【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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ひゃっほう!
やっとドラゴン戦が投稿できたぜ!
連載始めた頃からこれを楽しみにしていた…
では地獄巡りをお楽しみください。


第三十六話 「検証」

設営された大型テントの中は驚くほどに静かだ、あるものは息を整え、あるものは最後の確認をし、またあるものは成功を祈っている。

 

課題の標的がドラゴンである事は恐らく誰もが知っている事だろう、ハリーや俺達が知れて他の二人が知れない道理は無い。

他の選手がどうやって挑むかまでは流石に知らないが、そんなに奇抜な策を取る者はいないと考えられる。

 

専門家がいれば対処できるレベルとはいえ、魔法生物の中でも飛び抜いて危険であることは事実なのだ。

故に危険を犯してでも目立とうとする選手はいない、多少なりとも安全を確保する筈だ。

 

しかしそんな方法で客が歓声を上げるだろうか? いや、それは無い。

意図せずして参加する羽目になってしまったが、やるからには全力でやるのが義務。

これで手を抜くのは、不正に対する不満を飲み込んだ他の選手に対しあまりに無礼だ。

 

俺は一つの光景を思い浮かべていた、あの日あの時、彼女を取り戻すためにレッドショルダーの幻影を背負ったあのバトリング。

どんな時客は湧いた? どんな時興奮した?

その記憶をトレスすれば、やるべき方法はおのずと見えてくる。

 

「おっ全員集合してるな?」

 

天幕に入ってきたのはこの大会の主催者の一人、ルード・パグマンだった。

ヤツの手が握っている紫色の袋は、うぞうぞと不気味に蠢いている。

 

「君達にはこの袋に入ってる五つの模型の内一つを取って貰う、それが君達の立ち向かう相手だ。

そして課題の内容は―――その相手を出し抜き、″金の卵″を手にすることだ!」

 

五つの模型、ハリーが見た数と合致するのでそれはドラゴンの模型で間違いないだろう。

予想通りドラゴンの撃墜でなかった事に俺は安心を覚えた、ただしそれは恐怖からではなく、予定していた戦術が使えるという確信から来たものだった。

 

「使っていいのは自分の杖だけ、他の持ち込みは禁止だ。

ではレディーファーストで」

 

恐る恐る手を入れていき、小さな悲鳴を上げ手を引っ込めてしまうデクラール。

しかしその手には生きてる様に動き回る、小さな模型が確かに握られていた。

 

「ウェールズ・グリーン普通種、競技は二番手だ。

普段は大人しいが…今回はどうかな?」

 

思わず苦笑いをするデクラールを見て、意地悪そうな笑みをうかべたパグマンはセドリックの方へ袋を向けた。

 

「スウェーデン・ショート―スナウト種、一番手だ。

美しい炎が特徴、戦う当人はそれどころじゃないだろうがな」

 

手の上で青く美しい炎を吐く模型を見たセドリックは、微妙な心境を全く隠せていない。

その笑顔は何とも形容し難いものだった。

 

「チャイニーズ・ファイヤーボール種、三番手。

三匹までは共存を認めるそうだ、最も卵に手を出さなければだが」

 

竜というより、龍に近い姿の赤いドラゴンを見たクラムは、その絶対的な自信を鼻を短く鳴らす事で表す。

次に袋から引いたのは、クラムとは対照的に自信無さげなハリーだ。

 

「ハンガリー・ホーンテール種、四番手。

この中で一番狂暴なヤツだぞ」

 

黒い鱗を持った棘棘しいドラゴンが、地獄から響く様な咆哮を上げる。

ハリーの顔色も地獄色に染まっていくのが分かった。

 

「最後だ、ぶっちゃけ引く必要は無いが…まあそれはノリだろう」

 

パグマンの軽口を聞き流しながら、袋の中にあった最後の一つを掴む。

…重い、そう感じて引っ張り出したのは銀色の鱗を持ち、そして何より他の模型より三回り程巨大なドラゴンだった。

 

「ウクライナ・アイアンベリー種、五番手。

世界最大級のドラゴン、全長18mだ」

 

全員の相手が決まった所で丁度良くダンブルドアがテントの中に入ってきた。

 

「各々準備はできたようじゃの、諸君らの無事と健闘を祈る、大砲が鳴ったら番号の順に行っ」

 

ズドンッ!

 

「………」

 

話を喰い気味に鳴り響いた大砲の轟音、一拍置いて巻き上がる観客達の歓声を聞き、肩を竦めるダンブルドアであった。

 

「…セドリック・ディゴリーからじゃ」

 

青ざめた顔をしながら歩き出すセドリック、しかしその目付きは真っ直ぐ鋭く、覚悟の重さを感じる足取りであった。

 

生憎試合を観戦する事は叶わないが、様子を伺う事はできる。

交互に巻き起こる歓声と悲鳴、それに挟まるパグマンの実況がベール一枚を挟んだ、地獄の光景を鮮明に伝えている、

 

『おぉ! 行けるか!? どうだ!? いや不味い! これは大ピンチ―――危ない! 何とか切り抜けた!』

 

それ以降も似たような解説が挟まっているということは、恐らくドラゴンの隙をついて卵を奪い取ろうとしているのだろう。

 

それから数分後に聞こえてきた大歓声、どうやら卵を取る事に成功したらしい。

続けて向かっていくデクラールは首からぶら下げたロケットを握りしめ、目を閉じ祈りながら地獄へ向かっていく。

 

『どうしたことだ!? ドラゴンが尻尾を振りながらすり寄っているぞ!?

彼女の美貌に魅了されたか!?』

 

ドラゴンが人間に惚れる…などある筈がない。

しかし魅了される事はある、彼女は″魅了の呪文″を使いドラゴンを無力化したのだろう。

その直後耳をつんざく悲鳴が上がる―――かと思うと一転して歓声に変わった。

何かトラブルが起こったが卵は確保できた、という事だろうか。

 

三番手であるビクトール・クラムは動じる様子は無い、かといって油断している訳でも無い。

その間にある完璧な集中力を保ったまま、堂々と地獄に挑んでいった。

 

突入と同時に、爆音の様な絶叫がテントを貫く。

ドラゴンに唯一効果的とされるのが″結膜炎の呪い″だ、ドラゴンは分厚い装甲で魔法を尽く弾き飛ばすが、それが無い眼球だけには呪文が通じるのだ。

クラムはそれを使ったのだろう、証拠に今もドラゴンが苦しんでいる様な地鳴りが響いてきている。

 

『あー! 卵が割れてしまいました! これは点数に響きそうです!』

 

だが代わりにこういった欠点もある、使用する場所を考えなければこういった事態を引き起こしてしまうのだ。

結果聞こえてきたのは、歓声と落胆が入り交じった声だった。

 

そして地獄へのホイッスルが聞こえてきたが、それを見て俺は不安に駆られた。

ハリーの足取りは重く遅くふらつき、目の焦点すらも合っていなかったからだ。

…大丈夫だとは思う、ヤツも相当な修羅場を潜っている、ドラゴン程度で死ぬ筈が無い。

 

会場に入ってから最初に聞こえたのは悲鳴だった、そして次に聞こえたのは歓声だった。

しかしその直後から何も聞こえなくなってしまった、それもドラゴンの動く音でさえもだ。

一体どうしたのだろうか? 競技が続いている以上死んではいない筈だが…

 

耳を研ぎ澄ましてみるとその無音の中に僅か、ほんの僅かに風を切る音が流れているのに気付き、そしてハリーの戦術にも気付いた。

炎の雷(ファイアボルト)″だ、箒を呼び寄せ空中戦を仕掛けたのだ。

確かにそれは有効な手段と言える、ハリーの箒の才能は誰もが知るところ、それにファイアボルトの性能が加わればドラゴンを相手取る事も夢ではない。

 

『戻ってきた! ドラゴンの姿は見当たらない! 撒いたようだ!

そしてそのまま箒で…取ったぁぁ! 最短記録です!』

 

やはり何の心配も要らなかった様だ、ハリーが無事だった事に内心安堵していると俺の出番が訪れた。

 

天幕を抜けると洞窟の様な道が20m程続いている。

その先の光に向かって歩く俺は、これから挑む地獄に恐怖して―――いなかった。

 

全く恐くない訳では無いが、それは理想的な緊張を作るものでしかない。

18m、確かに巨大だ、だがそれだけだ。

それにパララントの地上戦艦の方が遥かに巨大、全身に銃火器を纏ってる訳でも無い、狡猾な乗り手が居る訳でも無い。

 

一部なら魔法が通じ、口からしか火を吹けないドラゴンなぞに恐怖する様な神経は全く持ち合わせていなかったのだ。

例えそうで無くとも同じ事だったのだろう、そうだ。

…戦い方は人間相手と変わらない。

 

 

 

 

『最後の一人! 今大会注目の一人にして存在しない筈の5人目の選手!

キリコ・キュービィーだぁぁ!』

 

歓声と共に俺を出迎えたのは大小様々な岩山が並ぶ劣悪な地形と、中央に佇みこちらを睨み付ける巨大な竜だった。

その下には金色の卵が紛れ込む、竜の巣がある。

何はともあれヤツを退かさないとどうしようもない、挑発も兼ねて真っ直ぐに歩いていく。

 

『おお! 真っ直ぐにドラゴン向かって行った…あ! 不味い!』

「…!」

 

こちらを敵と判断したのか、圧倒的な迫力と共に息を吸い込む!

そして爆炎が放たれた!

 

インセンディオ(燃えよ)!」

 

爆炎には爆炎、炎を炎で相殺し、相手の炎が尽きるまで燃やし続ける!

 

『何と!? ドラゴンの炎に拮抗している! 何という威力だ!』

 

力尽きた瞬間、その隙をつき更に呪文を唱える。

…記憶を呼び覚ます、暗い星の海の中で、当てもない眠りについた記憶を。

その隣で微笑んでいた彼女との思い出を…

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!」

 

光輝く杖先から、2mにも及ぶ巨大な蝙蝠の守護霊がドラゴンに襲いかかった!

 

『守護霊だ! 僅か14歳の少年が守護霊を出した! これだけでも高得点が期待できるぞ!』

 

ドラゴンの周りを飛び交い、時に爪を立て時に卵を奪おうと襲いかかる!

勿論実際に取れる訳では無い、守護霊に実体は無いのだ。

だがそれで構わない、その間に岩影に隠れ呪文を唱え始める。

 

『どうしたんだ? 守護霊に任せて動く気配が全くないぞ!?』

 

ドラゴンは鬱陶しそうに守護霊を攻撃するが、それが幻影である以上効果が出る事は無い。

しかしいつまでもそれに気付かない程頭が悪い訳でも無い!

気配を探り、キリコの潜む岩影に飛び掛かった!

 

『これは不味いぞ!』

 

全長18mのドラゴンが空から迫る!

圧倒的、ひたすらに圧倒的な超スケールの攻撃!

既にかわすことは不可能、間に合いはしない!

 

「…アーマード・ロコモーター(装甲起兵)

 

爆発かと思うほどの地鳴り!

ガラスの様に砕け散る岩山!

その全てを覆い尽くす土煙!

 

『あああ! キュービィー選手はどうなってしまったんだ!?』

 

観客は絶叫する、五臓六腑をぶちまけたキリコの死体を未来に見たのだ!

だが彼等が見たのはそれ以上の衝撃だった!

 

やっと死んだ、これでひと安心だ。

ドラゴンはそう思った。

そして死んでいるかの確認をしようと煙の中を除き込む。

そして見た! 目の前にあった回るターレットを!

そして感じた! 片目が潰れる激痛を!

 

『な、な、な、何だアレはーっ!?』

 

アストラギウス銀河が産み出した戦場の最低野郎(ボトムズ)が、片目を潰し、砂煙を切り裂きながら再び魔法界に降り立った!

 

機体名″バーグラリーバックス″

ストロングバックスをベースに不整地走破用ユニット″トランプルリガー″を装備させたミッド級AT!

武装はソリッドシューターを模した投石器が二丁!

装弾数は合計16発!

しかし自慢の装甲もドラゴンの火力の前では紙クズ同然だ!

 

ありゃゴーレムか!?

違う人形だろう!

知ってるぜ! ありゃガン○ムだ!

想像の遥か彼方を行く展開に湧き上がる観客達!

 

「…無駄弾を使うつもりは無い」

 

未だに呻くドラゴンの背中を伝い後方へ着地、そのまま後ろ足へソリッドシューターを三連射!

一瞬ドラゴンの鳴き声が響くが致命傷には程遠い!

 

怒り狂うドラゴンの尻尾が鞭の様に大地を抉っていく!

それを芸術的とも言えるターンピック捌きで完全回避、それどころかかわしながら弾を後ろ足に残りを全て撃ちまくる!

当然の如く全弾命中だ!

ドラゴンが怯む隙にもう一つのソリッドシューターに持ち替える。

 

『凄い! 凄すぎるぞキリコ・キュービィー!

あのジャパニーズロボットは完璧にドラゴンを翻弄しているぞー!』

 

爪を降り下ろしATをスクラップにしようと目論むドラゴン。

だが当たらない! 変幻自在の超機動はドラゴンの予想を尽く覆す!

焦燥に駆られ再度飛び掛かってゆく!

地形もろとも押し潰す気だ!

 

それに対しキリコは大胆なカウンターを仕掛ける!

超質量の飛びかかりに合わせ加速! そり立つ岩から飛び出したATはなんと!

回避と同時にそのままドラゴンの翼に降り立った!

 

薄い翼膜にターンピックを突き立て穴を空ける!

そしてそのままローラーダッシュで強引に翼を走り抜けて行った!

そう、キリコは翼を引き裂いたのだ! もうドラゴンが飛ぶ事はできない!

 

『翼が裂かれた!? ドラゴンはもう飛べなくなってしまったぞー!』

 

目にも止まらぬ激戦に観客の視線は釘付けである。

全身を動かし大木の様な尾を振れば降着姿勢でそれをいなす!

からのダッシュで頭の下へ三連射! 不意を突かれ怯むドラゴン!

 

「ギァオオオオ!!」

「………!」

 

怒りに燃えるドラゴンが息を吸い込む!

ちょこまかと動く敵!

なら纏めて焼き払えばいい!

そしてブレスが解き放たれた! が!

 

「…余計な手間を取らせるな」

 

一気に加速をつけてからのスライディング!

腹下に潜り込む事でブレスを回避したのだ!

そしてこの回避は同時に攻撃でもある!

 

全身を鱗で覆っていようと、どうしても薄い部位は存在する。

生物である以上腹の装甲はどうしても薄くなってしまう!

だからこそキリコは容赦なく弾丸を叩き込む!

三連射! そしてしつこく後ろ足へ三連射…いや二連射だ!

 

一体どうしたと言うのだ? キリコはそれを投げ捨てた!

弾切れ! ここで弾切れである!

再び精製し直すか? いやそんな隙は無い!

そしてドラゴンは今こそチャンスと言わんばかりに、一層強く息を吸い込んだ!

 

だが問題は無い、腹下に潜り込んでやれば良いのだ。

―――しかし!

 

『ド、ドラゴンが後ろに跳ねた!? これはどういうことかー!』

「………!」

 

ドラゴンに向かって行っていた。

しかしドラゴンは後ろに下がった。

そして今まさに爆炎を撃とうとしている!

 

キリコは苦虫を潰す! ドラゴンの策に掛かってしまったのだ!

今キリコが居る場所は最悪の位置! 

腹下に潜るには遠すぎる!

爆炎から逃げるには距離が近すぎる!

つまりどう足掻いても炎に焼かれる運命!

 

『こ、これはかわせないぞ!? あーっ! ま、間に合わない!?』

 

そうと決まればやる事は早い!

上体を180度回転させ、ATから離脱!

と同時に杖を構える!

 

エクスパルゾ(爆破せよ)! プロテゴ!(盾よ)

 

炎に包まれたATが大爆発! 爆発で爆炎を相殺する事に成功!

しかしキリコが居たのは空中、その勢いのまま地面に叩き付けられたキリコは何か喋るように呻いた後動かなくなってしまった!

 

『どうしたキュービィー選手! 気絶してしまったのか!? あ、不味い! ドラゴンが迫っております!』

 

頭に血が上りきったドラゴンがトドメを刺そうと迫り来る!

このまま成す術無くミンチ死体になってしまうのか!?

観客が目を覆い絶叫する!

 

ところで、バトリングを思い出してほしい。

観客が湧くのはどんな時だっただろうか?

賭けてた選手が勝ったとき? それは別の話だ。

例えば…今にも負けそうだった選手が、満身創痍のそれが、奇跡のような大逆転を見せた時、とか。

そしてもしそれが、最初から狙っていた事だとしたら―――?

 

キュイイイィィィン………

 

『こ、この音は…?』

 

どよめきが静まる、皆その音がどこから聞こえるのかを探り出す。

突如、倒れていた筈のキリコが高速移動を始めた!

まるで何かに引きずられるように!

次の瞬間虚空を破り、それが姿を現した!

 

『!? も、もう一体! ロボットがもう一体現れた!?』

 

キリコを引きずっていたのはもう一機のATだった!

そう、何も創っていたのは一機だけではない、最初から二機創っていたのだ!

″目眩まし術″で隠しておいたそれを″呼び出し呪文″で自分の方に呼び出していたのだ!

気絶のフリをする寸前の呻きは、呪文の呻きだったのだ!

 

突如現れたATにドラゴンは一瞬怯んだ!

ほんの数秒、いや数コンマだが怯んでしまった!

この男の前で数コンマも隙を晒してしまったのだ!

 

「…その隙が命取りだ」

 

まだ生きている片目に″結膜炎の呪い″を叩き込む!

絶叫! そしてがむしゃらに暴れ狂う!

そして驚異の連撃が始まった!

 

グレイシアス(氷河と成れ)

 

凍結呪文で凍らせたのはドラゴンの後ろ足…ではなく、その足元!

ローラーダッシュを全力駆動させ疾走するAT!

不安定な地形でその体を必死に支える後ろ足を、ストロングバックスの重量と加速を纏ったタックルが襲う!

 

『ドラゴンの姿勢が崩れた! しかも痛みのせいで立ち上がれない!』

 

執拗に後ろ足を攻撃してきた理由がこれだ! 今まで蓄積されたダメージが今ので限界を越えたのだ!

そして結膜炎の痛みが姿勢感覚を奪い、立ち上がる事すらできない!

そして!

 

ウィンガーディアム・レビオーサ(浮遊せよ)!」

 

飛んだ! 全力の浮遊魔法によって一気に上昇していく!

気づけば遥か上空、ホグワーツ城を見下ろせる程の高度へ到達した!

 

『一体どこまで飛んだのか!? その姿が見えな―――いや!? お、落ちてきたー!?』

 

なんと浮遊呪文を解除し落下して行く!

何せこの高度、その落下速度は凄まじい勢いで加速している!

このままでは激突死必須! キリコはどうするつもりなのか!?

 

ディセンド(落ちろ)…!」

 

まさかの落下呪文!

さらに勢いを増すストロングバックス、そしてキリコはアームパンチを構えた!

 

そう! わざわざ機動力を犠牲にしてまで重装甲を持つストロングバックスを創った訳がここにあった!

キリコはドラゴンの頭に、落下の質量を乗せたアームパンチを叩き込むつもりだったのだ!

その一撃をより確実なものにするためにストロングバックスを創った!

遥か上空から、凄まじい速度で落下する!

ヘビー級ATの重量とアームパンチ!

その威力は考えるに及ばす!

 

「…オパグノ(襲え)

 

何とか姿勢を建て直したドラゴンの頭に向かって16発の岩石が纏わりつく!

これは!? そう、ソリッドシューターの弾丸!

その重さに耐えきれず、頭を押し潰される!

これでもうアームパンチから逃れる事はできない!

…そしてこの弾丸は全て、事前に爆弾化してあった!

何のために? 更なるダメ押しの為である! 

 

エクスルゲーレ(爆弾作動)!」

 

鈍く重い打撃音!

ドラゴンの絶叫!

その全てを押し流す怒濤の大爆発!

観客席の叫びすらも消し飛んだ!

 

『…な、何が起こったんだ? キリコ選手は? ドラゴンはどうなった!?』

 

会場全てを包む土煙。

その中に一つの人影が写り込む。

そして土煙が晴れた時見えたのは、意識を完全に奪われたドラゴンと、ロボットの残骸、そして悠然と歩くキリコ・キュービィーの姿だった!

あの刹那の中で、自分自身に浮遊呪文を掛け脱出していたのだ!

 

『な、な、な、何とぉ―!? た、倒した! たった一人でドラゴンを倒してしまったー!』

 

ドラゴンの単独狩猟という前代未聞の暴挙を見て、興奮しない者はいない!

拘束する場所まで計算したのか卵は全て無事!

守る者のいなくなった巣の中から黄金の卵を持ち上げる。

 

『取ったあああぁぁぁっ!

一体何が起こっていたのか私もまだ理解しきれていません!

しかも最短記録です! もう何なんだコイツは!?

ちょっと、ドラゴンキーパーまで唖然としててどうするんですか!』

 

気絶しているドラゴンを慌てて押さえに行くドラゴンキーパーを尻目に、俺は卵を抱えながらテントへと戻って行った。

やはり大した事は無かったが、あれだけ魔法を乱発したせいか少し疲労が溜まっている様に感じる。

 

「キリコ! いや何というか…まあお疲れ!」

 

何故かテントの中に居たキニスが出迎えてきた、よく見れば寮監のスプラウトも居る。

 

「てか何なのアレ、あのタコみたいなの」

「ゴーレムだ」

「あんな動きをするゴーレムなんて普通無いと思う…いや、とにかく無事で良かったよ」

 

少し会話をし、スプラウトから疲労回復効果のある飲み物を貰うと、彼らは観客席の方へ戻って行った。

その後係員の指示に従い、救急用テントでマダム・ポンフリーの診断を受ける。

結果は軽度の疲労以外問題無し、その足で競技場へ戻って行く。

 

「お疲れキリコ、最後凄い爆発音が聞こえたけど…どうやったの?」

「気絶させた」

「えっ」

 

目を白黒させるハリーがその意味を理解したのは数秒後だった。

ハリーから話を聞くと、現在の最高点はハリーとクラムの40点らしい。

何でもカルカロフが露骨な贔屓をしたかららしいが…

 

立ち回りは完璧だったと自負できるが、あの殺られたフリからの逆転が唯一の不安要素だ。

あれを戦術かミスのどちらで捉えるかで結果が変わるだろう。

そう話しているとちょうど俺の得点が発表され始めた。

 

マクシーム  ―9点

クラウチ   ―9点

ダンブルドア ―10点

パグマン   ―10点

カルカロフ  ―6点

 

合計44点、それが俺の結果であった。

…カルカロフの贔屓が気になるが、一位である事に変わりはない。

その後再度テントに集まると、パグマンが次の課題の内容を選手に説明し始めた。

 

「全員よくやった! 疲れているだろうから手短に済ませよう。

第二の課題は二月二十四日の午前九時半だ!

課題のヒントは君達が手に入れた金の卵の中にある!

質問はあるかな? では説明終わり! 解散!」

 

本当に手短な説明を聴き終えた俺達は各々の場所へと戻っていった。

 

最初の試練は一先ず切り抜ける事ができたが、いまだ地獄の中である事に変わりはない。

果たして俺達は何処へ向かうのか、その導はこの金の中にあるのか、それは地獄の出口に繋がっているのか。

それはない、所詮、この中にあるのは更なる悪夢への招待券に過ぎないのだから。




この時点で間違いだったと気づかなければいけないのだ
自分を知ってほしいとなど言った事はない
むろん認めてほしいなど考えた事もない
ましてや願い事など見る目も持たない
滅びもなければ喜びをも思わない
だが一つだけ確実になしている事がある
それは自分を支配せんととする者を抹殺する事
これだけは誠実に実行している
次回、『服従』
ただの一度も見逃した事はない



キリコ守護霊初登場。
ちなみに蝙蝠には死、不運、英知、狂気、沈黙、狡猾さといった意味があります。
…キリコそのものだな!
あともしドラゴン討伐が課題だった場合、パイルバンカーで脳天を串刺しにする予定でした。

追記 後書きを修正しました。
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