第2章 やはり俺の春休みは間違っている。 作:あらがき@北宇治高校
特に意味もなくペンネームを変えました。
pixivでも『あらがき@材木座以下のss』というユーザー名で投稿しておりますが、こちらにも投稿させて頂きます<m(__)m>
ただ、pixivに投稿しているものに若干の修正を加える場合もありますので、ご了承ください。
こちらは、私が投稿した『第1章 案外俺の卒業式は間違っていない。』の続編になります。
まだ勝手が分かっておりませんので、取るに足らない部分は多々あると思いますが、よろしくお願いします。
②どうやら、雪ノ下雪乃は物言いたげな様子である。
南船橋駅に着いたのは、12時45分。
今日は雪ノ下雪乃と彼女曰くの『お買い物』をしに来た。
場所はお馴染みの東京BAYららぽーと。
まぁ、お馴染みって言っても、片手で数えれるくらいしか来たことないんだけどな。
しかし、そもそも『お買い物』って何すんの?てか俺いるの?
俺なんかを誘ってお買い物なんて意味があるのか…とも思ったが、『友達』ってやつに誘われるのは悪い気はしないからな。
未だに『友達』ってのは何をしたらいいかの分からんが、まぁ適当にやっていけばいいだろう。
どうせ、雪ノ下も由比ヶ浜くらいしか友達いないから、俺と然して差はないし。
12時55分。
人込みの中でも明らかに異彩を放つ黒髪ロングの美人が、こちらに向かって歩いてくる。
もちろん、そいつは雪ノ下雪乃だ。
きちんと5分前に待ち合わせ場所に到着するあたりは雪ノ下らしいな。
「待ったかしら?」
「いや。」
「そう。それじゃ、行きましょう。」
雪ノ下は俺の半歩前を歩いている。
平日とは言えど春休みに入っている学校も多いのか、ここを訪れる人は学生が多くを占めているようだ。
案の定、道行く男どもは雪ノ下を2度見したり、隣を歩く俺に冷たい視線を浴びせたりしてくる。
言っておくが、俺は決して彼氏ではないし、そうなることもない。
それに、雪ノ下はきっと何か目的があるのではないか…。
何の理由もなく、こいつが俺を『お買い物』に誘うとは思えないのだが。
雪ノ下の交友関係からして、流石に罰ゲームで俺と2人でデートめかしたことをやらされている訳ではないと思う。
まぁ、何でもいいさ。
俺は負けることに関しては最強。
『友達』という表面的で打算を孕んだ魔法の言葉に裏切られることなど、友達になってくれと言った時から覚悟はできている。
雪ノ下を信用していないというよりは自分に期待することを諦めていると言った方が適切だろう。
「ねえ、比企谷くん。」
「なんだ?」
「私はペットショップに行きたいのだけれど。
比企谷くんは行きたいところある?」
こうやって今の雪ノ下みたいに、行きたいとこ、したいことをはっきり言ってくれるのは本当に助かる。
『ねえ~どこ行く~?〇〇君の行きたいとこに行こーよ~』って言われんのは、『晩飯何がいい?』って聞いた時に『何でもいいよ』って言われた時の母ちゃん並に困る。
まぁ、2次元以外で女の子と出かけたことないから、困ったことなかったけど。
今までは選択肢を選ぶだけでよかったしな。
「いや、特にない。
お前の行きたいとこに行ってくれ。
途中で見たいとこあったら言うから。」
「そう。」
そう言って、つかつかと歩き始めた雪ノ下だったが、10分ほど歩いてもペットショップらしき店は見当たらない。
雪ノ下は入口付近で配られていた案内のマップと周りを交互に見て首をかしげる。
「おかしいわね…」キョロキョロ
そうだった。
こいつの方向音痴は筋金入りだったことをうっかり忘れていたぜ。
もうそりゃあ、某ら○ま1/2のリョウなんとかに匹敵するくらいだからな。
俺は雪ノ下の持っている地図にさらっと目を通す。
「そこの角を左だ。」
雪ノ下は一瞬ビクッとしたが、あくまでも平然を装い、答える。
「そうだったわね。そんなに早く行きたいなら前を歩いても構わないわよ。」
どんだけ素直じゃねえんだこいつは。
まあ、俺が前を歩くだけで全てが円滑に進むわけだしな。
俺は無言で雪ノ下を先導する。
途中でついてきているか確認しようと振り向くと雪ノ下はパンさんのぬいぐるみに見惚れていた。
こいつ、猫とパンさんにだけには無垢で純粋な顔を向けるよな。
この顔を見るのは俺は案外嫌いじゃないし、ちょっとほっといてみるか。
雪ノ下はパンさんの手をぷにぷにしたり、持ち上げてみたりと完全に自分の世界に入り込んでいた。
数秒して俺の視線に気付いたのか、雪ノ下はぬいぐるみを置き、何事もなかったかのように立ち上がる。
多分、こいつはこれが欲しいのだろうが、俺がいるから諦めようとしているに違いない。
「雪ノ下、それ買ってやろうか?」
いや、別に『ゆきのん的にポイント高い♪』みたいなのを狙っている訳じゃないぞ。
その…何ていうかさ。
俺も感謝してるんだよ、雪ノ下には。
まぁ、これは前にも言った通りだ。
雪ノ下に言ったあの恥ずかしい台詞に嘘はない。
「いいわよ。
欲しい時は自分で買うから。」
そう言って、雪ノ下はぬいぐるみを持ってレジに向かった。
実は雪ノ下が買いやすい状況にするために『買ってやろうか?』って言ったってのもあるんだけどな。
雪ノ下は薄っすらと満足した表情を浮かべながら戻ってきた。
それから5分ほど歩いてようやく雪ノ下さんのお目当てのペットショップに到着した。
俺も小町と東京わんにゃんショーに行く程度の動物好きではあるので満更でもない。
早速、雪ノ下は猫のいる場所へ向かいしゃがみ込む。
猫の手をツンツンしたり、にゃーと囁いたりして幸せオーラを解き放っている。
俺は俺で他の動物のところも見て回りながら、時間を忘れて動物たちと触れ合ったりしていた。
30分くらい経ったのに気付き、流石に雪ノ下も飽きてるだろうし、やばいと思って猫のコーナーに戻ると…
同じようなことを飽きもせず続けていた。
雪ノ下は俺が来たのに気付き、
「そろそろ次のところに行きましょうか。」
「もう少し見ててもいいぞ」
すげえ幸せそうだったしな。
「いえ、いいわ。」
雪ノ下はどこかに向かって歩き始めたが、流石に二の足を踏む俺ではない。
「雪ノ下、どこへ行きたいんだ?」
「このカフェで少しお茶でもしましょう。
コーヒーが美味しいらしいわ。」
そう言って、雪ノ下はマップの一点を指差す。
「そうするか」
俺は、雪ノ下の半歩前を歩き目的地に向かう。
着いたカフェは西洋風の古めかしさを演出したよくある感じの喫茶店だった。
俺たちは奥の方にある落ち着いた4人席の壁際に座って、ブレンドを注文した。
ずっと抱いていた違和感…。
多分、ここで何かを話そうと決めていたのだろう。
「雪ノ下、俺に何か話があるんじゃないのか?」
雪ノ下は目線をテーブル辺りに向けたまま口を切る。
「ええ、昨日のことで、ちょっと…」
まさか、やっぱり友達は無理ですってか?
まぁ、そのくらいの覚悟は出来てるよ。
「昨日は私もお酒が入っていたこともあって、姉さんの安い挑発に乗ってしまったせいで、あなたを巻き込んでしまったわ。
ごめんなさい。」
雪ノ下が皮肉を籠めずに俺に謝るなんて何回目だ?
片手で足りる回数だぞ。
「それにあなたに対して馴れ馴れしかったと思うわ。
私としたことが…。」
雪ノ下は顔を分かりやすく真っ赤にして、俯いている。
もしかして、頭を撫でたことか?
なんか、俺も急に恥ずかしくなってきたわ。
「い、いや、まぁ、別に気にすんな。
俺もなんていうか…ごめん。」
これは…あれだよ。
喧嘩してた友達に突然、潔く謝られたら自分に非が無くても謝っちゃうやつだよ。
あ、俺には以前、友達はいなかったのを忘れてました。てへ。
「あ、あと…もう一つ大事な話があるの。」
「なんだ?」
「由比ヶ浜さんのことなんだけど…。」
雪ノ下は一呼吸おいて言葉を継ぐ。
「比企谷くん、私には友達になろうって言ってくれたじゃない?
でも、由比ヶ浜さんと比企谷くんは…。
由比ヶ浜さんの誕生日の時に比企谷くんがチャラにしようって言ったきり、きちんと話してないでしょう?」
確かに、由比ヶ浜とは有耶無耶にしてこれまでやってきた…
いや、由比ヶ浜の性格だから、やってこれた。
だからいまさら…。
「こういうのはやっぱり、きちんとお互いの蟠りを取り除いておくべきだと思うの。
でも、これは私のエゴでしかないわ。
人の人間関係に口を出してどうこうしようとしているのだもの。
だから、これは私からのお願い。
私のたった2人しかいないその友達同士が少しでも分かり合えたらいいのにという私の希望。
だから、拘束力はないし、私に気を遣って決断する必要はないわ。
比企谷くんの意志で決めてちょうだい。」
確かに俺が由比ヶ浜に直接、言葉にして伝えたことだけを汲み取れば…、
事故の件をチャラにしよう。
それで終わっている。
でも、由比ヶ浜が解決したいと望んでいるかどうかなんて分からない。
由比ヶ浜は雪ノ下よりよっぽど分かりにくい。
なんせ由比ヶ浜は俺が今まで出会った中で最も優しい女子だからだ。
優しさとは嘘だ。
これまで、由比ヶ浜の愚直なまでに真っ直ぐなそのあり方に何度も心を動かされたことがあった。
だが、俺は今まで優しい女の子に何度も裏切られてきている。
どうしたらいいのか自分でもさっぱり分からん。
俺が珍しく真剣に悩んでいると、
「もし、比企谷くんの経験則が注意報を鳴らしているのなら、一つだけ私からアドバイスをあげるわ。」
「由比ヶ浜さんの優しさは信じていい…
と私は思う。」
そうか。
雪ノ下。
まぁ、どちらにせよ話してみる価値はあるだろう。
「分かった。
とりあえず、今度、由比ヶ浜と話してみる。」
「なら、今から話して。
私は席を外すから。」
そう言って、雪ノ下は立ち上がり、テラスにいるハットを深く被った女性に向けて手招きをした。
彼女はハットを取り、こちらを向いて小さく手を振る。
その女性は他でもない。
由比ヶ浜結衣だった。