結局。
選ばれたのは、朝潮改二丁と天津風改でした。
別に、薦められたからじゃない……こともないけど、推薦理由に納得したのは確かだ。やはり潜水艦の対策は必要になるらしいしな。
もう一人が天津風なのは、あれだ。対潜なら皐月改二やリベッチオ改もいるし、少数で行くなら秋月型で対空と対潜を兼ねた運用という選択肢もある。それらを考慮して、装甲や回避が高く生存性に期待できる天津風も有用だろうと判断した結果だ。
決して、ガーターベルトに誘惑されたわけじゃない。
「それでは、契約を行いましょう。
原理的にはどこでも行う事は可能ですが、やはり生成施設を利用するのが最も手軽です。生成施設を使用できない場合は、魔法使いネギまの仮契約用魔法陣を用意するようなイメージと言えば通じますか?」
「あー、うん。魔法陣を何らかの手段で描いて、とかいう話になるって事ですね」
オコジョ妖精が描いてた覚えがあるし、巻物だの契約屋だの……は、二次作品だったか? 原作にもあったっけ?
まあ、この世界だと恐らく妖精さん頼み……実物をまだ見ていないが、それはそれで不安しかないのはなぜだ。
「まずは……置いてある場所が近いので、朝潮から行いましょうか。
契約を行う場合、魔法陣の中には原則として艤装と提督、使用する場合は艦娘の魂や高速建造材しか入ってはいけません。他の者や物があると契約に失敗する可能性があるようですし、失敗すると艤装や使用した魂が消失する場合が多いですので。
なお、高速建造材を使用する場合は先に持ち込んでおくべきです。提督が外に出るのは厳禁ですが、契約の場合は誰かが持ち込んだ際に問題が起きがちですので」
「はい」
別にどちらからって拘りがあるわけじゃないし、運んでくれた明石が置いた場所的に近くだった朝潮からってのは、別に問題ない。
艤装の容器……って言えばいいのか? 立方体の箱は、意外に重いな。普通の男なら問題ない程度だけど、貧弱だったり体力のない女性……って、運ぶのは秘書艦とかに手伝ってもらえばいいのか。
契約する時に他人がいちゃいけない、ってだけ、だよな。
えーと、艤装と魂と高速建造材を魔法陣の中央付近に運んで、他に誰も入っていない事を確認して……うん、問題ない。
「あとは、契約実行のボタンを押せば契約が始まります。
高速建造材はその後で使用する事になります」
「……お手軽すぎる」
別にキスだの大げさな儀式だのをしたいわけじゃないけど、大事な契約なんだから、もっと、こう……それっぽい雰囲気とかは……
「気持ちはわかりますが、眠っている間にも行われた事ですし、どうしてもというのであれば魔法の技術を磨いて自力で魔法を使用するという選択肢もあります。
かなり高度な技術ですからお勧めはしませんし、才能のある人でも1年以上の本格的な練習が必要だそうですから、少なくとも当面はこの方法で妥協することをお勧めします」
「……うん、ゲームでぽこぽこドロップして増えることを考えると、普通普通。
よし、やるか」
掛け声はやっぱり、ぽちっとな……うおっ!? 目、目がっ……
「注意点としては、最初と最後は強い光が出ますから、目を閉じた方が良いでしょう」
「……それは、先に言って欲しかった」
うー、まだチカチカするんだが。
視力が戻った結果。見えてきたのは、どこぞの魔砲少女みたいな魔法陣だった。足元でくるくる回ってるのと、周囲をぐるぐる回ってる帯みたいなやつだ。
「なるほど……リリカル式ですか。
ここで現れる魔法陣は様々な種類があります。そのうちいくつかが比較的選ばれやすく、現れた魔法陣に関する適性はそれなりにある事までは判明しています。
他の魔法が使用できないわけでも、他により適性のある魔法が無いわけでもありませんが、今回のように現れた魔法がメジャーなものであるならば、まずはそれを習得するのが無難でしょう」
「うーむ、ワシとしてはネギま式が良かったのじゃが……適性ばかりはどうにもならんからの。
残念ながら、ワシ個人の伝手ではデバイスの入手は手伝えん。リリカル式を学ぶのであれば、素直にギルドや魔法関係の組織を頼るべきじゃな」
「そうですか……まあ、魔法に関してはゆっくり考えます。
ええと、残り時間は……23時間近く?」
これはまた、随分と時間がかかるな……
「予想以上に長いですね……」
「高いレベルと、恐らく眷属化が原因じゃろうな。艦娘に強力な称号が付く場合は、契約に必要な時間が延びる傾向があるようじゃからの。高レベルの朝潮改二丁基準の4倍程度じゃから、そう間違ってはおらんじゃろ。
とりあえず、高速建造材で100倍速にすることが可能じゃが……これは、高レベルの戦艦や空母の場合は気を付けた方が良いじゃろうな。元々1日を超える事もあるようじゃから、下手をすれば高速建造材ありでも1時間以上かかりそうじゃ」
「あってよかった、高速建造材ッ……とりあえず使用、と。あー、残り時間が短くなるんじゃなくて、カウントダウンが早くなるのか。
というか、ここだけ入渠時間っぽい気が……」
高レベルの戦艦や空母が大破した時って、入渠に1日とかありがちだし。って事は、HPが全損した状態からの入渠時間が標準なのか?
23時間が基準の4倍なら、本来は6時間近く。つまり、高レベルだと駆逐艦でもそれくらいかかるのが普通って事だ。そりゃあ、高速建造材の準備を指示するわけだよな。
「おお、鋭いの。契約に必要な時間は、概ねその艦娘の最大入渠時間が基準となっておるそうじゃ。これに称号やらの影響、恐らく眷属化で4倍程度になるわけじゃな。
新しい艤装、要するにレベル1であればさほど長くないとも言えるの」
「まあ、最初の契約で時間がかかっても、レベルが高い方が即戦力だし、ゲーム時代からの縁もあるし。超回復で日常的な治療は短く済むだろうから、レベルと称号で契約時間が長くなる程度の代償は仕方ないか……」
「そうですね。もっとも高速建造材の在庫が充分すぎますから、一気に契約しようとしなければ問題は小さいでしょう」
「最初はやらねばならん事も多いじゃろうが……ある程度落ち着いてしまえば、割と時間の余裕はあるかの。
それにこれ以上の契約は、部屋やらを追加した後になるからの。衣食住の目途がつかぬまま契約すれば、提督の評価が下がるのは確実じゃ」
「それはそうか……って事は、しばらくは、軽巡は阿武隈1人……?」
艦種指定とかあると、割と負担がでかくなるよな?
駆逐艦も3人だから厳しそうだし。
「当面は近海の警備任務など、制限の緩い依頼で練習することになります。要求される条件を満たせるのであれば艦種を問わないので、赤字覚悟であれば戦艦と空母のみのような編成でも受注は可能ですよ。依頼に慣れるという目的で過剰能力の編成を投入することも無いわけではありません。
ある程度慣れてきたら沿岸警備ではなく、前線警戒などのある程度戦力が必要な依頼を選択するのもよいでしょう。危険性が高い領域ほど、戦艦や重巡、空母の力も必要となりますから」
「ま、何度も言うようじゃが、召喚魔法を早くものにする事じゃ。
そうすれば割と安心して送り出せるようになるじゃろう」
「……頑張ります」
明らかに戦艦と重巡の割合が高いからなぁ……採算を取るにはある程度のリスクを覚悟する必要があるし、リスクを減らす努力は必須か。
まあ、眷属が優秀で他の提督より有利なんだし、恵まれてる、はずだよな。
「この後、天津風との契約もありますし……契約する装備を選んでしまいましょう。
確実に使用するものとしては、羅針盤ですね。異界に入る可能性があるのであれば必須となりますし、装備の枠を使用しない特殊なものですので、後回しにする意味がありません。
一般的なお勧めとしてはやはり、応急修理女神や応急修理要員、それに艦載機や水偵ですね。明石がいるのですから、艦艇修理施設も優先すべきでしょう」
「一般的なのは、さっきも言って……電探とかは、割と優先順は低めですか?」
轟沈防止と、載せなきゃ使えないもの。これの優先度が高いのは分かるけど、現実的には索敵も重要だよな? それとも衛星やらの助けがあったりするのか?
「一般論で言えば、警備系や護衛系の依頼では重要ですね。科学的な衛星や警戒機で深海棲艦を捉えるのはなかなか難しいようですし、魔法的なバックアップを恒常的に受けられる海域は限られます。むしろ、バックアップの無い海域だからこそ依頼されると考えた方が良いでしょう。
ですが、上下提督の場合は、索敵魔法を取得して魔法の補助具を持つ方が良い可能性があるでしょう」
「あー、はい。理解しました。要するに魔法の取得頑張れって事ですね。
となると、当面の対策としての応急修理系、それに艦載機か……いくつあったっけ?」
「はい、応急修理女神が4、応急修理要員が13、艦載機は……性能や改修、妖精の熟練を考えますと、53型や52型丙、天山や彗星の一二型が候補でしょうか?
あとは、偵察機の選択ですが……」
「基本的に上位のを使えばいいとは思うけど……
はい、香取先生! 彩雲と二式艦偵ってどういう扱いですか!」
「彩雲は広域索敵に向き、二式艦上偵察機は前線での誘導などに向きます。言い換えるなら、戦闘時以外は彩雲、戦闘直前や開始後は二式艦上偵察機が役に立ちやすいと言えるでしょう。
同じことが、零式水上偵察機と零式水上観測機にも言えますね。長距離偵察用の零式水上偵察機と、近距離での哨戒や観測用の零式水上観測機ですから。航続距離の短いAr196やRo.43も扱いとしては観測機に近いでしょう。
警備や護衛を行う際の索敵には、彩雲や零式水上偵察機が向きます。異界に入らない場合は無視できない差異となる場合がありますから、艦隊これくしょんとは別物だと考えて下さい。
逆に異界では航続距離などの利点がなくなりますから、実質的に零式水上観測機が零式水上偵察機の上位となります。但し彩雲には特殊な先行能力が付きましたから、不利な交戦形態を避けやすくなる効果が期待できますね」
「わお……聞いておいてよかった。
えーと、現実に近くなるって意味では、瑞雲の立場は……?」
「艦隊これくしょんの影響なのか、多くの戦艦や重巡では扱えません。本来は多くの艦で使われていた呉式2号5型の射出機での運用が可能なのですが……。
残念ながら相性問題のようなものと考えるしかありません。瑞雲はある程度の自衛や攻撃能力がありますし、指示により交戦を避ける事も可能になっているのですから、運用可能であれば水上機は全て瑞雲という選択肢も生まれていたでしょう」
むぅ、悩ましいな……って、いつの間にか時間が0になってるな。
えーと、最後も光るんだったか?
「とりあえず終わってるので、契約します」
「はい。また光りますから、注意してくださいね」
「了解です」
というわけで、ぽちっとな。
すぐに目を閉じて……うん、光ってる光ってる。
「……駆逐艦、朝潮です。改修や改造により、生存性や汎用性に自信があります。
これより艦隊のお役に立つ覚悟です! よろしくお願いします!」
目を開ける前に挨拶されると思わなかった……けど、無事に契約成功、だな。
えーと……うん。艤装を着けてる状態は初めて見るけど、朝潮のは元々小さいせいか、思ったよりも違和感無いな。で、かわいい。こうして見ると、委員長系かな。
「こちらこそ出来立ての艦隊でばたばたしているけど、よろしく頼む。
ええと、もう1人契約してしまいたいんだが、大丈夫か?」
「はい、準備もお任せ下さい!」
というわけで、再びかっ(中略)ぴかっと光って。
「いい風来てる?
次世代型駆逐艦のプロトタイプ……はもう関係ないと思うけど、 私、天津風の出番ね」
「ああ、駆逐艦が少ないから忙しくなると思うが、よろしく頼む」
あまりツンツンしてない感じだけど、連装砲くんは健在。そしてやっぱりこの格好はエげふんげふん。
というかものすごいハイヒールなんだが、身長が縮んた経験の反動なのか? 叢雲もヒールは高かったから駆逐艦全体が背伸びしてる? いや、朝潮はそれほどでもないな……
「提督! 先ほど決めた装備類の準備が整いました!
装備妖精との契約はさほどかからないようですし、早速契約、しちゃいます?」
「あー、うん、そうだな。
とりあえず称号は確認しておきたいし、やってしまおうか」
それにしても、随分運んだな。
羅針盤が4。早めの契約は紛失や盗難を予防する意味もあるらしいし、そのうち使うのは確実だろうという事で全数。
応急修理女神が4、応急修理要員13。3部隊分には足りないけど、当面は出撃時にどっちかを持つようにする方針で、これも全数。
零式艦戦53型の改修品が1。要するに岩本隊だな。
烈風の改修品が1。これも元六〇一空なのが確定。
天山の妖精の練度がやたら高いものを2。要するに村田隊や友永隊と思われるもので、妖精の熟練度に期待しての選択だ。
流星改を2、彩雲が2。これはそこそこの練度だし、普通の。
零式水上偵察機11型乙が1。これもそこそこ練度で普通のだ。
これで30個、あとは様子を見ながら考えようという事になった。
……1個1分でも30分かかるけどな!
カタパルト的には、香取も瑞雲を運用出来てもおかしくないようです。というか、細かい仕様に違いはあるでしょうが、香取は最上や利根や大和などと同じ射出機「呉式2号5型」を使っていたらしいですよ。
逆に、(追加改装で呉式2号5型に変えた榛名を除く)金剛型は呉式2号3型、それも2次改装で追加したものだそうです。当初はカタパルトすら無く、改二相当でようやく3トンまで射出できるようになったけど零式水上偵察機の運用時重量は4トン近いって事は……つまり、色々とゲームですね! ちょっと重いって言ってるのは、水偵もなんだね榛名……
なお、物語内の日付設定的に、まだ阿賀野型改に瑞雲は載らない模様。