英雄伝説 閃の軌跡II〜黒き狼の軌跡〜   作:絶零

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久しぶりの投稿ですが、今回でこの作品の投稿を終了します。
理由は後書きにて


違和感

無限ループが続く痛みと癒し。そこに敵と会敵した場合には投げ武器として扱われる。トヴァルとエリオット以外の誰かが俺を引きずっているのだが、高三の男子を軽々とぶん投げる程の筋力をリィンかフィーかマキアスが持っているとはにわかに信じられない。

などと考えていると、再び浮遊感が襲ってくる。グチャっというグロテスクな音が耳元から聞こえてくるのには精神が壊れそうになる。俺が自称スライムメンタルでなかったら危なかった。

ちなみにスライムメンタルとは豆腐メンタルのように、強くはないが立ち直りが異常に早い事を言っている。傍目から見ればメンタルが強い人と見分けがつかないだろう。

 

「大変だ、ナギトがさっきのゴキブリに似た魔獣に噛まれてるよ!」

 

「仕留め損ねた。」

 

「そんな事言っている場合じゃないだろう!?」

 

「ん〜ん〜!(早く助けてくれ!)」

 

俺に攻撃が当たるのを恐れてか、どうやらリィンとフィーが連携して倒したようだ。

頭から口に突っ込まれたのか頭が熱い。そしてやたらネバネバする。

またもエリオットが癒してくれたようだがゴキブリの魔獣の唾液は放置のようだ。

 

「それにしても長いな。もう随分と進んだ筈なんだが。」

 

「仕掛けも数個動かしたし。」

 

「僕も疲れたよ、何回もアーツも使ってるし。」

 

「ん〜!(だったら解放してくれ!)」

 

「わかったよ、……ティア!これでもうしばらく頑張ってね。」

 

「ん〜!(違う!)」

 

「あはは、お礼なんていいよ。仲間なんだし当たり前さ。」

 

どうやら俺の呻き声をお礼と勘違いしたエリオットが若干照れているような声を出す。

EPチャージをエリオットが受け取り飲んでいるような会話が聞こえてきた。だったら俺を縛るの辞めたら良いんのに。

 

「それにしても長すぎる気がする。」

 

「これ以上時間がかかるなら引き返した方が良いかもしれないな。」

 

「ん?あれ?……リィン!大変だ、入口が!」

 

「な……!消えた!?」

 

全員が俺から意識が外れている間に、散々乱暴に扱われた所為でかなり傷んだ腕の布を力尽くで千切る。拘束を全て外すとすぐに立ち上がる。

全員の注目している方向を見ると、どうやら巡り巡って入口を見下ろせる位置まで来ていたらしい。入口の扉が徐々に壁に同化するように薄くなっていき、最終的には消えてしまった。

 

「何だよこれは……。」

 

「閉じ込められたっぽいね。」

 

「先に進むしかないか。」

 

「今まで以上に慎重にな。」

 

そして、抜け出している俺には何も言わずに歩き出した。何かリアクションの一つでもあって良いのではないか。

またもや現れたゴキブリ魔獣を鋼の精神力を発揮し何とか反射で駆除しようとする身体を抑えた。

出来るだけリィン達の戦闘を邪魔しないようにしながらも確実に一撃加える。その時、一瞬剣に抵抗が返ってきた。一番最初は精神状態が良くなかった、一種のトランス状態だったが手の感覚は確かに残っている。若干、本当にごく僅かだが硬くなっている?

 

「フィー、どうしたんだ?」

 

「なんか少し強くなって来てる。」

 

「やっぱりそうか。俺も最初より手応えがあると思ったんだ。」

 

まだ問題ないレベルだしとりあえず気にせず進もうという結論に至った。

小さな敵も連携して倒せば殆ど反撃を喰らわないが、案の定というべきか、次第に耐久力が高くなっている気がする。

 

「ねぇ、これ結構危険じゃない?このままだと苦戦が続きそうだよ。」

 

「ああ、確かに連戦を続けてたら疲労が溜まりそうだ。」

 

「虫、キモい。虫、硬い。虫、無視出来ない……。」

 

「ナギトが壊れた。」

 

「全員談笑しているとこを悪いが背後を見てくれ。」

 

トヴァルの声に全員が振り返る。そこには消えた扉があった場所が先程と何ら変わらずの姿である。

そう、それなりに進んだ筈なのに全く同じ光景が広がっているのだ。

 

「ループしているのか?」

 

「これは……。」

 

「本格的にやばいかもしれないな。」

 

「いっそ壁壊しながら真っ直ぐ進むか?」

 

「ちょっ!やめなさいよね!」

 

俺が物騒な発言をするとセリーヌが慌てたように止めてきた。その程度で崩れるような場所でもない気がするが駄目らしい。

そろそろ本気で脱出を考える必要がありそうだ。

 

「こういう場合は戻ってみれば逆に進めるって言うのが定石なんだが、リィン。一旦戻ってみないか?」

 

「……これ以上進んでも結果は同じかもしれない。ナギトの言う通り一度戻ってみよう。」

 

「それに本当に扉が消えたか確かめに行くのも良いかもね。」

 

一応反対意見もなく、一度戻る流れになった。まあ俺の予想が正しければ戻る事も出来なさそうだけど。

どんどん強くなっていく敵を倒しながら進むと、気が付いたら再び元の場所へと戻ってきた。

 

「ナギト……君は戻るのが定石とか言ってなかったか!?」

 

「まあ待てってマキアス。焦るなよ。まだ手は考えているさ。」

 

「へぇ、案外頭は回るようじゃないか。」

 

「トヴァルさん、俺をどういう評価で見ていたのか少し聞きたいんですけど。それは置いといて、次はここからあの見える扉まで直接行く。勿論安全のために俺が言ってくる。」

 

返事を確認せずに飛び出し、結構な高さの段差をジャンプ。背後から静止の声が聞こえるが今更止まれない。

迫ってくる床に眼を閉じそうになるが、我慢。タイミングを合わせて、膝のクッションで衝撃を流す。多少痛みはあるが、問題ないレベル。

手を伸ばし扉のあった部分に触れた瞬間、隣にはリィン達仲間の顔があった。

 

「あれ?ナギトは今壁に触ったと思ったけど……。」

 

「いや、確かに触った。感触も一瞬感じたんだが、気が付いたらここにいたって感じだな。」

 

「気配もいきなり現れた。見えない速度で移動したという可能性はなさそうだ。」

 

「……それで?君はまた失敗してるんだが。」

 

「またまたマキアスは焦っちゃってさ、大丈夫大丈夫。予想外だったけど想定の範囲内だ。次は二手に分かれたい。進む方向に行く人と戻る方向に行く人。これ以上敵が強くなれば余裕もなくなるし、早めにやろうぜ。」

 

リィンが迷った素振りもなくパパッと分け、リィンとマキアスとトヴァル。俺とフィーとエリオットになった。まあ悪くはないのではないだろうか。

 

「よし、兎に角進んでみよう。」

 

リィンのグループと分かれて、俺達は戻る方向へ。魔獣も虫という外見を我慢すればまだ三人でも余裕がある。

何度も通過してきた構造なため、慣れたペースで進んでいくとリィン達と遭遇。だがお互いにすぐに駆け寄るなんて真似はしない。

 

「腕を見せろ。」

 

お互いの腕に丸印を付け、会った時には確認するという方法だ。存在しない展開のために細心の注意をしている。

全員が右腕を掲げると、予め書いていた丸印が目に入る。

 

「良かった、本物なんだね。」

 

「こっちは前に進んでいたんだがリィン達も引き返したりは……。」

 

「勿論していない。ずっと道なりに進んで来た。」

 

お互いに前に進んでいたとすれば、ここで考えられるのは、不思議パワーで途中から引き返して来たか、全く同じに見えるほど似た部屋が二つあるかだ。

 

「丁度ここに頑丈だった布とロープがある。これを目印に進んでみよう。」

 

今度は三つに別れ、この場に待機するグループが増えた。ここにはエリオットとマキアスが残り、俺とフィー、リィンとトヴァルで逆方向にロープを持って向かう。

魔獣が強くなっている代わりにエンカウント率が少なくなっている傾向にあるから逆に人数が少ない方が逃げやすい。

取り敢えず相手にしない方法で駆け抜ける。さすがにただのロープ相手に攻撃したりはしないだろう。

 

「エリオットやマキアスも無事だな。」

 

「うん、魔獣も襲って来なかったから。」

 

「君達こそ大丈夫なのか?」

 

「ん、問題ない。」

 

丁度少し遅れてリィン達も到着。ロープはしっかりと握られている。

エリオットとマキアスに確認すると丁度反対側から出たらしい。

ちなみにセリーヌは気分でどこかのグループに入っているらしく、今回はエリオットとマキアスと共にお留守番していたようだ。

 

「どこかで空間が捻れてるとかそんな感じか。取り敢えず繋がってるか確認するぞ。」

 

フィーがロープを引っ張ると抵抗もなく端が手元にやってきた。俺達のロープを担当しているエリオットの手にもロープはある。

次はエリオットが引っ張ると、結果は同じ。

リィン達の方も同様だ。

 

「どこかで切られた?」

 

「そう考えるのが妥当だろう。どうするか……。」

 

「いや、もう脱出出来たも当然だ。」

 

「え?本当?ナギト。」

 

「ほら、このロープ結構綺麗に切られてるだろ?これはあの生物界の最底辺をウジャウジャしている殲滅すべき存在にやられてないんだよ。」

 

俺の虫への評価を全員が苦笑いしながら聞き流し、そういう魔獣もいるんじゃないかと尋ねてくる。

 

「俺の虫センサーが違うと言っているんだ、虫じゃない。半日以内なら虫が関わったかどうか判別出来る高性能センサーだから間違いない。」

 

疑わしい視線を向けてくるが、取り敢えず続きを聞くようだ。

まあと言ってもここまでくれば簡単。再び左右から侵入し、誰かが中で行ったり来たりを繰り返す。片方に到着したら中で動く人は反対側の人の元へ。そして待機している人が中の人と合流するたびに少し前進。

時間はかかるが、これで空間のねじれている部分に辿り着ける筈だ。あとはそこで暴れるやらなんやらで出られるんじゃね?みたいな感じ。

 

「……というわけだ。どうだ?」

 

「仮に空間の歪んでいる場所を特定出来たとしてもそのあとの部分が雑すぎないか!?」

 

「ガバガバ理論だね。」

 

「まあ試す価値はありそうだ、やってみようか。」

 

フィーとリィンが通路を何度も行ったり来たりし、一応捻れている部分を発見した。判断できた大きな理由はリィンの、気配の感じ方が違うというものだったが、まあ問題はないだろう。

境界を疑いながら見ていると、僅かに、しかし確かに違和感がある。床の石模様がずれていたり、壁の傷が途切れていたりと注意してみればいかにもな感じだ。

 

「最初リィン達と出会わなかった理由はわからないが、取り敢えず暴れてみるか?」

 

「もう少し調べてからだ!」

 

マキアスに怒鳴られた。




終了する理由ですが書き溜めをしていたのですが、致命的なミスに気が付きました。というのもヒロインであるアルティナをこのままでは登場しないまま進んでしまいます。
というわけでヒロインをアルティナのまま別の作品で書き直します。
読んで下さった方、ありがとうございました。そしてすみません。
タイトルなどはまだ未定なので見かけたら読んでやるか程度の気持ちでよろしくお願いします。

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