【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

24 / 91
秘密の部屋もいよいよ大詰め!
最後まで立っているのは誰か!
そもそも部屋は無事なのか!


第二十三話 「失踪」

以前の襲撃以来不穏な空気に包まれていたホグワーツ、それは昨日さらなる絶望感によって緑色に塗りつぶされた。

ダンブルドアが追放されてしまったのだ。

 

これは理事会の決定であり覆す事は不可能、確かに四人も犠牲者が出て尚有効な対策を打てていないのだ、責任能力を問われてもおかしくはない。

 

それでもあいつは最も優れた魔法使いだと聞く、ならばヤツ以上に優れた魔法使いは居るのか?

居たとしても限りなく少ないだろう、つまりダンブルドアの追放は完全な失策と言えた。

 

今のホグワーツはトップを失い、ありとあらゆる悪徳がはびこる頽廃の泥沼へ沈み込もうとしていた。

 

だが絶望かあるならば希望もある、数日前目を覚ましたハーマイオニーによりスリザリンの怪物、その正体が明らかになったのだ。

怪物の正体とは黒ずんだ緑色の鱗を鎧のように纏い、その黄色い眼光で見る物全てを殺し、その毒は魂すら溶かすと言われる毒蛇の王、バジリスクだ。

 

彼女は言っていた、この事を伝える事が出来たのはキニスが逃がしてくれたおかげだと…

そして生徒達は常に手鏡を持ち歩き、教員達はバジリスクにどう対抗するかをマクゴナガルを中心に話し合っている。

 

ただこの結果ハリーとロンがわざわざアクロマンチュアに話を聞きに行ったのが完全に無駄骨となり、死にかけただけだったため二人は不満を漏らしていたが些細な事だ。

 

「怪物の正体がわかったのはいいけどさ…肝心の継承者は結局誰なんだろう?」

 

廊下でロンは言った、その通りだ、怪物の正体が明らかになり誰もが安心しまっているが最大の問題が解決していない。

 

「あーダメだ、もう見つかる頃にはホグワーツが閉鎖してるよ」

 

「ロン! だったらその前に見つけなきゃ!」

 

ダンブルドアの追放もあいまって諦めかけているロンに対し、その執念を見せつけるハリー。

だがハリーの目にも以前のような自信は無く、諦めないためだけに言ったような物だ。

それもその筈、手がかりの欠片も無いのだから。

バジリスクに関しては多少なりとも手がかりが存在していたが、継承者に関しては何一つ無く、正直言って俺も手を挙げるしかない。

幸い、秘密の部屋については検討が付いてるようだが…

 

「もういっそ人間じゃないんじゃない? きっと継承者はサラザール・スリザリンの幽霊だったんだよ」

 

ロンの突拍子もない意見に頭を抱えていると赤毛の少女が通りかかった。

どうも彼女は最近体調が悪いらしい、顔を青白くしながらフラフラと倒れそうな光景にロンは心配そうな視線を送っている。

その手にはいつもの通り、あの日記が大事そうに抱えられていた。

 

「ハグリッドはあり得ないよね…」

 

「あり得ないな」

 

ハグリッドが後継者でないのはアクロマンチュアとの話で明らかになった、死にかけた事で得た少ない成果の一つらしい。

またハグリッドは前回の容疑者ということでアズカバン送りになってしまっている。

俺とハグリッドは特に親しい訳でもないが、冤罪を着せられるという無念、それは俺にとっても許しがたい事だ。

真の継承者が見つかれば、ハグリッドの疑いも晴れる、だからこそ煮えたぎる思い共に俺達は継承者を躍起になって探しているのだ。

 

「…ハリー、何故ハグリッドがかつての後継者…らしいと知っていた?」

 

ふと浮かんだ疑問を訪ねてみる、以前キニスは「ハグリッドから聞いたんじゃないか」と言っていたが、寧ろ聞くのを遠慮していたことがこの前の会話で分かったのだ。

 

「あ、キリコには言ってなかったっけ、日記だよ」

 

「…日記?」

 

瞬間、俺の全身を悪寒が襲った。

それはまるで蛇の様に全身を縛り付け今にも食らいつかんとする程に巨大な物だった。

そして蛇の正体は、すぐに明らかとなったのだ。

 

「うん、今までロンのお兄さん達や祖先の記憶が宿った日記だよ。

それがその時の映像を流してくれたんだ、…というよりさっきジニーが持ってた本だけど、それがどうしたの?」

 

「ジニー・ウィーズリー!」

 

全力で叫び廊下の端に居た彼女を呼び止める、しかし浮ついた表情で歩く彼女はそれに気付いた様子は無い、俺は全身の悪寒を引千切りながら走り出した。

 

「…痛ッ! …! か、返して! それを返してください!」

 

多少罪悪感はあったが、ジニーの肩を掴みとり日記を無理やり奪い取る。

すると彼女は青くなっている顔をさらに青ざめながら、異常な迫力で叫んできた。

 

「キリコ! 僕の妹に何をするんだ!」

 

「ロン、これはお前の兄弟が使った事はあるのか…!」

 

「何のことだよ! それよりもよくもジニーに乱ぼ―――」

 

「質問に答えろ…!」

 

怒るロンを気迫で黙らせ質問を迫る、もしも俺の予想通りなら、俺は最悪の見過ごしをしていた事になる…!

俺は予想が当たってしまう事への後悔で、水中で溺れるような感覚に陥いっていた。

 

「…! な、無いよ! 僕も誰もそれを見た事なんて無い! だってそれって僕のママのお古でしょ!?」

 

「え!? だって日記はジニーの兄さん達が使ってたって言ってたよ!」

 

「何言ってるんだよハリー! 第一使ってたとしても、日記に記憶が宿る訳ないじゃないか!」

 

「ええ!? これってそういう魔法道具じゃないの!?」

 

「そんな道具見た事も聞いた事もないよ!」

 

「返して! 早く返して!」

 

「全員静かにしろ…!」

 

大混乱している状況、俺は再び怒気を放ち場を落ち着かせる。

 

「状況を整理する、ジニー、これはお前の物なのか?」

 

「…そ、そう、だから早く返し―――」

 

「正直に言えばな」

 

「…ひ、拾ったの、談話室のテーブルで、誰かの落とし物かと思って…」

 

つまり、ロンが落とし物として届けようとした所、ジニーも同じ事をしてしまったという訳か。

そして全員の話を纏めた所こうなった。

最初ジニーは届けようとしたが、日記と話せる事を知ってから持ち主に返すのが惜しくなった。

またロンもそれを母親のお古と思い、不審に思う事はなかった。

しかし次第に意識を失ったり記憶が無くなる事が増え、不審に思ってトイレに捨てた。

それを今度はハリーが拾った、ジニーの物(実際は違ったが)と知っていたので最初は返そうとしたが、彼も日記と話せると知ってから返すのが惜しくなった。

 

「…日記は、ロンの兄弟の記憶…と言っているのか?」

 

「そ、その筈だけど…」

 

日記との会話は、本に文字を書き込む事で出来るらしい。

ハリーはロンの兄弟の記憶と言っているが、ロンはこれを母親のお古だと言っている。

物は試しだ、俺はどちらが真実なのか試すことにした。

 

《むせる》

 

何故か脳裏に浮かんだ言葉を書き込んで見る、するとインクが滲み出るように不気味な文字が浮かび上がって来た。

 

《はじめまして》

 

それはただの挨拶であった、だが俺には分かった、この言葉の裏には途方もない悪意が隠されていることを。

その悪意に気づかれぬよう、丁重な言い方でその名を訪ねる。

 

《貴方は誰でしょうか》

 

《僕はトム・M・リドルです。貴方の名前は?》

 

その答えにハリーは目を見開き驚愕する、どうやらロンの答えが合っていたらしい。

俺はその問いに答えることなく日記を閉じた。

つまりはそういう事だ、この日記こそがこの事件に深く関わっていたのだ!

でなければ何故日記が嘘をついたのかの説明が付かない!

 

「…あ、あの…返してほしいんですが…」

 

「ああ、…先生に見てもらってからな」

 

「!! そんな! 返して! 返してよ!」

 

ジニーは死にそうな顔をして叫んでいるが当たり前だ、こいつらの体験から仮定するとこの日記は所有者に異常な執着心を抱かせるのだろう、目の前の彼女を見れば一目瞭然だ。

そのような危険物質をこのまま放っておくわけにはいかない、継承者と関係無かったとしても教員に一度見せるべきだ。

最初から全ては見つかっていたのだ、その真実に俺は絶望していた。

俺が最初から気づいていれば…そんな事を考えずにはいられなかった。

 

 

シュー…シュー…

 

 

「…!」

 

その時俺の体に尋常ではない寒気と殺意が打ち付けられた、振り向くと目の前には青白い、いやまるで死体のような顔色となり、人間とは思えない声を喉から絞り出すジニーがいた。

その声はまるで…蛇の唸り声の様であった。

 

「ジ、ジニー? 一体どうしたんだい?」

 

彼女を心配するロン、その隣のハリーは顔を青くし、耳を抑えながら脂汗を流し震えあがっている。

そうだ、ハリーは聞いてしまったのだ、ジニー…のような何かが何を言ったのかを。

 

「…ハリー、…今、ヤツは何と言った」

 

「…こ、殺せ、殺せって…!」

 

地獄の底から鳴り響く轟音、迫りくる凄まじい圧迫感、壁の中から響き渡る蛇が這いずるような音、その不快な感覚全てが殺意に切り替わっていく。

 

「ッ!」

 

ドガアアアア!

 

二人に飛びかかり地面に押し倒す!

その一瞬の後、まさに濁流のような轟音が響き渡った!

 

「「わああああああ!」」

 

情けない悲鳴を挙げる二人、後頭部が感じる生暖かい風と、身の毛もよだつおぞましい声がそれの正体を現していた、そう、バジリスクだ。

空気さえ塗り替えるほどの殺意の中、俺は全てを理解した、継承者は人では無かったのだ、あの日記が継承者だったのだという真実に。

 

「どどどどうするの!?」

 

「そんな事言ったって!」

 

パニックになる二人とは対照的に俺は冷静だった。

確かにその殺意は凄まじいものだ、だがこの程度なら毎日のように晒されて慣れてしまった。

土煙の中、息を整え何をすべきなのか思考する…

 

アグアメンティ(水よ)インセンディオ(燃えよ)

二人とも目を開けろ! すぐにだ!」

 

現れた水に炎をぶつけ煙幕を創り出す、二人は戸惑いつつも目を開けた。

バジリスクの目を見れば死ぬ、間接的なら石化する、なら見えなければ何も起こらないという事だ。

 

「ついてこい!」

 

いまだ腰が抜けているこいつらの腕を掴み引っ張っていく、煙幕の中にはバジリスクの影だけが映り込みその目を見る事は望んでも不可能だ。

 

「ど、どうするの! 作戦でもあるの!?」

 

「ある、だからついてこ―――」

 

バジリスクは彼らが走る音に反応し、煙幕から這いずり出ようとしてきた。

通常蛇にはピット器官という物が発達しているがバジリスクは例外である、この生物はその代わりに視覚、聴覚、嗅覚が発達しているのだ。

キリコがもう一度煙幕をはろうとした時であった!

 

『!???!!?!!??』

 

「臭あっ!」

 

突然彼らを激臭の大旋風が襲った!

余りの酷さにハリー達はおろか毒蛇の王でさえのたうち回り、追跡どころでは無くなっている!

 

「誰! 何今の!」

 

「糞爆弾だよ…うええええ」

 

「何でそんな物を!」

 

「兄ちゃん達が「継承者の鼻も蛇みたいにしてやれ」ってくれたんだ!」

 

「助かった!」

 

この場合の兄ちゃんとは間違いなくフレッド&ジョージである、そして糞爆弾とは彼らも愛用する悪戯専門店の定番商品だ!

 

糞にまみれ悲痛な叫びを浮かべるバジリスクをしり目に三人は走った!

一体キリコはどこへ行こうとしているのか、どうやってこの毒蛇の王を倒そうというのか。

二人にはさっぱり分からなかった、だがキリコを信じて走った!

そして辿り着いた場所は―――図書館ッ!

 

「こ、ここでどうするの!?」

 

図書館へ全力疾走するキリコ、彼はその速度を緩めずに閲覧禁止の棚、そしてその中の一室に飛び込んだ!

 

「ここって確か…!」

 

ハリーは、いやここの三人は一年前この部屋を訪れていた。

そう、かつて賢者の石、それを隠した物…″みぞの鏡″を安置していた空き教室だ!

 

「ハリー、ロン、そこの机をドアの前にばら撒け!」

 

「え!? こういうのって普通バリケードを組むとかじゃないの!?」

 

「そうだよ! それにどこのパイプから現れるかも分からないんだよ!?」

 

「ここには無い、入口はあの扉だけだ! 早く作れ!」

 

キリコにせかされ二人は疑問を感じつつも急いで机をばら撒き始めた、それにキリコは一つ一つ呪文を掛けていく。

キリコは″罠″を張っていたのだ、そしてそれを確実に命中させるため入口が一つしかないこの部屋を選んだのだ!

 

「端でしゃがんで耳を塞ぐんだ、急げ!」

 

指示を受けた二人は部屋の隅でしゃがみ込む、キリコもまた襲来に備え瞼を閉じ意識を耳に集中させる…

 

………ドガアアア!

 

打ち壊された扉が封じられた殺意を開放する。

しかしその殺意はキリコの撃鉄を起こし、杖を叩きつけトリッガーを引かせてしまったっ!

 

「エクスルゲーレッ! -爆弾作動!」

 

キリコ・キュービィーが全力で爆破魔法を放った場合、小さめのトロールなら完全に消し飛ぶ、そして今回地雷化させた机の数は計30個。

即ち…

 

『ギャオオオオオオオ!』

 

「うわあああああああ!」

 

ホグワーツ創設以来最大の爆発がバジリスクの顔面に直撃!

そしてその前代未聞の大爆発はハリー達も教室も纏めて吹っ飛ばした!

 

 

………

 

 

「一体何事ですか…ッ!?」

 

瓦礫の山から何とか這いずり出たころ、マクゴナガルが唖然とした顔で教室…だった場所に入って来た。

ハリーとロンを引っ張り出し状況を確認すると、壁も天井も崩れ去り、隙間から美しい夕日が差し込んでいた。

 

「一体どういう事か説明しなさいキリコ・キュービィー!」

 

数か所打撲がある以外特に傷は見当たらなかったが、念のためハリーとロンに治癒魔法を掛けながら彼女は説明を求めて来た。

 

「バジリスクに襲われたので対処しました」

 

「!?」

 

彼女はまた驚愕していた、まあ当然か。

しかしバジリスクの死体が見当たらないあたり、恐らくまだ生きているのだろう、撃退は出来たようだが…

跡形も無く消し飛んだというのは都合が良すぎるだろう、そうしてる内に二人が飛び起きた。

 

「…! 先生! バジリスクに襲われて、それでここに逃げてきて…」

 

「分かっています、ですが余りにも危険な事です!

状況が状況ですから教室を吹き飛ばしたのは咎めません、しかし―――」

 

「そ、そうだ! ジニーは!?」

 

「落ち着きなさいロン・ウィーズリー、ジニー・ウィーズリーがどうかしたのですか?」

 

「ジニーが継承者だった…んじゃなくて、日記です! 日記がジニーを!」

 

「…先生、つまりこういう事です」

 

まともに説明出来ていなかったので、ことのあらましを彼女に説明した。

それを聞いた彼女は更なる驚愕に包まれていた。

 

「ま、まさかそんな事が…

…それで、ジニー・ウィーズリーは何処に居るのですか?」

 

ジニー・ウィーズリーは何処にもおらず失踪してしまっていた、ただ廊下に彼女の荷物が血まみれになって散乱しているのが見つかっただけだった。

それを知った俺達は理解したのだ。

ジニー・ウィーズリーがさらわれたのだと…

 




誰かが走らねば、部屋が開かぬとするなら、
静脈を走る折れた針となろう。
記憶の中にしか未来は来ないものなら、
己の血のちからに身を任せよう。
それぞれの運命を担い戦士たちが昂然と杖を掲げる。
次回「横断」。
放たれた光は、記憶を消すか。
自らに落ちるか。



オリジナル呪文
エクスルゲーレ『爆弾作動』
エクスインテラ『爆弾と成れ』で爆弾化した物質を爆破させる魔法。

まさかのバジリスク襲来5回目
ちなみにトムが嘘を言っていた理由は次々回明らかにします。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。