二度キリコに殺されたワイズマンだが、神の力を殆ど失いつつも生き長らえていた。
二度と現世に介入できなくなってはいたが、チャンスを未だに待ち続けていたのだ。
三千年待ったのだ、今更百年程度、大したことではない。
そしてチャンスは来た。
ある日大規模な時空間の歪みを観測し、それはキリコを中心に発生していた。
異能だ、異能生存体がキリコの魂を生かそうとしているのだ。
このまま朽ち果てるか?
キリコを追い、再起を目指すか?
前者を選ぶ理由はない、ワイズマンはキリコの起こした歪みを利用し、この世界へと転移したのだった。
しかし並行世界への移動という、やったこともない挑戦はそれなりのリスクを持ち、キリコの転生する千年前に、ワイズマンは辿り着いてしまった。
彼等は待つことにした、キリコの転生を。
そしてキリコが生まれるのを促進する為に、あらゆる手を打った。
最初に行ったのは、ホグワーツ創始者の分断であった。
元々純血主義を持っていたサラザール・スリザリンに目を付け、彼を利用。
最終的に彼の体を乗っ取ることに成功し、純血主義を極端に排他的なものへと先鋭化。
後々まで続く魔法界の闘争の、最初の火種を生み出した。
次に行ったのが、魔女狩りだった。
当時の政治家や民衆に対し地道な工作を重ね、魔女を攻撃するように誘導。
魔女狩りから逃れる為に、魔法界は人間界と完全に分離し、お互いの理解、認識の欠如が生まれる。
それは今、『マグル作戦』として結実した。
これらの目的は『戦争』、それ自体にある。
ロッチナの推測通り、彼等はかつての栄華を渇望していた。
戦争による人類の進化、技術革新、宇宙開発。
再び銀河の玉座に座る為に、欲望を満たす為に。
もう一つの側面が、キリコ転生の促進。
激しい戦争が起これば起こる程、キリコの生まれる確率は上がって行く。
二度の世界大戦も、ゲラートを利用したのも、全て戦争の為だったのだ。
最後に打った手が『ブラッド家』の誕生である。
『不死』を直接目指す血統は『異能』を転生させるのに優良な苗床になるだろう……その見込み通り、キリコはブラッド家の子孫として誕生することになる。
キリコ誕生の予兆……時空の歪みを再び観測したワイズマンは、それを利用しある人物を転生させた。
神の目、ロッチナである。
ロッチナは転生の理由を『縁』だと推測したが、それはあながち間違いではなかった。
キリコとの縁がなければ、ワイズマンが転生させる理由はなかったのだから。
かくしてロッチナは、再び神の目として生を受けた。
そしてキリコが誕生した……が、ここで一つの懸念が発生する。
このキリコは、果たして『異能者』なのだろうか?
転生の拍子に異能が消えてはいないか?
ワイズマンは検証を行う事にした、生き残るかどうかの検証を。
ワイズマンはキリコへ火を放った。
彼を引き取った夫婦を巻き添えにして、家を焼き尽くしたのだった。
結果キリコは生き残り、『異能生存体』だと確信することとなる。
キリコの義理の両親の死は、ワイズマンの手によるものだったのだ。
そこまでは良かったが、やり過ぎてしまった。
キリコはワイズマンが処置をする前の、人間らしさの欠片もない状況へ戻ってしまったのだ。
このままでは不味い、キリコを再び人間にしなければならない。
かつて生死の境を彷徨った時に、幾つかの処置を施したのと同じく、ある一つの治療をした。
それこそが、『キニス・リヴォービア』だった。
お人好しで、仲間思い。
キリコに人間性を取り戻させることが可能な特効薬、その素質を持つ人間を世界中から探した結果が彼。
更に魔力と、ハッフルパフの素質も重要だった。
キリコを自分の懐、ホグワーツへ入れることを決めていたワイズマンは、彼がハッフルパフに入るだろうと予想していたからだ。
最後にダンブルドアとスネイプに偽りの梟便を出し、キリコとキニスを自らの懐に引き摺り込んだのである。
「キニス・リヴォービアが世界中を転々としイギリスへ越したのも、奴をホグワーツへ入れる為。
ハッフルパフ以外の寮に入った場合の保険として、ルーナ・ラブグッドをイギリスへ呼び寄せたのだ」
ルーナが三か国語を話せるのも、キニスが五か国語を話せるのも、偶然ではなかった。
「お前がキニスに対し友情を感じられるよう、様々なイベントを組んだ。
禁書棚の本に呪いを掛け、かつての宇宙戦艦と似た精神状態に、他人から優しさを受ければあっさり懐く精神状態へ調整した。
賢者の石が置かれた部屋にお前達を呼び出し、死の呪いから庇うようにした。
バジリスクにキニスを襲わせたのは、お前が人間らしくなったか確かめる為。
秘密の部屋でバジリスクを混乱させたのは、トム・リドルを抹殺するハリー・ポッターに万一のことがあっては危険だったから」
「…………」
怒濤の勢いで、今までの全てが明かされていく。
ゲラートの言っていた通り、誰にも気付かれずにワイズマンは干渉し続けていた。
「ゴブレットに名前を入れたのも私だ、お前にはトム・リドルと出会い、この世界での自らの運命を自覚しなければならなかった。
真実薬に毒を入れたのは、バーテミウス・クラウチ・ジュニアの口封じする為に過ぎない」
「…………」
セドリックが死ぬことに繋がったあの事件も、全ては神の計画の上。
何もかも、一から十まで全てが。
「ペールゼン・ファイルズを予言したのはトム・リドルを利用し、魔法界と人間界の戦争を起こす為、全ての仕上げに、キニスをアーチの中へと落とし、廃棄した。
闇祓いとの混戦が起きるように予言をし、奴が死にやすい状況にした上で」
キリコは黙ってワイズマンの話を聞く。
彼の目には何も映っていない、怒りも恨みも何一つ。
全てが神の掌の上だと知っても、尚。
「全てが計画通りに行った、戦争は起き、トム・リドルは神へ叛逆すること叶わず、ポッターに殺されようとしている。
お前は人間らしさを取り戻し、今私の前に立っている。
キニスは
「……それで」
空気が一変する、ある意味穏やかだった空気が、圧倒的殺意に塗り潰される。
「そこまでして、お前は俺に何をしたい」
何も映っていなかった目に、五臓六腑を焼く炎が灯る。
神の五臓六腑を焼き尽くす、運命の炎。
「お前には、私の代行者になって貰いたい」
「……代行者だと」
ロッチナは予見した、神の狙いは『継承者』でも『養育者』でもないと。
神の目の予見は、ここでも当たっていた。
「魔術の力は私に異能程ではないが『不死』の力を与えた」
「死体を乗っ取ったそれがか」
ゾンビなら不死身に決まっているだろう、生きているかは知らないが。
下らん戯言とキリコは一瞥するが、気にする様子はない。
「乗っ取っただけではない、だがそれはどうでもいい。
『異能』に固執する理由は既に私にはない、故に私の支配の代行者となって貰いたいのだ。
神の力は絶対だ、しかし過度の干渉は依存を招き、私の願いである進化は停滞する。
だが人間であるお前の干渉ならば、依存と停滞は起こらない」
「わざわざ俺を選ぶ理由でもあるのか」
「神の代行者に、素質がない者がなってはならない。
『異能者』であり、『異能生存体』であるお前ならば、神の代行者に相応しい」
要するに自分が動き過ぎれば、神の力に依存してしまう。
だからこそ人間である俺が、こいつの代わりに人類を進化させるのか。
……ふざけているのか?
キリコは本気で困惑した、こいつはこんなんで俺を従わせられると思っているのか?
「ただでとは言わぬ、無論見返りも大きい」
「そんなもの……」
「まずキニスを返してやろう」
「……いい加減にしろ」
一瞬だけキリコが硬直する、ワイズマンは好機を見た。
「キニスは死んでは居ない、神秘部は私の五臓六腑、アーチに入る瞬間、私が奴を転送し助けておいたのだ」
「……嘘だ! キニスはアーチの中へ落ちた!」
「神の力はアーチ如きでは止められない」
否定しようにも、かつてクエントやヌルゲラントで、何度も不可思議なワープをした経験が、神を肯定してしまう。
「それだけではない、フィアナの蘇生もしてやろう」
「…………!」
「魔法という新たな知識は、それすらも可能とする」
キリコは激怒し、その内心で大いに戸惑っていた。
キニスが生きていて、フィアナが帰ってくる。
彼にとって正に、神の誘惑というに相応しい誘いが心を揺さぶる。
そんな都合の良い話がある筈がない!
躊躇いを怒りで振り切り、キリコはATを起動させる。
「良いのかキリコ、代行者にならなければお前に未来はない」
「……そんな言葉で、俺が迷うと思っているのか」
「事実だ、お前がブラッド家の末裔であることは、異能生存体であることは世界中の人間が知っている。
ブラッドを殺す為、異能の力を求めて、お前は追われ続けるだろう。
かつてのアストラギウス銀河のように。
私の代行者にならない限り、一時の平穏すらないのだ」
あのニュースも、こいつが仕組んだものだったか。
確信を得ながらも、キリコは自らの信念を、恨みつらみを持って宣言する。
「それがどうした、そんな生活は慣れきっている……!」
決別、抹殺宣言と共に放たれるロックガンの光線が、スリザリンの姿をしたワイズマンを包み込む。
爆炎と閃光が、巨大な礼拝堂を満たす。
キリコはヴォルデモートの発言から、ワイズマンの不死のカラクリを大まかに推測していた。
『死の呪い』が効かなかったのは、死体を操っているに過ぎないから。
既に死んでいる者に、死の呪いが効かないのは当然。
なら死体を操る『核』がある筈、それを剥き出しにすれば……!
「……では仕方が無い、次点の目標を果たすとしよう」
「…………!」
掠り傷一つないだと!
キリコは衝撃を受ける、盾の呪文を張っている様子はなかった。
つまり単純な肉体能力だけで、光学兵器を防ぎ切ったということ。
そんな馬鹿な、死体に肉体能力などあってたまるか。
では何だ、どれ程の防御能力を持っていればロックガンすら防げる?
「……これで!」
一つの可能性に賭けてキリコが撃ち込んだのは『悪霊の炎』。
魔力消費の激しいキリコにとっては非効率的な呪文だが、自動的に最効率化させるニワトコの杖なら、制御できる。
激しい渦を巻き、津波のようにワイズマンを包み込む炎。
「…………!」
杖越しに感じる確かな手応え、炎は間違いなく直撃した。
同時に炎の中からおぞましい声と亡霊のような魂が溢れ出す。
それはハリー達から聞いた、分霊箱を破壊した時の現象そのもの。
キリコは確信する、やはりこいつも『分霊箱』か!
自分自身を分霊箱にしていたから、ロックガンが効かなかったのか。
キリコが悪霊の炎を使ったのは、ワイズマンの不死が分霊箱によるものか確かめる為。
回避されようが直撃しようが、確かめることができる。
……にも関わらず、嫌な汗が、一滴流れた。
*
迫りくる鋼鉄の怪物と、本物の怪物。
狂気も無く、悪意も無い。
ホグワーツの生徒が押されるのは、当然の結果だった。
「生徒の避難はまだ完了しないのですか!」
マクゴナガルが叫ぶが、そうではない。
残る三年は、もう殆ど死んでしまっているのだ。
その知らせを聞かなくて済むのは、果たして幸福だったのか。
「教員から殺せ!」
「───ッ!」
教員が居なくなれば、生徒を統率する者は居なくなる。
死喰い人のセルウィンが、呪いを放つ。
瞬間猫へと変身し、柔軟さを持って呪いを片っ端から躱し、ひょいと肩に乗る。
再び人に戻り、無言の失神呪文。
セルウィンは意識を失い、吹っ飛ばされて行く。
なるべく命を奪わないこと、それは教師として彼女の覚悟だった。
「……なんと……いう事ですか」
だが、覚悟は潰される。
飛ばされた先は不幸にも、戦車の進行方向だったのだ。
ぐしゃ、と潰れて、また一人死ぬ。
悪意どころか死体を求める餓鬼と化したマグルの群れは、死喰い人よりも恐ろしく見える。
そしてまた、最悪の報が彼女へと届いた。
「マクゴナガル先生……よろしいですかな」
「どうしました、フリットウィック先生」
短距離の姿あらわしで出現したフリットウィックと、死角を補うように背中合わせになる。
四方八方から飛ぶ攻撃をいなしながら、要件を訪ねる。
「……ルーピン先生が、亡くなられました」
「……何故、ですか」
死ぬだろう、こんな戦場で一人っ子死なないなど、考えては居ない。
だが元教え子で、同僚だった子の死はショックでしかなかった。
「スリザリン生の多くは戦いを拒み、寮へ立てこもっていました」
「……まさか、マグルが」
「ええ、入口が割れてしまい、そこから毒ガスを……ルーピン先生は、生徒達を逃がす時間を稼いでおられたのです」
返事は無い、彼女の顔色も伺えない。
分かるのは、攻撃が明らかに激しくなっていることぐらいだ。
そんな彼女の視界に映り込んだのは、空から落ちる鉄の塊だった。
空爆と呼ばれる、無差別攻撃である。
「今度は……仲間すら巻き添えにする気ですか!」
非道極まりないマグルの攻撃に、マクゴナガルの怒りが爆発する。
だから見えなかった、爆風で塞がれていたからこそ、瓦礫から自分を狙う狙撃手の姿に。
「───先生危ない!」
誰かに押し倒され九死に一生を得た、狙撃手はフリットウィックが失神させる。
マクゴナガルは、助けてくれた生徒の顔を見なかった。
見ずとも、誰か分かった。
「ネビル・ロングボトム、ありがとうございます」
「先生こそ……大丈夫ですか」
と傷だらけで言う彼に、少し呆れるマクゴナガル。
優しいのは良いが、正直自分を客観的に見ていて欲しい。
「貴方は貴方の心配をしなさい、第一杖はどうしたのですか」
「……折れちゃって」
重ねて溜め息を吐く彼女は、ネビルに帽子を手渡した。
『組み分け帽子』と呼ばれる魔法具、中に創始者の秘宝を秘めた道具だ。
何故かそこらに落ちていた帽子を、彼女は拾っていた。
剣を使う気はない、というか自分に使いこなせるとは……余り思えなかった。
「貴方なら、抜ける筈です」
何故、ネビルなら使いこなせると思ったのかは分からない。
グリフィンドールの寮監としての直感か、長年生きた魔法使いとしての勘か。
「……ありがとうございます!」
剣を取り出したネビルは、杖を使えなかった鬱憤を晴らすかの如く、ドラゴンに向かって突っ込んで行った。
炎を吐き焼殺しようとするが、グリフィンドールの剣は炎ごと切り裂いて行き、頭を両断する。
まるで炎の方から、斬られに行ったかの様に。
「…………」
地獄の中で、マクゴナガルは感傷に浸っていた。
あれだけ手間の掛かるあの子に、助けられるとは思ってもみなかった。
本当に、子供の成長とは早いものだと。
あと少し耐えれば、もっと立派になったネビルの、生徒の姿を見れるに違いない。
そう思えば、力も湧いてくる。
ネビルだけではない、ルーピン先生が命懸けで守ったスリザリンの子供達もだ。
機関銃の掃射すら真正面から防ぎ切る、創始者の秘宝の力に自分で驚くネビル。
彼の姿を見ながら、マクゴナガルは敵陣の中へと切り込んで行った。
*
手ごたえを感じたキリコは、疑問を抱いていた。
何故直撃を受けた?
かわそうと思えばかわせる攻撃に対し、何もせず無抵抗のまま燃やされた?
「愚かなり、キリコ」
「!!」
響き渡る声が、ワイズマンを包む炎を消滅させる。
無傷……ではない、依代となっているスリザリンの遺体は、焼け焦げてボロボロだ。
ボロボロではなくなった。
「なっ……!?」
キリコは信じられない現象を目撃した。
瞬きした一瞬の間に、ワイズマンは元の姿へと復元されていたのだ。
「スリザリンの遺体を乗っ取ったのは、私の力に耐えきれる力が残っていたからなのだ。
キリコよ、これは証明だ、お前がどう足掻こうと、私を殺すことはできないという」
「…………」
何が起きた。
あいつの体が分霊箱なのは、さっきの悪霊が溢れ出すような現象で分かった。
だが何故再生する、分霊箱ごと再生などどうすればできるんだ!?
「分かるぞキリコ、お前の怯えが」
キリコの感情を見透かしたワイズマンが、不敵な笑みを浮かべながら両手を広げる。
「お前を諦めさせる為、私の力を語ろう」
ぐにゃりと曲がり、剥き出しになったワイズマンの体内には、小さく輝く緑色の宝石が四つ、組み込まれていた。
───あれは、まさか。
キリコは予感してしまう、当たってしまえば勝てないと分かってしまう未来を。
「そう、『賢者の石』だ」
かつて復活の為にヴォルデモートが求め、ダンブルドアに破壊された秘宝。
一つで永遠の命を与えるそれが、四つ。
「これもまた、名の如く私が創り上げた物。
ニコラス・フラメルは自力で創り上げたと思っているが、私がヒントを与えたに過ぎない。
憐れな男だ、時の権力者を利用する為だけに、石を作らされたと気付いていないのだからな」
道理で、再生する訳だ。
あれを四つも組み込んでいれば、瞬きの間に再生して当然。
「更に私は分霊箱を作り上げた、私だけではない、深海の小石一つや、スペースデブリに至るまで、666ツの分霊箱を」
分霊箱の厄介さは、正確には不死ではない。
例えそこらの塵でも分霊箱にできる点だ。
小石が分霊箱にされ宇宙に飛ばされたら、延々と加速し続け、二度と捉えられず、破壊もできない。
砂漠の砂一つを分霊箱にすれば、探し出すのは不可能。
ヴォルデモートと違い、高貴な器を求めなかったワイズマンは、それをやった。
何処にあるのか分からず、分かっても探せない。
「分霊箱の欠陥は私にとって意味を成さない」
止めに分霊箱のデメリット、魂の弱化もワイズマンには意味がない。
ヴォルデモートは魂を五分割したが、このデメリット故に魔力的なモノに対する感性が弱まってしまった。
しかしワイズマンは元々古代クエント人、『異能者』が一つに集まった存在。
分割しても、元々の魂が一つ分離するだけに留まる。
つまりどういうことか?
掠り傷すら与えられない。
与えても瞬時に修復される。
『石』を破壊しても分霊の力で生き残る。
その分霊箱を破壊しきることは不可能。
……キリコは絶句し、ワイズマンは高らかに宣言する。
「これこそ神の御技なり。
理解したであろう、お前は私から逃れることはできぬのだ。
さあ私の代行者に───」
ワイズマンが言い切る前に、ライフル弾が眉間に直撃。
風穴を空ける筈のライフル弾が潰れたポップコーンのようになり、足元を転がった。
「…………」
勝ち目はない、どう考えても。
それでもキリコの闘志が衰えることはない、常人なら逃げ出すほど鋭く尖った目線で、自称神を一瞥する。
これぞまさに、『触れ得ざる者』の姿。
ワイズマンは笑う、所詮人間が畏怖して付けただけの俗称など、私には何の意味もないと。
「愚かなり、愚かなりキリコ。
代行者という唯一の救いを拒み、自らを失う道を選ぶか」
「……お題目はもううんざりだ、お前に支配されるくらいなら、死んだ方が何倍もいい」
死ねればな。
自嘲するキリコに、神は違うと言う。
「殺しはしない、それは私でもできぬ。
ただお前という人間がお前を見失うだけだ」
言っている意味がよく分からないが、俺が俺を見失うこと……それがヤツの言う次点の目標なのか?
分かるのは、ヤツが俺を勧誘することを止めたという一点だけ。
「よって、神の裁きを与える、自らの無知を呪うがいいキリコ・キュービィー」
ワイズマンの位置する塔の中から、轟音が響き出す。
まるで出番を待ち望んだ役者が、万雷の拍手と共に奈落から姿を表すかの如く、一機のATがその姿を表す。
歌舞伎において奈落から現れるのは、この世の者ではない演者だけ。
漆黒の風貌、異形の影、禍々しい圧力。
正しく冥府から甦った、神の如し。
それに乗り込み、神託は下された。
「この『レグジオネータ』が、お前に裁きを与える」
「レグジオ……ネータ……?」
レグジオネータが手を振り下ろし、神殿全てを光で包み込む。
咄嗟に張ったプロテゴ・マキシマは、時間稼ぎもできずに消え去り、キリコは稲妻の濁流に飲み込まれていった。
(全てを還す光の中、文明を照らす進化の光の中。
圧倒的な差を見せ付けられた俺は、焦燥に駆られていた。
異能の力が通じないかもしれない。
それだけではない、フィアナとキニスを返すというふざけた提案が、俺を焦らせていた。
そんな奇跡はあり得ないと、否定する為に)
人の世の喜びも悲しみも、巨大な
万物流転。
全てが遺伝子に仕組まれた、巨大なステージセットだとしたら。
果ての無い過去でしつらえられた、もう一つの人間を真似て、
いつ動き出すかも知れぬ、神秘の技の黒子を狙い続けた者。
それは誰か。
次回「影法師」。
例え、我が運命でも。
ワイズマンスペックを纏めてみた。
・inレグジオネータ
『青の騎士ベルゼルガ物語』に登場したヤベーAT、スコープドッグがマジンカイザーに挑むような物。
・666個の分霊箱
細胞も幾つか分霊箱なので殆どの攻撃は無効、しかも幾つかはアステロイドベルトのどれか、事実上発見不可能。トドメに魂の群体なので、魂の弱化というデメリット無し。
・賢者の石四つ積み
破壊しても超再生能力あり。
・素体はサラザール
魔力適性も高い、ワイズマン全員分の魔力を存分に活かせます。
・杖
スリザリン自体を杖に見立てている、ある意味最良の素材ではある。
・1000年分の魔法知識と3000年分の科学知識。
言わずもが。
転生チートは異世界モノのお約束だから何一つ問題無い。
あ、ちなみに『キニス』はラテン語で『