そしてSSだと高確率でやることが無くなるパートでもあります。
…今の内にプロット組まなきゃ…
俺が目を覚ましたのはあれから三日後であった。
試合はと言うと、吸魂鬼の乱入により試合は終了、その時点で勝っていたハッフルパフの勝利となった。
だが俺より早く目を覚ましたハリーの不幸はそれだけでは終わらなかった、吸魂鬼に襲われ落下した際、あいつの愛用していたニンバス2000が″暴れ柳″に突っ込んでしまいズタズタに引き裂かれてしまったのだ。
ちなみに俺のインファーミス1024も暴れ柳に突っ込んでいたのだが、ズタズタになるどころか柳の枝を一本へし折って地面に突き刺さっていたらしい、しかも無傷である。
その結果ハリーはすっかり意気消沈、ダンブルドアはこの一件に対し大激怒、吸魂鬼と魔法省に対し相当言い含めたらしいが…それでも効果があるかは当てにならない。
ならば身に着けておく必要があるだろう、吸魂鬼に抵抗できる唯一の呪文、″守護霊″を―――
「
と、意気込んだのは良いのだが、成果は思わしくない。
何と言うべきか、簡単に習得できないのは分かっている、だがあまりにも手ごたえが感じられないのだ。
守護霊の呪文を使うためには″幸福な感情″を強く思い出す必要がある、そして呪文の発音も杖の振り方も全て知っている。
だというのに白い光の欠片も出ないのだ、本当に全く出ない、マッチの煙ほども出ない。
正直言って、これ以上独学でやっても永遠に習得できない気がする…どうしたものか。
*
そんな困難にぶち当たった俺に光明が差したのはクリスマス休暇の少し前のことである。
「ハリーあなた最近何処へ行ってるの?」
こいつらは最近、ヒッポグリフの無罪を勝ち取るため図書館に籠り、過去の判例をあさり続けている。
無論ハリーもその仲間なのだが最近顔を出していないらしく、そのためハーマイオニーは不満げだ。
「ルーピン先生の所だよ」
「ルーピン先生? 一体何しに行ってるの?」
「守護霊の呪文を習ってるんだ」
あのコンパートメントで最後に見えた白い光を思い出す。
やはりあの光は守護霊だったらしい。
「守護霊の呪文? それ6年生で習うよう呪文よ?」
「うん、でもまた皆に迷惑かけるのも嫌だから…それにそろそろ習得出来そうなんだ」
ハリーは軽く頭を掻きながら言ったが、その顔は少し自慢げだ。
例の試合から数週間しか経っていない筈、それでもう習得しかけているとは…
どうやらあいつはかなり…いや今までが酷過ぎただけだが、かなり優秀のようだ、こうなったら手段は一つ。
手段を選ぶ必要も理由も無い、既に会得しているヤツから直接学ぶのがもっとも理想的だろう。
「あれ? キリコどこへ行くの?」
「ルーピン教授の元へだ」
「何で?」
「守護霊の呪文を教えてもらうよう頼んでくる」
「えっキリコも?」
ルーピンに頼むために席を立った。
戻りたくも、思い出したくも無い地獄、しかしそれはヤツらのせいで何回も叩き落とされる羽目になった。
もううんざりだ、いい加減にしてほしい。
俺は疲れた心を守るためにも、教員室へ足を進めるのであった。
*
「
ハリーの目の前にある箱を開けると、そこから吸魂鬼…に化けたボガートが現れる。
それに割り込み守護霊の呪文を唱えるが、杖の先端からは小さな光の玉が出てくるだけであった。
「………」
「…上手くいかないね」
吸魂鬼を箱の中に閉じ込めながらルーピンは頭を抱える、直接ならっても尚守護霊呪文の習得は難航していた。
「一人も二人も変わらないさ」ということで特訓してもらえるようになったのは良かったのだが、肝心の習得が一向に進まない。
「…何か原因があるのでしょうか」
「イメージがハッキリ出来てないんじゃない?」
「いや、それだけならもう少し光が出るはずなんだけど。
うーん………」
尚ハリーは先ほど習得完了したばかりだ、もっともまだ実体を成していないが…俺と比べれば雲泥の差。
ここまで酷いと何か根本的原因があるとしか思えない、俺と同じことを考えたのかルーピンも首を傾げながら考え出す。
「もしかしたら…」
「心当たりが?」
しかしルーピンは何故か言うのを少し渋っている、一体どんな理由が浮かんだのだろうか。
「…君は最初吸魂鬼に会った時、一日中寝込んでいたね?」
「はい」
「さらに以前のクィディッチで感情を吸われた時は、三日間も寝込んでいたね?」
「…それが何か?」
「…それは普通あり得ないことなんだ」
あり得ない? どういう事だ?
吸魂鬼に感情を吸われればどんな人間でも影響を受けるのが普通のはずだが。
「え? そうなんですか?」
「ああ、吸魂鬼に感情を吸われれば影響が出る、だがそれは一時的な物で、魂を抜かれない限り長くても数時間で目覚める筈なんだ。
…でも君は三日間も寝込んだ、さらに感情を吸われず、目の前で会っただけで一日寝込むなんてあり得ない」
思いもよらぬ事態に目が丸くなる、それが意味するのは俺が吸魂鬼に対し人並み外れて弱いということ。
だが何故そこまで吸魂鬼の影響を受けるのだろうか…、そこで俺はようやく気付いた。
「…吸魂鬼の影響は、過去に大きなトラウマがあるほど大きくなる」
「そうだ、ここからは私の推測だが…君の心の中は、幸運よりも不幸な思いでのウエイトが大きすぎるんだ。
だからあそこまで影響を受けるし、本来あり得ないけど守護霊を出す事にも影響があるんじゃないか?」
推測どころでは無い、むしろ大当たりだ。
かつての思い出を思い出そうにも、ほとんどロクなのが無い、というか無理に思い出そうとすると発作まで起こる、流石に今はもう落ち着いているが。
…ということはまさか俺は守護霊を出せないのか? そんな俺の心境を知ってか知らずかルーピンは優しく静かに語りだす。
「…けど、守護霊の光は出ている、不可能ではない筈だよ。
君がどんな不幸を背負っているかは聞かない、…無理に聞かれるのは誰だって嫌だからね」
ヤツが語る言葉は、俺やハリーに向けてだけではなく自分自身に言っている様にも聞こえた。
「それに肝心なのは不幸の数でも、幸せの数でもない。
守護霊を出すのに大事なのは、『自分がそれをどれだけ幸せに考えている』かだ、例えそれが悲劇に見えても君にとって幸せならば…」
ルーピンの言葉を受け、俺は今一度自らの記憶を辿ってみる。
地獄、地獄、そのまた地獄。
その中で俺が幸せな思い出と考えられる出来事。
それは―――
「…イメージできたかい?」
「………」
あの時の映像を、気持ちを、忘れることの、忘れてはならないそれを鮮明に思い出す。
返事はしない、ただ記憶に没頭し首を頷かせるだけだ。
「ではいくよ…!」
開けられた箱から襲い掛かる偽りの悪夢、それを見据え、かつての光景を目に焼き付けながら呪文を唱える―――!
「エクスペクト・パトローナム! -守護霊よ来たれ!」
杖から発せられた光は徐々に強くなり、数秒後、激しい本流となり放たれた。
それは実体を成していなかったが吸魂鬼を払うには十分、吸魂鬼は光に弾き飛ばされながら箱の中へ押し込まれていった。
「やった!」
「よし! 成功だ!」
成功の喜びもつかの間、力が抜け一気に襲い掛かって来た疲労感でその場に座り込む。
「君たちの年齢でここまでできるのは素晴らしい事だ、誰でも出来る事じゃ無い。
けれどもまだまだ、展開速度が遅すぎる。
吸魂鬼を追い払うにはスピードが大事だ、幸福を吸い取られればそれだけ守護霊を出すのは難しくなる。
特にキリコ君は吸魂鬼の影響をハリー以上に受けやすい、視界に入った瞬間に出せなければ敗北が決定するだろう
…まあとにかく今日はお疲れ様、ゆっくり休みたまえ」
かくして俺とハリーの守護霊呪文の特訓は、一先ず幕を閉じたのであった。
*
俺とハリーが守護霊の呪文を何とか習得してから数週間、ホグワーツはクリスマス休暇に入った。
いつもなら殆どの生徒が家に帰るところだが今年は帰らない人数の方が多いように見える、それはシリウス・ブラックのせいなのだろう。
普通の家で脱獄囚の恐怖に脅えるよりはホグワーツの方が安全、ということだ。
だからなのだろう、ノクターン横丁はともかく普段は賑わいを見せるダイアゴン横丁は雪が無造作に積り、聞こえる風の鋭い音が人気の無さを表している。
そんな今年の休暇中、俺は珍しく家に帰省していた、といっても″漏れ鍋″に宿泊しているのだが。
それも只泊まっている訳ではなく、アルバイトで資金を稼ぎながら泊まらせてもらっているのだ。
別に学費が困窮しているわけでは無い、むしろ魔法界の通貨は人間界と比べて安いので比較的余裕はある方だろう。
このアルバイトの目的は資金稼ぎのためである、…武器調達のための。
今はまだ予定の段階だが、これからAT用に多くの武器を必要とするだろう、問題としては人間サイズではATが使えない点だが…
これについても対応策は考えてある、″検知不可能拡大呪文″と″肥大化呪文″の二つを駆使する方法だ。
まず肥大化呪文で武器をATサイズまで巨大化させる、それを検知不可能拡大呪文で内部を巨大化させたバックサック当たりに保管しておけば、状況に応じて様々な武器を使用可能になるだろう。
が、それだけの種類を買い揃えようとしたらアホみたいな金が掛かる、なので迫りくる人食い株と闘いながらも命がけで金を稼いでいるのだ、尚一人暮らしの期間が長かったので自炊は一通りできる。
「キヒヒヒ、いらっしゃ…おやぁ! 久しぶりですねぇ!」
立てつけが悪いプランパンドールの扉を開くと、例の胡散臭い武器商人がいやらしい笑みを浮かべながらこちらにすり寄って来た。
「…で? またアレですか?」
「ああ…」
店主の会話を適当にあしらいながら螺旋階段を下りていくと、あの綺麗に整頓された武器庫が姿を現した。
今回の目的は簡潔に言うと武器ではなく″罠″である。
そもそもは叫びの館にシリウス・ブラックが居るのでは? という訳でヤツが侵入してきた時の為に幾つか罠が欲しかったからだ。
まあ俺の勘違いだったとしても、それはそれで侵入者避けにはなるので、買って損は無いだろう、ということである。
C4(赤外線対応)、クレイモア、地雷…
しかしなかなか手頃な罠は見つからない、いくら凶悪犯罪者といえど殺してしまえばこちらが罪に問われる、あまりに過激な物は使えない。
…ここは原始的な方法にしてみるか、そう考え手に取ったのはスタングレネードであった。
「ん? それをどうするんですかぃ?」
「糸を使った罠にする」
要するに床に張った糸や、俺の使う扉以外を開いた時にピンが抜けるようにするという簡単な罠だ、糸はワイヤーを使えば大丈夫だろう。
棚からグレネードを二、三個取り出して店主に渡した。
「はぃはぃ、スタングレネード三個ですねぃ。
そういえばぁ、ブラックホークの調子はどうですかぃ? 何人殺りましたか」
「0だ」
「ありゃ、そうですか…まあその方が良いっちゃ良いですけど…あ、良ければメンテしましょうか? タダで」
銃の手入れというのは非常に重要だ、俺もこまめにメンテナンスしてはいるが専門家に見てもらえればそれが一番好ましい。
「良いのか?」
「えぇ、お得意様ですからぁ」
「なら頼む」
ここは好意に甘えておくとしよう、店主が拳銃を手入れしている間に他の武器を品定めしておく。
…そういえば、何故こいつはこれ程の武器を仕入れる事ができるのだろうか、一つ尋ねてみる事にした。
「…少し良いか?」
「はぃ? 何でしょ」
「お前は何故、これ程の武器を仕入れられる?」
「ああそれですかぁ? ククク…」
店主は随分ともったいぶった含み笑いをし、ギョロついた眼光をこちらに向けた。
「魔法省に″お得意様″がいましてねぇ、そのお方のお蔭で仕入れやすくなってるんですよぉ。
…はい、メンテできましたよ?」
「…ああ、感謝する」
光り輝く銃身を受け取り、その出来栄えに満足しながら店を後にした。
俺以外に兵器を使っているヤツが居るとは…
いや、そもそもあの商売が成り立っている時点で俺以外に客がいるのは当たり前か。
「…行ったか?」
「えぇ、でもお客さん何で急に隠れたんですか?」
「…トラウマなんですよ」
「あぁ、もしかしてぇ、お客さんの下半身を吹っ飛ばしたのって」
「そうですよ…そんな事より注文の品は?」
「まぁ…やってはみましたけど、何なんですかぁコレ…とても危なっかしいですしぃ」
「私も知りません、雇い主しか知らないと思いますよ」
「そうですかぁ…まあ雇い主様にはお願いしますよぉ」
*
クリスマス休暇が終わり、新たな日々が始まったころ、ホグワーツに二つの衝撃が走った。
一つ目はハリーが世界最速の箒″ファイアボルト″を手に入れた事だ、尚値段は500ガリオンである。
どうやってこの箒を手に入れたか、この箒は大丈夫なのかと色々あったが、結果としてハリーが世界最強の力を手に入れたことには変わりない、その力は後行われたグリフィンドール対レイブンクロー戦で、全寮の選手達が絶望するほどの見せつけてくれた。
そしてもう一つは、シリウス・ブラックが再び現れたというものだった。
それもグリフィンドール寮の中に侵入し、そこに居合わせてしまった生徒の一人、ロンを殺しかけたのだ。
だが何故ブラックがパスワードを知っていたのか…その原因はロングボトムが合言葉を書いたメモを落としていたという、何とも簡単な、そして深刻なミスが原因であった。
尚これでロングボトムはしばらくパスワードを教えてもらえなくなったらしい。
…だがおかしい。
何故シリウス・ブラックは誰も殺さず、しかもロンだけに襲い掛かったのか…
俺がこの答えを知るのは、意外すぎるほどにすぐのことだった。
キリコ用吸魂鬼マニュアル
50m内 急激な体温低下 対処可能領域
20m内 頭痛、吐き気、眩暈、心臓痛 対処可能領域
10m内 意識の混濁、全身の脱力 対処困難領域
5m内 意識消失、最低1日卒倒 対処不能領域
1m内 意識消失、最低3日卒倒 対処不能領域
つまり50~10mまでに対応できないとチェックメイトです。