Fate/Zero Lost Colors 狂乱のライ 作:祭祀者
「聖杯に招かれた英霊共は今! ここに集うがいい! なおも顔見せを恥じるような臆病者は征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!」
荒れ果てた倉庫街に朗々と歌い上げるように声が響く。セイバー、ランサーは聞く価値なしと無視を決め込み、隠れて様子を伺うアサシンと遠見の水晶球で見守るキャスターは動じず、この場のマスターたる魔術師達は呆れている。……が、遠く離れた遠坂邸と教会の地下で事を見ていた遠坂時臣と言峰綺礼の心情は焦りに覆われていた。
『あの英雄王がこの発言を捨て置く訳がない』と。
それを肯定するかのようにその場に威圧する声が響く
「よもや我を差し置いて王を称する不埒者が一夜のうちに二匹も沸くとはな」
その言葉と共に眩いばかりの光があたりを包み込む
通路の街灯上より、黄金に輝けるサーヴァント…アーチャーが不愉快さを隠すことも無く見下ろしていた
「そう絡まれてもなぁ……イスカンダルたる余は世に名を残す征服王に他ならぬのだが」
「たわけ。王の名を謳えるのは天上天下にこの我一人のみ。残りは有象無象の雑種に過ぎん」
侮蔑、と言うには度が過ぎている発言をアーチャーは言い捨てる。
さすがのセイバーもこれには色を無くしたが、ライダーは寛容にも聞き流したのか呆れ混じりに問を打つ
「そこまで言うのなら、まずは名乗りをあげたらどうだ?貴様も王たるものならば自らの威名を憚りはすまい?」
混ぜ返すようにライダーが問うが、アーチャーはその射抜くような双眸にさらなる怒りを滲ませる。
「問を投げるか雑種風情が、王たるこの我に向けて?」
その行いが自らに対する不敬以外の何者でもないと言わんばかりに傲慢なる王はその身に殺意をむき出し放出し始める
「我が拝謁の栄に浴して尚、この面貌を見知らぬと申すなら、その様な蒙昧は生かしておく価値すらない!」
そう断じたアーチャーの左右の空間が陽炎のように歪み、その内より眩い輝きを放つふた振りの剣が現出する。
其のどちらも豪奢な装飾が施され、のみならず隠しようもない程の猛烈な魔力を放っている。
先の遠坂邸にてアサシンを下した戦闘の再現に他ならず、その場にいあわせた総てのマスターはその身を固くする。
ウェイバーに至っては失神しかねない面持ちでその行く末を見守っている。
しかし、その状況をただ一人違う感情を抱きながら見守っている男がいた。
「………」
悲しみとも歓喜ともつかぬ複雑な感情を顕にしつつ戦況を伺うと『共犯者』からの呼びかけを聞き、顔をあげる。
「…ああ。まずはお前の好きなようにやって構わない」
そして3人目にして極大のイレギュラーは戦場へと歩を進めた。
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一触即発の空気を吹き飛ばすかのように、あらぬ方向から魔力の奔流が吹き荒れる。
居並ぶ全員が瞑目して見守る中、その嵐のような魔力は次第に凝固し人型をとって行く。
セイバー及びランサーの決戦場となっていた4車線道路から更に2ブロックほど離れた先に
“ソレ”は現れた
コツコツと歩む音を響かせながら顕れたのは装飾の施された白い衣を身に纏った青年であった
しかし、その身より黒色の魔力を湧出させている様は白い衣装も相まってある種の不気味さを醸し出している。
精悍な、というにはやや幼い、それでいて均整の取れた顔立ち。しかしその双眸は血涙で染まっている。
キャスター、というにはあまりにも堂々としており、アサシンはすでに死んでいる。となると残るクラスは唯一つ。バーサーカー。
「なぁ、征服王。アイツには誘いをかけんのか?」
ランサーは困惑と警戒心を抱きつつ征服王に問いかける。
「誘おうにもなぁ。さすがにバーサーカーに交渉は……」
そうライダーが言いかけた瞬間不意に『バーサーカー』の足が止まった。
アーチャー以外の全員が身構え注視する中、唐突に片膝を折り面を下げる。
その行動に居合わせた全員が衝撃を受ける中、意にも解さぬと言わんばかりに、バーサーカーは口を開いた
「王の王よ、私はこの場に参じたサーヴァントが一騎にございます。仮初の身とは言え拝謁の栄に授かれた事を光栄に思います」
「…ほぅ。王たるものの顔すらわからぬ阿呆ばかりかと思えば、真贋のわかる奴もいるではないか」
今まで発していた怒気を一旦収め、珍しいものを見たと言わんばかりに目を細めるアーチャー
「面をあげる事を許そう。 して、用向きはなんぞ」
王としての余裕を滲ませながら一言問う
「僭越ながら、名乗りを上げる無礼を許していただきたく」
優雅、という言葉を体現するかのように立ち上がるとアーチャーに申し出るバーサーカー
「よい。その名を謳いあげてみよ、狂犬よ」
アーチャーはさらに気を良くしたのか口元に冷笑をうかべて告げた。
「ありえない…正気を保った狂戦士など…」
アーチャーとのやり取りを見ていた一同の中でポツリとセイバーが言葉を零す。
それもそのはず、バーサーカーは意思を歪める代わりに能力を底上げする、本来は低ランクの英霊を従かせるためのクラスのはずであり、例外なくその意識は刈り取られて然るべきである。
しかしこのバーサーカーはどう見ても意識を保っている。セイバーの発言はその場のほぼ全ての人物の心情を代弁していた。
つ、とバーサーカーは視線をセイバーへと向けると彼女の言葉に答える。
「何を驚くことがあるというのか騎士王よ。聖杯の用意したクラスでは私を縛りきれなかっただけのこと。
何より、私が生前より背負いし字は狂王…つまりは『狂乱した王』もとより『狂っている』我が身に狂乱の器を飲み下すことなど詮無きこと」
バーサーカーでありながらバーサーカーでなく、狂わされるどころか飲み下したと豪語するサーヴァントに周囲の全てに緊張が走る。
ここに現れた更なるイレギュラー、姿を隠すアサシンも加えると六騎、この場所に集結している。このような展開、過去の戦いにはなかったであろう。
「さて、王として名乗りを挙げた者がいる以上私もまた名を名乗らねばなるまい」
その発言を聞き、その場の者たちは単語一つ聞き逃すまいと耳を澄ます。あるものは自ら名を明かすのならば対策がうてるであろうと、またあるものはそれが王としての宣戦布告として。しかし、彼の英霊が名乗った名前に聞き覚えのある者は誰一人として存在しない。ランサー・輝く貌のディルムッドも、セイバー・騎士王アーサーも、ライダー・征服王イスカンダルも知りえない。それも当然だろう。この青年は、このバーサーカーは―並行世界より来た魔王の系譜に他ならないのだから。
「私が名は、ブリテンに名を連ねしリオネスの王、そして神聖ブリタニア帝国唯一皇帝 ライゼル・L・ブリタニア!世界の覇権をこの手に握った狂える王にして大罪人である」
狂える王はその真名を朗々と唱いあげた
TO BE CONTINUED…