいた。しかも、とびきりの強者の気配。

 

「熱っ!?これは…炎、か!?」

 

グラトニーは下を見る。そこでは、アクノロギアに攻撃を仕掛けている()()()()()()()

 

「…くくく、ははは…!そうか、お前か…!お前か炎竜王イグニール!!」

 

そう、イグニール。ナツの親代わりのドラゴンであり、そして炎竜王とまで呼ばれたドラゴン。

 

「どこから出てきた!?いやいや待てよ…この場にいる第2世代を除いた滅竜魔導士と同じ数のドラゴンの気配……つまり、そうかそうか…『お前』もいるのか!!」

 

歓喜の声を上げるグラトニー。下にいる滅竜魔導士達に視線を向けていく。ナツ・ドラグニル、ガジル・レッドフォックス、ウェンディ・マーベル、マルク・スーリア。

そして、いつの間にか来ていたスティングとローグ。今この場にいる滅竜魔導士の数は合計で6人。ドラゴンの気配も6人。

 

「ふははは…待ってろ待ってろ……!マルクがいるならば、『お前』もいる!待ってろ紫電竜ヴァレルト!」

 

そのまま高笑いをしながら、飛び去るグラトニー。イグニールや、アクノロギアのことは既に頭から抜け落ちており、一心不乱に向かうだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

「なんだ…?急に楽になった……」

 

突然体に異変が起きたウェンディとマルク。しかし、元に戻る時もまた、突然だった。

 

「ちょ、ちょっと2人とも大丈夫なの?」

 

「う、うん……」

 

「何だったんだ……」

 

「よし、今は合流するぞ。」

 

ドランバルトはそう言って、他のメンバーがいるところにジャンプする。何やら喜んでいる妖精の尻尾がいるが、ウェンディ達はそれに割り込む形で入り込んでいく。

 

「まだ、フェイスが残ってます。」

 

「ウェンディ!マルク!!」

 

「シャルル!それにあんた評議院の……」

 

「「「つーかその髪どうしたんだー!?」」」

 

ドロイ、ジェット、ウォーレンの3人がウェンディを見て、声を荒げる。彼らにとっては、衝撃的なことだったようだ。

 

「今はそれより大量のフェイスをどうにかしないと……」

 

「大量!?」

 

自分たちに起こったことを話し始めるウェンディ。そして、これから行うこともまとめて話していく。

だが、それにウォーレンは渋い顔をした。

 

「作戦はわかったけど、無理だよ……俺の念話はせいぜい5kmしか届かねぇ。大陸中の魔導士に呼びかけるなんて……」

 

「そんな……」

 

「何千機ものフェイス……」

 

「もう起動しているんだ、発動まで間もないはず……」

 

「どうすれば……」

 

「くそっ!くそっ!!俺のしょぼさが情けねぇ!!」

 

『まだ諦めるには早い。』

 

「この声…」

 

頭の中に響いてくる声。念話で、話しかけるものが1人。マカロフだった。

いつの間にか移動しており、どこかで対策を練っていたようだった。

 

「こちらにも奥の手が残っている。妖精の尻尾最終兵器、ルーメンイストワール。」

 

「ルーメン・イストワール?」

 

「何ですかそれは。」

 

『詳しく説明しとる暇はない、今すぐギルドに戻ってこい。』

 

いつになく真剣なマカロフ。いまこの状況を打開するための策として、それほどまでに強烈なのだろうかと一同は内心考える。

だが、ギルドは既にバラバラになっている事が憂鬱な気分にさせる。

 

「けど、ギルドは粉々に……」

 

「よせよ。」

 

『ギルドの地下じゃ、急げ。』

 

「……俺は残る。」

 

「エルフ兄ちゃん!?」

 

だが、何か思うところがあったのかエルフマンはこの場に残りたいと言い始めた。

それもそのはず、ギルドを破壊したのはセイラに操られたエルフマンだったのだ。それを、エルフマンは自分のせいだと嘆いていた。

 

「なんで?」

 

『ギルドの破壊は主のせいではなかろう。』

 

「それでも、俺は……」

 

「わかった…気が済むようにせい。」

 

「エルフ兄ちゃん、気をつけてね。」

 

「おう。」

 

「急ぎましょ。」

 

マスターに支持されて、全員がギルドへと向かい始める。フェイスが発動するまで、もう残り時間も少ない。

急がなければ、ならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい!どうしたんだヴァレルト!その姿は!!」

 

「お前か……お前も、復活したのか…」

 

「ははは、お前が心配しているようなことは、何も起こってはいないさ。マルク・スーリアは生きている。もっとも、俺が抜けたせいで魔法は使えなくなっちまったがな。」

 

とある場所にて、グラトニーは邂逅していた。目的の者と。だが、嘲笑うかのような、本当に嘆いているかのようなその態度は他者の神経を逆撫でする。

 

「お前はもっと分かりやすい色をしていたはずだ、何故真っ黒なんだ?一体何があってお前は真っ黒なんだ?そして……()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「…ほう、分かっているのか。あっしの今の体を。」

 

「分かるも何も…既に魂は風前の灯火だ。のにも関わらず、お前は何かを成そうとしている…何をだ?」

 

「我が息子達を助ける…ただそれだけだ。」

 

「息子、あいつが息子?いやいや、ドラゴンと人間は血縁関係なく親子にはなれはしない…それに、助けるだと?フェイスを破壊するつもりか?ドラゴン全員で。」

 

グラトニーは大げさにリアクションをしながら、話しかける。その顔には、困惑だけが見て取れた。

 

「その通りだ。」

 

「無理だ、とは思わない。むしろ余裕で破壊し尽くせるだろう。だが、それを行っただけでお前は死ぬ。いやお前だけじゃない…ドラゴン全員が消え失せる。」

 

「そんなことは、とうの昔にわかっている……」

 

「ならば何故━━━」

 

グラトニーの横を、ヴァレルトの吐いた魔力の塊が通り過ぎる。しばらくして地面に激突したのか、とてつもない轟音が響き渡る。

 

「やかましいぞ暴食の悪魔よ。

お前にあっしの行動を止める権利なし、そして…お前はまだ間違えているぞ。」

 

「間違い、だと?」

 

「ヴァレルトという名は、過去のものだ。既にそんな竜は死んでいる……我が名はイービラー、魔龍イービラー!!」

 

大きく吠えるイービラー。その声を聞きながら、グラトニーは舌なめずりをして戦闘態勢に入り始めるのであった。


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