【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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今更だけど全10話って思ったより尺短いんですね…
いまだ話数配分が下手だな…今後の課題です。


第三十一話 「囚われざる者(Aパート)」

極限の緊張が場を支配していた。

それは怒りか、憎しみか、はたまた悲しみか。

しかしそれは俺が現れたことで驚愕へと転じた。

 

「キ、キリコ!?」

 

要る筈の無かった奴らがいることに、思わず苦虫を噛み潰す。

そう、本来ならここに居るのは俺とブラックだけだったのだ。

 

忍びの地図を使いピーター・ペティグリューを見つけたのは今朝のことだった。

そして急いで練った計画。

 

クルックシャンクスを通じてハグリッドに偽の手紙を出し、小屋から追い出す。

招待されていたハリー達は外のかぼちゃを爆破することで誘導。

その隙にブラックがペティグリューを叫びの館まで連れ去る。

ハリー達が追ってきた場合に備え、暴れ柳に″元気になる呪文″を掛けておく…という計画だった。

 

しかし暴れ柳の突破方法を知っていたルーピンの出現により、事態は混濁した方向へと進んでいた。

 

「キュービィー! 何故ハリーを止めた!?」

 

憎しみを込めたブラックの叫びは、俺とブラックが協力関係にあったという事実を伝えている。

 

「な、何でブラックがキリコのことを…?」

 

「決まっている、こやつもまた卑しい畜生の仲間だったということだ」

 

スネイプは杖をブラックに向けたまま、視線でこちらを警戒する。

しかしそれに激しく反論しだすブラックが事態を更に混乱させてゆく。

 

「違うぞスニベルス! 彼も私も何もしていない!」

「この期に及んで言い訳とは、やはり貴様は最低の畜生だな」

「スネイプ! キリコまで疑うのか!?」

「貴様は黙っていろポッター! それともブラックを庇った罪でアズカバンに行きたいのか!?」

「ハリーを巻き込む気か!? ならば容赦は―――」

 

この状況、どうするべきか…と考えた時、叫びが館に響いた。

 

「ああああもぉぉぉう! うるさぁぁぁぁい!!」

『!?』

 

キニスの怒声に、全員一発で黙り混む。

そしてこちらに振り向き、怒りながら迫ってきた。

 

「キリコ! 一体どういうこと!? 説明して!」

 

全員の注目が俺に集まる、どこから説明すべきか少し悩んだが、とりあえず結論から言うことにした。

 

「ピーター・ペティグリューは生きている」

「………はえ?」

「…何かと思ったらあの畜生と同じことか、やはり貴様もアズカバンに―――」

 

そこまで良いかけた所でスネイプの目線は俺の手元に釘付けになった。

 

「それは…」

「忍びの地図!? 君が持っていたのか!?」

「…″我、良からぬ事を望む者なり″」

 

地図を見て驚くルーピンを他所に、起動させた地図をスネイプに投げ渡す。

スネイプはまじまじと地図を眺めていたが、途中でそれは心からの驚愕へと変わった。

 

「これは、我輩を陥れるための道具か何かね?」

「…スネイプ、それは間違いなく本物だ、私が保証しよう」

 

スネイプはルーピンを疑っているように見つめるが、先程のまでとは違い話を聞こうと耳を傾けている。

 

「それはかつて私やシリウスが作り上げた物だ、間違っている筈が無い」

「では貴様はウィーズリーがピーター・ペティグリューであると言うのかね?

地図ではそう書かれているが…」

「いいやここにはもう一人…いや! もう一匹いる!」

 

杖をロンが大切に握っている鼠に向けながら叫ぶ、しかしロンは震えながらもスキャバーズを庇おうと声を絞り出す。

 

「い、一匹って…まさかスキャバーズが…?」

「そうだ! ヤツは鼠の動物もどきだったんだ!」

 

ブラックの怒声に反応し、脱出しようと激しく暴れ狂うスキャバーズ。

 

「そんなことって! スキャバーズは僕の家族だ! ペティグリューなんてヤツの筈が…」

「12年も生きる鼠がいるか!?」

 

涙を流しながらも必死にスキャバーズを庇おうとするロンの姿は、もはや悲壮感さえ漂っている。

…すでに薄々感ずいてはいるのだろう。

 

「第一鼠なんて何百匹もいるよ…? 何でスキャバーズなのさ…?」

 

もう誰も杖を突き合わせていない、その敵意は全てペティグリューに向いている。

そして杖を向けていたスネイプが、それに気づき呟いた。

 

「…指が」

「そうだ! こいつは指を自ら切り落とし、鼠に変身して下水道へ逃げ去ったんだ! 私に罪を被せてな!」

 

狂ったように叫ぶブラック。

スネイプの目付きもまた、ブラックに向けていた以上に憎しみを込めている。

 

「ロン、鼠を渡してほしい、大丈夫、その子が只の鼠だったなら何も起こらない」

 

怯えるロンを刺激しないよう、できるだけ優しい声で説得するルーピン。

その説得に対ししぶしぶといった様に鼠を渡そうとする…が。

 

「スキャバーズ!」

「しまった!」

 

ペティグリューはロンの手から滑り落ち、そのまま逃げ出してしまった!

 

ステュービファ(失神せ)―――」

「待てリーマス! 放っておけ!」

 

まさかの制止に驚愕するルーピンは、信じられないという顔でシリウスを見つめる。

 

「何を考えているんだシリウス!? 奴に逃げられたら何もかも終わりなんだぞ!?」

セクタムセンプ(切断せ)―――!?」

 

何かの呪文を唱えようとしたスネイプに、杖を突きつけ制止させる。

 

「貴様! 何のつもりだ!」

「すぐ分か―――」

 

ドゴオオオン!!

 

スネイプが只ならざる殺意を向けた時上から響き渡る爆発音。

そして崩れ落ちる天井の中から、ちょうど俺の手にペティグリューが落ちてきた。

 

「…キュービィー、貴様まさか」

「察しの通りです」

「…キリコ、な、何をしたの…?」

「彼はもしもペティグリューが逃げた時のために、屋敷中に罠を張ってくれたんだ」

 

ブラックの説明に頭を抱えるスネイプ。

やはり張っておいて正解だったな、願わくば残りの罠がバレないとだいぶ嬉しい。

そして…時は来た。

 

「キュービィー君、逃がさないでくれよ…!」

 

俺が空に投げた鼠に向かって、スロー再生の様にゆっくりと、確実に光が迫る。

一瞬視界が消えた次の瞬間そこに立っていたのは、薄汚い小柄な、まさに鼠のような男だった。

 

 

 

 

「や、やあリーマス、シリウス、…ひ、久しぶりだね…」

 

旧友との再開を辿々しく喜ぶペティグリューに浴びせられる視線は懐かしさでも代えがたい友情でもない。

ただ、憎悪と侮辱だけがヤツの全身に突き刺さっていた。

 

「やっと会えたな、ピーター・ペティグリュー!」

 

歓喜にうち震えるブラックを見たペティグリューは、大袈裟に震える演技をしている。

 

「ひぃぃ! た、助けてくれ! 私は悪くない!」

「この期に及んでまだ言うのか!?」

「話を聞いてくれ! 私は逃げていただけなんだ、シリウスがいずれ脱獄するのは分かっていた。

彼は私を殺しに来るだろう、そう考えると恐ろしくてしょうがなかったんだ!」

 

怒濤の言い訳に対し、俺は呆れるだけだ。

それが言い訳だと分かりきっているブラックは笑いながら叫ぶ。

 

「私が? 違うな貴様が恐れていたのは私ではない、アズカバンで囚人達が言っていたぞ、『主の死の切っ掛けを作った奴を許しはしない』とな!」

「そんなこと…リーマス! 君は信じてくれるよな…?」

「そうだね、もし君の言っていることが真実だったら我々が全力で保護したさ。

…だから分からない、何故君が12年も鼠になっていたのかね」

 

ルーピンの言っていることは最もだ、反論の仕様が無くなったペティグリューはさらに言い訳を重ねる。

 

「シリウスはあの人のスパイだったんだ…だから死喰い人の残党に―――」

「貴様今何と言った!?」

 

シリウスに責任を擦り付けようとするが、それはどうやら逆鱗に触れたようだ。

 

「私が友を裏切っただと? ふざけるな! そんなことをするくらいなら私は死ぬ!」

 

ペティグリューを秘密の守人にしたのが間違いだったと怒り狂うブラックを前にぶつぶつと呟くペティグリューだったが、その目はいまだ油断無く逃走の隙を伺っている。

 

「…リーマス」

「ああ分かっている、共にこいつを殺そう」

「う、嘘だ…き、君なら分かってくれるだろう?」

 

あろうことかロンにすがり付き助けを懇願しだすペティグリュー。

しかしロンは汚物を見るような視線をするだけだ。

 

「お前のような奴と一緒に暮らしていたなんて…」

「お嬢さん、君からも説得してくれ…」

 

ハーマイオニーにまですがり付くが、彼女は軽蔑を向けながら下がっていく。

 

「だ、誰か…君は私の話を聞いてくれるよね…?」

「あんたみたいなクズ見たこともないよ」

 

無慈悲に切り捨てるキニスを見て、今度はハリーに助けを求める。

 

「ハリー、君は本当にジェームズそっくりだ…きっとジェームズやリリーなら許してくれる筈―――」

「ハリーに話しかけるとは何様のつも―――」

セクタムセンプラ(切断せよ)!!」

「ぎゃああああああ!!」

 

激昂するブラックを遮りスネイプが放った呪文は、ペティグリューの耳を切り裂きそこからは大量の血が溢れだす。

 

「貴様よくもリリーを言い訳に使ったな!? いいだろうそんなに追われるのが恐ろしいなら貴様に永遠の安息を与えてやろうではないか」

「ハリー、ジェームズならきっと分かってくれた、きっと許してくれた…!」

 

ペティグリューの首を掴みながら、額に杖を突きつけるスネイプ。

そして他の面々も杖を首元に突きつける。

しかしスネイプの杖を無理矢理ハリーが奪い取った。

 

「ポッター…貴様も父親と同じ場所に行きたいようだな」

「ゆ、許してくれるのか!? やはり君はジェームズの息子だ、何てやさ―――」

「お前なんかのためじゃない」

 

涙を流しながらお礼を言おうとするペティグリューだったが、ハリーはそれを遮った。

 

「僕の父さんは、お前なんかのために親友が殺人者になるなんて望んじゃいないからだ」

 

 

 

 

最終的にペティグリューは引き渡すことになった、吸魂鬼に直接。

これはスネイプの強い要望を呑んだ結果である、まあ当然の結果だろう。

張りつめた空気はすでに消え失せ、穏やかな光が俺達を照らしていた。

 

―――光?

 

脳裏をよぎった最悪の予感を確かめるため、崩れ落ちた天井を見上げる。

そこには…

立ち込めていた雲の切れ間から、月が俺達を嘲笑っていた。

 

(まずい…!)

 

ルーピンはすでに唸り声を上げながら、異形へと変貌しつつある!

 

セクタムセンプラ(切断せよ)!」

 

スネイプが切断呪文を撃ち込むが、分厚い人狼の皮膚は簡単には裂けない。

人狼は標的をこちらに切り替え、牙を剥き出しにして飛びかかる!

 

「シリウス!」

 

ハリーが悲鳴の様な叫びを上げる、ブラックは黒い犬に変身しそのまま人狼を向こうの部屋まで押し出した…が、これが参事の始まりとなった。

 

「目を閉じろ!」

 

「え?」

 

次の瞬間!

 

「うわあああ!?」

 

ワイヤートラップに引っ掛かったブラックと人狼が、スタングレネードの大閃光を引き起こしてしまった!

 

「ギャオオオン!!」

 

目を潰され暴れ狂う人狼、それを止めようとシリウスは必死でしがみつく。

だが人狼と動物のパワーには大きな差がある、シリウスはいとも容易く湖側の窓から突き落とされてしまった!…その時!

 

ドゴオオオン!!

 

「今度は何だ!?」

 

窓の外側に仕掛けておいたクレイモアが作動してしまった!

本来は怪我を負わせて逃走を困難にする物だったのだが…

その時ハリーが絶望しながら叫んだ。

 

「ペティグリューが逃げた!」

 

暴れ狂う人狼が屋敷の罠を次々と作動させていく中、ハリーが指さした方向を見ると、ペティグリューが鼠へと変身しダクトの中へ逃げ込んでいくのが見えた。

しかもどうやら、罠を器用に避け続けているらしい、畜生に落ちてでも生き残ってきたその執念はだてでは無いようだ。

しかしこのままヤツを逃がせば、ブラックの冤罪は証明できなくなってしまう!

その危機感のまま俺は走り出した!

 

「玄関への通路には罠は無い! 逃げろ!」

「でもシリウスが!」

「玄関から回り込め! 俺はヤツを追う!」

「え!? どうやって―――」

 

ガシャァン!!

 

ハーマイオニーの悲鳴も気にせず、身を守りながら窓をぶち破る!

全身にクレイモアの洗礼を浴びつつ3階から地上まで叩き落とされ…ようとした時、上から落ちて来た黒い影が俺を受け止めた。

 

「貴様何をしている!?」

 

スネイプが何らかの飛行呪文で俺を受け止めてくれたらしい、全身に鋭い痛みを感じながらもすぐさま立ち上がる。

 

「ペティグリューはこの近くです」

「本当か!? しかしこの暗闇では…」

 

罠設置の都合上屋敷の構造は把握している、あのダクトから逃げたのなら必ずこの近くに出るはずだ。

そして方向さえ分かっていれば探す手段は存在する…!

 

「目を閉じろ! ルーモス・ソレム(太陽の光)!」

 

初めてペティグリューを見つけた時のように暗闇を太陽の光で焼き払う! そして視界が白と黒に二分された!

こうなれば簡単だ! すぐさま影を探し出す!

そう、ここが人混みなどだったら捜索は困難極まっただろう、だがここで動くものはそう多くない。

しかもサイズも分かり切っている、逃走目的なのだから動き方も真っ直ぐ!

何よりキリコはシーカー! 小さく素早い物を探す事には慣れている!

 

目を凝らし森の中を見つめる…あれだ! 真っ直ぐ動く小さな影!

 

ステューブレイト(失神弾頭)!」

 

撃ち込まれる失神弾頭、しかし!

 

ガキィッン!

 

(クソッ!)

 

ペティグリューを貫く筈のそれは、森の木々に阻まれ軌道を逸らしてしまった! これでは当たらない! だがここにはもう一人居る!

 

セクタムセンプラ(切断魔法)!」

 

スネイプの放つ切断魔法が邪魔な木々をなぎ倒す!

そう、スネイプはキリコの意図に気づいていたのだ! 

あの夜の廊下でキリコの魔法を目撃していたため、キリコの意図を一瞬で理解しサポートしたのだ!

これでもう真実への道を阻むものは居ない…!

 

ステューブレイトッ(失神弾頭)!!」

 

虚構へ向けて銃弾が目にも止まらぬ速さで飛翔し、そして闇に響く悲鳴が俺達の勝利を宣言した。

 

アクシオ・ペティグリュー(ペティグリューよ、来い)

 

呼び寄せ呪文を命中させ、手元にペティグリューを引き寄せたスネイプ。

それを見た俺は思わず深いため息をついた。

 

「…館が」

 

スネイプと同じ方向を見ると、とうとう罠が連鎖反応してしまったのか叫びの館が炎に包まれ、ちょうど大爆発を起こして吹き飛んでいるあまりに酷い光景が背景にあった。

 

 ―叫びの館、火災と爆発により消滅―

 

「っ!? 身を隠せ!」

 

突然の警告にお互い暗闇の中へ溶け込む、そして崩れた屋敷の向こう、ホグワーツ湖を見ると湖が凍りついているのが見えた。

 

(…吸魂鬼)

 

何故か湖に集結している吸魂鬼だったが、その後放たれた守護霊の光によって弾き飛ばされていくのが確認できた。

…あの守護霊、…ハリーだろうか? あの中で守護霊を使えるのはヤツしかいない。

 

「一体何が起こっているのですか!? …また貴方ですかキュービィー!!」

 

ハリー達の安否を心配していると何故かマクゴナガルが青筋を立てながら現れた、…いやここまで大事になれば普通気づくか。

するとスネイプがマクゴナガルの前に鼠を突き出した。

 

「セブルス! ふざけているのですか!?」

「いえ、是非見てもらいたいことが」

 

とても良い顔をしながら鼠に呪文をぶち込むと再びペティグリューが現れた、それを見て声にならない声を上げるマクゴナガル。

 

「ピ、ピーター・ペティグリュー…!? ま、まさか…ではブラックは…!?」

「ああ…懐かしいマクゴナガル先生…!」

 

こいつまだ言い訳する気なのか。

もはやここまでいくと尊敬の念すら出てくる、スネイプは今にも殺しそうになっているが。

 

「…キュービィー、吾輩達はこのドブ鼠をまず連行する、なのでブラック共と他の連中の安否だけ確認してきてくれたまえ」

「了解しました」

「あー、それと…」

 

ハリー達を見に行こうとした時スネイプが呼び止めたが、何故か言い渋っているようである。

 

「…ペティグリュー捕縛の件、感謝する」

「…当然のことです」

 

俺はまだ知らない、セブルス・スネイプがこの時どんな思いだったかを。

そして俺とスネイプが、どれ程似ているのかも。

ペティグリューを前にした時のあの目の意味も。

だが今は喜ぶだけで良い、俺のような悲劇が一つ終わった事に。

俺は嘲笑う月に向かって嘲笑を向けるのであった。




ルーピン「私かよぉぉぉぉぉ!」
キリコ「まじごめん」
キリコ守護霊(有体)「アレ? 私の出番は…」
キリコ「無い」

以上、やっと予告通り叫びの館を葬り去れました。
いやあ、ずーとどっかブッ飛ばしたいなーと思ってはいたんですが、最初から臨界させる訳にもいかず…
これからは本格的に爆破オチが増えてきますよ! ご期待ください!
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