「まだそれなりに時間があるようですね。
それでは、この世界における艦隊運用に関しての、注意点を説明してしまいましょう」
「注意点ですか?
それに、運用?」
「はい。
まず、この世界には、ゲームのような制限が部分的に存在します。言い方を変えると、うっかり忘れると大変なことになる可能性がある、という事です。
そういった知識は、早めに覚えておいた方が良いですから」
「ゲーム的な制限……やっぱり、ありますか」
空中モニターぽち、で生成とかやるような世界だし。
そういうのもあるわな……
「まず、艦隊の編成に関してです。
編成して出撃するだけならば、大編成でも多艦隊でも同一艦娘同居でも可能です。他の提督との合同艦隊も可能ですし、この点においての制限はありません」
「それが罠、ですか?」
「6人を超える艦隊、同一艦が複数いる艦隊、【羅針盤】を持たない艦隊、【羅針盤】との契約のない艦やその他の船がいる艦隊。
これらの1つでも条件を満たしている場合、可能な限り異界に入ってはいけません。また、特に遠方へ行く場合は異界に飲まれることがあるため、長距離の護衛依頼はこの条件をクリアした艦隊で受ける事を必須の条件としています」
「えーと……ここで言う羅針盤は、普通の船にある羅針盤ではない、という事ですか?」
「神からの任務の報酬にあるものです。異界の提督は4つ所有していることがほとんどですから、在庫を確認するとよいでしょう。
これは異界の中で進むことが可能な……では語弊がありますね。進んでも致命的な事にならない方角を示すもの、と言うべきでしょうか。
無視して進むと、進路も退路も失う、抜けられない大嵐に飲まれる、深海棲艦の大編隊に囲まれる、といった致命的な状況に直面する可能性があります。いずれの場合も、転移アイテムや提督の召喚魔法などによる退避が失敗すれば全滅する、実際に全滅した例も多くある事例です。
そして先の条件は、この【羅針盤】が機能しなくなる条件でもあります」
「荒ぶるってそういう意味か……やっぱり羅針盤がラスボスかっ!?」
そこのところはゲーム的なのかよコンチクショウ!
「もちろん、異界に入らなければ問題ありませんし、浅い範囲であれば脱出だけは可能という場合も多いようです。
ですから【羅針盤】を持たない準提督や多くの艦娘を抱える提督は、沿岸警戒の依頼で異界から漏れてきた深海棲艦との戦闘経験を積もうとしますし、【羅針盤】と契約できない普通の輸送船などは可能な限り異界を避けて航行します」
「異界に入らずにどうにかしようとすると、それしかないか……」
「資金に余裕がありレベルを安全に上げたい場合は、演習を繰り返したりもするそうです。
事故が無いとは言いませんが、外洋や異界よりは安全にレベルを上げることができますからね」
「世知辛い話だ」
「全くです。ただ、演習でレベルが上がっても、対応力などの現場で培われる力は不足しがちになります。
そのため、低レベル艦の底上げや早急なケッコンを目指すといった目的がある場合以外は、練度を維持するために行われる程度だそうです」
「そこはまあ、理解できる範囲かな……。
というか、自分の艦隊同士での演習は出来ますか?」
「可能です。その場合は場所の確保が問題となるでしょう。
拡張宝珠で広い海か湖を得ない限り、自分で演習場を用意することができません。他の提督に借りる事は可能ですが当然費用が掛かりますし、予約で埋まっている事もあるそうですよ」
「安全にレベルを上げようとするなら、そうなりますか。
あとは……入渠の時間や、疲労はどんな感じですか?」
「入渠時間は艦隊これくしょんと違い、レベルや艦種の影響をあまり受けません。一応ですが目安となる計算式は判明していまして、効果が表れ始めるまでに5分前後かかり、その後概ね損傷1の回復のために3分前後の時間が必要です。この時間は提督や艦娘の能力や被害状況などで増減しますから厳密ではないですし、眷属化や【能力/超回復】の影響もあるはずですが、参考程度にはなるはずです。
疲労は、人に近い面と艦に近い面があるようですね。本当に疲労困憊していれば回復に何日もかかりますし、眠れば回復が早まります。異界や戦闘状態でなければ海上を移動しながら休息をとることもできますから、航海し続けるだけであれば長距離の移動でも疲労面の問題はありません。
現実問題として、出撃に必要な時間はとても長いですし、依頼も日時が決まっているものが殆どですから、普通は連続で出撃する事がありませんよ」
ダメージ1が3分ってことは、戦艦は耐久80前後だった気がするから、最大240分で4時間くらいになるのか?
おお、これならちょっと長いお風呂と言えなくもない時間だ。しかも超回復ってやつで更に短縮されるかもしれないし。
出撃が頻繁じゃないってのは……ゲームみたいにぽちぽち押せば終わるもんじゃないし、言われてみれば当然か。
「ゲームに比べると、かなりありがたい時間ですね。
疲労面は実際にどうなるか体感した方が良さそうですから、艦娘達と相談しながら考えます」
「それが良いでしょう。
なお、出撃する際の装備の傾向は、艦隊これくしょんとはかなり異なります。
あちらには連撃やカットインといったものがあったそうですが、こちらにそれはありません。また、基本的な武装は改めて装備する必要もありません。例えば高射砲、高射装置、対空電探を組み合わせた防空は確かに有効ですが、秋月はこの3種の装備自体は最初から持っています。
火器や電探を装備する意味は、契約した妖精による補助や、機能の置換または追加となります。つまり、該当装備がある場合はそれの性能向上、持っていない装備なら機能の追加ですね。このため、特に砲や魚雷といった火力に関するものは余裕がある場合に限った装備と言われますし、装備する場合は本来の装備を強化するのが最も良いとされています。
実際に装備するのは轟沈を防ぐ装備、馴染みがある名前で言えば応急修理要員が筆頭に挙げられるでしょう。
また、艦載機や水上機といったものに関しては、備え付けでないからか装備する必要があります。ですから艦戦や艦攻、偵察機なども優先される装備です。
これ以外は艦の能力、運用方針、出撃海域などで変化するでしょう。
昼間の哨戒任務であれば偵察機が有力ですが、夜間も含むのであれば電探を多めに持たせる提督が多いようです。
発見後の殲滅を重視するならば、砲や魚雷、弾も有効です。
敵潜水艦の多い海域を通るのであれば、ソナーの強化が生存に直結するでしょう。
空襲の激しい海域ならば、高射砲や機銃が効果を発揮する機会も多くなります。
バルジを装備した事で生還できた艦もいます。
最近では、遠方への任務で速度を上げるために缶とタービンを積む事も流行っているそうです」
「……本当に臨機応変に、って感じだ。
装備できる数は、艦これと同じですか?」
「同じだと聞いています。また、最近は【補強増設】という限定的な装備枠を追加できるアイテムもあるようですね。
全ての状況に対応できる装備、というものは存在しません。先達の情報と試行錯誤で最適解を模索し、かつ想定外の状況にもある程度対応できる柔軟さを残す必要があります。
魔導具も装備としてカウントされますし、難しいですが、提督の腕の見せ所ですよ」
「まあ、頑張りますよ」
つーか、むしろ頑張るのは艦娘だよなぁ。提督は後ろであれこれ言ってるだけだし。
とりあえず、補強増設は応急修理系と艦載機を持たせたい空母系を優先すべきか? 確か、いくつか使ってないのがあったはずだし。
「装備に拠らない強化としては、レベル上げ、艤装合成、大規模改装があります。
どれも馴染みのある物だと思いますが、大規模改装で一部の艦が使用する【改装設計図】は、一部の異界を突破すると手に入る可能性がある【勲章】を4つ使って生成すると手に入ります。とても希少ですが、この生成に関しては中断や材料間違い以外での失敗は報告されていないので、安心してください」
あー、やっぱり設計図は必要なのか。で、勲章は貴重品、と。
勲章不足で改装してないの、結構いるんだよな……
「また、鑑定しても艦隊これくしょんほど詳しい値は得られませんから、レベルや偽装合成の効果を実感するのは少し難しいかもしれません。
もちろん、大幅に上がれば効果を実感できるのですが」
「ええと、艦娘のステータスも、心技体に魔力命力とかいう大雑把な形式ですか?」
「そうです。
耐久や装甲が命力に対応していることはほぼ確実ですし、火力雷装対空といったものが体だろうと言われていますが、計算式や内訳が分かっているわけではありません。鑑定の値が同じでも実際の能力が違うのは人もそうですし、そもそも同じ艦で同じ値でも個体差があるようですので、比較する意味がない場合もあります。
基本的には、比較的単純な魔力と、0になれば確実に死亡する命力の2つを注意する程度で十分でしょう。
また、人も艦娘も、レベルとは別の成長が存在します。技術面もそうですが、能力値もよく使うものは増えやすい傾向があるのです。一般の方のトレーニングがそうですから、本来はこちらの成長が正当なものであるはずですので、これも忘れないでください」
「わかりました」
要するにHPとMPに注意して、あとは高い方がいいけどあまり気にしない方がいいって事か。
レベルは高いわけだし、改修に使う艤装は無いし。実際に戦闘をこなしながら調整していく形になるか……宿題多いな。
「もちろん、提督自身にもレベルも存在しているのですが……これは、積極的に上げる機会は無いと判断すべきでしょう。
まず、提督には魔力が求められます。そのためにも普段から魔法や魔力を多く使う必要がありますが、これについては、宝珠の維持に魔力の多くを使用する必要があるため条件は満たせます。
しかし、積極的にレベルを上げるためには、魔物や深海棲艦の討伐が必要です。それにはそれなり以上の攻撃魔法が必要となりますが、必要な魔力は多く、鎮守宝珠の設備増強や艦隊の強化が疎かになってしまうでしょう。深海棲艦自体は魔物ほど弱い個体がいませんから、単独で異界から出てきたものであっても人にとっては十分な脅威なのです。
また、近隣に人が対処できる魔物があまり発生しない、という問題もあります。隊息や将軍達による防衛が機能しているという事でもあるのですが、将軍を目指すわけでもないのに将軍達の邪魔をするのは良い顔をされません」
「それは……ハードだな」
初期のレベル上げポイント無しとか、どんなクソゲーだ。
いや、あるっちゃあるけど闇堕ちルートが見えてる、と言うべきか。艦隊運営のスペシャリストを求められてるのに、自身も戦うジェネラリストは茨の道だろうし。
「訓練などでもある程度はレベルを上げる事は可能ですし、本格的に艦隊の運用を始めると自然に上がっていくはずですから、急がないことをお勧めします。
あと、魔法を学ぶ際は艦娘の轟沈を防ぐ目的で召喚魔法を勧める人が多いのですが、負担も大きい事を伝えない場合も多いようですので、注意が必要です」
「轟沈を防ぐには、悪くないと思いますが……消費が重い、とかですか?」
「上下提督の場合は例外ですので、一般論として聞いてください。
召喚魔法を使用して轟沈を防ぐには、艦娘が死亡する前に召喚を行う必要があります。これは理解できますね?」
「それは、そうですよね」
「そして、戦闘はいつ発生するか、いつ終わるか、はっきりと断言できない場合も多くあります。更に、小型艦に大型艦の主砲が直撃した場合など、有利な状況であっても事故はあるものです。
つまり、召喚で轟沈を防ぐには、提督は戦闘が発生する可能性がある間ずっと召喚魔法を使用可能な状態で維持する必要がある、という事です。更に、被害や通信などの問題で間に合わない事も無いわけではありません。
これらの精神的な負担は、恐らく想像以上です」
「事後でもなんとかなるのは、とても幸運という事ですね……」
「そうです。
もちろん、召喚魔法に利用価値が無いとは言いません。
轟沈防止のアイテムを消費した後、または在庫が無い場合の保険にはなるでしょう。
帰路の安全は確保できるでしょうし、その分の燃料やアイテムの消費が不要になる効果も見込めます。
艦隊が全滅してしまっても、【魂】や【羅針盤】といった重要なアイテムなどを回収できる可能性もあるでしょう。
これらを見ずに、轟沈を防ぐことが出来るとだけ言って勧めてくる相手がいたら、要注意です。意図的であってもそうででなくとも、視野が狭い、人の意見を聞かない、といった人物である可能性が高いですから」
「なるほど……」
「それは、ワシを指しておるかの?」
「ご自身でそう思われたのなら、そうなのでしょう。
さて、先ほどの生成は……もう少し、ですか。それでは、この後の予定について、説明と相談をしておきましょう」
んー……さすが30分、待つには長いな。
でも、予定の相談ってなんだ?
「この後で、もう1度生成を行う予定です。
この時にちょっとした小技といいますか、覚えておいた方がいい裏技に近いものを試しましょう。そうですね……称号に合わせて、キッチンからどんぶりをいくつか持ってきておいてください。陶器の物があるはずですので」
「わかりました。
えーと、榛名は連絡できるんだよな?」
「はい、提督。
丼を数個、ですね」
ひょっとして、人数が増えてきたらケータイっぽい何かを持たせた方がよくなるのか?
それと、館内……宝珠内? 放送的なのも。一斉通知とかが必要な場合もあるだろうし……
「その後、本来は宝珠の名付けと艦娘の登録、不足している物資の搬入となるのですが……その前に、艦娘や装備妖精との契約を行いましょう。
軽巡洋艦1人と駆逐艦2人では、間違いなくすぐに増やすことになりますから」
「初回の登録前に契約してしまえば、物資の要請も行えるのじゃ。
転移人数の上限までじゃし、ある意味裏技じゃから、あまり公言してほしくはないがの」
「人を騙したり、情報を悪用したりするような方ではなさそうですし、大丈夫でしょう。
荷物搬入用の転移装置は、宝珠内にはありましたが……外には設置していますか?」
「えっと……榛名?」
「いえ、許可を頂いてからと思っていましたから、設置はしていません。
外の荷物も、だれがどこで使うのか、相談が必要ですし」
「それなら……配置はすぐできるのか? それに、場所は?」
「こちらの基点は設置済みでしたし、先ほどの応接室の隣にそれらしい部屋が用意されていました。
ですから、10分ほど頂ければ大丈夫です!」
「はい、応接室の隣、玄関寄りの部屋は、荷物搬入用転移装置の設置を想定したものです。先ほど使用した転移装置では布団などの大きな荷物は運びにくいですし、特に最初は運ぶ荷物も多いですから、そちらへの設置をお勧めします。
あの拠点についてですが、半年間は部屋代が免除されます。その後も、合同での警備がある事、山間の少々不便な場所にあるため比較的安い設定となっている事、交通に関するサポートがある事、提督ギルドとのやり取りなどを考えて、別の支部などへ移られる方以外はそのままここに留まっていますね」
「港の近くじゃないんですね」
「本来は港の近くに拠点や転移装置を配置すべきですし、そうなっている支部も多いのですが、舞鶴では様々な経緯によりここに設置されたそうです。
港への移動は提督ギルドより委託された提督数名が設置している出撃用の転移装置を使用できますし、有料となりますが東西の市街への転移装置も用意されています。両市街の殆どが秘書艦の活動範囲に入りますから、場所としては悪くないと言えるでしょう」
そうか、榛名……秘書艦が動ける範囲の問題もあるのか。どれくらい外に出るかは別だけど。
すぐに市街や港に出る手段も確保されてるなら、下手にここを出るより都合がいいってのは理解できるな。
成長に関する補足
本来の能力(トレーニングなどで増加、さぼりや老衰などで減少)+レベルや称号による補正、が鑑定で得られる値です。
宝珠持ちの提督や将軍は更に「+宝珠による補助」となるため、能力が高くなります。
つまり「魔力極振り提督が100~200」は、「本来の能力+レベル補正+宝珠の補助+称号補正」の結果です。
何が言いたいかというと「本来の能力とレベルは鍛えていない一般人並み」の主人公が「宝珠の補助と称号補正で200に迫る」のは「かなり高い上に、まだ上がる余地がある」という事です。
異世界の提督は、本人20(平均値)+艦隊司令部Level120(=宝珠レベル=SP)で140くらいが初期最大値となります。通常は初期状態で40~60くらいのSPを魔力に突っ込み、その枠内で宝珠内の設備が用意されています。
ケッコン済みの艦がいるんだから、司令部レベルはこれ(40~60)くらいはあるよね……?
あと、2018冬イベは、第1目標(完走)と第2目標(未入手艦のゲット)をクリア。よってS勝利です(E7に輝く丁の文字や減った資材から目を背けながら)
でも、第3目標クリアならず(火曜夜現在)。どうも私のドロップテーブルに白スク水は入っていないようです。記録ミスが無ければ、E3乙で榛名が8%くらい来て正妻アピールしてたり、E1甲で山城が12%くらいで必死に存在を示してきたりってちゃうねん掘ってる理由は好き嫌いじゃなくて(略