【完結】ハリー・ポッターとラストレッドショルダー   作:鹿狼

80 / 91
評価数が100に到達しました!
嬉しい!
有り難う御座います!
では今回で死の秘宝Part1は終わり……の前に、もう一戦挟んでおきましょう。
主人公なんだから、一回位まともに戦わないとね。


第六十八話 「遭遇」

 マルフォイ邸から逃げ切ったキリコ達は、ビルとフラーの新居である『貝の家』に避難していた。

 しかし、そこでの生活は到底穏やかとは言えなかった。

 

「パパが……死んだ……だって?」

「……ああ」

 

 キリコは当時の状態を重重しく語る、あの時の言葉を一字一句間違えないように。

 彼の意思を正しく伝える為。

 

「『愛している』、そう伝えてくれと頼まれた」

「……そんな」

 

 力なく床に崩れるロンと、絶句し続けるビル。

 ……当たり前だ、あいつが自分の子供達を深く愛していたのは俺も強く感じていた、あいつらも同じように感じていたのだろう。

 その痛みが大きくない筈がない。

 

「マグルを庇ったせいで捕まって……キリコだけじゃなく、またマグルを庇ったっていうの……?」

「……そのマグルに、最後は殺された、のか、父さんは」

 

 恨みを綴る余裕すらなく、直視できない父親の死に、呆然とするばかり。

 悲しみも恨みも考えられず、白痴の中に残されたのは、一つの疑問。

 

「どうしてパパは、そこまでしてマグルを庇ったんだ……? 何でそこまでできたの……?」

「人が良すぎる……! 馬鹿だ、馬鹿だよ……! 家族を残して……まだ、何も返せてないのに……!」

 

 とどのつまりはお人好し、困っている人が居たら手を出さずにはいられないというサガ。

 善人だからこそヤツは死ぬことになったのだ。

 その馬鹿に、俺もまた助けられた。

 幾度となくそういった馬鹿に、助けられてきた。

 『異能』がそうさせたのか、そんなことはどうでもいい。

 

「……パパって凄いんだね」

「……どうして、そう思った?」

「僕じゃきっと、できないから」

「……そうだな、本当に……凄い」

 

 アーサーの意志が受け継がれるのかどうかは分からない、憎しみを抱いて動くことを、俺は否定できない。

 俺もまた復讐者なのだから。

 今はこれで良い、忘れ去られることさえなければ。

 

 俺は俺のなすべきことをしなければならない、アーサーの意志を無駄にはしたくない。

 懐から、一枚の手紙を取り出す。

 ヌルメンガードから脱出した際、いつの間にか入れられていた物。

 名前の所には『エディア』と書かれていた。

 

 

 

 

『ワイズマンの存在は、私もロッチナも既に確信している。

 我々の存在、アストラギウスと化した世界、全てが証拠となる。

 私もワイズマンを追う者の一人だ、PSの誇りを穢した奴を許す訳にはいかない。

 故に、お前にこれを教える。

 恐らく、ヤツが関わっているからだ。

 

 三大魔法学校対抗試合の時、お前が参加したのは、何者かがゴブレットに名前を入れたからだ。

 事件の黒幕は『バーテミウス・クラウチ・ジュニア』、そいつが名前を入れたと、考えている筈だろう?

 

 違う、クラウチは貴様の名前を入れてはいなかった。

 

 ロッチナの護衛として動くことで知った真実、本来はハリーをヴォルデモートが殺し、大会で警備が手薄になった時、お前をクラウチが襲う予定だった。

 しかし、何者かが名前を入れたことで頓挫したのだ。

 

 死因を覚えているか? 真実を吐かせる為に飲ませた『真実薬』に毒殺されたことを。

 公的には、秘密を守り抜く為、事前に毒を入れていたとされている。

 

 もう分かるだろう、毒を入れたのもクラウチではない。

 クラウチは殺されたのだ、お前を参加させた何者かに。

 

 私から伝えるべき情報は以上だ、これとお前の持つ情報を繋ぎ、神の住処が暴かれることを期待している。

 その時が、我々の最後の再会の時だ』

 

 

 

 

 ……何ともあいつらしくないが、それ程ワイズマンへの憎しみが強いのだろう。

 自分の生まれも、戦いも、あまつさえ決着までも茶番だと知って、どうして何も感じずにいられるのか。

 

 しかしお陰でキリコは、一つの結論を得た。

 

 まずワイズマンはどうやって名前をゴブレットに入れたか。

 年齢線を誤魔化す為には強力な『錯乱の呪い』が必要、ホグワーツ生徒にそこまでの実力者は居ないので『服従の呪文』による代行は不可能。

 教員も不可能、『足』が残りかねない。

 

 残る手段は一つ、自分自身で入れるしかない。

 ……そう、如何なる手段を用いたかは分からないが、ワイズマンは今生身の肉体を手に入れている。

 

 だとすれば、もう一つの手掛かりも証明できる。

 一年の時、禁書棚に居た謎の黒ローブ。呪いを掛けた本やタイミングからして、キリコ個人を狙った犯行なのは間違いない。

 そしてあの時点でキリコの特異さを知っている存在は、ホグワーツ内には誰も居ない。

 

 もし遠距離から手を下す手段があったなら、わざわざ自分から呪いを掛けに行く筈がない。

 そして呪いの強力さから考えれば、あれがワイズマンだったのは疑う余地すらなくなる。

 

 生身の肉体。

 ホグワーツの情報を24時間以内に知れる場所。

 キリコの動向を掴み続けられる場所。

 

(ワイズマンの居場所、神の住処は、ホグワーツの何処かだ……!)

 

 神の潜む地とは、ホグワーツだった。

 あれだけ捜索しても見付からなかったが、ヤツは間違いなくそこに居る。

 キリコは完全なる確信を手に入れた。

 もしそれが、クエントと同じだとするならば……

 

 

*

 

 

 二か月が経過し、ハリー達がグリンゴッツへ銀行破りに行った頃。

 ホグワーツ湖に浮かぶ小さな小島に、ヴォルデモートが降り立った。

 

「……漸く見つけたぞ、まさか貴様が持っていたとはな……ダンブルドア」

 

 この小島はダンブルドアの墓であり、遺体が安置されている場所。

 ヴォルデモートは此処にある物を取りに来たのだ……死の秘宝が一つ、『ニワトコの杖』を。

 

 彼がニワトコの杖を欲したのは、それが自らを最強にすると信じているからだけではない。

 四年の時ハリーを殺せなかった理由は、杖にあると考えた。

 そこで杖作りの職人オリバンダーを拷問し、『兄弟杖故に共鳴した』と突き止めたのだ。

 

 一先ず自分以外の杖として、ルシウスの杖を使った。

 だが俺様の力に耐えきれず、そのまま砕けてしまった。

 もう一度オリバンダーを拷問した、『俺様の力に耐えうる杖は何だ?』と。

 奴は『ニワトコの杖をおいて他にない』と答えた。

 まさか死の秘宝などというものが存在していたとは……魔法界の生まれでないばかりに、こんな失態を犯すとは思ってもみなかった。

 

 ヴォルデモートは感慨深く墓を見つめる。

 誰か……大方キリコだろうが、杖の在りかを知っているゲラートを連れ出されたせいで、捜索が大幅に遅延する羽目になってしまった。

 

 しかし、そのニワトコは遂に今俺様の目の前にある。

 これで俺様は最強になることができる。

 兄弟杖故の共鳴も起こらず、確実にポッターを殺す事ができる。

 何よりこれがあれば、ワイズマンを越える事ができる。

 

 墓石を動かし、剥き出しになった棺桶を解き放とうとする。

 だがそれは、一発の銃声に遮られる。

 

「……貴様か」

 

 ヴォルデモートは既に、誰なのか確信していた。

 マグルの武器を使用する魔法使いなど、魔法界広しといえども奴しか居ない。

 悍ましき血にして、ポッター同様滅ぼすべき存在、あってはならない俺様以上の不死。

 ───キリコ!

 

「…………」

 

 墓石を挟み、対になる場所に、キリコは立つ。

 

「何をしにきた?」

「ニワトコの杖をお前に渡す訳にはいかない」

「……成程、オリバンダーから聞いたか、此処のことは……グリンデルバルトからだな?」

 

 キリコはハリー達が銀行破りに行く直前になり、ヴォルデモートがニワトコの杖を狙っている事をオリバンダーから知った。

 但し杖の場所を知ったのは、単にニワトコの杖を処分する計画の、協力者だからである。

 危なかった、もう少し遅れていれば、全てが無駄になるところだった。

 キリコは少しだけ安堵する。

 しかし、その存在を知られるのはまだ不味い。

 

「だがグリンデルバルトを脱獄させて何をするつもりだ? 

 まさかあのような老いぼれ一人加われば、俺様に勝てるとでも考えているのか?」

「知りたかっただけだ、ワイズマンのことを」

 

 ヴォルデモートが目を見開き、まさしく衝撃の表情を浮かべた。

 だがすぐ納得した顔に戻る。

 それもそうだ……むしろワイズマンに関しては、キリコの方が詳しいではないか。

 

 対するキリコもまた、今の反応で確信する。

 『ヴォルデモートの背後にはワイズマンが居る』という、ゲラートの言葉を。

 なら教えなくてはならない、ヤツがどのような存在なのか。

 

「どんな寵愛を受けたのか知らないが、ヤツはお前を利用しているだけだ」

「フン、そんなことはとうに知っている。

 ワイズマンの正体も……貴様の不死の正体、『異能生存体』も!」

「…………!」

 

 馬鹿な、何故知っている。

 ヤツは俺の不死のカラクリを呪文だと考えていた筈。

 それにどうやって、ワイズマンの正体を知ったんだ。

 キリコの困惑を見抜いたように、ヴォルデモートは語り出す。

 

「魔法省、神秘部での戦い。

 俺様はそこで、ポッターと俺様を繋ぐ予言を手に入れた」

「………」

「しかし違っていた、ルシウスはあろうことか予言を取り違えていたのだ!」

「……まさか」

「そう! 偶然……いや、今考えればあれも神の御業だったのだろう。

 俺様が手にした予言は『ペールゼン・ファイルズ』だった!」

 

 そうか! 過去の全てが記されたあの予言か!

 何という事だ、結局ヤツの手に渡ってしまったのか。

 ……だが何故だ、予言は予言に記された人物しか見れない。

 アストラギウスなど全く関係ないヴォルデモートが、どうして見れたのか。

 瞬間、ゲラートの言葉が再び脳裏を過る。

 『魔法省、神秘部こそ奴の五臓六腑なのだ』

 気付きを得たキリコに、答えを述べる。

 

「妙に思った、俺様が一切関係ない予言を、俺様が見れたのだから。

 その時突然目の前に現れたのだ、黒いローブを深くまで被った何者かが」

「黒いローブだと……!?」

「そいつは言った、その予言をしたのも、誰でも見れるようにしたのも自分だと。

 俺様は何者だと尋ね、奴は答えた───『ワイズマン』と!」

 

 

 

 

 ワイズマンは言った、手伝ってやろうと。

 当然ヴォルデモートは拒絶代わりの死の呪いを撃ち込んだが……当たったにも関わらず、平然と立っていた。

 驚く彼を他所に、語り出す。

 『私はキリコを狙い、お前はポッターを殺す。

 それまではお互いに協力すべきだ、それが最善の手段』

 

 ……ヴォルデモートは、提案を飲んだ。

 死の呪いを無力化した時点で、忌々しいが今勝てる相手ではないと理解したからだ。

 ワイズマンの神託は、まずイギリス、ダンブルドアからでなく、世界を滅ぼすことだった。

 最初に世界が大混乱に陥れば、国は勿論ダンブルドアもまともには動けなくなる。

 その隙を突き、殺す方がより効率的。

 この神託に納得したヴォルデモートは、そのアイデアを元に『マグル作戦』を立案、見事成功した。

 

 裏でワイズマンも暗躍していた、各国のネットワークを使い、軍事基地や国の警備・防衛システムを無力化。

 またヴォルデモートの望む『純血による支配社会』の為に、発射される核ミサイルを調整、世界そのものが滅ばない様にしていた。

 

 しかし突然、協力関係は崩れた。

 ワイズマンが絶対の力を持って、各地の街や施設を守る結界を破壊しだしたのだ。

 当然ヴォルデモートは、ワイズマンに問い詰めた。

 『これでよい、魔法族とマグルによる闘争こそが、人類の進化を呼ぶ』

 

 ……最初から利用されていることは分かっていた、その上で利用してやろうと考えていた。

 だがこれは何だ?

 蓋を開けてみれば、何から何まで踊らされっぱなしではないか!

 やらねばならない……神の打倒を!

 奴の不死を暴き、殺し切れるほどの力を!

 

 

 

 

「だからこそ、俺様は今こうして、ニワトコの杖を奪いにきたのだ。

 お前にとってもワイズマンは怨敵。

 ここで俺様が杖を手にすることは、結果的にお前の望みにも繋がる……」

 

 マグル作戦以来の動向を語るヴォルデモート。

 確かに、ワイズマンを殺す手段が増えるのは決して悪くはない。

 ……が、所詮はそれだけだ。

 

「くどい」

「……ほう?」

 

 セドリック、キニス、アーサー。

 あいつらの死にこいつが関わっている、ならやることは何時も変わらない。

 キリコは瞬きもなく、当然のように言い切った。

 

「お前を生かしておく理由はない」

「……そうか、まあ、そうだろうな。

 支配を拒み、支配せんとする者を決して許さぬ、『触れ得ざる者』。

 一度お前に手を出した俺様もまた、例外ではない」

 

 分かり切った返答に、彼は不敵に笑う。

 

「だがそれ故にお前は死ぬこととなる、永遠の命を持つ者は一人で十分なのだから!」

 

 ───速い!

 歴戦のガンマンよりも早く抜かれた杖が、機関砲よりも早く厚く光を放つ。

 炎、水、風、失神、石化、武装解除、磔、服従。

 ありとあらゆる攻撃呪文が、キリコを襲う。

 

 早いのは動きだけではない、呪文自体も目視からの回避では間に合わない程の超速。

 生まれながらのPSですら、ギリギリでしか反応できない。

 反対呪文は間に合わず、魔力消費の多いプロテゴで防ぐのが精一杯。

 ……本当なら消費の少ない反対呪文で防ぐべき。

 だが駄目だ、俺の知らない呪文が多すぎる、知らなければ反対呪文も分からない。

 

 キリコは確かに強い、戦士としては間違いなくヴォルデモートより上だろう。

 しかし魔法使いとしての力は、技量才能共に、ヴォルデモートの方が圧倒的に上。

 所詮魔法を学んで七年ちょっとのキリコと、闇の魔術を極めたヴォルデモートとでは天と地ほどの差がある。

 

 では天と地の狭間を埋める物は何であろうか?

 数々の呪文をプロテゴで防ぐが、その度盾は砕け散る。

 ……だが砕けたと同時に、呪文もまたギリギリで逸らされてしまう。

 続く奇跡的な偶然に、ヴォルデモートが舌打ちをする。

 やはり、異能の力は圧倒的か!

 そう、埋める物の一つは、『異能』である。

 

 生き残らせる、ただその為だけに因果律を捻じ曲げ、挙句魂すら操る呪いのような奇跡。

 このまま闘っても俺様が疲労するだけか。

 

「ならば、これはどうだ!?」

 

 ……何てヤツだ。

 キリコは絶句した。

 制御しきるだけでも相当な鍛錬を必要とする『悪霊の炎』を、三つ同時に展開するとは!

 しかし悪霊の炎の威力は即死……『異能』の発動は避けられない。

 

 そこでヴォルデモートは悪霊の炎をバジリスクの姿に変え、三匹の大蛇によりキリコを取り囲んだ。

 彼を包み込むようにとぐろを巻く大蛇。

 不味い……ヤツの狙いは窒息か!

 彼の目的に気付くキリコは逃れようとするが、狭い小島に逃げ場はない。

 

「『死』に至る前にお前は窒息する、『窒息』は『死』ではない……!」

 

 異能が確実に発動するのは、間違いなく死ぬと分かった状況でのみ。

 窒息という死に直結するか曖昧な攻撃では発動しない!

 そうすればキリコは無力化され、俺様は安全に杖を手にすることができる。

 ヴォルデモートの目的はキリコ打倒……の前に、杖を手に入れること。

 今の彼にとって、キリコは二の次でしかない。

 成す術なく悪霊の密室に閉じ込められたキリコの意識を、確実に削り取って行く。

 

 密室内の空気は炎によって瞬く間に食い潰され、数秒でゼロになるだろう。

 では杖を頂くとするか。

 ヴォルデモートは火の檻を放置し、墓へ向かう。

 土を退かし、棺桶を開けようとする。

 重い蓋が擦れ、中身が露に───

 

プロテゴ・マキシマ(最大の防御)!」

 

 肌を焼く殺気を感じ、咄嗟に張られた盾が、攻撃を防ぐ。

 目の前には、巨大な鉄の塊を携えたキリコ。

 どうやって脱出した!?

 その答えは、キリコの足元の沼にある。

 『ウィーズリー兄弟特性泥沼ジェットコースター改! 床も地面も突き抜けて一層スリリングに!』

 これを使い、キリコは脱出していたのだ。

 

 彼の傍らに浮かぶ鉄の塊は、『M61 20mmガトリング砲 通称『バルカン』』。 

 本来固定したりATに持たせるべきそれを、呪文で宙に浮かせることで保持。

 毎秒約100発を撃ち込む恐るべき兵器が、ヴォルデモートの視界を完全に埋め尽くしていた。

 

 だがこれを持っても闇の帝王の盾を突破することは叶わない。

 杖を一振り、ただそれだけで残る弾丸が全て停止。

 更に一突き、停止していた数百発の弾丸が、逆にキリコに襲い掛かった。

 

レラシオ(放せ)

 

 キリコはバルカンをそのまま盾にし反撃を防ぐが、それにより残弾が誘爆。

 爆散するバルカンが視界を塞いだ内に、キリコは小瓶を投げつける。

 反撃に警戒していたヴォルデモートは、ほぼ反射的に小瓶を撃ち抜いてしまう。

 

 罠か!

 恐らくは猛毒、それも即効かつ即死を招くような代物に違いない。

 ヴォルデモートの推測は当たっていた、あの小瓶の中身は『バジリスクの複製毒』、凄まじい気化性を持つ劇物。

 吸えば即死確定、故に死なないキリコの切り札になりえた。

 だが正体が分かれば何ということはない、所詮は小細工だ!

 

アグアメンティ・マキシマ(水よ)!!」

 

 水増し呪文が、水を増加させる。

 キリコがその光景を前に、再び唖然とする。

 まさか、ここまでやるのか!

 ヴォルデモートはホグワーツ湖の水を増加させ、超規模の大津波を生み出した。

 そして小島に叩き付け、島諸共バジリスクの毒を押し流す。

 

 全身の骨を折りかねない濁流を、自分自身を一時的に石化することで耐えきる。

 その隙にヴォルデモートが数発の呪文を撃ち込むが、幸い石化という回避方法を取ったことでダメージを避けることに成功する。

 しかし津波の勢いで、キリコは彼方まで流されてしまった。

 

 ……今の内だ、とヴォルデモートが墓に駆け寄る。

 今の内に杖を手に入れてしまおう、急げ、あいつは直ぐに戻ってくる!

 ヴォルデモートがダンブルドアの棺の蓋を、一気に退かした。

 ……この時焦っていなければ、対処できたのに。

 

「──は?」

 

 棺桶が炎上した。

 蓋の中から炎が上がり、超高温を示す青色に。

 立て続けに飛来したのは、ブラッドが作り出した『悪霊玉』。

 呆然と立つヴォルデモートの反応は間に合わず、ダンブルドアの墓が消滅していく。

 

「……何を」

 

 いつの間にか戻ってきていたキリコに、彼は叫んだ。

 

「何をした! キリコ・キュービィー!」

「……お前が作り出した『水』を、変えただけだ。

 『ポリマーリンゲル液』に」

 

 ペールゼン・ファイルズに記されていたあの液体。

 三大魔法学校対抗試合の二戦目で、ジュニアが報告してきた液体。

 極めて高い引火性を持つ、危険な液体。

 そして、空気に触れれば激しく反応する特徴。

 

「お前が空けた隙間からPR液が入り、棺を満たしていた。

 蓋を一気に退かしたことで、入り込んだ空気と反応した、ただそれだけだ」

 

 杖を奪われなければそれでよかった……そう言い切るキリコを前に、彼は絶句する。

 唖然、としか形容できない。

 やることが狂ってる、どうしてそんなことができるのか。

 

 見事キリコの罠に引っ掛かった自分と、キリコが投げた悪霊玉によって、塵一つ残らず燃えるダンブルドアの棺。

 かくしてニワトコの杖は、彼の遺体諸共、完全抹消されたのである。

 ヴォルデモートも、確認するのは無駄だと分かっていた。

 

「……愚かな」

「…………」

「貴様は何という愚かなことをしたのだ! 死を超越する絶対的な力! 神をも殺し切る程の秘宝!

 それを……それをお前は抹消したのだ!

 自分のしでかしたことを分かっているのか!?

 何ということを……あれが……どれだけ素晴らしい物だったのか……」

 

 死の秘宝の一つを、平然と消し去る。

 理解できない、意味が分からない。

 ヴォルデモートはひたすらに吼える、それが何の意味もないと分かっていても。

 

「……続けるのか?」

「……既に、意味はない。

 俺様にはまだ、すべきことが残っているのだ。

 心に刻めキリコ、俺様は予言しよう、次会う時が、お前の最後だと……!」

 

 『姿くらまし』で消えるヴォルデモートを、キリコは見送る。

 ニワトコの杖など、所詮はただの道具に過ぎない。

 にも関わらずあれ程こだわる姿は、いっそ滑稽にすら見える。

 彼にはまるで理解できなかった、不死を求める姿勢も、最強に固執する訳も。

 

(立ち昇るポリマーリンゲル液の黒煙が、空を覆い隠していく。

 この暗雲は、今の世界そのものだ。

 雲の上に居座る神の視線が、今も俺に纏わりついていた。

 だが、それを引き千切る時は、もう直ぐそこまで来ている)




ホグワーツが発する、暗く巨大な引力が、
天の川銀河に文明の光を産み落とす。
錯綜する戦術と陰謀。
目に見えぬ無数の導火線に火が走る。
消えて居ずとも力強い、あの賢者、あの瞳が蘇る。
次回「凶兆」。
ホグワーツの大地が震える。



敵に奪われたくなければ、破壊してしまえばいい。
当初の予定では上から戦車を落として大爆発☆。
もしくはホグワーツ湖がまた大爆発☆
の予定でした。
バトルシーンって難しいね。

これでこのSSからニワトコの杖は永久退場です、お疲れさまでした。
次回から遂に死の秘宝Part2に突入です。
……あれ、あと7話で終わるのかこれ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。