この妖狐、転生者なり。(仮)   作:土岐宙

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第1話

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!? ………此処は何処でしょうか?」

 

見渡す限りに生い茂った草木が永遠と在るかのように感じてしまいますが、恐らくは森の中央部付近と言ったところでしょうね。しかし、困りましたね。まさか狼(のような生物)に囲まれてしまうとは、流石の私も処理しきれるかどうか怪しいところです。まあ、虎二匹とライオン二匹を同時に相手取った経験が有るので、何とか処理しようじゃないですか。まあ、動物園から脱走した方々でしたので、野生と比べるとかなり劣るのですが…………。しかし、野へ帰るために必死で私を殺しに来てたので、あの二組の番の方がコンビネーションが多分に有る筈です。

さて、私の体が明らかに変質してる事について尋ねたいのですが、何方に尋ねればお応え戴けるのでしょうか?

まあ、都合良く解説してくださる方は居ないのでしょう。

なので、私自身がわかる範囲で伝えたいと思います。

 

一つ。尻尾と思わしき感覚が九つ存在すること。

二つ。見た目が華奢な感じではありますが、私が修得した技法(=瓦割り三十枚や鎧通し、縮地など)を遺憾無く発揮できるどころか、最盛期よりも何十倍もの完成度で発揮できるということ。

三つ。私が生前に使っていた仙術(擬き)と陰陽術(擬き)が昇華されて、生前では、一ヶ月で三回程度しか使えなかった縮地と神降ろしが、一日に百回以上は使えるということ。

四つ。ブラウンの髪(セミロング)が金色の髪(ショート)に変わって、お婆ちゃん譲りの翡翠色の瞳が黄(金?)色の瞳に変わったことや若干背が縮んだこと(何故か耳が頭に生えていたりします)。

 

〈キツネ耳もふもふ~~〉

 

変な電波を拾いましたが、もう一つだけ続けます。

 

五つ。五感や勘等のセンサーが鋭くなっていたり、身体能力が劇的に、(水素)爆発的に増加したこと。

 

『グゥゥゥゥゥ』

 

ちょうど良いタイミングですが、何者かの意思を感じます。しかし、ちょうど良いタイミングなのは否定することはできませんので、朝食になってもらいます。

 

『ガッ』

 

「ハァッ!!」

 

バンッ

 

なッ!?

可笑しいですね。鎧通しで脳を破壊しようとしたのですが、頭が爆発四散してしまいました。やはり、九尾の妖怪となってしまったからなのでしょうが、頭が弾け飛ぶ様は何時見ても慣れることはないですね。しかし、紛争地帯に行った時に散々見てしまったので、何処か他人事と思ってしまっているのが私の悪いことです。

 

『グルルルル』

 

「今なら見逃します。以後、私を襲わないというのならば見逃しましょう。しかし、また襲ってきたのならば、容赦はしませんよ」

 

『ウォォォォォォォォオン』

 

「あなたは逃げないのですか? 良いでしょう。共に旅に出ようではありませんか」

 

『グル』

 

私に平伏して居るのは、純白の大狼。本来ならば、()が狼に食べられるのでしょうが、私は残念ながらそう簡単には負けません。しかし、前世では【出る杭は打たれる】という社会情勢だった為に、私という【異端児】は堅苦しくもあったのです。何故なら、前世の私は、一種の生まれ変わりという存在だったらしいからです。【櫻田藍】という個と【尼廾(にきょう)】という個が混ざり合った結果、現代社会にて【異端児】となってしまったのです。なので、尼廾さんの陰陽術と仙術を見よう見まねで練習した結果、縮地と神降ろしを体得したのです。しかし、【櫻田藍】という個が不出来だったのか、月(正確には、新月から次の満月まで)に三回しか発動できないという始末。

しかし、生前の私には体術及び身体強化に秀でてた為に、空手から柔術、中国拳法を主として極めたので、今世では両方に適正があるので、仙術と陰陽術、妖怪になったのですから妖術も極めたいですね。あとは、私が新設した体術の【流極至天流】を煮詰めていきたいですね。【流極至天流】は、文字道理に【流れを極めて天に至る】という、剛の体術ではなく、柔の体術のモノですね。どれだけ最小限の消耗に押さえて相手を倒す(殺す)かに重きを置いた為に、根気がないと極めるどころか続けることすら出来ないのが難点です。

まあ、空手のような剛の体術的要素と勿論入っていますよ。

更に言えば、体力面がとても大切ですので、ランニング等が………………

 

******

 

あのとき平伏していた純白の大狼に淡雪という名を授けてから数百年が経ち、私たちは各々で様々な変化を遂げました。

淡雪は人形に変身できるようになったので、【流極至天流】を教えた結果、凡そ八年で修得した。なので、私は更に中国拳法→柔術→空手の順番で基礎を教えた。それら全てを修得するのに掛かった時間は、凡そ十年。ソコから技を教えて極めるのに其々の武術で三十年。更に、人の域から外れる程に極めるのに其々五十年を経て、淡雪は武術では間違いなく最強格になった。その間に私も鍛えて修練したので、同じく最強格になったが、妖怪としてはまだまだなんじゃないかと思っています。ああ。言い忘れていましたが、淡雪は勿論雌です。

私はと言えば、尻尾の数が十二本に増えました。それと、陰陽術と仙術を極めた結果、仙狐に成りました。九尾の妖狐でありながら仙狐に成るとは、普通の人間?から仙人に成った方々に対しての嫌みではないでしょうか。

とはいえ、私たちは今、地上の民が月へと昇る為にロケットを飛ばそうとしている現場に来ています。

 

「升田! 黒兵衛! おのれ妖怪め!」

 

「いや、知りませんよ。貴殿方が殴り合いをして同士討ちになっただけですよね? 私は関係ないと思うのですが」

 

「なぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃい!!」

 

「藍よ、アレは放っておいても良いのではないか?」

 

「そうですね。では、行きましょう」

 

淡雪は中々に美人さんなのですが、性格が少し堅いような気がします。しかし、実力は確かですし、私が教えた料理を既に極めて、他の料理に応用できるようにしています。なので、将来は良いお嫁さんになるんじゃないかと密かに楽しみにしています。私も好い人を見つけなくてはいけないのですが、この際なら女性でもイイ気がしています。

 

「吾作は何をやっているんだ! 妖怪が本陣まで来てるではないか!?」

 

「ええっと、吾作さんと思わしき人なら、升田さんと黒兵衛さんの殴り合いを止めてましたよ」

 

「…………またか。いや、まあ、お見苦しいところを見せたな……って! お前は何を普通に答えているのだ!? お前たちは襲わないのか?」

 

「まあ、私たちは興味本意で見学に来ただけですから」

 

「なッ!? そんなことのために態々死ぬかもしれんところに来たのか!?」

 

「まあ、あなた達程度の方達なら、どのような兵器を持っていても私と淡雪には勝てませんからね」

 

「ッ! 本当に責める気はないのだな? 言っておくが、嘘なんぞ吐いても私には判るからな」

 

「ええ。私も攻めるつもりはありませんよ。それに、今まで黙っている淡雪にもその気はありません」

 

「そ、そうか。では、ダメ元で聞くが、此方側に着いて戦ってはもらえぬか?」

 

「構いません」

 

「いや、分かっている。妖怪がにんげ………まことか!? いや、先に言ったのは私だし、嘘ではないのは聞いてわかるが、本当に良いのか?」

 

「ええ。私としては、今度会うことがあったのなら、何か対価を戴けるのなら構いません。その方が安心できるでしょう?」

 

「……そう、だな。名は、名は何とか申す? 私は三久部悟と言う者だ」

 

「私は藍と言います。此方は、先程申し上げた通り、淡雪と言います。私は金毛十二尾の妖狐で、淡雪は仙狼という種にあたります」

 

「十二尾の妖狐とは、………私たちでは敵わぬ訳だ。しかし、藍殿や淡雪殿は何故ケガレを纏っておらぬのだ?」

 

「簡単な話です。仙人と、仙獣といわれる存在は浮世から離れたら存在のことを言います。故に、仙人は霞を主食とし、仙桃を食すことによって長寿の法となっています。桃とは、ケガレや禍の存在を滅する果実であるので、それを食すことにより妖怪はケガレを落とすことができます。しかし、仙術を修めて、打ち消す為の術を使えないと妖怪は桃を食した時点で消滅しますので、全てが全てに当てはまるわけではありません」

 

「そうであったか。本当に有り難い情報であった。我らの上層部へと報告し、桃という果実を生産できるように掛け合ってみよう」

 

「はい。では、吾作さん達を見つけましたら、此方へ連れて参ります」

 

「一つ進言しよう。我らが月へ昇る乗り物が全て出発し次第、この街を含めたこの周辺域全てを爆撃するゆえ、知能なき妖怪を滅した後に退散すると良い。某は藍殿らと、また合いとう思っている。それ故、滅し次第早急に避難願いたい」

 

「ええ。わかりました」

 

「……………感謝する」

 

「淡雪、やっと喋りましたか。人見知りなのは治した方が良いですよ」

 

「…………………」

 

「では、行って参ります」

 

「嗚呼。有り難う」

 

******

 

ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ、いつ、むぅ、しつ、やぁ、くぅ、とぉ………流石に此処まで来ると数えるのが面倒になってきますね。しかし、見渡す限りにゾロゾロとワラワラと溢れていますね。こういう時こそ神降ろしの出番なのですが、私は今妖狐となっているので、対応してくれるかが非常に怪しいです。しかし、やるしかありませんね。

 

「日ノ本一の大武神。其の力、日ノ本の主神迄凌ぐ戦の力也。降臨せよ【建御雷神(タケミカヅチノカミ)】」

 

『久し振りじゃないかな? とはいえ、元気にしてたみたいでよかったよ。相変わらず無茶してるみたいだね。まあ、そうじゃなければ、死んでない筈だしね』

 

「お恥ずかしい限りです。しかし、妖と成った今でもお力を貸していただけるとは、思いもしませんでした」

 

『そりゃあ、キミじゃなければ僕は力を貸す気は無いよ。まあ、一人だけ貸してるけど、まともに制限できてなくて周りの被害が酷いくらいに出ててね。余程のことがなければ僕は呼ばれないよ』

 

「はあ……。しかし、私もまだまだ未熟故に周りに被害を出してる気がするのですが………」

 

『いやいや! キミは未熟どころか、尼廾よりも優れてるからね!? …………まあ、僕達は前と同じようにキミに力を貸すから、存分に暴れてよ。キミの暴れっぷりは僕達には中々の娯楽にもなるし、何よりも、キミの人柄は僕達が認めてるからね』

 

「………ありとうございます」

 

「藍殿! そろそろ私一人では抑え切れなくなってきてたので、参戦していただけないでしょうか!?」

 

『ほら、呼ばれてるよ。…………いってらっしゃい』

 

「はい。いってきます」

 

◆◆◆◆◆◆

 

縮地にて、藍は敵の密集している場に移動し、震脚を思いっきり大地に打ち込むと蜘蛛の巣状に大地が割れながら大きく揺れる。そして、着地と同時にもう一度震脚を行い周辺一帯を大きく陥没させると同時に高く跳躍する。

 

「【神鳴り】」

 

一言呟くだけで、クレーターとなった空間に数多の(いかずち)が降り注ぐ。しかし、敵の数は未だに万を越えている。

 

「【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】【神鳴り】」

 

「ら、藍殿!! 私まで殺す気ですか!?」

 

無数とは言えないまでも、数えきれない程の雷が降り注ぐ中、一体一体を確実に仕留めている淡雪。雷に何度か打たれたなどという事実は無い………たぶん、おそらく。

雷により、その数を半分以下に減らした雑魚妖怪は、その数凡そ二万八千体までなっていた。しかし、まだ雑魚妖怪が大量に存在してるなか、その後方で最後のロケットが発射されていた。そして、全てを無に還す核兵器が投下された。

 

「ッ! 伊邪那岐と伊邪那美より生まれし三神の長男にして、大いなる海を統べる者也。其の者は八の首を持つ大蛇を討ちし英雄也。顕現せよ【須佐之男之命】!!」

 

核が爆発すると同時に藍の神降ろしが成功するが、どう足掻いたとしても間に合わないだろう。それこそ、神の起こす奇跡がない限り。そう判断した藍は、淡雪の側へと跳び、淡雪を抱き締める。全てが終わるその瞬間が訪れる筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『藍さんがこの世界に来なくては、私達は何れ消えてしまう稀薄な存在でした。しかし、藍さんが存在したことにより、彼方の世界での我々が繋ぎ止められ、更には此方の世界へと融合しました。故に、私達を知るものが一人でも居れば、日ノ本の神は全て存在できる程まで安定したのです。ですから、私達は藍さんに恩返しをしなくてはいけません。それこそ、私達が全てに忘れ去られるまで、ずっと………』

 

『結局何が言いたいんだよ』

 

『藍さん達を助けましょう。ということですよ』

 

『最初からそう言ったらどうなんです?』

 

『いえ、こういう風に言わなくてはいけない気がしただけです』

 

『はあ。これだから結婚出来ねぇんだよ』

 

『なッ!! 須佐之男、一ヶ月ご飯抜きです』

 

『んだと!? このクソババア! てめぇはすぐに飯を盾に取りやがるから結婚出来ねぇんだよ!!!』

 

『ぐぬぬぬ。はあ。まあ、ここ話は藍さんを助けてから、【じっくり】と【お 話 し】しましょう』

 

『グッ! わかったよ。たっく、手の掛かる童は此だから困るんだよ』

 

『何だかんだで嬉しそうにニヤけながら手を貸してるお前も大概甘いよ。まあ、私もその中の一人だがな』

 

『ふふ。まあ、彼女は中々に可愛い娘ですからね』

 

 

 

 

 

 

 

 

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