とあるアークスの物語   作:マッキー707

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 ホントは完成してからまとめて載せるつもりだったけどまだ時間かかりそうだからプロローグだけ載っけます。


守護騎士の妹 1

 彼女はいつも守られていた。

 

 自分を守ってくれるその背を見続けた。

 

 だから彼女はその姿に憧れた。

 

 いつしか守られるだけでなく、その背を守りたいと思うようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 瑠璃がここを訪れていたのは偶然であった。

 

 地球での一連の騒動が、守護騎士達やアークス達、そしてその星で生きる人たちの活躍によってようやっと落ち着きを見せたある日。

 

 たまには—基本的に自炊する彼女だが—フランカ’Sカフェで朝食を取ろうと足を運んでいた。

 

 フランカ’Sカフェは最近できたカフェだ。その名の通りフランカという女性がオーナーのお店で、オーナーである彼女自身も厨房に立ち、様々な料理を提供している。

 

 できて間もないのだが、長年の彼女の料理研究の甲斐あってどの料理もとてもおいしく、さらにはオラクルにいる多種多様な種族に合わせた料理も提供できるということもあり、あっという間にアークス達の間で人気となっていた。

 

 朝食を食べに訪れた瑠璃はテーブルについて何を食べようか思案していたのだが、何やら騒がしいことに気付く。まだ早朝なのだが、何故かいつもより人が多く、騒がしい空気が流れるその中でもその騒がしさはよく通っていた。瑠璃は気になって辺りを見回してみれば、見渡せばすぐに発生源は特定できた。

 

 カフェの構造はUの字を描くように作られており、奥からは街を一望できるテラスにつながる外へと直接出られるようにできていた。屋内は、吹き抜けの二階建てとなっていて天井はガラス張りで日の光が遮られないように作られていて人工とはいえ、本物と変わらないような爽やかな朝の陽ざしが降り注いでいる。そして中央には円柱の建物がある。中はカウンターとなっていて鉄板やコンロ、調理器具などが並べられており、注文を受けてそのまま調理できる屋台のようになっていた。その内側で騒ぎは起きていたのだった。

 

--何かあったんでしょうか?

 

 瑠璃はメニューを畳み、すらりと立ち上がる。

 

 騒ぎの中心へと近づいてみれば、オーナーであるフランカと料理人の—と言ってもキャストなのだが—キュレイオンが真剣な表情で顔を突き合わせていた。真剣に話しているのか二人ともまだ彼女が近づいてことには気づいていなかった。

 

「そうするしかないわね」

 

 瑠璃が声をかける前にフランカが声を上げた。その声は今の表情と同じように真剣で、何かがあったことが伺える。

 

 見知った二人が困っているかもしれないと声を掛けようと口を開く。彼女は知人が困っているかもしれないのに見過ごすことはできなかった--知人でなくても声をかけて助けてしまうだが。

 

「あの」

 

「ん?あぁ!瑠璃ちゃん、おはよう!」

 

 声をかけられたことでようやく気付いたフランカは、一瞬驚いたような顔をしてから元気よく挨拶をした。その顔は先ほどまでの真剣な表情ではなく、朗らかなものだ。

 

「お二人ともおはようございます。なにかあったんですか?何やら真剣に話されていたようですが」

 

 瑠璃も丁寧に挨拶を返した後に、二人に訊ねるとフランカは少しバツが悪そうな顔をした。

 

「あははは。見られてたとはね」

 

 乾いた笑いを漏らす。確かにお客にお店側のトラブルは—しかもオーナーである自分が--見せるというのはあまりよろしくないことだ。ごめんねと謝るオーナーと料理人に瑠璃は、蒼い長髪を左右に揺らしながら慌てて両手を軽く振って否定する。

 

「違うんです違うんです。何かお困りでしたら手伝えるかなと思ったので」

 

 形のいい唇に笑みを浮かべて瑠璃はそう言う。本心からの言葉だった。そんな優しい少女に二人は感謝の言葉を伝える。

 

「ありがとう。でも大丈夫だから--」

 

「オーナー」

 

 フランカが申し出に丁寧に断りを入れようとしたときだった。途中で自分の名前を呼ぶ電子音の声に遮られてしまった。その声の主、従業員の一人であるキュレイオンを見る。彼はそのまま続ける。

 

「瑠璃さんに頼んでみたらどうですか?」

 

 従業員の言葉にオーナーは思案顔になって黙り込んだ。話が見えない瑠璃は黙って反応を待つことにする。頼んでみたら--という言葉からして自分に何かできることがあるのだろう。できることなら引き受けようと瑠璃は決めていた。彼がそうするように自分もそうしようと決めて。

 

 やがて考えがまとまったのか待っている瑠璃に顔を向けると真剣な表情で彼女の手を両手で取って口を開いた。

 

「頼みたいことがあるの」

 

真摯な言葉と表情に瑠璃は用意していた言葉を微笑と共に返した。

 

「詳しく聞かせてもらっていいですか?」

 

 

 

 

 

「なるほどクエストの依頼ですか」

 

 話を聞き終えた瑠璃は内容を確認するように呟いた。苦笑してフランカが口を開く。

 

「急に故障しちゃってね」

 

 

 話の内容はこうだった。

 

 今朝、調理器具が一つ故障してしまったのだ。部品の交換で修理できる類の交渉なのだが、問題はその部品だった。彼女は料理を研究する過程でエネミーの部品を使った器具の開発も行っているのだが、件の器具もその一つということなのだ。今日一日はなんとかなるが、できるだけ早く部品の交換が必要だということだった。

 

 エネミーの部品ならアークスに依頼をして取ってきてもらわなければならない。

 

 というわけでクエストとして依頼を—と話がまとまったところで声をかけたのが瑠璃だった。そこで渡りに舟というようにアークスとしての実力もよく知っている瑠璃へと依頼をするに至ったのだった。

 

「本当に瑠璃ちゃんが来てくれて助かったわ」

 

 フランカはほっとした顔を浮かべる。

 

 瑠璃は二つ返事で快く承諾した。クエストとしての依頼だ。アークスとして断る理由がない。標的となるエネミーは少々厄介だが。

 

「こういう時とかはお兄さんによく引き受けてもらってたんだけどね」

 

「ここを開く前からですもんね」

 

 フランカは苦笑しながら頬を掻いた。瑠璃もまた苦笑を返しながら自分の兄と彼女の関係を思い返す。

 

 彼と彼女の関係はかなり長い。まだカフェがオープンしておらず、料理の研究に没頭している頃からの付き合いだと二人の話から聞いていた。料理のために必要な材料をクエストという形でよく依頼をしていたとのことらしい。

 

「彼、なんだかんだで引き受けてくれたからとても助かってたわ」

 

 フランカは当時のことを思い出してか懐かしむような笑みを浮かべる。

 

 大体クエストの依頼をする時、一度は何かと理由をつけて断られたらしい。無理にお願いすることはできないため、断られた後は何とかしようと悩んでいるとフキゲンソーな顔をして依頼を受けてくれるとのことだった。彼曰く、目の前で悩むんじゃねぇと言われたことがあるとこっそり教えてくれたことがあった。そんな話を聞いた時は、その光景を容易に想像できて珍しく吹き出してしまったものだった。

 

 瑠璃もそのことを思い出しながら微苦笑を浮かべた。

 

「兄さんは素直じゃないですから」

 

「そこが彼のいいところ--というか、らしいところかな」

 

 瑠璃は同意の意味で今度は微笑を返す。

 

 一頻り笑いあった後そういえば、とフランカは思い出したように口を開く。

 

「最近忙しいみたいね彼」

 

 その言葉を聞くと、瑠璃の笑みが消え眦が下がる。

 

 フランカの言う通り、今話題の人物はここ最近は忙しそうにしていた。最近では主に地球の一件だが、どれもこれも緊急を要するもので彼が必要とされることばかりであった。収束しつつある今でもまだ忙しそうにしている。そんな様子を直に見たり、周りから聞いてフランカは知っていた。

 

 もちろん妹である彼女もそのことは把握していて、気落ちした声をあげる。

 

「ちゃんと休んでいると思うのですが--」

 

 心配ですという心の声が聞こえてきそうな表情だった。この兄妹はお互いをとても大事に想っているということをフランカは知っていた。まだ瑠璃がアークスになる前から--惚け話から彼女についての悩みまで--彼から話は聞いていたし、今でも忙しい合間を縫って彼女の様子を聞かれることもあるくらいだ。また逆もまた然りで、妹もまた兄の近況を聞いていたのだが。少々--いや結構甘いところもあるが、お互いを想い合っている仲の良い兄妹なのは、よく知っていた。

 

 兄を想う妹はため息交じりに呟く。

 

「私ももっと手伝えればいいのですが、手伝わせてもらえなくて」

 

 あぁと声を漏らしながらフランカは苦笑する。彼はなんだかんだで他人をよく助けたりすることが多いのだが、自分のこととなると一人で解決しようとするところがある。つまりはよく抱え込むのだ。手伝いを申し出ても--皮肉という思いやりの言葉で--遠慮され、かと言って無理に手伝おうとすると困らせる結果になって本末転倒になってしまう。どうしたらいいか目の前の彼女に相談されることもあった。

 

「そこは彼の悪いところだね」

 

 相変わらずだけどと付け加えて同意する。

 

 どうして頼らないかは訊いたことはなかったが、どうも頼ってはいけないと考えている気がすると心中で思う。それはそれなりに長く付き合ってきたからこその考えだ。あくまで想像なのだが、合っているような気はしていた。そう思っているのは自分だけじゃないはずだとも思っているからだ。あの抱え込むアークスに助けられたのは大勢いる。彼が思っているよりも彼は周りに大事に想われているはずだ。きっと自分と同じように考えている人はいるだろうと心中で思っていた。

 

 

「それとなく、妹さんが心配してたよって伝えておくわね」

 

 

 慰めるようにして声をかける。あの周りに心配をかける兄は妹のこととなると弱くなる。よく無茶しがちだが、妹が心配していると伝えれば多少の効き目はあるだろうと踏んでいた。

 

 眦が下がったままの妹は丁寧に頭を下げる。

 

「ありがとうございます」

 

「いいの!いいの!随分世話になってるし、これくらいはね?」

 

 快活に笑い、気にしないでと頭を上げさせる。幾分か表情は和らいだように見えた。

 

 本心からの言葉だった。最近は受けてくれる依頼は減ってしまっているが、お店を開いた今では他のアークスも依頼を受けてくれるようになり、今回のような急なことがなければ困ることはそうそうなくなっていた。それまで支えてくれたのは間違いなく彼であり、受けてくれる依頼が減ってしまっているのも優先すべきことがあるためであって、感謝することはあっても恨むことなど一切なかった。だから二人の手助けなら快くしたいと思っている。

 

 場の空気を変えようと頭を上げた瑠璃に両手をパンと叩いて明るい声で話しかける。

 

「さて、お話はこれくらいにしましょう!まだ朝食食べてないよね?」

 

 こくりと首肯する瑠璃にそれならとフランカは口を開く。

 

「今から作るから待っててもらえる?あっお代はいらないから!」

 

「そんな!悪いです!」

 

 瑠璃は慌てて両手と馬の尻尾のように髪を左右に振って断ろうとする。品行方正な性格をしている彼女にとって遠慮してしまう申し出ただった。

 

「依頼うけてもらったし、これくらいはさせて」

 

 依頼主はお願い、と茶目っ気ある笑みを浮かべた。ここまで言われて断ったら失礼かと依頼を受けたアークスは思い、やがて観念したかのように微笑を浮かべて口を開く。

 

「じゃあ……お願いできますか?」

 

 遠慮がちな言葉に、それでも期待通りの言葉に満足して今の朝日と同じように眩しい笑顔を浮かべて口を開く。

 

「任せて!とびっきりおいしく作っちゃうからね!」

 

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