【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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もみあげ


第四十九話 「ファルウエル(Aパート)」

疑心暗鬼とは恐ろしいものだ、目を曇らせ、最悪の過ちを侵してしまう。

盲目は更に恐ろしい、現実を見る事すらできず、信じられない行動を平然と行う。

 

ファッジの疑心暗鬼によって生み出された、死喰い人、騎士団、闇祓いの三つ巴の戦いは泥沼の様相を呈していた。

 

「ハハハッ! 楽しくなってきたねえ!」

「全員捕まえろ!」

「子供達を安全な所へ逃がすんだ!」

「分かったわ───!? ご、御免! 難しすぎる!」

「止めろ! 俺は敵じゃない!」

「僕も闘う! 僕のせいでこうなったんだ…責任をとらなくちゃならない!」

「馬鹿な事を言うんじゃ───プロテゴ(盾よ)! 仕方ない! いいかいハリー、私の傍から絶対に離れないように!」

「ファッジめ! どこまで腐ってやがるんだ!」

 

壮絶なる呪文の撃ち合い、そこに敵味方の区別は無く、パニック状態にも近い。

しかし元から敵味方の識別など殆ど無く、殺害にも躊躇がない死喰い人にとっては、正に独断場だと言える。

 

「アバダケダブラ!」

「ッ!………」

 

一人、また一人と数が減っていく。

無数に飛び交う死の呪いに、既に何人も殺られていた。

だが闇祓いの損失に反して、騎士団の消耗は少ない。

 

「キリコ! 右だ!」

「…………!」

 

右を向く動作すら省いた直感での銃撃、それはシリウスの指示した先に居た、呪いを撃とうとしていた死喰い人を捉える。

 

「アバダケ───ッ! プロテゴ(盾よ)!」

ステューピファイ(失神せよ)!」

「やるなリーマス!」

 

銃撃を盾で防いだ結果、背面からのルーピンの奇襲に対処できず吹っ飛んでいく。

 

「あいつだ! あのマグルの武器を持った石人形を壊せ!」

 

闇祓いの指揮官が声を飛ばし、爆破呪文を次々に撃ち込む。

だが先程と違い十分な空間を確保できたATは、その巨体からは想像できない動きで呪文を回避する。

 

「そっちに気を取られてていいの? インカーセラス(縛れ)!」

「フン! 現役闇祓いがこの程度とはな!」

 

豊富な攻撃方法と、高い魔法耐性を併せ持つAT。

それが暴れまわった隙に、騎士団が各個撃破していく。

その戦術は高い効果を持ち、気付けば混沌の主役はキリコに刷り変わっていた。

 

ボンバーダ・マキシマ(完全粉砕せよ)!」

「っ!」

 

そのカオスを体現するあの男に、正面から襲い掛かる黒い影。

しかしその程度の攻撃は、簡単に回避できる。

だが、相手の執念は凄まじいものだった。

 

コンフリンゴ(爆破せよ)! フリペンド(撃て)! ディセンド(裂けよ)!」

「くっ…!」

 

とてつもない呪文のラッシュ、その中に無言呪文まで混ぜ込んでいた。

唐突な猛襲に対応しきれず、切断呪文が右肩を直撃。

 

「…ハハハ! やっぱりねぇ! 所詮は見かけ倒しか!」

「大丈夫かキリコ!」

「問題ない」

「…シリウス! お前ブラックの血を裏切った上、ブラッドの血を庇う気か!?」

「…知り合いか?」

「まあな、ベラトリックス・レストレンジ、私の従姉であり、ヴォルデモートの飛び切りのお気に入りだ」

 

ベラトリックスはその縮れた髪を、それこそメデューサの如く立てんばかりの怒気を放っていた。

何故彼女がここまで怒り狂うのか、それはキリコ・ブラッドにあった。

 

「お前も知っている筈だろう! ブラッドがどれ程おぞましい存在なのか!

ブラック家が何れだけ、その血の根絶を願ってきたか!」

「ああ知っているさ! だが彼はそれ以上に、私を冤罪から救ってくれた恩人だ!」

「だったらお前も死ね! 私達は400年前に誓ったのだ! ブラック家最大の過ち、魔法界最大の敵! ブラッド家を一人残らず根絶やしにすると!」

 

圧倒的、圧倒的殺意を吹き出しながらベラトリックスが飛翔する。

だが片手を失おうと機動力は健在、それに当たる程遅くはない。

 

むしろカウンターにクローを突き立てようとしたが、黒煙は唐突に消滅する。

 

「下だ!」

「!」

 

黒煙はATの足元に居た、自分を骨が折れかねない速度で地面に叩きつけ、キリコの目を欺いていたのだ。

そのまま真下まで入り込み、無言呪文を連打。

 

「ぐぁっ!」

 

ATは健在だが、その衝撃はコックピットを揺さぶる。

ベラトリックス・レストレンジ、その強さはかつて激闘の末に勝ったバーテミウス・クラウチ・ジュニアに迫る。

 

「その中に直接叩き込んでや───ッチィ!」

「私を忘れては困るぞ!」

 

だがあの時とは違い、数的有利を有している。

シリウスが牽制した隙に、キリコは再度距離を取りながらサブマシンガンを連射する。

 

プロテゴ(盾よ)!」

 

それを盾で防ぎながら、シリウスと拮抗した闘いを繰り広げるベラトリックス。

同時に呪文を展開するという高等技能だが、このままではじり貧である。

 

「───かぁっ!」

「何!?」

 

ならば、とベラトリックスはシリウスと距離を限界まで、それも杖を振るスペースがギリギリあるだけの超至近距離まで詰める

 

「ほらほらほら! 撃てるものなら撃ってみな!」

「…………」

 

サブマシンガンはどうしてもブレてしまい、精密射撃には向いていない。

マグルの武器に詳しくないにも関わらずそれに気付き、ここまで距離を詰めたのだ。

 

その選択肢は間違いではなかったが、別の間違いを二つ侵していた。

一つ目は、マグルには武器を一本しか持ってはならないなどというルールは無い事。

二つ目は、アレなら盾の呪文を破れる事を知らなかった事だ。

 

「ハッそんなチンケな銃ごときで…なっ!?」

 

アーマーマグナムの弾丸が盾に当たり、小さな皹が入るのを彼女は見た。

不味い、破られる。

咄嗟の顔の位置をずらした途端に、盾がガラス片の様に砕け散る。

 

「ぐがあっ!?」

 

顔を動かしたお陰で脳天への直撃こそ避けたが、片目をおもいっきり抉られてしまう。

眼球が抉られるという、ショック死してもおかしくない激痛にベラトリックスは崩れ落ちる。

 

「ブラッドめブラッドめブラッドめぇぇぇっ! よくも!」

 

地面に倒れ伏しながらも尽きない狂気に、流石のキリコも少し怯む。

だが何れだけ叫ぼうと、絶体絶命であるのは事実。

しかしサブマシンガンが突き付けられて尚、ベラトリックスは不敵に笑い続けた。

 

「こ、こうなりゃ…予定変更だ…先に裏切り者から始末してやる…!」

 

再び動き出したベラトリックスを、クローで引き裂こうとする。

しかしそれは叶わなかった、キリコはそれどころではなかったのだ。

 

「───なっ!?」

 

キリコの視界一杯に広がる炎と、血に染まった肩を持つATの軍勢。

レッドショルダーの幻影がキリコの全てを包み込んできたのだ。

 

「───ま…さか…!」

 

一気に闇の底へ沈んでいく意識の中で必死に目を動かした先に奴等は居た。

ボロボロのローブを羽織り、空白の眼孔を光らせ、飢渇する幽鬼。

吸魂鬼(ディメンター)の群れが、キリコのトラウマを鮮烈に甦らせていたのだった。

吸魂鬼を最大の弱点とするキリコにとっては、ただ近づかれるだけでも深刻な事態を招く。

もし直接魂を吸われれば…少なくとも、戦闘不能に追い込まれるだろう。

だが、キリコの手を引っ張り上げる影もあった。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!」

「!!!」

 

レッドショルダーの幻影を切り裂くように、白い大鷲が飛翔する。

切り裂かれた炎の間から、吸魂鬼が吹き飛ばされて行くのが微かに見える。

 

「…キ…ニス」

「大丈夫!? 立てる!? 水飲む!?」

 

こいつ守護霊を出せたのか、いや何故吸魂鬼がこんな処に。

と一瞬思った後、直ぐに正気を取り戻す。

 

「あの女は…!」

 

どこへ行った、あの時何をしようとした。

朦朧とする視界で見渡した先に、ベラトリックスの姿はあった。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)! 何で吸魂鬼が───っ!?」

「死ね! ハリー・ポッター!」

 

ハリーの真上に居たベラトリックスが、彼に向って死の呪いを打ち込もうとしている。

だがヴォルデモートが自分でハリーを殺したいと考えている以上、彼女が殺す可能性は皆無。

だが零ではない、それを信じられる程、シリウスは楽観主義者ではない。

 

「ハリー!」

「…ハハハ! やっぱりかかったか!」

 

ハリーに向けて走り出したシリウスを、大量の死喰い人が取り囲み、死の呪いを放とうとする。

ベラトリックスの狙いは、正にこれだったのだ。

 

「───!」

 

目前に迫るシリウスの死、キリコの意識は一瞬だけ完全に覚醒する。

あの女ともシリウスからも距離は離れている、直接止める手立ては無い。

死の呪いを止める手段も無い、手の打ちようがないのか?

いやまだだ、そうだ、あの隠し玉なら…

一瞬でいい、全員の視界をシリウスからずらせれば…!

 

「…当たれ…!」

 

咄嗟にキリコはアーママグナムを構え、ベラトリックスに切断された右腕を銃撃する。

…実は今回創ったATには、今までと違う点が一つあった。

実証の結果、それを採用したのとしてないのでは、反応速度に差があったのだ。

キリコはそれを入れた結果、誘爆確率が跳ね上がるのを承知で入れていたのだ。

…右腕から漏れ出していたPR液に、跳弾の火花が散った。

 

「アバタケタブラ───何だ!?」

 

死の呪文を唱え終わると同時に爆発が起こり、キリコ以外全員の目線がシリウスからずれる。

そのショックと同時に、呪いの照準もずれる。

だがまだだ、当たってないと分かれば直ぐに次の呪いに殺されてしまう。

 

キリコが放った緑色の閃光が、死喰い人の呪いに混じり、それだけがシリウスを貫く。

弾けた光に、全員の目線が再び彼に集まり、その視界は、息絶えるシリウスを映し出す。

 

「え…あ…そんな…!」

「ハン! 危なかった危なかった、爆発に気を取られて外したかと思ったよ」

「シリウス…シリウスゥゥゥ!!」

 

悲しみと絶望にハリーが叫ぶと同時に、吸魂鬼の影響が再発したキリコが倒れ込む。

卒倒こそ免れたが、極めて危険な状況だ。

しかしゆっくり休める程、状況は良くない、むしろ次の瞬間には一気に悪化した。

 

「キキキキリコ…アレアレアレな、なな何…!?」

 

吸魂鬼の影響は精神の低下に留まらない、幸福な感情を吸い取るという事は何事も悪く捉えるようになってしまうとも言える。

そう、ファッジだけでは無い、闇祓いも疑心暗鬼になっていた。

その状況下でプラスの感情を吸われたら?

…彼の目に、味方は映っているだろうか。

…四方八方敵か味方か分からない状況で、三つ巴と吸魂鬼で混乱の極致でそんな状況になったら。

…どんな行動にでるだろうか。

 

「悪霊の炎…!?」

 

そうなった闇祓いの一人が、安心を得ようと、何もかも燃やそうと放ってしまった。

その様な精神状態で制御できる筈もなく、瞬く間に暴走する。

 

「…あ、あっちにも火が!?」

「…………!」

 

これには流石の死喰い人も慌て、同じ炎で相殺しようとする。

が、もはや運が悪かったとしか言いようがないが、炎を放った瞬間、彼の背中を流れ弾の呪いが撃ちぬいてしまった。

暴走する悪霊の炎が二つ、戦況は混乱を通り過ぎ、無理矢理終局へと向かわされていた。

 

「…逃げよう!」

「待て…シリウスを…ぐっ!」

 

闇祓いも死喰い人も逃げ出す中でシリウスを回収しようとATから身を乗り出すが、疲弊した体はついてこれず落下してしまう。

着地はどうにかできたがバランスを崩してしまい、後ろに向かって倒れ込───

 

「…………!?」

 

寒気が走る、悪寒か芯を貫く。

駄目だ、倒れてはならない。

訳等分からないが、倒れたら何かが終わってしまう!

直感に従い姿勢を戻そうとするが重力には逆らえず、そのまま後ろのアーチを潜りそうになる…が。

寸前に何者かがキリコの手を取り、引っ張り上げる。

 

「動けるか小僧」

「…お前は…確か…」

「あっ、ムーディ先生! …本物?」

「何を馬鹿な事言ってる!」

 

偽物ではない本物のアラスター・ムーディがキリコを助け出す。

キリコは安心するが、何故かアーチへの恐怖心が収まらない。

 

「これは…何だ?」

「こいつか、こいつの正体は誰も知らない…だが、どうやらあの世の入り口になっているらしい」

「あ、あの世…!?」

「そうだあの世だ、一歩踏み入れたが最後、地獄まで真っ逆さまだ」

 

あの世の入り口? そんなものがあるのか?

自分が望んで止まない場所がすぐそこにあると知り、渇望に近い衝動が体を動かそうとする。

…いやまだだ、それをやるにしても、全員ここから逃がした後でいい。

 

「さあ早く逃げるぞ! 後は貴様らだけだ!」

「…ま、待て」

「何だ! 早く済ませろ!」

「シリウスだ、あいつの近くに連れていけ…」

「何故だ!」

「ヤツは死んでいない…」

「なっ!?」

 

馬鹿な、有り得ないとムーディは考える。

しかしこの小僧は、あのバーテミウス・クラウチ・ジュニアを一人で破っている。

それほどの力を持つ男が、有りもしない希望にすがるとは思えない。

 

「…分かった!」

 

言うが早いか、ほぼ一瞬でシリウスの側に彼等は移動する。

 

エネルビエート(蘇生せよ)

「───ハッ!?」

「…どうなっている、死の呪いは当たっていなかったのか…?」

 

目の前で起きた奇跡に混乱するムーディ、何が起きたかまず理解できていないシリウス。

そして何処までも冷静なキリコが、指示を飛ばす。

 

「…シリウスとキニスを頼む」

「何を言ってる! 私は動け───うおっ…!?」

「無理だ…さっきまで死んでいたんだ、何時もの様には動けない」

「だが貴様はどうする! その状態で!」

「…手足が動けば十分だ、…アレがある」

 

キリコが目を向けたのは炎の中で佇むラビドリーイミテイト。

昔視界が歪み意識が混濁し、体中に銃撃を受けても動かした事がある、問題はない。

 

「そうか、死ぬなよ小僧!」

「キリコ…!」

「大丈夫だ」

 

彼の実力に関しては一分の疑いも持っていないムーディは、先程同様キリコを信じた。

そして彼等はキリコをしんがりに、脱出口であるエレベーターへ走り出した。

 

 

 

 

(…何処だ、上への通路は何処にある!)

 

人一人居ない通路を疾走するAT、その後ろからは通路を埋め尽くす悪霊の炎と吸魂鬼が迫っていた。

先程までムーディ達とエレベーターに乗り込もうとしていたのがどうしてこうなったのか、それは数刻前の事。

 

追撃をかける勤務に忠実な死喰い人や闇祓いを追い払い、エレベーター前に着く所までは良かった。

しかし彼等が先に乗り、最後にキリコが乗ろうとした瞬間、下の大法廷まで回っていた悪霊の炎が地面から噴き出したのだ。

しかもそれは、丁度キリコをエレベーターから分断する様になっていた。

結果、自力で上層までの通路を探す羽目になったのだった。

 

(こうなるなら、ターボカスタムにすれば良かった…)

 

内心そう呟いてはいるが、後ろから追っているのが悪霊の炎と吸魂鬼だけなのは幸いである。

勿論どちらかだけでも十分危険なのだが、吸魂鬼は単純な思考しかできず、悪霊の炎に至っては意思すらない。

 

狡猾に残虐に、地の果てまで追ってくる吸血部隊と比較すれば、遥かに楽な逃走劇である。

 

(…見付けた! あれか!)

 

耐火シェルターに覆われてはいたが、漸く上層への入り口を見付け出す。

キリコは後方の敵から逃げていた勢いのまま、クローを構えシェルターへ突っ込んでいき、シェルターを力ずくで引きちぎる。

 

「…………!」

 

シェルター内部に突入しつつ修復呪文を唱え、復活したシェルターが追跡者を弾き出す。

しかし幾ら耐魔法処理が施されたシェルターといえど、悪霊の炎の前では数分と持たない。

魔法省そのものからの脱出を急がなければならないと、再びローラーダッシュを回し出す。

 

「そこに居たか!」

 

だが目の前に、片目を深く抉ったベラトリックス率いる死喰い人が立ち塞がる。

何故彼女がここに居るのか、キリコは知るよしもない。

実は少し前に、ヴォルデモートとダンブルドアがエントランスに現れていた。

そしてヴォルデモートは彼女に、キリコを捕縛する様命じていたのだ。

 

「ハハハ! 今度こそ地獄を見せてやる!」

 

ベラトリックスが振る杖が光を放ち、地面から次々と石人形が精製される。

それも一体約5メートルの大型石人形、それが目算にして10体近くがキリコに迫る。

それだけではない、石人形を盾に次々と呪文を撃ち込み続ける。

 

「それにしても楽な状況だねえ! 何せちょっと足止めするだけでいいんだから!」

「…………ッ!」

 

速い、ここまで速いのか。

逃走するキリコの後ろには、信じられない早さでシェルターを焼き付くした悪霊の炎と、吸血鬼が迫っていた。

 

前方へ逃げようにも、あの数の石人形は力押しでは突破できない。

…なら、纏めて破壊するだけだ。

 

石人形に向かって更に加速したキリコはコックピットから乗り出し、バックサックから通常サイズのRPGを取り出す。

そしてそれを石人形ではなく、その手前に撃ち込む。

 

「!!!」

 

できあがった巨大な窪み、そこを丁度踏んでしまい前向きに転倒する。

それは連鎖し、一時的に石人形の進行が停滞した。

 

「そんなもんかい!? その程度の足止めでぇ!」

 

所詮一時的に止めただけ、石人形のファランクスも死喰い人の攻撃も健在なのだ。

更に呪文を撃ち込まれ、全身のフレームが徐々に剥き出しになっていく。

不利と判断したのだろうか、ATは急旋回し後退する。

 

「馬鹿め! 自殺しようってのかい!」

 

後ろは悪霊の炎と吸魂鬼の群れ、PR液が巡回するマッスルシリンダーが剥き出しの状態で浴びれば即座に爆死する。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)

 

だがキリコは守護霊を携え、悪霊の炎へ突っ込んで行った。

 

「ハハハハハ気でも狂ったか! だが狂っても許しゃしないよ!」

 

ベラトリックスは炎の中に居るATに向かって、更に呪文を叩き込む。

しかし皮肉にも石人形を展開してきたせいで、後退時に転がしていた手榴弾に彼等は気付けなかった。

 

「───爆発だと!?」

 

撃った呪文の一つに反応し爆発した手榴弾が、石人形を怯ませ僅かに後退させる。

しかしまだ破壊には至らない、至らなくていい。

 

「ば!? ば、馬鹿な!?」

 

ベラトリックスはその光景に叫んだ、悪霊の炎に突っ込み、あれだけ呪文を撃ち込んだ筈なのに。

…全身火だるまでありながら、ATは動いている!

 

止めて、怯ませる。

最後の攻撃の為には距離が必要だったが、確保の為に炎に突っ込む必要があった。

だが今入れば確実に死ぬだろう、そう、死ぬ。

だからこそ、キリコは死なないと確信し突撃したのだ。

 

サブマシンガンを乱射しながら、ATが地獄から甦る。

一度怯んだ隙への弾幕、石人形はもう進めない。

来るなと呪文を撃つが、何故かこの時に限って当たらない。

 

「こ、これが…不死の力…!?」

 

陣形を崩され怯んだ石人形に向かって、最大の加速を得たクローを叩き付ける。

 

アグアメンティ(水よ)!」

 

水圧ジェットをコックピットから放ち、ATを更に加速させる。

もう止まらない、止める事はできない。

クローが数十体の石人形を、死喰い人の全てを絡めとりながら───

 

「くそがぁぁぁっ!」

 

───真っ二つに引き裂いた。

瓦礫の山を、それに埋もれる死喰い人をも吹き飛ばした先は巨大なガラス窓。

ATはその勢いのまま突き破り、真下のエントランスに向かって落下する。

 

「───っぐ!」

 

かなりの高所から落下し降着姿勢もとれず、落下の衝撃がキリコをATから吹き飛ばす。

その直後、PR液に悪霊の炎が着火し、ATは完全に爆発した。

 

「────!」

「吸魂鬼…!」

 

舞い戻ってきた吸魂鬼を撃退しようと杖を振ろうとする、がここに来て疲労が限界を越え、杖を取り零してしまう。

そしてキリコの魂をむさぶろうと、悪鬼が襲い掛かる。

 

「しまっ…!」

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)

 

光が爆発した、と誤認する程巨大な不死鳥の守護霊が展開される。

その力は凄まじく、吸魂鬼を撃退どころか魔法省の建物から吹き飛ばしていった。

 

「遅れてすまぬの、じゃが余り余裕もない」

「…ダンブルドア」

 

長い髭を整えながらエメラルド色の瞳が見つめる先、そこに居たのは───

 

「ククク…また会えたな、キリコ・キュービィー」

「…………」

 

闇の帝王、ヴォルデモートがそこに佇んでいたのだった。




───ハリー・ポッターとラストレッドショルダー───



次で第5章最後になります。
因みに吸魂鬼が居た理由は、対キリコ用にヴォルが呼んでいたからです。
尚情報元はネズミ野郎。
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