話があっちに行ったり、こっちに行ったり。
設定を作りながら書いてるので、1話の中ですら矛盾してる可能性ががが……
「それでは、この世界の……そうですね、明確な変化があった2010年からの出来事を、簡単に説明していきましょうか」
「2010年、ですか」
「ええ。異世界の提督の方々の証言を検証した結果、2010年より前の歴史や世界に、大きな差は確認されていません。有名な出来事、著名な人物については、ほぼ同じと考えていただいて結構です。
不思議なことに、異世界の提督としていらした方々に関係する人物は見付からないのですが」
「なんとまあ……」
要するに、完全な平衡世界ではないか、存在が抹消されてるって事だよな。この条件を必ず満たすなら、有名人やその関係者がこの世界に来ることはないって事でもあるか。
こっちの世界の俺と会ったりしたら、どんな顔をしていいかわからないだろうけど。
「問題の2010年ですが、特殊な能力や【称号】が現れ、続いて海や僻地での襲撃事件が発生するようになりました。この襲撃が、深海棲艦や魔物が現れ始めた証拠だとされています。
神職系の称号を持つ方々に、世界と魔法に関する神託が行われたのもこの年です。ファンタジーや古いゲームなどが悪い意味で適当に混ざった状態にしたと、はっきり伝えられたそうですよ」
「突っ込みどころが多い、ですね……」
神と名乗りたい神っぽい何か、と言った方がしっくりくるな……
なんだよ、ゲームやらが悪い意味で適当に混ざった状態って。
「当然、世界は混乱しました。特に、神職系の称号を持つ方々への神託、という点が問題でした。
多くの宗教の屋台骨が揺らぎ、精神的な柱を失う人々が続出しました」
「そこまで動揺するものですか?
普通であれば、流言や戯言とされそうですが……」
「元々、神職系の称号は神職や聖職にある方々に現れる事が多かったのです。
宗派とは無関係な名が表れたため、当初は異端として排斥され、その人数の多さと無節操さに神にとって人が呼ぶ身分の名など言葉の違いのようなものでしかないのだろうという説明で事態の収拾を図ろうとしている時に、世界をこの状態にしたという神託が下ったのです。更にその際の説明は仲間と呼ばれる複数の声、具体的には少なくとも男女数名ずつで行われたようなのです。
世界を変える力を持つ、複数名の、神職系の称号を持つ者に言葉の壁を越えて情報を伝える者。
悪魔と呼ぼうにも称号の問題があるため、神職にある者達、特に各宗教の指導者をも悪魔の手先と呼ぶ事になります。
複数名いたことから、少なくとも一神教における神とは異なる存在なのでしょう。
世界を変える、少なくとも変わった状況を利用できる力は、人と呼ぶにはあまりに強大です。
更に、死後の世界、特に天国の存在を否定しました。人などの意思を持つ者は死亡時の感情がその付近の魔力に影響し、正の感情が強ければ人を助ける存在が、負の感情が強ければ人を害する存在が現れる核や温床となるそうです。
これらの理由から、特に一神教との相性は最悪でした」
「あー……やる事がえげつないというか……」
宗教指導者の首元を押さえながら、複数人であることと人を超える力を示して、ついでに天国の否定なのか。キリスト教とかイスラム教とかユダヤ教とか……だっけ? この辺りは、影響が大きそうだな。他にどんな一神教の宗教があるのかよく知らないけど。
日本は……あんまり関係ないか。無宗教というか、多宗教というか、それこそ絶対神が複数いても気にしない感じだったし。
「詳細は省きますが、これによる混乱はとても大きいですし、今でも収まったとは言えません。
それらの混乱の中で妖精が発見され、人々は様々な知識や技術を得る事になります。魔法、妖精との契約、この世界の人々が能動的に称号を得る手段である【降神の儀】、魔力による物体生成といった、社会に大きな影響を与えたものはこの頃が始まりとなります」
「魔法や契約はなんとなくわかりますが、降神の儀、ですか?」
「端的に言えば、異世界の提督の方々に現れている現象を能動的に引き起こすもの、ある意味での転生と言ってよいでしょう。
具体的には、【存在】や【生成】に関する称号の発現は【降神の儀】と【宝珠との契約】によってのみ確認されています。同時に【能力】や【魔法】の称号も得られやすいですから、日本国では積極的に推奨している状態です。
儀式魔法の行使が必須ですから、そのための指導や、行う場所の確保なども推進していますね。どのような結果になるかをある程度は調べる事が可能ですから、そのための窓口も増やしつつあります」
「つまり、人でなくなっている人……表現がおかしいですが、人外と呼ばれる存在になった人は多いのですか?」
「日本国だけでも5000人を超えたようですから、それなりにいると言ってよいでしょう。
もちろん、降神の儀を行っても【存在】の称号を得ない確率の方が高いですから、最終的に人がいなくなる、という事はありません」
「微妙な人数……差別とかの問題は出ていませんか?」
「どの様な存在になったかによる、としか言えません。少なくとも、人外の存在全てが疎まれているわけではありませんから。
代表的な例ではエルフとなられた天皇陛下のように、羨ましがられても疎まれていない方も多数いらっしゃいます。獣人や獣、あるいはロボットに近い場合は一部の方々に人気が出る例が多いようですね。
嫌われやすい存在としては、オーク、ゴブリン、アンデッド、悪魔など、ファンタジー系で悪役として扱われる事が多いものや、生理的な嫌悪感を与えやすいもの等があります。ですが、どの様な存在になっても、元は人です。物語の中のような行動をするわけではありませんから、その人の本質をきちんと見る事が大切です」
「そうですか……」
吸血鬼って、どっちかというと悪役系だよな。って事は、本質云々以前の問題として最初の印象は悪くなるわけだ。本質が大切だと言わないといけない程度には表面で判断する人が多いって事だろうし、そもそも俺だって相手の本質を見抜けるなんて思えないしなぁ。
生活難易度上昇のお知らせ、かな。いや、上昇してたお知らせか。
「それでは、出来事の話に戻りましょう。
降神の儀や魔法などの情報が広まりはしても、実際に使用できるようになるまでの時間はそれなりに必要でした。その間に海や内陸での被害が拡大していきます。
そして2011年に、艦娘や隊息、そして宝珠の存在が確認されます。当然、それらも研究対象となるのですが……」
「……何か問題でも?」
「特に、日本を中心とする艦船が女性化した、艦娘が問題となりました。
一部の国や地域では奴隷や実験動物のように乱暴に扱われ、結果として妖精や隊息を巻き込む大逃亡が発生したのです」
「反日が強かったり、女性の立場が低かったりする地域、ですか?」
「はい。深海棲艦や魔物には純粋な物理兵器が効きづらいため、艦娘や隊息、魔法などで対抗する必要があります。それらを得られなかった国や地域では、深海棲艦や魔物の攻撃を防ぐ力がとても弱くなるのは当然です。
結果として、そういった人達が壊滅的な被害を受けるのは時間の問題となりました」
「得られなかったのは、魔法も……ですか?」
「魔法の技術を研究している途中に、情報源である妖精を失いましたから。
宝珠の生成や降神の儀にも妖精の協力が必要である以上、飛躍的な能力の向上も不可能となりますし、他の国々も妖精達の反発を恐れてそういった人々から距離を置きました」
「……自業自得とはいえ、なんとまあ……」
「この頃には【能力/領主】の称号が判明していましたし、その劣化再現である魔力収集や、魔力を利用する技術も小規模であれば可能となっていました。
そのため日本国は、人々から魔力を集め都市の防衛と各種生産を行うための準備を開始します。この頃に降神の儀を積極的に推奨し始めたのは、領主の称号を持ち得る人を見付けるためだったと言われていますね」
「そりゃまあ、1人2人でどうにかなるわけもないだろうし、そんな人数に日本を任せるのも問題だろうしな……」
「加えて、降神の儀を広めるために天皇陛下が率先して行った際に、【存在/エルフ】と【能力/王】を発現し、更に若返ったのが決め手となったようです。
都市防衛と各種生産に関する法整備等が一気に進み、降神の儀に関する情報も瞬く間に広まりました。この時は人権保護団体や宗教団体による反対活動もあったようですね」
「ああ、連中にとっては最後の砦みたいなものか……」
「目の前の危機を何とかするためですから、国が動く前に消えていったそうですよ。
結果的にこの実験は成功し、世界の国々が追従を始めます。とはいえ王の称号は極めて希少ですし、個人主義が強い国では国策として降神の儀を推進できず、負担を強制する魔力収集にも制約が伴うために、効果は限定的だったようです。
それでも、事前の鑑定で【能力/提督】や【能力/将軍】などの称号を得る可能性がある人が見付かり世界の戦力が一気に増えましたから、副次効果もそれなりにあったようです。
加えて【能力/鉱山】や【能力/油田】といった、枯れた資源の回復が可能な称号が見付かった事は、日本国にとっては極めて重要でした」
「能力の称号って、そんなのまであるのか……」
「ええ、あるんですよ。
2012年には深海棲艦や魔物の被害が拡大し、広い範囲が危険な領域として立ち入りしないよう世界的な勧告が出されました。離島や島国、山奥等の小さな町などで生活の維持が困難になり、人の流出が加速したのもこの頃です」
「事態はそこまで……深海棲艦や魔物が今でもいるという事は、そういった地域は、やはり?」
「例えば、小笠原諸島、ハワイ、グアムなどは異界に飲まれています。多くの山や砂漠なども異界と化し、消滅や分裂した国も少なくありません。人と人の争いが増えたのもこの頃となります。
ちなみに、異界化が始まったのは2013年の春ですね。同時に異世界から提督を召喚する事が告げられましたが、この際の混乱も大きかったそうです。
妖精達に捨てられた国。元々犯罪発生率が高かった国。食料自給率が低い国。宗教の影響の強い国。こういった国々の衰退は見ていられません」
2013年の春……なーんか、どっかで聞いた事のあるような時期だな。
「日本が無事なのが不思議ですが……この際ですから、はっきり聞きます。
問題なのは、朝鮮、中国、中東、アフリカ……この辺ですか?」
「これに中南米も加えてよいでしょう。もちろんこれらの地域にも維持している国や都市はありますし、他の地域なら無事というわけでもありません。
日本国に関しては、魔法技術の開発と展開が早かったこと、逃亡した妖精や艦娘の脱出先として選ばれたため海上戦力が多く集まったこと、それらを背景として東南アジアやオーストラリア、インドといった地域への航路を維持できたこと。これらが無ければ、今以上に大変なことになっていたでしょう」
「今以上に……今現在も、問題はあるわけですね?」
「もちろんです。
深海棲艦や魔物による被害、都市部での魔力収集に伴う死亡率の上昇などによって、人口の減少が加速しています。
また、森は砂漠や荒野よりも異界化しやすく魔物が発生しやすい傾向があります。それによる都市間交通の不安定化も無視できません。広い国土を持つ国々に比べれば軽微ではあるのですが」
「こんな状況だと、当然発生する問題ですね……」
「そうですね。
それでは、出来事の話を続けますね。
2013年の被害の急増や異界化による混乱の中、それまで活動していた提督や将軍に対する批判が増加し、国や国軍との対立が発生しました」
「それは、艦娘や隊息と、国が対立した……という事ですか?」
「結果だけを見れば、そうなります。
そして、艦娘や隊息に対する世論の悪化に、特に日本国の提督達の反発が大きく、当時住民の避難が進められていた八丈島を占拠、独立を宣言しました」
「なんという行動力……」
提督の動きが大きかったって事は、要するにあれだな。艦娘スキーな提督が、俺の嫁をいじめる奴は守ってやらんと駄々をこねたんだな、きっと。
……だから独立ってのも、すげーけど。
「妖精や艦娘達が脱走した地域がある事は知られていましたし、そもそもそこまで大きな批判ではなかったそうなのですが。
それでも世論と提督達の溝は大きく、更に世界各地の提督や将軍が同調する動きを見せたため、世界の国々は提督や将軍への対応を変えました。具体的には大規模な提督や将軍のグループは独立国に近い扱いとし、軍の一部としての扱いを諦めたのです」
「えーと……国防やらを担うはずですが、それでいいのですか?」
「そうするしか妥協点を見付けられなかった、とも言えます。
多くの艦娘がいる日本国が他国の批判を集めていた事も、理由にあるでしょう。最初に日本国が提督達の独立的立場を認めた際に、複数の国に対応可能な窓口を用意する事を要求していますから。
この日本国の動きに他の国々が同調し、当初はバラバラに作られた窓口が連携するために生まれたのが、現在の提督ギルドの前身となった組織、提督連合です」
「ええと……歴史あり、という感じですね。
八丈島はどうなっているのですか?」
「現在も八丈島は独立を維持しています。
提督や将軍たちがいなければ維持できない島ですし、提督ギルドの本部的な機能がある地でもあります」
「頑張ってるんだな……」
「私達艦娘や隊息の扱いを守ってくれた提督達のいる地ですからね。
特に艦娘にとって憧れの地でもあります」
うわ、聖地扱いだよ。
結果だけ見ると確かに英雄的だし、艦娘から見たら自分達を守ってくれる優しい提督達って事になるんだろうな。
……行動理由が想像通りなら嫌すぎるけど。
「なお、この騒動中に増加した深海棲艦の被害に対応するため、都市の魔力収集が強化された時期があります。この際に高齢者などの死亡例が増加し、艦娘との関係を悪化させた提督批判派が批判されるようになりました。
元々妖精との関係悪化や艦娘の心情悪化を心配する声、それに艦娘のファン達の声も大きかったですから批判派の消滅は速かったですし、現在ではむしろ艦娘や隊息は大人気ですね」
「大人気……ですか?」
「後でお話ししますが、出撃していない艦娘に紹介できるアルバイトには、提督ギルドが運営する艦娘食堂での調理や給仕といったものも含まれているのですよ」
「おおぅ……そんなのが成立するのか……」
「艦娘への報酬が高めに設定されているため、利用料金も割高なのですが……連日満員で忙しいですね」
……経験者が語る、だよな。
本物の艦娘がいるなら、下手なメイドカフェなんぞよりも人気が出るのか。
「話を進めますね。
これ以降については……概ね被害の拡大とその対処の話となるので、簡単に大きな出来事だけ。
まず、世界に展開していたアメリカ軍ほぼ全てが撤退しています。これは、アメリカ本土からの補給や交代要員の派遣が困難になったための措置とされています」
「海路と空路が潰れると、そういう事になるのか……」
「正確に言えば完全に潰れたわけではありませんし、一部地域からは既に撤退していたのですが。
それでも沿岸近くをずっと航海するのは時間がかかりますし、様々な危険も伴います。目の前の脅威に対して近代兵器の効果が薄い上に、いつアメリカへの海路が使えなくなるかわからない状態であるため、やむを得ない措置だと受け入れられました。
艦娘達に守られながら撤退する巨大な空母の姿は、哀愁すら漂っていたそうです」
数百メートルの空母が、人のサイズの艦娘に護衛される姿、か……。
なんてシュールな。
「次に、日本国は天皇陛下を王とする王制国家となりました。
事実上の戦時体制に近付き、それらによる犠牲を天皇陛下が背負われる覚悟をなされた、という事でもあります」
「それは……大丈夫なのですか?
天皇自身も、世論も、外交も……」
普通に考えれば、問題だらけのはずなんだが……
文句を言いながらもお上に従いがちな日本人は大丈夫、なのか?
「少なくとも国内においては、国民投票で過半数の賛成を得る程度には問題ありませんでした。
発端が提督達の離反を招いた内閣や与党への反発でしたし、野党や省庁も利権確保に走っている印象を持たれていたようです。
これらを完全に作り直すとまではいきませんが、名より実を取る事を優先する体制を目指す改変が現在も続けられています。国民だけでなく諸外国への説明もしっかり行われており、理解と協力を得ているので、外交でもさほど問題は出ていません。
最大の問題は天皇陛下のご負担と、天皇陛下を助けるためと集まる方々の暴走でしょう」
「昔の軍の暴走みたいなもんか……
軍事態勢という事は、日常生活にも影響がありますよね?」
「無いとは言えませんが、直接の影響はさほど大きくありません。施設や道路等のための立ち退きが強制的となった、国防に関する工事が優先されるようになった、という程度でしょう。危険な地域からの移住等は、体制がどうであれ回避出来ないと思いますし。
生活面としては政治体制よりも、諸外国との交易環境や世界情勢の悪化による生産力の低下に起因するものが深刻です」
「あー……うん、要するに中国ですね」
壊滅的、とか言ってたよなぁ……中国製の物って多かったし。それが途絶えたら影響が大きいのは当然か。
なんでこんな時にまで、反日で盛り上がっちまったんだろうな。