【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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やっぱりパート6は中だるみしやすい、構成に四苦八苦しています……
あ、今回久々にあいつが出ます。


第五十四話 「未確認存在」

時の流れは残酷だ、どんな記憶であっても、瞬く間に風化させていってしまう。

だがそれは、ある意味優しいとも言える。

トラウマも、痛みも流し、癒してくれるのだから。

 

時は十二月、あの事件から半年も経ち、ハッフルパフは漸く元の活気を取り戻しつつある。

特にホグズミード、この村は相変わらず賑わい、闇の陣営が差し迫っているのを忘れてしまう。

 

しかし、俺は忘れてはならない。

忘れるつもりもない。

忘れられる訳がない。

俺を利用し、あいつらを捲き込んだヤツを許す理由など、有りはしないのだから。

 

そして何故、俺が此処に居るのかというと。

 

「マルフォイが何か企んでいる」

 

果たしてこの台詞を聞くのは何回目だろうか。

大事な話が有ると、ハリーに引き摺られた俺は三本の箒に居た。

元々ホグズミードに用事があったので、構いはしないが……

 

「……あー、ごめんキリコ、大変なのに」

 

キニスの事に気を使っているので、気まずそうに溜め息を吐くハーマイオニー。

 

「…………」

「……ハァ、で、どういう事?」

 

事の発端は、ハリーがマダム・マルキンの店でマルフォイを見掛けたのが始まりだ。

そこでマルフォイの挙動を怪しんだハリーはヤツを尾行し、ボージン・アンド・バークスへ入っていくのを見た。

マルフォイは店主に杖を向け脅しながら、何かの修理方法を聞き出そうとしていたらしい。

 

ハリーはマルフォイが、マダム・マルキンの店で左腕に触れられるのを嫌がったことを思い出した。

左腕……そう、そこにはどくろと蛇の紋様、死喰い人のマークが刻まれる場所だ。

 

「だからマルフォイは死喰い人に、ヴォルデモートの手下になったんだ」

「……それがどうしてマルフォイが何か企んでることに繋がるのよ」

 

疑惑にすらなってない、個人的主観が入りまくっているのは間違いない。

 

「ま、まだ証拠がある!」

 

触れられるのを嫌がったのは、"闇の印"が刻まれているからではないか?

その後決定的な証拠を掴もうとしたハリーは、ホグワーツ急行の中で、マルフォイの話を盗み聞きしていた。

結果、ヴォルデモートの部下になった……と思わせる発言をしていたのである。

だがそこでマルフォイに気付かれ、酷い目に遭ったのだ。

 

「あいつがヴォルデモートの手下になったのは間違いない……それに、何かしようとしてるのも確かだ!」

「でも、その何かって何だい?」

「それは……分からない」

 

全く確証のない持論を弁護することはできない、他の二人も同じ気持ちの様で、遠い目をしながらバタービールを啜っていた。

 

「キ、キリコは信じてくれるよね?」

「…………」

「そんな……」

 

項垂れるハリーだが、怪しいのは確かだ。

しかしボージン・アンド・バークスか、一体何を修理しようとしているのだろうか。

少し見かねたハーマイオニーが、フォローしつつ話題を変える。

 

「まあ怪しいのは分かるわ、けど、生徒が何かしてるならダンブルドアが気付かない筈はないわ」

「……まあ、確かに」

「それよりどうしたの? 最近ダンブルドアに頻繁に合ってるみたいだけど」

「個人授業だよ」

「何それ?」

 

ロンの疑問に対し、ハリーが答える。

それは、ヴォルデモートの過去を探る授業だと。

ヤツの過去を探ることで、その弱点を見つけ出すつもりなのだ。

 

そもそも今年度スラグホーンが着任したのも、あいつが元々トム・リドルの教師だったからであり、不死性の正体を知っている可能性があるからだと。

 

その不死は……秘密の部屋を開いた、"トム・リドルの日記"から推測するに、分霊箱(ホークラックス)の可能性が高い事。

バジリスクの牙で破壊されたにも関わらず、ヤツがまだ生きていることから、複数個作った可能性がある。

ダンブルドアはそれを調べてくれと、ハリーに頼んだらしい。

 

「その総数をスラグホーン先生が知っているかもしれないんだ」

「そんなのダンブルドアが直接聞けばいいじゃないか」

「いや、スラグホーン先生はダンブルドアのことを警戒してるらしい、だから僕が聞き出さないとならない」

 

……一体何が目的なのだろうか。

ダンブルドアはブラッド家の情報で、不死の秘密が分霊箱だという事も、幾つ有るかも知っている。

今更何をしたいのか、俺には分からなかった。

 

「でも何でハリーなの? 会うの初めてでしょう?」

 

ハリーは話術に長けてもいないし、開心術に特化してもいないのに、どうしてスラグホーンの記憶を引き出せるのか。

 

「あ、何でもスラグホーン先生て有名な人や優秀な人が好きなんだって。

ホグワーツに来たのも、『あのハリー・ポッターに教えることができる』のが理由」

「……へえ」

「……そう」

 

そもそも着任の決め手になったのはハリーだったのである。

スラグホーンの意外な側面を知ったのであった。

 

 

 

 

日が短い冬のさなか、早めに帰らなければ暗闇の中を歩く羽目になる。

それはごめんだと帰りだす人の中に、俺達も居た。

しかし俺だけが一人、駅とは逆に向かって歩いている。

 

「キリコ? 何処行くの?」

「用事だ」

 

俺がホグズミードに来たのはハリー達と話す為ではない、本当の目的を果たす為ホッグズ・ヘッドへ足を進める。

まだ時間もあるので焦る必要はないが、遅れるのも何だ、早めに行った方がいい。

 

「そう? 早く帰ってきなよ?」

「…………」

 

ハリー達と別れ、外れた道を一人歩く。

言っては悪いがホッグズ・ヘッドは人気がない、踏み固められていない雪は、膝丈まで覆いつくしている。

シャクシャクと、人気のない道に、雪を掻き分ける音が静かに聞こえる。

 

だが、静寂は破られた。

 

『アアアアアアアアアアア!!!!!』

「!!」

 

遥か後方から聞こえる、異様な絶叫。

跳弾の如く、来た道を逆走する。

 

「ど、どうなってんだよ!?」

 

狼狽えるロン達、その目の前……いや、上に十字架があった。

違う、白い顔で空に浮かぶ女子生徒に、十字架の幻影を見たのだ。

 

「助けなきゃ……!」

「でもどうやって!?」

「多分あのネックレスよ、きっと呪われてるんだわ!」

 

注意深く観察すると、確かにネックレスが首を絞めてる様にも見える。

そうでない可能性もあるが、迷っている暇はない。

 

フリペーダ・ブレイト(貫通弾頭)

 

居合い抜きさながらの速度で振り抜かれる杖が、鋭い閃光を発射し、女子生徒の首元を掠める。

しかし首に傷は無く、有るのは深く穿たれた鎖だけ。

まさしく紙一重、完璧な狙撃が呪いを撃ち抜いたのである。

 

「やった───じゃない、落ちる!」

ア、アレクト・モメンタム(動きよ止まれ)!」

 

咄嗟にハリーが呪文を唱え、地面に直撃する数センチ手前で、落下は停止した。

杖をゆっくりと動かし、女子生徒を地面に下ろす。

 

「ハァァァ……」

 

無事に下ろせたことに、ハリーが安堵の息を漏らすが、一息ついてる場合では無い。

女子生徒の顔色は、未だ死体のように真っ白なのだから。

呪いの影響が残っているのか、早く治療しなければならない。

 

「早くホグワーツへ運ばないと!」

 

混乱する現場だが、良いタイミングで適任者が現れた。

 

「そんな所で、一体おめえらどうしたんだ!」

「ハグリッド! 大変なんだ!」

 

ハリーの叫びと女子生徒の顔を見たハグリッドは、ただ事ではないと理解し、女子生徒を素早く抱き上げる。

 

「こいつは俺にまかしておけ、あとそのネックレスには絶対触るんじゃねえぞ!」

 

と言い残し、ハグリッドは駅に向かい風よりも早く飛んで行った。

 

「……行っちゃった」

「これでひと安心ね……」

 

疲れを乗せた溜め息を放つハリー達、だがこれで一件落着とはいかない。

 

「でも彼女、何故あんなネックレスを持ってたのかしら」

「その辺に落ちてる……訳ないか」

「じゃあ誰かが、置いていったってことか?」

 

では、何故置いていったのか。

状況から考えると、誰が被害にあってもいい無差別な犯行が妥当だ。

しかし……それだけなのか?

 

あれほど強力な呪いを宿した魔法具は貴重だ、それを只の無差別犯罪に使うものだろうか。

愉快犯と考えるのには強すぎる、必ず殺す意思にしては杜撰過ぎる。

明瞭にならない犯人像は、只こちらを惑わすだけだった。

 

「ホグワーツに戻りましょう、私達が考えても何も解決しないわ」

「まさかこれもマルフォイが?」

「何でそうマルフォイに繋げるのよ……」

 

尚、被害にあったグリフィンドールのケイティ・ベルだが、手袋の上から触っていた為、幸いにも致命傷には至らなかった。

それでも聖マンゴへの長期入院を余儀なくされ、ホグワーツを騒がす結末に変わりはなかった。

 

 

 

 

ネックレスの一件を終えた俺は、再びホッグズ・ヘッドに向かって足を進めていた。

勿論、本来の用事を果たす為である。

それは、取引……と言う程でもないが、商品の受け取り、が一番正確である。

 

俺は今まであの武器商人の店で色々買っており、今回も神秘部で消費した分を補充しなくてはならないのである。

だが、問題が起こった。

俺が銃火器を所持していることが、いよいよバレたのである。

 

「ところでキリコ、確か私の記憶が正しければ、神秘部で銃火器を使ってなかったか?」

「…………」

「銃火器って、マグルの使ってる鉄の棒?」

「モリーさん、そんな優しい物じゃないんだが……で、キリコ、持ってるよね?」

 

シリウスとルーピンの追求を受けた俺は、目の前で使っていた以上誤魔化すこともできず、已む無くそれを肯定する。

 

「……ああ」

「今も持ってるのかい?」

「……ああ」

「ちょっと見せて」

 

しょうがなく検知不可能拡大呪文を掛けたポーチを引っくり返し、溜め込んだ武器をテーブルに広げていく。

 

「…………これは」

「…………凄いな」

 

シリウスとルーピンの二人は銃についての知識を持っているのか、その物々しい光景に絶句している。

 

「へー、色々あるのね」

「? この四角いのは何かしら?」

「!? クレイモア!? トンクスそれに触るな!」

 

逆にモリーやトンクスは知識がないのか、玩具を扱う位の感覚で危険物を手に持っている。

下手に広げたのは、失敗のようだ。

 

「ハンドガン、アサルトライフル、ロケットランチャー手榴弾クレイモア……アハハハハ」

 

アーサー・ウィーズリーなどは白目を剥きながら茫然と笑っているが、やたらと詳しいな。

その時ふと思い出す、こいつはマグル製品不正使用取締局の局長をやっていた。

なら違法に持ち込まれるマグルの道具について、詳しくて当然か。

 

「……まさかこれ程持っておったとはのう」

「ホグワーツ退学を速やかに行う程ですな……」

 

天を仰ぎ頭を抱えるダンブルドアとスネイプであった、俺からすればこの程度で持ち込める魔法界の杜撰さの方が問題だと思うのだが。

そんな思いは届かず、この武器と、今後どうするかについての処置が議論されていく。

 

「取り合えずこの武器は没収しましょう」

「それが妥当だね」

 

不味い、非常に不味い。

呪文だけでも戦えるが、使い慣れた武器がないのは正直辛い。

内心頭を抱えていたその時、ムーディが助け舟を出してくれた。

 

「まて、奪う必要などない」

「何故だムーディ、彼は未成年だ、こんな危険な物は持つべきじゃない」

「お前は馬鹿かリーマス? こいつが銃を暴発させたことがあるか!?」

「それは……」

「無いだろう!? ええ!? そうだ、銃と杖に何の差がある! どちらも人を殺せる! だがこいつは死喰い人以外は殺していない! ならどこに問題がある! 言ってみろ!」

 

静まり返ってはいないが、致命的な反論は出てこず、場は沈黙する。

 

「以上だキリコ、お前は今まで通りでいい、だが覚悟しておけ、もしそれを味方に向ければ……!」

「落ち着くのじゃアラスター、しかし彼の言い分は全く持って正しい。

銃も杖を持つ者次第、それを安全に管理できるのなら、止める理由はない」

「しかしダンブルドア、杖には失神呪文があるが、銃にそれは無い。

私はこれ以上、人を殺して欲しくない」

「アーサー、君の言い分も正しいじゃろう、じゃが人は時に道徳以外で動かねばならぬ時もある」

「……死喰い人との闘いはそうだと?」

「儂等は勝たねばならぬ、その為には生きねばならぬのじゃ、分かってくれるな?」

 

ダンブルドアの説得に、渋々応じる面々。

ここはアストラギウスとは違う、子供が人を殺して良い顔をする者は居ないのだ。

今更ながら自分の感性との違いを感じ、何とも言えない気分が漂う。

 

ともあれ武器の所持は許される事になり、早速補給しようと武器商人に電話を掛けた。

外出は出来ないので去年と同じ様に、配達して貰う事にしておいた。

 

結果、このホッグズ・ヘッドで受け取ることになったのである。

ダンブルドア似の店主は『俺の店を違法取引の場にするなよ……』とぼやいていたが、知ったことではない。

尚、店主は忙しいので、別のヤツが運んでくる手筈だ。

 

少し埃を被ったグラスを片手にバタービールを飲みながら、人を待つ事暫く。

カランコロン、空な音が、時間を告げる。

残るビールを飲み干し、振り返る。

 

「───!?」

 

思いっきり吹き出しかけたのは、後から考えてもやむを得ないと思う。

何故なら、その運び屋というのが。

 

「キ、キ、キ、キリココココ!?」

 

ターバンを幻視するスキンヘッドに、演技だったおどおどした表情。

闇の帝王を寄生させ、賢者の石を奪おうとしたあの男。

 

「…クィリナス・クィレル」

 

かつての教師が、ガクガク震えながら突っ立っていた。

 

 

 

 

「帰りたい」

 

情けない声を無視し、俺は受け取った武器を黙々と確認していた。

中を取り出してみると、これまでの戦闘で消費した武器・弾薬類が一式揃っているのが確認できる。

品質に関して言う事は無い、今まで誤作動が無かったのがその証明だ。

一通り動作チェックを済ませ、取引は完了する……が。

 

「何故お前が運んできた」

「ひっ! あ、その、あの店に行った時頼まれたんです! ついでに運んでくれと」

 

あの店に寄っていた? 俺が言うのも何だが、普通のヤツは行かない場所だぞ。

それを聞いた俺は、深い溜め息をついた。

 

「ロッ……ルスケ大臣秘書が、この店に注文をしていて、それを取りに来てたんです」

「…………」

 

またか、またあいつか。

曰く、このノクターン横丁の多くに、ロッチナが関わっているらしい。

 

そもそも何故クィレルがロッチナの下働きをしているのか、それはアズカバンに捕まっていたこいつを助け出したのが始まりとのことだ。

それ以来、下っぱとしてこき使われているんだとか。

 

「以上です……」

「…………」

 

まさか、アズカバンから出所していたとは。

本当にロッチナのヤツ、何を考えているのか。

何だかうんざりした気分になりながら、店の外へ出ていこうと席を立つが、丁度店の扉が開かれた。

 

「───!」

「…………!」

 

今度こそ、俺は衝撃に固まった。

フラッシュバックの閃光が写すのは、片刃の槍を振り抜き闇祓いを瞬殺するワンシーン。

白い髪、バランシング、パーフェクトソルジャー。

 

「……お前は」

「フッ久しぶり……か? キリコ」

 

エディアと言う偽りの仮面が剥ぎ取られ、空虚な音が地面に響く。

逆光に照らされるその顔を、見間違える筈が無い。

 

「イプシロン……!」

 

ロッチナ、ワイズマン。

次々と俺の前に現れるアストラギウスの幻影が、無慈悲な宣告を告げる。

お前は未だに、運命の上なのだと。

この再会が、どんな歯車を差し込むのかは分からない。

だがその先にあるのが、誰も見たことのない宇宙だということを、俺は薄々察していたのだ。




何故にと問う。
故にと答える。
だが、人が言葉を得てより以来、問いに見合う答えなどないのだ。
問いが剣か、答えが盾か。
果てしない撃ち合いに散る火花。
その瞬間に刻まれる影にこそ、真実が潜む。
次回「イプシロン」。
飢えたる者は常に問い、答えの中にはいつも罠。



イプシロン(仮)久々の登場。
あとクィレル(笑)もついでに登場。
変えようのない次回予告。

おまけ 今日のロッチナ
ロッ「私の紅茶を飲んだのは誰だ!」
ベラ「どうしたあいつ」
モブ「やべえ、誰か知らんが死ぬぞ」
ベラ「?」
モブ「前同じことやった馬鹿が居たんだが、緑色の液体を飲まされて腹から爆発して死んだ」
ロッ「スコーンもなくなっている……」

ヴォ(どうしよ)

※この後ヴォルデモートは禿げました
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