フェバル~TS能力者ユウの異世界放浪記〜   作:レストB

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10「女戦士 ラスラ・エイトホーク」

 ウィリアムと握手を交わした直後のことだった。

 射撃場の入口より、一人の女性が猛然と飛び出してくるのが見えた。

 その手に真っ赤な輝きを放つ剣を構えて。

 彼女は腰にも銃らしきものと、おそらく剣を差すための鞘を身に着けている。

 かなりのスピードで、真っ直ぐ俺の方に向かってくる。

 あっという間に目前まで達する。

 いきなり襲い掛かってきたのかと思ったが、剣を抜いているにも関わらず、殺気は一切感じられなかった。どうやら本気で攻撃してくる気はないようだ。

 反応を試しているのか。

 俺は迫り来る彼女の顔をしっかりと目で捉えたまま、あえて一歩も動くことはしなかった。

 案の定、殺気のない剣は、首筋のところでピタリと止まった。

 

「随分と物騒な挨拶をするんだね」

 

 皮肉を込めた口調でそう言うと、

 

「一応度胸はあるようだな」

 

 彼女は不敵な面構えで、剣をゆっくりと腰に差し戻した。

 

 まあ昔なら、びびって身を引くなり、逃げるなりしてたと思うけど。

 いや、実際びっくりはしたんだけどね。ドキドキもしたし。

 

 この茶番を眺めていた二人のうち、リュートは新たな戦士の登場にキラキラと目を輝かせている。

 ウィリアムは、彼女に呆れたような顔を向けた後、俺に詫びてきた。

 

「すまない。こいつはこういう奴でな。これから紹介しようと思っていたのだが。おい、ラスラ」

 

 彼が促すと、彼女は実に素っ気ない表情でこちらへ顔を向ける。

 ぶっきらぼうな口調で、一言だけ自己紹介をした。

 

「ルナトープ副隊長。ラスラ・エイトホーク」

「俺はユウ・ホシミ。今回の作戦に協力させてもらうことになった。よろしく」

 

 右手を差し出したが、彼女はそれを一瞥しただけで、応じてはくれなかった。

 彼女は腕を組んだまま、こちらを品定めするような目で見て、それからウィリアムの方を向いて言った。

 

「強い助っ人が協力すると聞いていたが。どう見てもアスティより年下のガキじゃないか。ウチはいつから、こんなのに頼らないといけなくなったんだ」

 

 こんなのって。

 確かに16歳のときから身体は成長してないから、存分に子供らしさは残ってるけど。

 一応もう21だぞ。こっちは。

 元々あまり男らしくない顔つきというのもあって、こんな風に時にガキだと舐められることがある。

 どうせなら20くらいになってから覚醒すればよかったのにと、思わないでもない。

 でもそうすると、みんなと同じようにサークリス魔法学校には通えなかっただろう。

 あそこまで親しくなれなかったかもしれなくて。やっぱりこのままでよかったと思うけど。

 

「クディンからお墨付きはもらっている。今は少しでも戦力が欲しいときなのだ」

「ふっ、どうだかな。所詮は身体能力に劣るチルオンから見た実力に過ぎん。本作戦は最重要任務だ。足を引っ張るような奴なら要らん」

 

 きっぱり言うと、彼女は俺の顔をギラギラした瞳で睨み付けて、にやりと口角を上げた。

 そして、大声で言い放つ。

 

「貴様が使い物になるかどうか、私が直接試してやる。勝負しろ、ユウ!」

「え。いきなり勝負って言われてもな」

 

 突然突きつけられた果たし状に、困惑してしまった。

 そんな俺の戸惑いを見て、彼女よりはまず年長者と見えるウィリアムが「またそれか」と苦笑している。

 

「本当にすまないな。こいつは昔からこうなんだ。根っからの武人というか、戦闘狂というか。自分で実力を確かめないと気が済まない性格でな」

 

 言われたラスラは、やや照れ臭そうにふんと顔を背けた。

 絹のような黒髪を、後ろで束ねて纏め上げているのが映った。

 

「悪いが、よければ受けてやってくれないか。私としても、君の実力を把握しておきたい」

「わかった。構わないよ」

「そうこなくてはな!」

 

 ラスラの声の調子は、明らかに喜びを隠し切れていなかった。さっきの不愛想はどこへいった。

 どうやら適当に難癖付けて、戦う口実が欲しかっただけらしい。

 確かにこういう武人タイプは稀にいる。

 彼らを納得させる一番の方法は、実際に手合せして力を示すことだ。

 それにここで実力を見せておけば、彼らの信頼にも繋がるだろう。

 少し面倒ではあるけれど、断る理由はないかな。

 

「おっ。なんか始まった! オイラ、わくわくしてきたぞ~」

 

 中身はあくまで大人のアウサーチルオンと違って、本物のチルオンであるリュートは、子供らしく素直に心を躍らせていた。その純真な心がまぶしいくらいだった。

 

 

 ***

 

 

 ルールはウィリアムが決めてくれた。といっても、シンプルなものだ。

 お互い殺傷力はない武器を用いること。この射撃場内のみで戦うこと。

 実戦なら戦闘不能になるような攻撃を先に決めた方の勝ち。あとは基本的に自由だ。

 

 射撃台と的を挟んだ空間、床と天井以外は何もないところで、俺は少し離れてラスラと向かい合う。

 ウィリアムとリュートは、射撃台の手前側で呑気に観戦に回っていた。

 

「どっちを応援しようかな。ん~……決められないや。どっちも頑張れ~」

 

 リュートなんてこの調子である。

 ウィリアムもこの手のシチュエーションは何度も経験があるのか、落ち着いた様子で俺たち二人を見守っていた。

 向かいのラスラにしても、戦うのが実に楽しみと言わんばかりの、生き生きとした顔をしている。

 どうやらガチの戦闘狂のようだ。

 

 さて。もういつでも戦いを始めてもいいのだけど。

 俺はすぐにでも気剣を出して動ける構えを見せていたのだが、ラスラは威勢に反して一向に動かない。

 どうしたのかと思っていると。

 やがて、怪訝な顔で尋ねてきた。

 

「なあ。スレイスは使わないのか?」

「スレイスって?」

「知らないのか!?」

 

 ラスラはひどく驚いた顔をすると、腰からあの赤い剣を抜いて、簡単に説明してくれた。

 

「このレーザー剣のことだ。今は安全な訓練モードに切り替えてあるが、本来は硬いナトゥラの機体を斬るための武器だぞ」

「それのことだったのか。どうして銃でなくて、剣なんだ」

「機械の身体を持つ奴らには、攻撃面積の狭い銃系統の武器は、決定打になりにくいからな。もちろんサブで銃も使うぞ」

「なるほどね」

 

 酔狂でなくて、ちゃんと実際的な理由があっての剣なんだな。

 

「って貴様、まさか私相手に無手でやるつもりか?」

 

 俺が何も持っていないことで、誤解した彼女に軽蔑の目を向けられるが。

 さすがにそんなつもりはない。

 

「それなら大丈夫。俺は自分で武器を作れるから」

 

 左手から、白い気剣を放出する。

 この世界で最初に出したときと相変わらず、いつもより色は薄かった。

 だがそれでも、その辺の武器になら負けない強度を持っている。

 今回は試合なので、切れ味はなくしておく。

 俺が何もない所から気剣を作り出す様子を見た彼女は、すっかり目を見張っていた。

 

「ほう。変わった術を使うんだな。初めて見た」

「まあ、必死に身に付けた特技みたいなものさ。そろそろ始めようか」

「貴様の実力、見せてもらうぞ」

 

 俺とラスラは、剣を構えたまま、じっと動かずに睨み合う。

 お互いに仕掛けるタイミングを見計らっていた。

 二人の呼吸が一致したとき、先に動き出したのは彼女だった。

 彼女は俺に走り込みつつ、上段に突きを放つ。

 

「せいっ!」

 

 俺は上体を反らしてそれをかわすと、がら空きの首に一撃を狙って、剣を振り払った。

 と、刀身が届く前に、彼女の身体が一段沈み込む。

 かがんだ彼女は、回し蹴りの要領で足払いをかけてきた。

 咄嗟に一歩下がることで、回避する。

 まだ体勢が整わず、隙だらけの彼女目掛けて、思い切り剣を振り下ろす。

 当たるかと思ったが、そうはいかなかった。

 彼女はアクロバットな身のこなしで、転がりながら俺の左側に回り込む。

 逆にこちらの胴に向かって、薙ぎ払いを仕掛けてきた。

 まだ俺は、剣を振る動作の最中だ。

 ガードする時間はとてもないと判断した俺は、一旦気剣を解除すると、前方宙返りで相手の剣を避けた。

 今度は、隙を晒したのは俺の方だった。

 背後から、彼女の袈裟斬りが迫る。

 空気の流れから動きを読み取っていた俺は、すぐさま再び剣を出す。

 身を捻りつつ剣に勢いをつけて、振り返りざまに剣を受け止めた。

 気剣とスレイスが、バチバチと音を立てて火花を散らす。

 そのままつば迫り合いの形になった。

 

「中々やるな」

「君の方こそ」

 

 ここまで、息もつかせぬ攻防が繰り広げられている。

 彼女はすっかり俺を好敵手と認めたようだ。

 最初に見せていた素っ気ない一面が嘘のように、興奮で顔は紅潮し、はつらつと輝いて見えた。

 そんな彼女の調子に当てられて、俺の方まで気分の高まりを感じていた。

 さて。

 彼女の実力のほどがよくわかった俺は、そろそろ動くことにした。

 

「これなら本気でやっても問題ないか」

「なに!?」

 

 驚きの声を上げた彼女を、双眸に捉えつつ。

 俺は気力強化の度合いを、通常出せる最大限まで引き上げる。

 あくまでここまでは様子見であり、出していたのは全力の半分ほどだった。

 ある程度彼女の動きが掴めてきたここからは、もう出し惜しみは不要。全力で倒しに行く。

 さすがに難癖付けて売られた勝負には、負けられない。

 

 強化によってぐんと力を増した俺の腕が、彼女の鍛え上げられた細腕を押し込んでいく。

 彼女も負けじと力を込めて対抗するが、苦しくなってきたのか、頬にねっとりと汗が垂れ落ちてきていた。

 やがてついに耐え切れず、彼女は一度剣のコンタクトを外して受け流した。

 そこから、果敢に胴斬りへと移る。

 

「はああっ!」

 

 その動きを予想していた俺は、体をかわして余裕を持って回避する。

 改めて、彼女に向けて勢いよく剣を振り下ろす。

 彼女はまた剣を合わせて受け止めようとしてきたが、今度は上手くいかない。前提が違うからだ。

 気力強化によって勢いを増した振り下ろしは、容易く腕ごと剣を弾いた。

 いくら力があるとは言っても。

 鍛えたくらいの女性の腕では、最大限に威力を上げた俺の剣を受け止めることなど、そうそうできるものではない。

 どうにか直撃ばかりは避けたものの、バランスを崩しよろめいた彼女の表情からは、もうそれまでの余裕は感じられなかった。

 窮地に立たされた戦士の顔つきに変わっていた。

 なりふり構わぬ姿勢で、怒涛の剣撃を叩き込んでくる。

 

「はっ! やああっ!」

 

 威勢やよし。心折れないところはさすがだ。

 彼女から繰り出される鬼のような連続攻撃を、俺は紙一重のところでかわしていく。

 避けながら、動きは相当なものだと感心していた。

 剣筋は力強く、かつ舞うように鋭い。

 本気を出した彼女は、確かに自負するだけの強さがある。十分に達人クラスと言っていいだろう。

 しかしだ。比較対象が悪いのかもしれないが。

 残念ながら、それでもリルナにはまだ二歩は及ばないという印象だった。

 俺でも一歩届いてない感じはあるけど、さらに一段下がる。

 このラスラで一流戦士扱いなのだとしたら、なるほどリルナは『最強』の二つ名で呼ばれる化け物扱いになるわけだ。

 

「なぜだ!? どうして当たらない!?」

 

 一向に剣がかすりもしないことに、彼女は動揺し始めていた。

 彼女の真っ直ぐな性格を反映してか、本人も意識しないところで、太刀筋は割合素直なものになっている。

 今までの戦いで、君の動きはもう「覚えた」。

 完全に見切って、ギリギリのところでかわしているのだ。だから当たらない。

 やがて、痺れを切らした彼女の攻撃が大振りになったところで、その決定的な隙を突く。

 首筋にピタリと剣を当てた。

 

「勝負あり、だな」

「……くっ! まいった。私の負けだ……」

 

 直後、射撃台の方から温かな拍手の音が聞こえてきた。

 手を鳴らしているのは、もちろんリュートとウィリアムだ。

 

「いや。いいものを見せてもらったよ。まさかラスラをここまで圧倒できる者が、あのリルナ以外にいるとはな」

「二人とも、かっこよかったな~」

 

 完膚なきまでに叩きのめしてやったから当然だが、彼女のプライドは相当ズタズタにされたらしい。

 かなりがっくりきている様子だった。

 ちょっと気の毒なことをしたかなと思ったけど、ともかくこれでもう舐められることはないだろう。

 

「これで、俺の実力はわかってもらえたかな」

「疑ったのは悪かった。貴様、本当に強いんだな」

 

 心なしか、俺を見上げる目に、熱がこもっているような気がした。

 

「俺なんて全然大したことないよ。一人で月とか動かせるわけでもないし」

 

 いかれた力を持った他のフェバルたちを思い浮かべながら、ぽつりとそう言った。

 別に強さだけがすべてではないとは思うけど。

 それにしたって、俺は彼らに比べたらあまりにも力不足だ。

 まだまだ遠いよな。辿り着けるビジョンが見えない。

 

「なんだ。その月がどうというのは」

「こっちの話。気にしないでくれ」

「そうか――私は強い人が好きだ。歓迎するぞ、ユウ」

 

 戦いの前は差し出しても受け取ってくれなかった手を、今度は彼女の方から差し出してくれた。

 ぎゅっと強く握り返すと、彼女はふっと微笑む。

 それから真剣な表情で、俺の目を見つめて言ってきた。

 

「私はな、もっと強くなりたいんだ。ディーレバッツに勝ちたい。殺された仲間たちの無念を晴らしたい」

「仲間を……殺されたのか」

「ああ。両親も、親友もな……。私は奴らが憎くて、仕方ないんだ」

 

 ラスラは少し俯いて、何かを想う素振りを見せた。

 顔を上げて続ける。

 

「大体の奴らなら、どうにか五分か四分には渡り合える。そこまでにはなった。だが、奴だけは。リルナだけは。どうしても敵わない!」

 

 彼女は悔しそうに拳を握り締めた。

 自分の無力さを嘆くその気持ちは、俺にも痛いほどよくわかる。

 同じように悔しさを滲ませた顔になっていたウィリアムが、溜め息を吐く。

 

「私たちは、ディーレバッツと何度も交戦し、生き抜いてきたことを評価されている。だが、本当にただ生き抜いてきただけなんだ」

「ああ。情けないことにな……!」

 

 悔しい気持ちを絞るラスラに同情の視線を向けつつ、ウィリアムは言う。

 

「実情は逃げに逃げ回って、時に仲間を見捨てるような非情な決断もして。どうにか全滅だけは免れているに過ぎない。ラスラの言う通りさ。情けない話だよ」

 

 そんな彼の口ぶりからは、隊長として何とか隊員たちの命を繋いできた苦労が垣間見えた。

 どうにもならなかったことがたくさんあったのだろう。

 背景が容易に想像できて、こちらも同情的な気分になる。

 

「いや、でもさ」

 

 そこに、リュートが割って入る。

 彼は毅然とした態度で言った。

 

「すげーよ。だって、ずっと自分より強い奴らと戦って生き残ってきたんだろ? オイラなんてさ、名前聞いただけでびびっちゃうんだぜ。だから、やっぱすげーよ」

 

 子供らしい純粋な言葉だった。

 それだけに、ウィリアムの心はいくらか救われたのかもしれない。

 彼の表情は、少しだけ明るくなっていた。

 

「ふっ。それもそうだな。私でなければ、こうは上手くやれなかったとも。まだまだ私もくだばるわけにはいかんなあ」

「そんな縁起でもないことを言うな。私はまだ隊長という器ではないぞ」

「それは違いない。正直副隊長でも怪しいからなお前は。とんだ戦闘バカ副長だよ」

「うるさいな。これでも仕事はきっちりやってるぞ!」

 

 むすっとしたラスラを見て、ぷっとリュートが噴き出した。

 それをきっかけに、みんなでひとしきり笑う。

 

「なあ。ユウ」

「なに。ラスラ」

「私はまだまだ強くならなくてはならない。よって、私に勝った貴様も今から超えるべき目標だ」

 

 俺の目を真剣に見つめて、頼み込む。

 

「だから、もう一度。いや何度でも。また勝負をしてくれ!」

 

 ラスラは相当息巻いていた。

 俺も負けず嫌いだから、そんな気持ちも手に取るようにわかる。

 だけど、ちょっとストレート過ぎないか。

 確かにこれは、とんだ戦闘バカだね……。

 でも、彼女が強くなりたい理由は共感できるものだ。

 その手助けを少しくらいしてあげるのも、悪くないか。

 しょうがないな。

 

「ウィリアム。スレイスを貸して欲しいんだけど」

「別にいいが、どうするんだ」

「普通に使うだけだよ」

 

 彼から放り投げられたスレイスを受け取る。

 訓練モードに切り替えて、何度か素振りしてみた。

 一見重そうな見た目に反して、中々軽くて扱いやすい武器だと感じた。

 新しい武器の感触を確かめてから、俺は女に変身する。

 するとラスラの目が、まるで幽霊でも見たかのようにぎょっとした。

 ウィリアムも顔には出さないようにしていたが、やはり目が泳いでいる。

 やっぱり。変身を初めて見せたときの反応は面白い。

 彼女はしばらく声を失っていたが、やがて絞り出すように言った。

 

「自由に性別を変えられるとは聞いていたが……。本当、なんだな……(しかも結構かわいい)」

「うん。今度はこっちでいかせてもらうよ。性別も一緒で、武器も一緒の対等な条件でね。今はこの身体の方が弱いから、きっと私となら良い勝負になるよ」

「……その意図は?」

「実力が近い同士でやるのが、お互い一番の訓練になるから。いい案でしょ?」

 

 戦ってみた感じでは、魔法が使えない女の状態なら、ほぼ互角だと思った。

 今度は気力強化がない分、身体能力はやや向こうが上になるだろう。

 こっちは覚えた彼女の動きと経験でカバーする。

 せっかく訓練するんだ。私も身になる方がいい。

 

「正直、手を抜かれるのは嫌いなんだがな……」

「私としては本気でやるよ。それに、最初舐めてきたのはそっちなんだから、おあいこ。そういう台詞は、私を打ち負かしてから言ってよね」

 

 ちらっと挑発してやったら、いとも簡単に火が付いたようだった。

 

「ならば。貴様に勝ったら、また男の本気でやってもらうぞ」

「もちろんいいよ。じゃあ、第二回戦といこうか」

「今度は負けん!」

 

 二つのスレイスが、小気味良い音を立ててぶつかった。


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