【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

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今回原作キャラが死にます。
散々迷いましたが、最終的にこうなりました。
この世界観で誰も(味方)が死なない展開は違和感があると思い、決断しました。
では、どうぞ。



第六十五話 「頽廃」

 『ブラッド家』、そして『キリコ・ブラッド・キュービィー』に関する特集。

 それは、真実と捏造にまみれていた。だがそれこそ、今の大衆が求めてやまない林檎の実。

 

 あの、何者かが仕組んだとしか思えない、一夜の番組によって、キリコの名前と顔は、全世界に知らしめられた。

 今やこの世界に、キリコの名前と、一族の悪行。そして、最大の禁忌、『不死』について知らない者は居ない。

 

 それでもドイツへ行こうとするキリコを、ハリー達は当然引き留めた。

 顔も何もかも知られた今、死にに行くような、いや拷問されに行くようなものだと。

 

 彼はこう返した。

 『何時ものことだ』

 その言葉が、何を意味するかは分かる筈もない。

 彼等が感じたのは、言葉の底に敷き詰められた、タールのような思いだけ。

 結局、笑顔で送り出すしか、彼等にはできなかった。

 

 それでも彼は内心感謝していた。

 ブラッドの悪行を聞いても、気にせず、自分を案じてくれた彼等に。

 

 だが、影響は大きかった、

 非常に意外かもしれないが、実はキリコ、『姿くらまし』ができない。

 

 その為目的地まで、歩いて行くしかないのだが、誰の目にも触れずに移動するのは、幾ら彼でも困難極まる。

 何度も見付かり、その度に、マグルに襲われた。

 

 恨みを晴らす為。

 不死を手に入れる為。

 キリコを利用する為。

 武勲を上げる為。

 

 それら悉く一切を薙ぎ倒し、突き進み、歩き続け。

 目的地に着く頃には、ブラック家を出た時から、数ヵ月が経過していた。

 

 それでも、此処に着けたなら、あと一歩。

 眼前に拡がるは、聳え立つ管制塔に、張り巡らされた有刺鉄線。

 隙間無く目を光らせる警備網に、兵器の数々。

 

「…………」

 

 『アッセンブルEX空軍基地』

 そう、キリコの目的は『戦闘機』。

 これを奪い去り、颯爽とドイツまで逃げ仰せるつもりなのだ。

 

 問題は、どう奪うかだ。

 

 正面突破は難しい、キリコはあくまで肉体的、精神的に死なないだけ。AT一機で一つの基地全てを相手取るのは、出来なくはないが、掴まって拷問される可能性の方が高い。

 仮に相手取れたとしても、自分の悪評が広まっている以上、救援が来るのは必須、ハッキリ言ってキリがない。

 

 魔法を使った正面突破も難しい、ここ最近の軍事基地は、以前の死喰い人による多発テロを受け、魔法を感知できるようにしている。

 

 そもそも何故マグルがそんな物を作れたのか。それは魔女狩りを恐れた一部の魔法使いが、マグルを支援しているからだ。

 その殆どは利用された後に殺されているが、キリコにとって今、厄介な現状を作っていることに変わりはない。

 

 と、なれば。

 純粋単純な、潜入しかない。

 

 近くの茂みから、基地の様子を伺う。

 有刺鉄線を隔て、中に一名、外に二名。

 巡回タイミングは完璧であり、死角は生まれそうにない。

 

 なら作るだけ、懐から取り出した空薬莢を、なるべく遠くへ投げる。

 本来なら聞き逃す程の、僅かな音が、草を揺らす。

 皮肉にも優秀なばかりに、音を聞き逃さなかった兵士達。瞬時にフォーメーションを組み、接近する。

 

 死角が生まれた。

 音もなく走りだし、そのまま有刺鉄線を駆け昇る。

 痛みが走る、が、耐えられる。

 

 着地の瞬間音が鳴る、それよりも早く移動。

 内側の兵士が振り向いた時、キリコはもう壁の影に居た。

 

 ここからは、なかば運との戦いだ。

 壁の影から、ちょっとした突起の影へ。

 安全だが、突然誰かが角から飛び出る可能性も高い。すぐに対処できるように、アーマーマグナムを構えながら、進む。

 

 一つ一つの影を、慎重に進む。

 駐車されていたジープの下から、遠く、滑走路がある方向を覗く。

 幾つもの足が、規則的に、かつ忙しなく歩き回る。

 その向こうには、訓練棟か、宿舎か、三階程度の建造物が有る。

 

 この更に向こうが滑走路、戦闘機がある場所。あの建物を抜けなければ辿り着けない。

 

 息を整え、目を閉じる。

 全ての神経を、聴覚のみ残して、感じなくする。

 足の離れる音、近づく音。

 テンポを計り、合わさった、八分のチャンス。

 

 振り向かず、戸惑わず、全力でただただ走る。

 振り向かれたら終わり、その感覚が八分を、一小節まで引き延ばす。

 

 兵士が、振り向く。

 キリコは居ない。

 

 間に合った、彼は建造物の、偶々目に入ったダクトへ飛び込んでいた。

 足でも出ていたら堪らない、全身を虫のように動かしながら、狭く暗い通路を進んでいく、

 

 このまま滑走路を目指そう、そう思い進んでいた彼に、ポタポタと、水が垂れた。

 だが、水にしてはやけにベタついた触感が、彼に『舐める』選択を取らせた。

 

「ッ!?」

 

 血だ、血が滴っているのか。

 明らかな異常事態、キリコは上からの光を見付け、目線だけを向ける。

 

 地獄があった。

 

 時代にそぐわない拷問器具の数々が、血を滝のように、噴水のように流しながら、人を苛めている。

 魔女狩りだ、ここは魔女を炙り出す為の……いや、罪悪を擦り付ける為の偶像(イコン)の、製造工場だったのだ。

 

「…………」

 

 キリコはダクトを抜け出し、拷問室の更に奥へと進んで行く。拷問に酔いしれる看守達は、気付かない。

 再奥の別室に侵入すると、そこには、それこそ象の一匹でも入れそうな牢屋に、生け贄が詰め込まれていた。

 

「───キ、キリコ!? まさかキリコ君か!?」

「お前は……」

 

 雑多とした無気力溢れる群衆の中、一人叫んだのは、やや頭髪が消えてきた、金髪の男。

 ……アーサー・ウィーズリーであった。

 

 何故奴が此処に、いや、いまは助けなければ。

 こうなれば知ったことではない、存在が露呈すること上等で、牢の鍵を開ける。

 

アロホモラ(鍵よ開け)

 

 ……何も起こらないのを見るに、検知魔法はここまで張られてないようだ。

 

「だ、誰……?」

「あれは、あ、あの髪の色、まさか……!?」

「お前が、お前のせいか!? 世の中がこうなったのはお前のせいか!!」

「何しに来た! 悪魔! 悪魔! 悪魔!」

「助けてくれ!! 誰か! 『悍ましき血』に殺される!!」

「…………」

 

 助けに来たキリコに浴びせられる、いわれの無い、狂声。

 消音呪文を掛けて黙らせた後、一人一人の手錠を破壊しつつ、何が起きたのかアーサーから聞き出していく。

 

「ハハハ……実はね、結婚式の後逃げるのに少し失敗して、ロンドンの貧民街に逃げ込んだんだ。そこで暫く潜ってたんだけど、そこでも魔女狩りが行われていてね」

「…………」

「つい見かねて、使っちゃったんだよ、魔法。それでこうなってしまったのさ。けれど、君が来てくれて……こんな所に居るのはどうかと思うけど、本当に助かった」

 

 何も言葉が出なかった、人を助けたくて、助けようとして、助けて、助けた人に売られるとは。

 お人好しこそが地獄を見る、これを地獄と言わずに何と言う。

 

「立てるか」

「大丈夫だ、自力で立て───」

「貴様ら! 一体何をしている……!?」

 

 扉から飛ぶ看守の声、外で拷問を行っていた看守が戻って来てしまった。

 目の前には魔法族の疑いがある、潜在的テロリストが集団で脱獄する光景。

 

「敵襲ーーーッ!!」

 

 即座にアーマーマグナムを撃ち抹殺、だが既にけたけましいサイレンの音が、基地中に鳴らされてしまっていた。

 耳に、次々と集まる軍靴の音が聞こえてくる。

 途端に囚われていた人々が、悲鳴を上げ逃げ出す。

 

「キリコ君! 君も早く逃げるんだ!」

 

 アーサーはそう言うが、そういう訳にはいかない。

 結局こうなるのか、と何だか疲れながらも、覚悟を決める。杖を構えATを創ろうとする。

 

「敵を発見! 敵を……!? ブラッド!! キリコ・ブラッドです!!」

「ブラッド!? 外部に援軍要請をしろ! 何としても殺すんだ!!」

 

 相手の動きは迅速、ATを創る間も与えてくれない。しかも遮蔽物もろくにない、独房の中。

 津波に等しい勢いで迫る、弾幕。アーサーと共に『盾の呪文』を張るのが精一杯。

 

 しかし、その時『透明化呪文』が掛けられた、スタングレネードが、彼等の足元を転がった。

 

 炸裂、閃光、轟音。

 

 キリコとアーサーは無事、目の前に、瓦礫が投げられ、光を遮ったからだ。

 

 だが、誰が。

 

「───!」

 

 振り向いた先に居たのは、三年の頃から長く世話になったあの男。不気味さと不信さを、これでもかとばら蒔く、あの男。

 

「ご無事でぇすか? キィリコさぁん」

 

 あの、『非合法マグル用品専門店 プランバンドール』の武器商人が、此処に居た。

 何故此処に、その疑問はさておき、相手が怯んでいる隙を突き、ATを一気に練り上げる。

 

アーマード・ロコモーター(装甲起兵)

 

 完成したノーマルのスコープドッグに、肥大化させたAKを持たせ、二人の首を掴み、ローラーダッシュが駆ける。

眩んだ兵士を吹き飛ばしながら、キリコは、どうして、と問う。

 

「いやぁ、戦場で商品を調達すぅるのも良いんですぅが、やはりぃ最新鋭は難しくてでぇすね。それで偶にこうしぃて、ワザと捕まって、仕入れているですよぉ」

 

 開いた口が塞がらないというが、キリコは正にその心境だった。

 尤も自分も幾度なく同じことをしているのに加え、お蔭で助かったので、文句を言える筈もない。

 

「では行ってきますぅ、いい混乱になってますからぁ」

 

 周りを少し見てみると、状況は更に混迷へと突入していた。

 脱獄が脱獄を呼び、巻き込み雪崩となり、暴動が暴動へ、そして虐殺へとなだれ込む。今まで受けてきた拷問が生み出した恨みつらみが、因果を辿り兵士を襲う。

 

 人間性の欠片も無い、思いのまま叫び、笑い合いながら、泣きながら、兵士と民間人が殺し合いを演じている。

 それを他所に、キリコは走る。

 この混乱は強力だが、長続きはしないだろう。何時も通りに戻れば、もうチャンスはない。

 目指すは滑走路、ただ一つ。

 

 その前に、アーサーをATから降ろす。

 

「君は、一体どうするつもりなんだ」

「俺はやることがある、先に逃げろ」

「待て! 待つんだ!」

 

 アーサーはただ、キリコを心配していただけなのだ。

 彼にとってはまだ、十七歳になったばかりの子供。それがマグルの武器を片手に、人を殺しながら、こんな所まで来るのは、とうてい見逃せるものではない。

 

 それを知っているからこそ、キリコは走る。

 彼は知っていた、アーサーのような人間ほど、俺に近づけば死んでいくと。

 

 遠くなるアーサーの声は、既に銃声の音で掻き消されていた。

 銃声の音、どうやら兵士から奪ったらしい銃を、囚われていた民間人が撃ちまわしているらしい。だが素人が制御できる筈もなく、周囲に無差別な脅威を振りまくだけだ。

 

「…………」

 

 キリコはその混沌へ向かって、ローラーダッシュを走らせる。AT一機ギリギリの幅は、逃げるスペースを与えず、兵士も民間人も吹き飛ばす。

 

 一時の静寂が、場を包む。

 

 兵士も、民間人も、その異様な風体に、思考を止めた。

 次に訪れるのは、民間人のパニック。

 続けて起こるのは、兵士の反撃。

 

 至近距離からの銃撃は、ATの装甲を貫通するに十分な威力を持っていた。しかしそれらは全て、奇跡的……兵士にとっては不幸な角度で装甲に当たり、弾き飛ばす。

 兵士達は、人型兵器と戦うべきか、逃げる囚人を追うべきか、内心戸惑っていたのだ。これはそれが結果に表れたのである。

 

 無情な反撃が、兵士達を襲い、瞬く間に吹き飛ばす。

 ロケットランチャーでもあれば話は別だったのであろうが、彼等にとって屋内で使用できる戦車など、前代未聞。狭い通路、有効打にならない武器。拷問棟からの脱出は、あっさり成功した。

 

「…………!」

 

 ターンピックがキリコを救う。

 既に、ATのことを含めて、連絡が行っていたのだろう。

 拷問棟から現れたキリコを襲ったのは、重装歩兵による、ロケットランチャーの歓迎だった。

 

 ターンピックが地面を撃ち、その場からATをずらす。

 直撃を躱し、けん制として左右に放たれていたロケットを、AKで撃ち落とす。

 

 第二射が撃たれた、瞬間、杖を振り、ロケットを彼等の目前で静止させる。

 掃射、誘爆、自滅。

 加害範囲に巻き込まれ歩兵がバラバラに吹き飛ぶ。そして陣形が崩れ、突破口へ導く。

 

 その時キリコの耳元に、何か、が火を吹く音が、連続して聞こえた。

 再びターンピックをかけ一瞬だけ停止、走り出す。予測タイミングが擦れ、僅か後ろにミサイルが着弾。

 

 ターレットを遠距離スコープに変え空を見ると、そこには計六機にも及ぶ、戦闘ヘリの空挺部隊が待ち構えていた。

 

 次々に、キリコの進路を予測して撃たれるミサイル。

 しかし、ピックやローラーダッシュによる急激な可変速が、全てを無駄弾に変える。

 

 ならば移動を制限すればいい。

 戦闘ヘリに乗せられたガトリングが火を吹き、同時にバイクに搭乗した、重装歩兵のランチャーがATを円状に包囲していく。

 

 だが。

 偶然にもランチャーは外れ。

 偶然にも弾は上手く弾かれ。

 偶然にも当たったランチャーは不発。

 

 不意に、上空へ、AKを一発一発、撃つ。

 

 『異能』の力か、『技量』の力か。

 全てがウィーク・ポイントへ、導かれるように入り込み、六機中四機が、墜落。

 しかもその墜落コースは丁度、重装歩兵の密集地帯。

 

 しかしここで、AKが弾切れ。

 

 カチ、カチと、意味のないトリガーの音が、兵士達に逆転のチャンスが来たと錯覚させる。

 戦闘ヘリも同じく、錯覚。

 確実にミサイルを命中させようと、距離を詰めたのが命取りとなった。

 

 AKを、少し上に投げながら手放す。

 そのAKは、まるで銃の弾のように、アームパンチで殴り飛ばされ、ヘリに向けて打ち出された。

 

 AKが丁度ローターに挟まり、制御不能に。

 墜落コースの真下を、キリコが潜り抜けた───瞬間に、墜落し爆発。

 爆風に阻まれ、追えなくなった兵士の一人が、呟いた。

 

「ば、化け物……」

 

 キリコは滑走路傍にある格納庫へ入ると、まず入り口や、侵入経路を、全て呪文で塞いだ。

 次に爆破呪文を使い、自分が乗る一機を残し、戦闘機を破壊し始める。

 

 ただ奪っただけでは追撃される危険がある。その可能性を断つために、しっかりと念入りに破壊しなくてはならない。

 壁の外から、銃撃や砲撃音が聞こえてくるが、兵器庫は頑丈に建てられるのが常、暫くは大丈夫だろう。

 

 それでも、急がなければならないことに、変わりはない。

 素早く丁寧に破壊しつくした所で、自分自身に酸素確保用の『泡頭呪文』と、耐G用の『耐圧呪文』を掛け、戦闘機に乗り込む。

 出撃通路は自分で塞いだが、爆破呪文でこじ開ければいい。

 そう考え杖を構える、しかし呪文を使うまでもなく、今から破壊しようとしていた壁が、爆音と共に崩落した。

 

「発見! ブラッドを発見!」

「…………!」

 

 C4により壁を破壊し、突入してきた兵士達。

 戦闘機を中心に、一気に包囲されるキリコ。

 まだエンジンは掛かっておらず、発進してからの強行突破もできない。

 まさしく、絶対の危機である。

 

「目標! キリコ・ブラッド・キュービィー!

目的! 対象の抹殺!」

 

 部隊長と思われる一人が、天高く腕を掲げる。

 それが振り下ろされると同時に、あらゆる武器の一斉射が、放たれた。

 

 と、同時に。

 天高くから、天井をぶち破り、影が降りた。

 

アレスト・モメンタム(停止せよ)!」

 

 戦闘機に当たる直前で、全てが止まり、地面に落ちる。

 崩落の煙から、一人姿を現したのは

 

「…………!?」

「大丈夫か! キリコ君」

 

 逃げた筈のアーサー・ウィーズリーだった。

 切り傷、打撲、銃傷。

 彼の体は、最初見た時よりも、ボロボロになっていて、思わず呟く。

 

「その傷は……」

「何、マグルの人達が逃げるのを、助けていたんだ」

 

 彼は、マグルを助けて、裏切られて、此処に来た。

 それでも尚、マグルを守っていたのだ。

 どれ程のお人好しなんだ、キリコは、思わず呆然としてしまった。

 

 突然の襲撃に、同じく止まっていたマグルの攻撃が再開する。

 しかし、アーサーが防ぎ、戦闘機を死守する。

 

「キリコ君! 君が何をしようとしてるかは分からない!」

 

 機関銃の如き厚さの、失神呪文が、兵士達を吹き飛ばす。

 

「本当は、子供にやらせてはならないことなんだろう。けれど! 君はそれをやろうとしている!」

 

 ロケットランチャーを迎撃するが、破片が体中に突き刺さる。

 助けたい、援護したい。

 だが一度閉めたキャノピーは、開きはしない。

 

「なら、私はそれを全力で助ける! 子供でも大人でも、命を掛ける勤めなら!」

 

 不意打ちの手榴弾が、片足を抉る。

 血を吹き出しながら、激痛を食いしばり、立ち塞がる。

 

「キリコ君! お願いだ、家族に伝えて欲しい!」

 

 エンジンが掛かる。

 炎が噴き出し、動き出す。

 早く、早く、キリコの願いを嘲笑うように、ゆっくりと。

 

「私は、魔法族の為、マグルの為、人々の為に戦ったと! そして───」

 

 加速が始まり、兵士を吹き飛ばす最中。

 轟音の最中、確かに聴いた。

 

「───『愛している』と!!!」

 

 全てが、一つの線になる。

 体中に掛かる圧が強くなり、浮遊感が、空に飛び出したことと、脱出できたことを告げる。

 

 ……後ろから来る攻撃は、一つもなかった。

 聞こえたのは、巨大な爆発音だけだった。

 

(……燃える、崩れる、何もかもが。

 体を突き抜ける風と共に、繰り返して、過ぎる過去が、俺に絡みついていた。

 振りほどけないそれを引き摺りながら、俺は目指す。

 

 ───『ヌルメンガード』

 

 そこに、過去があると信じて)




ヌルメンガードとは、より大きな善のこと。
数千年を経て、歴史の底に姿を隠した超存在を追って、キリコが走る。
ヌルメンガードの長の罪とは。
長の罪の審判者とは。
全てを捕えて苛む牢獄に、世界のルーツを求めて、キリコが彷徨う。
次回「因縁」。
キリコは追い、そして追われる。




殺してよかったのかな……
未だに迷ってます。
しかし『マグル作戦』が魔法族への悪感情を極限まで高める内容である以上、親マグル派のアーサーさんが死ぬのは、作戦を書いた時点で半ば決めていたことではあります。
それにキリコの回りの人も大体死んでいるので、このSSでもそのジンクスは守らねばならず、結果アーサーさんに白羽の矢が立ってしまいました。
こういう展開は、書いてて正直辛いです。

せめて、キリコを敵に回した連中は全滅するようにします。
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