剣術 作:王蘭
朱を倒したあと平穏な日々が続いた
林はいつも旅の僧侶に食事や寝床を快く提供していた
ある日若い尼僧が托鉢に来た
王蘭と同じくらい美しく王蘭よりもやや歳上の尼だった
いつもの様にもてなそうとして召し使いを呼ぼうとする林を王蘭が止めた
『あの尼さんはただものではありません 害意の有無を確認する為に私が食事を運びます』
驚いた様に林が聞いた
『剣気を感じるのか?』
『いやそうではありませんが… 並みの人でないのは確かです』
と言って王蘭が召し使いをよそおって食事を出してもてなした
美しい尼さんは王蘭を見て
『これはこれは!! こんなところでこんな美しい剣客にお会いするなんて』
とにっこり笑って会釈をした
その言葉を聞いた王蘭が下心を見透かされた様に思い驚き恥じ入り赤面すると
『私は少林寺のものなので武術にはいささかたしなみがございます だからあなたの剣気がわかるのです』
と美しい尼僧は王蘭をいたわる様に言葉をかけた
それを見ていた林は尼僧が善人なのを知り
『この王蘭を一目で剣術家と見抜いた貴女の武技はさぞ素晴らしいのでしょう もしよろしければお貴女のお手並みを見させて頂きたいのですが…』
と言うと
『とてもとても人様にお見せできる様な代物ではありません』
と若い尼僧がやんわりと断わった
しかし王蘭の実力を一目で見抜いた尼の武術をみたいと思った林はしきりに願った
『本当に未熟な技ですが… それではお嬢様が真剣で相手をして下さればお見せしましょう』
と言うので王蘭は短剣を持って対峙した
もちろん王蘭は尼僧が謙遜していて相当な武術の使い手とは思っていた
しかし実際に対峙してみて王蘭は相手の技量に驚いてしまった
隙が全く無いのである
それでも挑んでいくと王蘭の攻撃がひらりひらりと難なくかわされるのである
まるで風と闘う様なものだった
王蘭の短剣は空を切るばかりであった
そして剣をもつ右腕にやんわりとした手刀をくらい剣を落としてしまった
王蘭は敗北を潔く認めた
そして軽い手刀だったが王蘭の右腕は想像以上にしびれてしまった
美しい尼僧は
『ご無礼を致しました ご免なさいね どうぞお許し下さいませ』
と言って優しく微笑んだ
そして林と王蘭と楽しく話した後に美しい尼僧は御礼を言って去って行った
後日王蘭は自分に剣術を仕込んだ尼僧のところを訪ねてみた
そして武術の達人の尼僧の話をした
それを聞いた尼僧は驚いた
『少林寺一の名人と闘うとはこの馬鹿者が!! そなたが悪人だったらその右腕は切り落とされていたのだ!!』