【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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残り八話と言ったな、あれは嘘だ
よってあと一話続きます。
また風邪でぶっ倒れ投稿遅くなりました
申し訳ありません


第十二話 「絆」

「………」

 

開かれた瞼、そこに写り込んでいたのは白い世界だった。

天井にはランプが吊るされており目を動かすと四方は白いカーテンで覆われている。

そして俺は白いシーツが敷かれたベッドに横たわっていた。

ここは医務室だろうか、だとすると俺はまたもや死に損ねたらしい。

とはいえそれは予想通りの事だ、落胆こそしたが絶望するほどでもない。

 

そこまで思い出した時、俺は大事な事に気が付いた。

キニス、俺を庇ったキニスは無事なのか。

周りを見渡そうと体を起こすと、そこら中から激痛が襲いかかってきた。

あの時食らった緑色の閃光によるものだろうか、激痛に悶えながらもヤツを探そうとする。

 

「…………!」

 

カーテンを開け放つと、ヤツはすぐ隣のベッドにいた。

あちこちを包帯で覆われ、目を閉じて横たわっている。

まさか、そんな、最悪の予感が脳裏を過る。

その予感が間違いであると確かめるために、これが嘘だと願い俺はキニスに触れようとする。

 

「ファー…あ、キリコ! やっと起きたんだ!」

 

その瞬間キニスは目を開け、あっさりと起きた、呑気に欠伸までしている。

 

「生きていたのか…」

 

「いやそれこっちの台詞だよ、キリコもう三日間まるまる寝込んでたんだから。

それに十ヶ所打撲、四ヶ所骨折、内一つは粉砕骨折だよ。

マダム・ポンフリーいわく「必ず死ぬはずよ…魔法が使えなければ!」だって。

まあ、僕も起きたのは少し前なんだけどね。

しかもあと一日は絶対安静だってさ…折角の休みなのに寝ることしか出来ないなんて」

 

…全く問題無いらしい、いつもと至って変わらないこいつを見て気が抜けるのを感じていた。

それにしても三日間も倒れていたとは、一体あの光はどれ程強力な物だったのだろうか。

もし直撃していたら、本当に死んでいたのだろう。

 

そこまで考えた俺は気づいた、俺にあの光は絶対当たらない事実に。

仮に拡散させるのに失敗していたら、光の直撃を受けたのは俺ではなくキニスだったのだ。

俺の異能が、俺を生き残らせるためにヤツを呼び出したという事実に。

 

俺の恐れていた事態が起こりかけていたのだ、俺に関わることでキニスが死ぬという事態があと少しで現実になろうとしていたのだ。

 

「お前は何故あそこに居た」

 

「え? いや最近キリコ辛そうだったし、それで心配してて寝れなかったんだ。

それで起きてたら、談話室の前で物音がしてさ、気になって行ってみたらキリコが出歩いていて。

何だろうと思ってついていったら立ち入り禁止の部屋に入ってったから心配して追いかけたんだよ」

 

そういうことか、しかし謎の音に気を取られていたとはいえ気付かないものだろうか。

そもそも物音をたてた覚えも無いが…

だが、これ以上こいつを地獄に付き合わせるわけにはいかない。

でなければ今度こそこいつは死んでしまう。

 

「それにしても本当に心配したんだからね、死が潜むって部屋にズカズカ入っていくんだもん」

 

「頼んだ覚えは無い」

 

無視していてもこいつは心配してくる。

だからヤツの気遣いを徹底的に拒絶する、そして完全に嫌われ二度と関わらないような状況にしなければならない。

だがこいつはその程度で引き下がるような人間では無い。

 

「そりゃそうだよ、第一死ぬかもしれない所に勝手に入って行ったら、頼まれ無くたって僕は行くよ」

 

「それが迷惑なんだ」

 

「…ちょっとそこまで言わなくてもいいでしょ、心配してるんだから」

 

少し、怒ったような表情を浮かべていたがヤツは言い返してきた。

もっとだ、完璧に拒絶しなければこいつは離れない。

 

「…分からないなら言ってやる、お前に関わられると迷惑だ、足を引っ張るばかりでろくな事がない。

俺の事を思ってるなら俺に関わるな!」

 

「………!」

 

かつて無いほど強い口調で拒絶の意思を示す、そんなつもりは無かったが声まで荒げていた。

それに衝撃を受けたヤツは何も言い返してこない、その顔は怒っているのか驚いているのかよく分からないものだったが、少なくとも好印象な感情では無いハズだ。

 

黙り混むヤツを見て手応えを感じた俺は痛む体を引きずり、あちこちの痛みに耐えながら医務室を後にしようとした。

しかし、ヤツはベッドから跳ね起き、痛みに表情を歪まながらも話そうとしてくる。

 

「…嫌だね、そんなこと。

だって友達を心配するのは普通の事だもん」

 

目を逸らさず、真っ直ぐに見つめてくる。

やはり、簡単にはいかないか。

だがここで引くわけにはいかない、そこで俺はさらに熾烈な言葉を必死にぶつけていく。

 

「死にたいのか? 

これ以上関わるならお前は必ず死ぬことになる」

 

「…な、何言ってるの?」

 

俺が言いたいことを理解できていないようだが、確実に動揺している。

当然だろう、突然死ぬと言われれば混乱するのは当たり前だ、この言い方ならまるで俺が殺そうとしているように聞こえるが、それも間違いではない。

 

「俺を心配してお前が来なければ、俺はあの光を避けることが出来た。

だがお前が来たせいで俺もお前も死にかける事になった。

お前の心配は俺の邪魔だ、そしていつかお前も死ぬことになる。」

 

今度こそヤツは黙り込んだ、自分の行動全てを否定されるということは相当辛い。

それに加え現に死にかけたという事実はあいつの心を折るのに十分な効果を発揮しているはずだ、完全に止めを刺すために最後の言葉を絞り出そうとする。

 

「だから言った、お前は邪―――」

 

「死ぬことになる? それが何? 僕のせいで怪我を負ったことは謝るよ。

でもキリコ、死ぬのが怖かったら僕はあの部屋には入らなかった!」

 

尚もしつこく反論してくるヤツに一瞬動きが止まる、だがすぐに次の言葉をぶつけようとする。

 

「それがどうした、お前は―――」

 

「ああああああああああ! もおおお!」

 

「!?」

 

突如頭を掻き毟りながら叫ぶキニス。

呆気に取られているとヤツは俺に詰め寄り、今までとは別人のように叫び始めてきた。

 

「いい加減にしてよキリコ! そんな顔してたら言ってることもその態度も全部嘘だって分かるんだよ!?」

 

そんな顔だと、近くの窓に映り込んでいる自分の顔を見てみる。

…特にいつもと変わらない、その筈だ。

冷静さを一旦取り戻し、反論を行う。

 

「何を言っている、全て俺の本心だ」

 

そう、嘘ではない。

これは全てまぎれもなく俺の心から出た言葉だ、キニスに死んで欲しくないからこそ今もこうして熾烈な言葉を吐き続けているのだ。

だがヤツもまたすぐさま反論してきた。

 

「いいや嘘だね、だってキリコは優しい人だから!」

 

…? 優しい? 急に何を言うのだこいつは。

突飛かつ的外れにもほどがある発言に、反論すべき言葉を一瞬見失っていた。

 

「理由を言ってあげるよ!

だって最初の箒の授業の時、暴走してた僕を助けてくれたじゃないか!」

 

そんなことで、そんな理由だけで俺を優しいと思ったのか。

その素直さに呆れすら感じたが、いくらでも言いようはある。

睨み続けるヤツに向かって淡々と理由を説明していく。

 

「あれか、あれは点数稼ぎのためだ。上手い飛行をすれば点数ぐらい貰えるかと考えたに過ぎない」

 

我ながら上手い理由を言えたと思う、だがヤツは視線を一層厳しくしながら次の理由を叫んでいく。

 

「じゃあ何でトロールに向かっていったの!? あれはハリー達を心配したからじゃないの!?」

 

「戦うためだ、自分の実力を試す機会はそうそうなかったからな、嬉しかったさ。」

 

そういった一面もあった筈だ、それが無いとは言い切れない以上理由としては十分だろう。

しかしヤツの叫びは止まらない。

 

「だったら何でハーマイオニーに助言をしたの!? ハーマイオニーから聞いたよ! 取引に応じなかったのに助言してくれたのはきっと自分たちを心配してくれてたからだって!」

 

「…当然だ、取引に応じなかっただけでは疑われる。

だから助言をした」

 

次々と理由を繰り出してくるキニスに対し、何とか次の理由を吐き出す。

 

「石を守りに行ったハリー達を追っかけた理由は!?」

 

「…それも点数加算だ、石をクィレルから守ればそうなると考えたからだ」

 

必死に言葉を絞り出していく、理由など幾らでも浮かんでいた、その筈だった。

しかしその言葉は俺の口から出てこようとしない。

 

「ロンに応急処置したのは!?」

 

「…それもだ、点数―――」

 

「クィレルと戦ったのは!? ハリーを助けるためでしょ!?」

 

もはや反論さえキニスは許してくれない、俺の心を暴かんとする勢いで問い続ける。

 

「…同じ理―――」

 

「だったら何で僕を守ってくれたの!? キリコはさっき避けれたって言ったよね、だったら僕のことなんか気にせず逃げれば良かったじゃないか! でもキリコはそれをしなかった、僕を守ろうとしてくれたのは何で!?」

 

「………」

 

言葉は出なかった、そんな事は知っている、俺は人を拒絶など出来ないことに。

誰かの温もりを求めずには要られないような、親しくなった人もそうでなくても見捨てることがで出来ないような情けない人間だとは知っていた。

だからこそ俺は人を拒絶してきた、俺のせいで誰かが傷つかないように。

俺の力のせいで誰かが死なない様に。

 

「…ね、そうでしょ? キリコは誰かの為なら自分が傷ついても構わない、そんな心を持った人だ。

そういう心を持った人が、人を傷つけるような事をして平気な訳だと思えない」

 

「………」

 

だがキニスは止めようとしない、どれ程拒絶しようと傷つけようと絶対に離れようとしない。

故に怖かった、いつも死んでしまうのはまさにこいつの様なヤツばかりだったからだ。

キニスも同じ運命を辿ると確信できたから全力で引きはがそうとした。

 

「なのにこんな事をするのは多分僕の事を思ってやってる事なんだと思う、もちろん理由は分からないけど。

でも僕はいやだ、僕の為でも誰かの為でも、キリコが苦しんでるほうが一番嫌だ」

 

「………」

 

しかし剥がせなかった、いや剥がそうとしなかったと言った方が正しいだろう。

俺の心は欲していたからだ、そう、まるであいつらの様に話せる人を、利害関係も何もなく腹を割って話すことの出来る親友を求めていたのだ。

 

「だからキリコ、そんなになるまで無理しないでよ。

別に悩みは全部言えとか秘密を抱えるなとか言わないけど、少しくらい頼って欲しいんだ」

 

「…お前は、何故そこまでする」

 

死すら紛い物だと知ったあの時から、俺の心は死んだものだと思っていた。

だからこそ傷つく事も無いと思っていた。

だが違った、俺の心は何もかも忘れようとしていたあの時と何も変わっては居ない、殺してしまうと分かっていても人の温もりを求めずには要られない傲慢なモノだった。

 

「友達を心配するのは普通のことでしょ? 僕はキリコの友達だ、キリコ自身はそう思ってないかもしれないけど僕はそう思ってる。

一緒に居ると必ず死ぬ? それがなんだよ、死に掛けようと何だろうと苦しんで辛そうな友達を放っておく事、それは僕にとって死ぬよりも嫌だ」

 

「………」

 

いいのだろうか、温もりを求めても。

その結果殺してしまう事になったとしても、地獄に付き合わせる事になったとしても。

こいつはそれでもいいのだろうか。

その答えなど、今更考えなくても分かり切っていた。

 

「友達が苦しんでるなら、僕は地獄にだって付き合ってやる。

―――それが友達だ」

 

ありふれた、よくある言葉。

しかし今の俺にとってその答えは、何よりも嬉しい言葉だった。

新たな地獄で傷付き冷え切った俺の心、その小さな灯は俺を温めてくれた。

安らぎと嬉しさ、何十年ぶりに得た感情に逆らうことは―――

いや、もう逆らう気すら無かったのだろう。

最後の、なけなしの抵抗に最後の疑問をぶつけた

 

「…何故、俺を友達と思う」

 

「………理由は…無いかな。

でも僕は一緒に居ると楽しいんだ、だからもしキリコも楽しいんだったら―――

友達で良いんじゃない?」

 

…やはりこいつはあいつらと同じ、お人良しなのか。

なら最初から拒絶することなど、不可能だったのかもしれない。

 

「…キニス」

 

「何? キリコ」

 

「…すまなかった、そしてありがとう」

 

「…うん、僕もありがとう、守ってく―――」

 

「何をしているんですか貴方達は! 絶対安静と言ったでしょう寝ていなさい!

ミスターキュービィー、大丈夫ですか? 後で検査をしますので待っていて下さい。

さあ貴方はベッドに戻って!」

 

「え!? ちょ!? このタイミングでそんn―――」

 

………

この状況を締まらないと言うのだろう。

今までの空気はマダム・ポンフリーに引きずられるキニスの断末魔と共に遠くへ去って行ったのであった。

だが俺の胸には、久しぶりに感じる感情が確かに残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

マダム・ポンフリーにベッドに叩き込まれながら、僕はあの日の事を思い出していた。

 

 

 

 

「おおキニス、よく来てくれたのう」

 

いや、あれ部屋の合言葉だったのかよ。

もう少し分かりやすく書いて欲しかったと思う、現に僕は校長室の前で一時間途方に暮れ、結局通りすがりのスネイプ先生に助けを求めるハメになった。

 

「えーと、用って何でしょうか… まさか退学何てことありませんよねー…」

 

「退学? ほっほっほ、そんな事は無いから安心するのじゃ。要らぬ心配をかけてすまなかったのう」

 

…正直、僕はこの人が苦手だ。

別に悪い人じゃ無いとは思う、ただ何だか常に一物抱えてるような感じがする。

無論それも悪い事じゃ無い、誰だって言いたく無いことの一つや二つあって当たり前だからだ。

でも何か…何か突っかかる感じがする、それが苦手だった。

 

「じゃあ…」

 

「うむ、それなのじゃがキニス、君はキリコと喧嘩をしたのかね?」

 

「? いえ? してません…いや、もしかしたら知らない内に何かやらかしたかもしれませんが」

 

「ふーむそうか、では最近キリコに何かおかしな事はなかったかの?」

 

「…もしかして、用があるのはキリコの方なんですか?」

 

ダンブルドア校長は少しだけ驚いた顔をしていた、ってことは目的はそっちなんだろう。

 

「そうとも言えるし、そうとも言えん。

儂が心配しているのは君たち両方なのじゃ」

 

あ、両方でしたか。

じゃあ校長先生は僕とキリコの仲が悪くなってるのを気にして、呼んでくれたのだろうか。

 

「君たちは仲が良かった、じゃが最近は二人で居る所を見かけなくての、それで心配になったというわけなのじゃ

…一体何があったのか教えてくれんかの?」

 

「うーん、そう言っても…何故か急にあんな感じになっちゃたんですよね…

おかげで原因も分からず、仲直りする方法も分からないんです。」

 

ダンブルドア先生はちょっと落胆した後、僕にお礼を言ってきた。

そしてしばらく黙って何か考えてるみたいだった。

 

「…キニス、一つ頼みがあるのじゃが」

 

「頼み? 何でしょうか?」

 

「あの子の傍にいてやって欲しい」

 

「…はい?」

 

思わず聞き返してしまった、一体何でこの人はそんな当たり前の事を言って来たんだろうか。

 

「儂から見ると、彼は君といる時とても楽しそうな顔をしておった。

しかし今はこの学校に入学してきた時のような、悲しそうな顔に戻ってしまっておる。

じゃが、君なら彼をまた笑顔に出来るじゃろう。

今は辛いかもしれぬが、それでも彼の傍にいてやって欲しいのじゃ」

 

「もちろんですよ、離れろと言われてもそんなの嫌ですから」

 

「そうか、ありがとうキニス。

付き合わせて悪かったのう。」

 

「はい、…じゃあ失礼します」

 

さっき言った言葉はまぎれもなく本心だ、むしろ辛そうな時ほど傍にいるのが友達ってやつだろう。

でも改めて口にだして思った、今キリコから離れてはいけないと、絶対に支えて上げなければ取り返しの付かない事になるかもしれない。

キリコに何が起こったのかは分からない、けれど傍に居て元気づける事は出来る。

多分また拒絶されるだろうけど、それが今僕に出来る唯一のことだ。

 

 

 

 

そして今、ベッドに横たわりながら思う。

結局いつもの勢いで乗り切っていた気がするが…まあこの際何でもいいや。

最後までキリコに何が起きたのか聞くことは出来なかった、でもそれはいつか話してくれるまで待つ方がいいんだろう。

それよりも僕はキリコと仲直り出来た事の嬉しさで一杯だった。

何よりもそれが一番嬉しかったのだ。

 




降り注ぐ閃光。
迫りくる異能者。
野望と野心と陰謀の元、クィレルが燃える。
絶対的、ひたすら絶対的パワーが蹂躪しつくす。
我が主の望み、手に入れた石、力、狡猾な野心、
老いも若きも、男も女も、昨日も明日も呑み込んで、走る、炎、炎。
悲鳴をたててホグワーツが沈む。
次回「脱出」。
異能者は何があっても蘇る。


いや別に、家に帰るから「脱出」ってだけですよ
ホグワーツは燃えませんよ ま だ
というわけで次回、ようやく第一章完結です
まあプロローグなんで短めですが

追記 キニス君の部屋突破方法ですが
チェスの部屋までは自力で何とか突破しました、
で、立ち往生してたらダンブルドア先生が来た次第です。
描写不足で申し訳ありませんでした。
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