嬉しい!
有り難う御座います!
では今回で死の秘宝Part1は終わり……の前に、もう一戦挟んでおきましょう。
主人公なんだから、一回位まともに戦わないとね。
マルフォイ邸から逃げ切ったキリコ達は、ビルとフラーの新居である『貝の家』に避難していた。
しかし、そこでの生活は到底穏やかとは言えなかった。
「パパが……死んだ……だって?」
「……ああ」
キリコは当時の状態を重重しく語る、あの時の言葉を一字一句間違えないように。
彼の意思を正しく伝える為。
「『愛している』、そう伝えてくれと頼まれた」
「……そんな」
力なく床に崩れるロンと、絶句し続けるビル。
……当たり前だ、あいつが自分の子供達を深く愛していたのは俺も強く感じていた、あいつらも同じように感じていたのだろう。
その痛みが大きくない筈がない。
「マグルを庇ったせいで捕まって……キリコだけじゃなく、またマグルを庇ったっていうの……?」
「……そのマグルに、最後は殺された、のか、父さんは」
恨みを綴る余裕すらなく、直視できない父親の死に、呆然とするばかり。
悲しみも恨みも考えられず、白痴の中に残されたのは、一つの疑問。
「どうしてパパは、そこまでしてマグルを庇ったんだ……? 何でそこまでできたの……?」
「人が良すぎる……! 馬鹿だ、馬鹿だよ……! 家族を残して……まだ、何も返せてないのに……!」
とどのつまりはお人好し、困っている人が居たら手を出さずにはいられないというサガ。
善人だからこそヤツは死ぬことになったのだ。
その馬鹿に、俺もまた助けられた。
幾度となくそういった馬鹿に、助けられてきた。
『異能』がそうさせたのか、そんなことはどうでもいい。
「……パパって凄いんだね」
「……どうして、そう思った?」
「僕じゃきっと、できないから」
「……そうだな、本当に……凄い」
アーサーの意志が受け継がれるのかどうかは分からない、憎しみを抱いて動くことを、俺は否定できない。
俺もまた復讐者なのだから。
今はこれで良い、忘れ去られることさえなければ。
俺は俺のなすべきことをしなければならない、アーサーの意志を無駄にはしたくない。
懐から、一枚の手紙を取り出す。
ヌルメンガードから脱出した際、いつの間にか入れられていた物。
名前の所には『エディア』と書かれていた。
『ワイズマンの存在は、私もロッチナも既に確信している。
我々の存在、アストラギウスと化した世界、全てが証拠となる。
私もワイズマンを追う者の一人だ、PSの誇りを穢した奴を許す訳にはいかない。
故に、お前にこれを教える。
恐らく、ヤツが関わっているからだ。
三大魔法学校対抗試合の時、お前が参加したのは、何者かがゴブレットに名前を入れたからだ。
事件の黒幕は『バーテミウス・クラウチ・ジュニア』、そいつが名前を入れたと、考えている筈だろう?
違う、クラウチは貴様の名前を入れてはいなかった。
ロッチナの護衛として動くことで知った真実、本来はハリーをヴォルデモートが殺し、大会で警備が手薄になった時、お前をクラウチが襲う予定だった。
しかし、何者かが名前を入れたことで頓挫したのだ。
死因を覚えているか? 真実を吐かせる為に飲ませた『真実薬』に毒殺されたことを。
公的には、秘密を守り抜く為、事前に毒を入れていたとされている。
もう分かるだろう、毒を入れたのもクラウチではない。
クラウチは殺されたのだ、お前を参加させた何者かに。
私から伝えるべき情報は以上だ、これとお前の持つ情報を繋ぎ、神の住処が暴かれることを期待している。
その時が、我々の最後の再会の時だ』
……何ともあいつらしくないが、それ程ワイズマンへの憎しみが強いのだろう。
自分の生まれも、戦いも、あまつさえ決着までも茶番だと知って、どうして何も感じずにいられるのか。
しかしお陰でキリコは、一つの結論を得た。
まずワイズマンはどうやって名前をゴブレットに入れたか。
年齢線を誤魔化す為には強力な『錯乱の呪い』が必要、ホグワーツ生徒にそこまでの実力者は居ないので『服従の呪文』による代行は不可能。
教員も不可能、『足』が残りかねない。
残る手段は一つ、自分自身で入れるしかない。
……そう、如何なる手段を用いたかは分からないが、ワイズマンは今生身の肉体を手に入れている。
だとすれば、もう一つの手掛かりも証明できる。
一年の時、禁書棚に居た謎の黒ローブ。呪いを掛けた本やタイミングからして、キリコ個人を狙った犯行なのは間違いない。
そしてあの時点でキリコの特異さを知っている存在は、ホグワーツ内には誰も居ない。
もし遠距離から手を下す手段があったなら、わざわざ自分から呪いを掛けに行く筈がない。
そして呪いの強力さから考えれば、あれがワイズマンだったのは疑う余地すらなくなる。
生身の肉体。
ホグワーツの情報を24時間以内に知れる場所。
キリコの動向を掴み続けられる場所。
(ワイズマンの居場所、神の住処は、ホグワーツの何処かだ……!)
神の潜む地とは、ホグワーツだった。
あれだけ捜索しても見付からなかったが、ヤツは間違いなくそこに居る。
キリコは完全なる確信を手に入れた。
もしそれが、クエントと同じだとするならば……
*
二か月が経過し、ハリー達がグリンゴッツへ銀行破りに行った頃。
ホグワーツ湖に浮かぶ小さな小島に、ヴォルデモートが降り立った。
「……漸く見つけたぞ、まさか貴様が持っていたとはな……ダンブルドア」
この小島はダンブルドアの墓であり、遺体が安置されている場所。
ヴォルデモートは此処にある物を取りに来たのだ……死の秘宝が一つ、『ニワトコの杖』を。
彼がニワトコの杖を欲したのは、それが自らを最強にすると信じているからだけではない。
四年の時ハリーを殺せなかった理由は、杖にあると考えた。
そこで杖作りの職人オリバンダーを拷問し、『兄弟杖故に共鳴した』と突き止めたのだ。
一先ず自分以外の杖として、ルシウスの杖を使った。
だが俺様の力に耐えきれず、そのまま砕けてしまった。
もう一度オリバンダーを拷問した、『俺様の力に耐えうる杖は何だ?』と。
奴は『ニワトコの杖をおいて他にない』と答えた。
まさか死の秘宝などというものが存在していたとは……魔法界の生まれでないばかりに、こんな失態を犯すとは思ってもみなかった。
ヴォルデモートは感慨深く墓を見つめる。
誰か……大方キリコだろうが、杖の在りかを知っているゲラートを連れ出されたせいで、捜索が大幅に遅延する羽目になってしまった。
しかし、そのニワトコは遂に今俺様の目の前にある。
これで俺様は最強になることができる。
兄弟杖故の共鳴も起こらず、確実にポッターを殺す事ができる。
何よりこれがあれば、ワイズマンを越える事ができる。
墓石を動かし、剥き出しになった棺桶を解き放とうとする。
だがそれは、一発の銃声に遮られる。
「……貴様か」
ヴォルデモートは既に、誰なのか確信していた。
マグルの武器を使用する魔法使いなど、魔法界広しといえども奴しか居ない。
悍ましき血にして、ポッター同様滅ぼすべき存在、あってはならない俺様以上の不死。
───キリコ!
「…………」
墓石を挟み、対になる場所に、キリコは立つ。
「何をしにきた?」
「ニワトコの杖をお前に渡す訳にはいかない」
「……成程、オリバンダーから聞いたか、此処のことは……グリンデルバルトからだな?」
キリコはハリー達が銀行破りに行く直前になり、ヴォルデモートがニワトコの杖を狙っている事をオリバンダーから知った。
但し杖の場所を知ったのは、単にニワトコの杖を処分する計画の、協力者だからである。
危なかった、もう少し遅れていれば、全てが無駄になるところだった。
キリコは少しだけ安堵する。
しかし、その存在を知られるのはまだ不味い。
「だがグリンデルバルトを脱獄させて何をするつもりだ?
まさかあのような老いぼれ一人加われば、俺様に勝てるとでも考えているのか?」
「知りたかっただけだ、ワイズマンのことを」
ヴォルデモートが目を見開き、まさしく衝撃の表情を浮かべた。
だがすぐ納得した顔に戻る。
それもそうだ……むしろワイズマンに関しては、キリコの方が詳しいではないか。
対するキリコもまた、今の反応で確信する。
『ヴォルデモートの背後にはワイズマンが居る』という、ゲラートの言葉を。
なら教えなくてはならない、ヤツがどのような存在なのか。
「どんな寵愛を受けたのか知らないが、ヤツはお前を利用しているだけだ」
「フン、そんなことはとうに知っている。
ワイズマンの正体も……貴様の不死の正体、『異能生存体』も!」
「…………!」
馬鹿な、何故知っている。
ヤツは俺の不死のカラクリを呪文だと考えていた筈。
それにどうやって、ワイズマンの正体を知ったんだ。
キリコの困惑を見抜いたように、ヴォルデモートは語り出す。
「魔法省、神秘部での戦い。
俺様はそこで、ポッターと俺様を繋ぐ予言を手に入れた」
「………」
「しかし違っていた、ルシウスはあろうことか予言を取り違えていたのだ!」
「……まさか」
「そう! 偶然……いや、今考えればあれも神の御業だったのだろう。
俺様が手にした予言は『ペールゼン・ファイルズ』だった!」
そうか! 過去の全てが記されたあの予言か!
何という事だ、結局ヤツの手に渡ってしまったのか。
……だが何故だ、予言は予言に記された人物しか見れない。
アストラギウスなど全く関係ないヴォルデモートが、どうして見れたのか。
瞬間、ゲラートの言葉が再び脳裏を過る。
『魔法省、神秘部こそ奴の五臓六腑なのだ』
気付きを得たキリコに、答えを述べる。
「妙に思った、俺様が一切関係ない予言を、俺様が見れたのだから。
その時突然目の前に現れたのだ、黒いローブを深くまで被った何者かが」
「黒いローブだと……!?」
「そいつは言った、その予言をしたのも、誰でも見れるようにしたのも自分だと。
俺様は何者だと尋ね、奴は答えた───『ワイズマン』と!」
ワイズマンは言った、手伝ってやろうと。
当然ヴォルデモートは拒絶代わりの死の呪いを撃ち込んだが……当たったにも関わらず、平然と立っていた。
驚く彼を他所に、語り出す。
『私はキリコを狙い、お前はポッターを殺す。
それまではお互いに協力すべきだ、それが最善の手段』
……ヴォルデモートは、提案を飲んだ。
死の呪いを無力化した時点で、忌々しいが今勝てる相手ではないと理解したからだ。
ワイズマンの神託は、まずイギリス、ダンブルドアからでなく、世界を滅ぼすことだった。
最初に世界が大混乱に陥れば、国は勿論ダンブルドアもまともには動けなくなる。
その隙を突き、殺す方がより効率的。
この神託に納得したヴォルデモートは、そのアイデアを元に『マグル作戦』を立案、見事成功した。
裏でワイズマンも暗躍していた、各国のネットワークを使い、軍事基地や国の警備・防衛システムを無力化。
またヴォルデモートの望む『純血による支配社会』の為に、発射される核ミサイルを調整、世界そのものが滅ばない様にしていた。
しかし突然、協力関係は崩れた。
ワイズマンが絶対の力を持って、各地の街や施設を守る結界を破壊しだしたのだ。
当然ヴォルデモートは、ワイズマンに問い詰めた。
『これでよい、魔法族とマグルによる闘争こそが、人類の進化を呼ぶ』
……最初から利用されていることは分かっていた、その上で利用してやろうと考えていた。
だがこれは何だ?
蓋を開けてみれば、何から何まで踊らされっぱなしではないか!
やらねばならない……神の打倒を!
奴の不死を暴き、殺し切れるほどの力を!
「だからこそ、俺様は今こうして、ニワトコの杖を奪いにきたのだ。
お前にとってもワイズマンは怨敵。
ここで俺様が杖を手にすることは、結果的にお前の望みにも繋がる……」
マグル作戦以来の動向を語るヴォルデモート。
確かに、ワイズマンを殺す手段が増えるのは決して悪くはない。
……が、所詮はそれだけだ。
「くどい」
「……ほう?」
セドリック、キニス、アーサー。
あいつらの死にこいつが関わっている、ならやることは何時も変わらない。
キリコは瞬きもなく、当然のように言い切った。
「お前を生かしておく理由はない」
「……そうか、まあ、そうだろうな。
支配を拒み、支配せんとする者を決して許さぬ、『触れ得ざる者』。
一度お前に手を出した俺様もまた、例外ではない」
分かり切った返答に、彼は不敵に笑う。
「だがそれ故にお前は死ぬこととなる、永遠の命を持つ者は一人で十分なのだから!」
───速い!
歴戦のガンマンよりも早く抜かれた杖が、機関砲よりも早く厚く光を放つ。
炎、水、風、失神、石化、武装解除、磔、服従。
ありとあらゆる攻撃呪文が、キリコを襲う。
早いのは動きだけではない、呪文自体も目視からの回避では間に合わない程の超速。
生まれながらのPSですら、ギリギリでしか反応できない。
反対呪文は間に合わず、魔力消費の多いプロテゴで防ぐのが精一杯。
……本当なら消費の少ない反対呪文で防ぐべき。
だが駄目だ、俺の知らない呪文が多すぎる、知らなければ反対呪文も分からない。
キリコは確かに強い、戦士としては間違いなくヴォルデモートより上だろう。
しかし魔法使いとしての力は、技量才能共に、ヴォルデモートの方が圧倒的に上。
所詮魔法を学んで七年ちょっとのキリコと、闇の魔術を極めたヴォルデモートとでは天と地ほどの差がある。
では天と地の狭間を埋める物は何であろうか?
数々の呪文をプロテゴで防ぐが、その度盾は砕け散る。
……だが砕けたと同時に、呪文もまたギリギリで逸らされてしまう。
続く奇跡的な偶然に、ヴォルデモートが舌打ちをする。
やはり、異能の力は圧倒的か!
そう、埋める物の一つは、『異能』である。
生き残らせる、ただその為だけに因果律を捻じ曲げ、挙句魂すら操る呪いのような奇跡。
このまま闘っても俺様が疲労するだけか。
「ならば、これはどうだ!?」
……何てヤツだ。
キリコは絶句した。
制御しきるだけでも相当な鍛錬を必要とする『悪霊の炎』を、三つ同時に展開するとは!
しかし悪霊の炎の威力は即死……『異能』の発動は避けられない。
そこでヴォルデモートは悪霊の炎をバジリスクの姿に変え、三匹の大蛇によりキリコを取り囲んだ。
彼を包み込むようにとぐろを巻く大蛇。
不味い……ヤツの狙いは窒息か!
彼の目的に気付くキリコは逃れようとするが、狭い小島に逃げ場はない。
「『死』に至る前にお前は窒息する、『窒息』は『死』ではない……!」
異能が確実に発動するのは、間違いなく死ぬと分かった状況でのみ。
窒息という死に直結するか曖昧な攻撃では発動しない!
そうすればキリコは無力化され、俺様は安全に杖を手にすることができる。
ヴォルデモートの目的はキリコ打倒……の前に、杖を手に入れること。
今の彼にとって、キリコは二の次でしかない。
成す術なく悪霊の密室に閉じ込められたキリコの意識を、確実に削り取って行く。
密室内の空気は炎によって瞬く間に食い潰され、数秒でゼロになるだろう。
では杖を頂くとするか。
ヴォルデモートは火の檻を放置し、墓へ向かう。
土を退かし、棺桶を開けようとする。
重い蓋が擦れ、中身が露に───
「
肌を焼く殺気を感じ、咄嗟に張られた盾が、攻撃を防ぐ。
目の前には、巨大な鉄の塊を携えたキリコ。
どうやって脱出した!?
その答えは、キリコの足元の沼にある。
『ウィーズリー兄弟特性泥沼ジェットコースター改! 床も地面も突き抜けて一層スリリングに!』
これを使い、キリコは脱出していたのだ。
彼の傍らに浮かぶ鉄の塊は、『M61 20mmガトリング砲 通称『バルカン』』。
本来固定したりATに持たせるべきそれを、呪文で宙に浮かせることで保持。
毎秒約100発を撃ち込む恐るべき兵器が、ヴォルデモートの視界を完全に埋め尽くしていた。
だがこれを持っても闇の帝王の盾を突破することは叶わない。
杖を一振り、ただそれだけで残る弾丸が全て停止。
更に一突き、停止していた数百発の弾丸が、逆にキリコに襲い掛かった。
「
キリコはバルカンをそのまま盾にし反撃を防ぐが、それにより残弾が誘爆。
爆散するバルカンが視界を塞いだ内に、キリコは小瓶を投げつける。
反撃に警戒していたヴォルデモートは、ほぼ反射的に小瓶を撃ち抜いてしまう。
罠か!
恐らくは猛毒、それも即効かつ即死を招くような代物に違いない。
ヴォルデモートの推測は当たっていた、あの小瓶の中身は『バジリスクの複製毒』、凄まじい気化性を持つ劇物。
吸えば即死確定、故に死なないキリコの切り札になりえた。
だが正体が分かれば何ということはない、所詮は小細工だ!
「
水増し呪文が、水を増加させる。
キリコがその光景を前に、再び唖然とする。
まさか、ここまでやるのか!
ヴォルデモートはホグワーツ湖の水を増加させ、超規模の大津波を生み出した。
そして小島に叩き付け、島諸共バジリスクの毒を押し流す。
全身の骨を折りかねない濁流を、自分自身を一時的に石化することで耐えきる。
その隙にヴォルデモートが数発の呪文を撃ち込むが、幸い石化という回避方法を取ったことでダメージを避けることに成功する。
しかし津波の勢いで、キリコは彼方まで流されてしまった。
……今の内だ、とヴォルデモートが墓に駆け寄る。
今の内に杖を手に入れてしまおう、急げ、あいつは直ぐに戻ってくる!
ヴォルデモートがダンブルドアの棺の蓋を、一気に退かした。
……この時焦っていなければ、対処できたのに。
「──は?」
棺桶が炎上した。
蓋の中から炎が上がり、超高温を示す青色に。
立て続けに飛来したのは、ブラッドが作り出した『悪霊玉』。
呆然と立つヴォルデモートの反応は間に合わず、ダンブルドアの墓が消滅していく。
「……何を」
いつの間にか戻ってきていたキリコに、彼は叫んだ。
「何をした! キリコ・キュービィー!」
「……お前が作り出した『水』を、変えただけだ。
『ポリマーリンゲル液』に」
ペールゼン・ファイルズに記されていたあの液体。
三大魔法学校対抗試合の二戦目で、ジュニアが報告してきた液体。
極めて高い引火性を持つ、危険な液体。
そして、空気に触れれば激しく反応する特徴。
「お前が空けた隙間からPR液が入り、棺を満たしていた。
蓋を一気に退かしたことで、入り込んだ空気と反応した、ただそれだけだ」
杖を奪われなければそれでよかった……そう言い切るキリコを前に、彼は絶句する。
唖然、としか形容できない。
やることが狂ってる、どうしてそんなことができるのか。
見事キリコの罠に引っ掛かった自分と、キリコが投げた悪霊玉によって、塵一つ残らず燃えるダンブルドアの棺。
かくしてニワトコの杖は、彼の遺体諸共、完全抹消されたのである。
ヴォルデモートも、確認するのは無駄だと分かっていた。
「……愚かな」
「…………」
「貴様は何という愚かなことをしたのだ! 死を超越する絶対的な力! 神をも殺し切る程の秘宝!
それを……それをお前は抹消したのだ!
自分のしでかしたことを分かっているのか!?
何ということを……あれが……どれだけ素晴らしい物だったのか……」
死の秘宝の一つを、平然と消し去る。
理解できない、意味が分からない。
ヴォルデモートはひたすらに吼える、それが何の意味もないと分かっていても。
「……続けるのか?」
「……既に、意味はない。
俺様にはまだ、すべきことが残っているのだ。
心に刻めキリコ、俺様は予言しよう、次会う時が、お前の最後だと……!」
『姿くらまし』で消えるヴォルデモートを、キリコは見送る。
ニワトコの杖など、所詮はただの道具に過ぎない。
にも関わらずあれ程こだわる姿は、いっそ滑稽にすら見える。
彼にはまるで理解できなかった、不死を求める姿勢も、最強に固執する訳も。
(立ち昇るポリマーリンゲル液の黒煙が、空を覆い隠していく。
この暗雲は、今の世界そのものだ。
雲の上に居座る神の視線が、今も俺に纏わりついていた。
だが、それを引き千切る時は、もう直ぐそこまで来ている)
ホグワーツが発する、暗く巨大な引力が、
天の川銀河に文明の光を産み落とす。
錯綜する戦術と陰謀。
目に見えぬ無数の導火線に火が走る。
消えて居ずとも力強い、あの賢者、あの瞳が蘇る。
次回「凶兆」。
ホグワーツの大地が震える。
敵に奪われたくなければ、破壊してしまえばいい。
当初の予定では上から戦車を落として大爆発☆。
もしくはホグワーツ湖がまた大爆発☆
の予定でした。
バトルシーンって難しいね。
これでこのSSからニワトコの杖は永久退場です、お疲れさまでした。
次回から遂に死の秘宝Part2に突入です。
……あれ、あと7話で終わるのかこれ?