第2章 やはり俺の春休みは間違っている。 作:あらがき@北宇治高校
特に意味もなくペンネームを変えました。
pixivでも『あらがき@材木座以下のss』というユーザー名で投稿しておりますが、こちらにも投稿させて頂きます<m(__)m>
ただ、pixivに投稿しているものに若干の修正を加える場合もありますので、ご了承ください。
こちらは、私が投稿した『第1章 案外俺の卒業式は間違っていない。』の続編になります。
まだ勝手が分かっておりませんので、取るに足らない部分は多々あると思いますが、よろしくお願いします。
感想、ご指摘など頂けると嬉しいです!
「あちぃ…」
影のない大通りのど真ん中で太陽に照り付けられるわ、人の密集具合は増す一方だわで、それは孟春の陽気とは程遠いものに感じられた。
残された俺たちはこの場を動くわけにも行かず、所在なく立ち尽くしていた。
雪ノ下と葉山がこの場を後にしてから15分くらい経った頃だろうか。
由比ヶ浜と三浦が戻って来た。
すると、三浦が俺の方にずんずんと向かって来る。
おい、なんだ。
もしかして、二人で俺の悪口でも言ってたの?
由比ヶ浜がタブーを吹き込んじゃったの?
とにかく、こえーよ。
三浦は俺の目の前で立ち止まり、思いっきり俺の肩を叩いて、その手を肩に乗せたまま囁く。
「ヒキオ…結衣を泣かしたら承知しないかんね…」
やっぱりだ!
由比ヶ浜、何を吹き込んだんだあいつは…。
俺は肩を叩かれてから恐ろしくて目を瞑っていたのだが、恐る恐る目を開けると、そこには俺に微笑みかける三浦がいた。
はっきり言って気味が悪い。
これはもしかして、ガチでキレてんじゃねえか?
「ま、あーしも応援しないことはないからさ。
じゃ、そういうことだから。」
三浦はそう言って仲間のもとへ戻って行った。
何がしたかったのかさっぱり分からなかったが、とにかく怖かった。
そうこうしていると、雪ノ下と葉山が小走りで戻って来た。
「みんな、お待たせ。」
「ごめんなさい、遅くなってしまって。」
これでようやく全員揃った。
「ねぇ、みんな!
せっかくだから一緒に回ろうよ!
あと2、3時間くらいだけどさ。」
由比ヶ浜らしい提案だな。
「俺はいいと思うよ。
こんな遠くであったのも何かの縁ってことで。」
葉山は俺にさわやかスマイルを向けてくる。
「隼人がいいなら、あーしも別にいいけど~」
三浦も髪を弄びながら満更でもなさそうだ。
「ヒッキー、ゆきのん、いいかな?」
「私は構わないわよ。」
まあ、特に断る理由もないしな。
「あぁ、いいぞ。」
こうして、俺たちは9人でUSJを回ることになった。
それからは、リア充グループに舵を取らせて、俺たちは戸部曰くのUSJ王道コースってやつを満喫させてもらった。
幸い、葉山グループもロイヤル・スタジオ・パスを購入していたようで一緒にアトラクションに乗ることもできた。
最後はマジカル・スターライト・パレードという大きなイベントを皆で見て、長かった二日目は幕を閉じた。
俺たちは葉山グループの面々と別れ、異常なまでに混み合う電車に揉まれながらなんとかホテルに辿り着く。
ディナーを済ませ、部屋に戻ると、雪ノ下は真っ先にシャワーを浴びに行った。
「楽しかったね~USJ!」
「だな。
すっげーくたびれたけど。」
こんなに太陽光を浴び続けたのは千葉村に行った時以来じゃないだろうか。
「ねぇ、ヒッキー?」
「なんだ」
「通天閣で言ってたスカイビル行かない?
携帯で調べてみたんだけど、夜景がすっごくきれいなんだって!」
「あぁ、いいぞ。
雪ノ下には言ってあるのか?」
「ううん。
今から。」
そんな話をしていると、雪ノ下がタオルで髪の毛を拭きながら戻って来た。
「ねぇ、ゆきのん、スカイビルに行こうよ!
夜景がきれいらしいよ~」
雪ノ下は少し考える仕草をした後、残念そうな表情をして答える。
「行きたいのは山々なのだけれど、湯冷めしてしまうし、私は遠慮しておくわ。」
「そっかぁ…。」
「ごめんなさいね。
せっかくだから、二人で行ってきてちょうだい。」
「え!?
二人きり?
いや…その…それはちょっと…。」
由比ヶ浜は一人であたふたしている。
「悪いな、雪ノ下。
ほら行くぞ、由比ヶ浜。」
「え、うん。
ごめんね、ゆきのん。」
「気にする必要はないわ。
楽しんできてね。」
「うん!
写真とか撮ってくるから!」
雪ノ下は「ええ。」と小さく返事をして、いつものように本に目を落とす。
スカイビルは歩くには遠く、電車では一駅という微妙な距離だったので、タクシーを使うことにした。
少し贅沢な気もしたが、雪ノ下のおかげで大阪に来てからほとんど金は使ってねえし、二人で割れば対して高くはない。
タクシーだと早いもので、10分弱でスカイビルに到着した。
「うわぁ~
すごーい!」
由比ヶ浜はキラキラ目を輝かせている。
下から見上げた時の迫力は、当然ながら遠くから見たそれとは段違いで、その凄みに圧倒される。
「行こうぜ。」
「うんっ!」
高速エレベーターで一気に35階まで上がり、そこからは有名なハブーブエスカレーターで展望台に向かう。
「なんか、空を散歩してるみたいだね。」
由比ヶ浜のアホっぽい言葉も心なしかセンスのあるものに感じれてしまうあたり、このエスカレーターの雰囲気作りには脱帽だ。
1分以上かけてゆっくりと39階まで昇っていく。
そして、39階から普通のエスカレーターとエレベーターを使ってお目当ての空中庭園に到着した。
「ヒッキー見てっ!
地面が光ってるよ~
こっちの方が空を散歩してるっぽいねっ!」
「そうだな。」
由比ヶ浜はこの異空間の虜になっているようで、キャッキャと幼い子どものようにはしゃいでいる。
俺も澄ましてはいるものの、360度に広がる絶景と地面版プラネタリウムに包まれて気分は高揚していた。
「ヒッキーあっち行こっ!」
由比ヶ浜は俺の服を引っ張って、空中庭園の端に向かう。
そこから見える景色はまさに絶景と呼ぶに相応しいものだ。
淀川から大阪湾まで続く水路を縁どるように輝く無数の光はなんとも幻想的だった。
「ねぇ、ヒッキー」
「ん?」
「ヒッキーって好きな人いるの?」
「いない。」
「即答!?
そうなんだ…。
ずっと?」
「いや、よく分からん。
いるのかと思ったこともあったが、最近…ってなんで俺がお前にこんな話をしなくちゃいけないんだよ。」
「えーっ!
教えてよー
気になるじゃーん」
「どうでもいいんだよ、俺のことなんて。」
俺がそう言うと、由比ヶ浜は俯いてボソッと呟く。
「どうでもよくなんかないよ…。」
数秒の言葉の空白の後、由比ヶ浜は声のトーンを元に戻して、
「分かった!
じゃあ、あたしの恋バナを聞いて!」
「俺が聞いてなんか意味あんのか?」
「いいからっ!
あのね、あたし好きな人がいるんだ。
高1からずっとなんだよ!
でも、3年間気持ちを伝えることが出来なかったんだ…。
あたしもうじうじしてたのは悪いんだけど、そいつもほんっとーに鈍いんだもん!」
「へぇ~」
「でね、決めたの。
大学生になる前にちゃんと気持ち伝えよって。」
「いいんじゃねえか。」
「うん。
だから、ヒッキー…
ちゃんと聞いててね…。
ほらっ、あたしの方むいてっ!」
由比ヶ浜は俺の両腕を掴んで強引に引っ張り、俺たちは向き合った状態にさせられる。
「ふぅー…
よしっ。」
由比ヶ浜は俺の目をこれでもかと真っ直ぐ見つめて、ゆっくりと口を開く。
「あたし、ずっとヒッキーのことが…
好きだったの。」
…。
ん…?
ナニヲイッテイルンダコイツハ。
「なにびっくりしちゃってんの?
この鈍感バカッ!」
「びっくりするだろ!
お前が俺を?
いやいや…。
あ、なるほどな。
おい、『ドッキリ大成功!』のボードはどこにある?
監視カメラは手すりの下か?
まさか、USJで葉山たちと会ったのは、偶然じゃなくてこのための…?」
こんなことあるはずがない!
俺は生まれてこの方、女子に告白されたことなんてないし、多分好かれたことさえない。
どんだけ陰湿な罰ゲーム任されてんだこいつは!?
「ちょ、ヒッキー何言ってんの?
あたしは本気だよ!
そうやって誤魔化さないで!」
「残念ながら、俺は女子から告白されるなんて経験はゲームでしかないからな…。」
「きもっ…。
もう…。
どうしたら信じてくれるの…?」
「信じるも何も、まず、お前に好かれるようなことした覚えねぇし。」
「あたしだって分かんないよ!
細かい理由やきっかけはあるけど、いつの間にか好きになってたんだもん!
ほんとだもん…。
ヒッキーが好きで…
好きで仕方なくて…
いっつも頭の中はヒッキーのことでいっぱいで…
一緒にいれるだけで嬉しくて…
でも、いっつも空回りして…
気持ちは伝えられなくて…
そんな日々はもどかしくて…
でも、朝になったら、またヒッキーに会いたくなるの。
目を覚ましたら、今日もヒッキーのことが好きなの。
そうやって、3年間、あたしは毎日、比企谷八幡に恋してたんだよ。
だから、ヒッキー…。」
「 ――あたしと付き合ってください―― 」
この浮世離れした夜景のせいだろうか…。
俺はまるで宙に浮いているような感覚を確かに感じている。
時間は止まっている。
吹いていたはずの夜風は止んだ。
由比ヶ浜の顔と立ち並ぶビルの遠近感さえ掴めない。
建物の赤い光だけを視覚が捉え、逆にそのぼんやりとした残像が俺の視界を埋め尽くす。
俺の五感は絶対なる何かに支配されてしまったようだ。
「…キー
…ッキー」
「ヒッキー!」
由比ヶ浜の指が俺の頬に触れた時、ようやく全てが元に戻った。
「あっ、あぁ、わりぃ…。」
「う、うん…」
正直に言おう。
めちゃくちゃ嬉しかった。
この感覚はリア充には、いや並のぼっちにも理解できないと思う。
18年間、存在をも嫌われていたような俺。
いつの間にか、一人で生きることを選んだ俺。
それを悲しいとか寂しいと思う感情も忘れるほどまでに孤独だった俺。
奉仕部という居場所ができて周りに人がいても、俺自身が孤独であると思っていた以上、それまでと然して変わらなかった。
だが…今は…
そんな俺のことを好きだと言ってくれる人が目の前にいる。
この上ない喜びだった。
涙で由比ヶ浜の顔はよく見えない。
『何が最強だ。比企谷八幡。』
俺の中の俺がそう言った気がした。
別にいいだろ?
初めて友達ができた時もそうだったが、最強の比企谷八幡だって人間だ。
片意地張って、社会や人に背を向け、孤高の道を歩んできたのも比企谷八幡だが、今、由比ヶ浜の言葉を心底嬉しいと感じているのも比企谷八幡だ。
俺はヒーローになりたかった訳でも、世界が認める勇敢なぼっちランキングのトップになりたかった訳でもない。
だから、俺は由比ヶ浜の言葉をありがたく受け取ることにする。
「…」
「…」
また、言葉の空白が続く。
だが、すぐに返事が出来ないのは、なにも言葉が喉を通らないという理由だけではない。
俺が雪ノ下と由比ヶ浜に抱く感情がほとんど同じだから、どうしていいか分からなくなっているからだ。
雪ノ下が、俺が傷付くのは辛いと言ってくれたことに対して、俺も彼女への特別な想いを抱いた。
由比ヶ浜とはその言葉の度合いにこそ差があるが、同じ方面の気持ちだ。
そして、俺は二人ともにその感情を抱いている。
そんな状態で俺は由比ヶ浜の恋人になってもいいのだろうか。
「ヒッキー…」
由比ヶ浜は不安そうに俺の顔を窺う。
「わ、わりぃ
その…なんだ…あ、あ、ありがとうございます…。
本当に嬉しかった。」
そう言うと由比ヶ浜はエヘヘッと無邪気に笑ってみせる。
これは正直に言おう。
じゃないと、由比ヶ浜に対して失礼だと思うから。
「なぁ、由比ヶ浜。」
「は、はいっ!」
「お前にとってあんまり嬉しくない話だと思うんだが、聞いて欲しい。」
「俺は…」
俺は雪ノ下と由比ヶ浜について抱いている感情について、包み隠さず由比ヶ浜に伝えた。
しどろもどろではあったが。
「だから、お前と付き合っていいのかどうか分からない。」
「いいの。」
由比ヶ浜は即答した。
「いいの、ヒッキーはそのままで。
なんなら、あたしのことを好きじゃなくてもいい。
今からあたしのことを好きになってくれたらいいの。
ぜーったい、あたしの彼氏でよかったって思わせてみせるから!
それに、あたしもゆきのんのこと大好きだし、大好きな親友のことも彼氏が大好きでいてくれるなんて一番いいことじゃん!
だから、その気持ち抱えたままでいいから…。」
由比ヶ浜は徐々に視線を足元に落としていく。
「由比ヶ浜。
条件がある。
俺と付き合ってくれるなら、絶対に今から言う約束を守ってほしい。」
そう、俺が一番されたくないことを防ぐための絶対の約束だ。
「なに?」
それを守ってもらわないと俺は誰とも付き合えない…。
「俺のことが好きじゃなくなったら、すぐに俺に言え。
そして別れる。
これが絶対の条件。」
「…なにそれ。
ヒッキー、バカみたい!」
「お、お前、俺はだな…」
「はいはいっ!
分かった分かったー。
それじゃ、約束ね。」
由比ヶ浜は右手の小指を差し出す。
「ん。」
俺も右手の小指を差し出す。
どうしてか分からんが、俺たちはそれから数分間ずっと指切りをしていた。
こうして、俺と由比ヶ浜は付き合うことになった。
「なぁ、由比ヶ浜。」
「なに?」
「その…なんだ…
本当に俺でいいのか?」
「当たり前じゃん…。
ヒッキー『が』いいの。」
「そうか。」
「ってなんでこんな恥ずかしいこと言わせんの?
きもいっ!」
「うっせービッチが!」
「ビッチ言うなし!」
未だ余韻の残るこの空間を無碍にしてしまうのはどうも名残惜しくて、俺たちはタクシーで来た道のりを1時間弱かけて歩いてホテルに帰って行った。
第2章 ⑩竟に、彼女の三年越しの想いは届く。 を読んで頂きましてありがとうございます!
まだ第2章は終わっていませんよ('ω')ノ
今回、大きな動きがありましたが、これからこのシリーズは今まで書いた量の2倍は話が続いていく予定です。
ですので、これからの展開には無限の可能性があります!
どうか、皆さん結末を決めつけないで、これからも私の駄作にお付き合いください<m(__)m>
(特にゆきのんを愛して已まない方)
(因みに、私はゆきのんと結衣は甲乙つけられないくらいに、どちらも愛して已まない救いようのない俺ガイル信者です。私は何を言っているのでしょうね…(*_*; )
これからもどうぞよろしくお願いします。