それでは秘密の部屋編開幕です
第十四話 「ダイアゴンYEAR-02」
電車やバスに揺られること数時間、俺は一年ぶりにあの怪しげなパブの中へ入って行き、店の奥の煉瓦を叩くとあの時と変わらない賑やかな光景が広がってきた。
夏休み期間の間、やることは何も無かった、何せ呪文の練習をしようにも″臭い″が働いてる為出来ず、研究をしようにも家に禁書を持ち込める訳が無いのでひたすらトレーニングをしたり復習をする等して時間を浪費するしか無かったのだ。
そうこうしている間に夏休みも終わりが近づいて来たので、新たな教科書や荷物を買うためにここにやって来たのだった。
だが最初に買わなければならない物がある、ローブだ、この前の事件の時炎の罠を越える為に爆発させてしまった為買いなおす必要があった。
なので最初にマント専門店によって新しいのを購入し、店の外に出た時であった。
その人影は注意深く周りを観察しながら人気の無い脇道に急いで入って行っていた、それを怪しんだ俺は脇道を覗いてみる。
そこには何も無いように見えるが、よく見ると確かに店が並んでいた、壁には″ノクターン横丁″と書かれている。
いわばここは闇市のような場所なのだろう、間違いなく危険だがこういった場所にこそ色々な物がある、特に欲しい物がある訳では無かったがその危険な臭いに引き寄せられるように俺は路地裏に入って行った。
路地裏は暗く、じめじめとしており人の気配はほとんど無い、時折見かける人もそれは浮浪者であったりローブを深く被っていたりとここの雰囲気に溶け込むような連中ばかりだ。
あての無い道を進んで行くと一軒だけ店と分かる建物が見えてきた、打ち付けられた板には掠れた文字で″ボージン・アンド・バークス店″と書かれている。
あても無いので、まずはその店から入ってみることにした。
店の中はどれもこれも不気味さと悪趣味を前面に押し出した様な商品ばかりであった、これぞまさに非合法と言うものだろう、店の人間たちは訝しげな視線をぶつけてきたがそんな物は気にせず商品を覗いてみる。
人骨、爪、ポリマーリンゲル溶液(ワップ製)、巨大な黒蜘蛛…
まあ、碌な目的には使わないだろう、そんな事を思いながら見ていると、新たな客が店に入って来た。
「…え!?」
「ドラコ、知っている人間か?」
入って来たのは…ドラコ…だったはず、それと先ほど入って行った怪しい男だ、話し方からして父親だろう。
まあわざわざ話しかける理由も無い、向こうも同じ様に考えたのかそれ以上興味を向けることも無かった。
物色に戻り色々な商品を見ていると店の暖炉に違和感を感じた、店自体が暗いのでよく見えないが誰か潜んでいる。
こんな怪しい店なら、こんな所に人が居てもおかしくないが…
気になったので覗き込んで見ると、そこには少年が驚愕した表情で息を潜ませていた、というよりハリーが何故かそこにいた。
一体何でこいつがこんな所のこんな所にいるのだろうか、意外な人物の出現に驚いているとマルフォイ達が出て行ったと同時にハリーも飛び出て来た。
「…な、何でキリコがここに? というかここ何処?」
「ここはノクターン横丁だ」
どうもハリー自身も何故ここに居るのかは分かってないらしい、混乱するハリーを置いて出て行ってしまうのは流石に悪いので一緒に店を出ていく事にした。
「…で、何でキリコはここに居るの?」
「たまたまだ、むしろ何故お前が居る」
「あ、今僕ロンの家に泊まってるんだ、それで一緒に新学期の買い物をしようって事になったんだけど、移動に″煙突飛行ネットワーク″って言うのを使ったら…何か間違えちゃったみたいで…」
煙突飛行ネットワークか、俺自身は使ったことはないがその内容は知っている。
魔法使いの家の暖炉にフルーパウダーと言う粉をふりかけ、行きたい場所を叫べばそこに行けるという便利なシステムだ、ただし場所をハッキリと発音する必要があり、微妙な発音だと別の場所に飛ばされてしまうのだ。
ハリーがここに居る理由も同じなのだろう。
「それにしてもキリコがいて本当に良かったよ、僕一人じゃどうなっていたか…そうだマルフォイ! なんであいつもここに居たんだ!?」
別に誰がどこで何をしていようが良いと思うのだが、まあ嫌いなヤツがこんな怪しい店に居たら怪しむのも可笑しくは無いか。
「…そもそもノクターン横丁って何処なんだろう」
「…ダイアゴン横丁の近くだ、こっちに行けば出られる」
ハリーを連れてダイアゴン横丁へ戻る道を辿っていると、巨大な影が行く手を遮る、一瞬だけ身構えたがすぐその正体は分かった。
「おお! ハリーお前さんこんなとこで何してんだ?」
「ハリー! そこに居たのか…って何でキリコが?」
ハグリッドとその影にはロン…と、赤毛の少女が居た、状況から考えてロンの妹だろうか、二人はハリーを見て安心した顔をした後、俺の方には不思議そうな顔を向けてきた。
理由を説明するのも面倒なので無視しておく。
すると彼女、ハーマイオニーも声をかけてきた。
「キリコも新学期の買い物に来たの? これから私達も教科書を買いに行くのだけど一緒に来る?」
「…そうさせてもらう」
別に一人でも良かったのだが、俺も残りは教科書だけなので一緒に行くことにした。
「こらこら、闇の市横丁には入ってはいけないと…ん?君は?」
話しかけて来たのは燃えるような赤毛が特徴的な中年の男性だった、見た目からしてロンの父親で間違いないだろう。
「キリコ・キュービィーです」
「キリコ…ああ! 息子から話は聞いているよ! うちの子供を助けてくれたんだってね、本当にありがとう!」
大げさにお礼を言ってくる彼を適当に対応しながら本屋へ向かうことにした、彼、アーサーはお礼に教科書や箒でも買ってあげようと言っていたが、ロンの顔が真っ青に染まっているので丁重に断っておいた。
無論遠慮していたのもあるが、ウィーズリー家の財政は基本火の車だとロンから聞いたことがある、多分これで俺が遠慮しなかったらかなり危険な事になった…かもしれないからな。
フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店は混んでいた、ただし学生ではなく中年くらいの女性の声援で埋め尽くされ、入るのも困難な状況になっている。
《ギルデロイ・ロックハート サイン会》
…俺は必要な教科書リストを見直した。
著者 ロックハート…
著者 ロックハート……
著者 ロックハート………
………こいつが原因か…
ほとんどがこのロック何とかで埋め尽くされている、しかも高い、いやそもそも教科書ですらない。
「…これ、本当に買うの…?」
ロンが言うのも頷ける、本棚の一冊を取ってみてみたが(泣き妖怪バンシーとのナウな…どうでも良くなってきた)内容はひたすらに彼の自慢で埋め尽くされている、数ページごとにこちらに送ってくる写真のウインクがヤツの全てを物語っていた。
「何を言っているの! あのロックハート様の本の素晴らしさが貴方達には分からないの!? ロックハート様は…」
…彼女はアレの熱烈なファンらしいな、趣味は人それぞれだからな。
気が付くとハリーの姿が見当たらない、本屋の中を見渡してみるとアレと一緒に笑顔の写真をとっていた、引きつっているが。
ロンとハリーにはそれぞれの生贄になってもらい、さっさと教科書を買いにカウンターへ向かって行った。
教科書を買い揃え、人の山から何とか脱出すると店の前で二人の男が言い争っていた。
片方はアーサー、もう片方はノクターン横丁に居たマルフォイの父親だ。
「おやおやウィーズリー、こんなに多くの教科書を、残業代も出ないのに大変ですな」
マルフォイはロンの妹の大鍋から教科書を取り、馬鹿にした顔でパラパラとめくっている。
「残業代はたくさん出ているさ、抜き打ち調査のおかげでね。
それよりも人の物を勝手に見る方が下品だと思うがねマルフォイ!」
「下品? 純血の面汚しが言うことかね?」
青筋を立てながらマルフォイはロンの妹の教科書を開き、ローブから何かを差し込もうと―――
「ぐっ!?」
マルフォイの手首を押さえ込み、その動きを止める。
「…急に何をするのかね?」
「今何を入れようとした」
ほとんど見えなかったが一瞬だけ見えたのは黒い本のような物だった、それにアーサーも反応する。
「マルフォイ! うちの娘に何をするつもりだ!?」
マルフォイは汗を一粒流した後、ローブから半分ほど出ていた手を引っ込め、先程の何かの代わりに羽ペンを取り出した。
「薄給のウィーズリーは大変だろうと思ってね、ちょっとした親切だよ」
「結構だ! 特に君のはね!」
一触即発、そんな緊迫感が場を包みこむ。
誰も言葉を発しないまま静まり返り、時間が過ぎていく。
その空気を感じ取ったのか店の人混みからハグリッドが現れた。
「おめえら、何やっとるんだ?」
二人の間に割って入るハグリッド、引き際と判断したのかマルフォイの方はこちらを睨み付けながら去っていった。
「あ、あの… ありがとう。
…私、ジニー・ウィーズリー」
「…キリコ・キュービィーだ」
「…なあ、一体あいつ何をしようとしたんだ?」
「ジニーの教科書に何かを仕込もうとしていた」
「何か…って何だろう?」
「マルフォイの父親だぞ、録な事じゃないさ!」
その後、険悪な空気を引きずったまま別れる事となった。
アーサーからはさっきの礼も兼ねて夕食を奢ろうと言ってくれたが、既に夕食の支度は済まして来たため遠慮しておいた。
それでも何か礼をしなければ悪いと言ってきたので、ゴーレムについての本を一冊買って貰うことにした。
そしてハリー達と別れ、行きと同じくバスに揺られながら帰っていた。
しかし、俺の心にはまたもや嫌な感覚が染み付いていた。
マルフォイの父親は何をしようとしていたのか、それが俺の意識を奪っていたのだ。
…今年も、何か起こる。
俺の直感は、新たな戦いの気配を確実に感じ取っていた。
「…何ということだ、これでは計画が…
クソッどうする? 屋敷僕に命じて潜り込ませるか…?
あの子供、キリコ・キュービィーとかいったか…
あの男の言う通り警戒しなくてはなるまい…」
数週間後のホグワーツ特急内、俺は一人でコンパートメントに居た、そう先程までは。
「あ! 逃げるな蛙チョコ!」
「気を付けてよ! 服にチョコが!」
キニスとハーマイオニーである、二人は俺一人だったはずのコンパートメントで壮絶な蛙チョコとの戦いを繰り広げている。
どうやらこの二人はハリーとロンを探していたらしいのだが列車のどこを探しても見つからず、諦めた末にここにたどり着きそのまま居座っているのだ。
「本当にどうしたのかしら…まさか退学なんて事にはならないでしょうけど」
「乗り遅れたんじゃないの? まああの二人なら大丈夫でしょ。
あ、砂モグラ風ロールケーキ下さい!」
実際に乗り遅れていたとして、入学式に間に合わなくても大丈夫だろう。
しかしそれよりもあの二人の場合、ただ遅刻をするよりも危険な事をしでかす気がしてならなかった。
…誰が車で空をドライブしていたと思うだろうか。
「
一年前も聞いたハグリッドの声がホームに響き渡る、またあの道を歩かされるのかと思うと軽い同情を覚える。
新入生の多くは不安と期待が入り交じった顔をしていた、まあついこの間までは俺も同じ顔だったのだろうが。
二年生以降の生徒達は新入生と別の場所に案内される、少し開けた場所に行くとそこには巨大な馬車があった。
それを引くのは白い目に骨張った見た目の不気味な生き物だった。
「うわー大きいな、どうやって動いてるんだろう?」
「あの生き物が引っ張って行くのだろう」
「? 生き物なんて居ないわよ」
「…すぐそこにいるが」
「もしかしてあの白いモヤモヤ?」
どういう事だろうか、どうも俺以外の二人には見えていないらしい、キニスはぼんやり見えているようだが。
「…もしかして、キリコそれってどんな生き物?」
「白い目と骨張った見た目だ」
「やっぱり、それってセストラルよ」
「「セストラル?」」
「そう、セストラル。
天馬の一種で死を見たことのある人間にしか見ることの出来ない生物、多分それじゃないかしら」
なるほど、俺にしかハッキリと見えないはずだ、死ぬことは無くとも死人はいくらでも見てきた。
キニスが見えるのは恐らく、あの時食らった緑色の閃光のせいではないだろうか。
あの閃光は直撃を貰えば死んでしまう、そんな感覚がしていたからな。
あいつらは何とか見ようとしているが、見えない方が良いのだろう。
学校着いた俺達はマグゴナガル先生に直接大広間に連れていかれた、天井には去年と同じく星空が広がっている。
グリフィンドールの席を端から端まで探してみたがハリー達の姿は見あたらなかった、本当に何があったのだろうか。
寮の席で待機していると正面の門が開き、新入生達が入場してきた、今となっては見慣れた光景だがあいつらはそれに驚愕している、だがその顔は期待に満ち溢れていた。
期待、それは俺の中にもあった。
だがそれ以上に不安を感じていた。
あの時、ヤツは何をしようとしていたのか、如何なる陰謀を持ち込もうとしていたのか。
未だ何一つ分からないし、何も起こっていないがこれだけは言える。
俺は常に戦いと隣り合わせだという事、これだけは確実に言えた。
遙かな横丁の闇を走り、魔法の城に曲折し、
陰謀の泥濘に揉まれてもなお、キラリと光る一筋の光。
だが、この糸は何のために。
手繰り手繰られ、相寄る運命。
だが、この運命は何のために。
秘密のスリザリンに第2幕が開く。
次回「疑惑」。
まだ黒子は姿を見せない。
疑惑(ロックハートに対する)
ルシウス早速やらかしました、ハードモードスタートです。
没ネタ
ハグリッド「No1年! No1年! 返事をしろ!手前達のお守りはもう辞めだ!」
駄目ですね、新入生全員川底に沈んじゃいますもんね。