フェバル〜TS能力者ユウの異世界放浪記〜   作:レストB

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134「ラナクリムの謎を追って 2」

 休憩や動力補給を挟みつつ、三日ほどバイクを走らせた。

 潤沢な資金があるので、道中の宿泊はケチらずにホテルを取った。

 俺は別に簡易宿でも野宿でも全然平気なんだけど、シズハが快適に過ごせた方がいいだろうと思ってのことだ。

 彼女が喜ぶだろうと思って、ネット環境は完備のところにしたよ。

 PCを見せた途端、目の輝きが変わったのがわかりやすくて面白かった。

 出かけ先でもやりたいくらい、ほんとにラナクリム好きなんだね。今から運営サイドを調べに行こうってときにさ。

 次の日に無理のない範囲という約束で、俺もゲームに付き合った。

 こんなときでも楽しむ余裕は大切だ。リクも呼んで、三人で冒険を進める。

 前に比べたら、本当にシズハはよく話してくれるようになった。

 キーボードで生き生きと「シルヴィア」をやってるシズハを隣で見ていると、クールな顔とノリノリのキャラとのギャップがやっぱり面白い。

 ついゲームよりそっちを楽しんでしまったので、そのうち気付いた彼女にじろりと睨まれてしまった。

 

 さて、一日目は平坦な道が続いていたのだけど。

 二日目の途中からは山なりの道に入っていった。

 気が付けば、両サイドを断崖絶壁が固める情景がずっと続いていた。

 

「大自然ね……」

「すごいな」

 

 グレートバリアウォールは、間近にしてみると息が詰まるほどの圧迫感だった。

 本から得た情報から想像していたよりも、ずっと谷は狭く感じる。確か幅は数キロくらいはあったはずなんだけど。

 果てしなく上まで突き上がる赤茶けた土の壁が、そのように錯覚させるのだろう。

 どこを指定してもエベレストより遥かに高いというのだから、とんでもない話だ。天然の要塞と言われるのも頷けるよ。

 もしフェバルの能力なしで登れって言われたら、手で持てるだけの装備だけではちっとも登れる気がしない。

 そしてエディン大橋ほどじゃないにせよ、ほとんどハンドルを切っていないことにも気付いた。とてもカーブが少ないのだ。

 自然にしては驚くほど、道は真っ直ぐ続いている。気まぐれの神が、山を一直線にくり抜いたとしか思えないような地形だ。

 他がすべてぴったり塞がれていて、ここだけ気持ち良いくらい綺麗に開けていると。

 必然、あらゆるものの通り道となる。

 風もまた例外ではなかった。常に強風が吹き抜けていて、容赦なく頬や車体を打ち付ける。

 雪は降っていないのに、氷点下にいるような肌寒さを感じるほどだった。思っていた以上に寒い。

 とりあえずブロウシールド付けようかな。

 ディース=クライツに備わる防風機構を付けると、すぐ快適になった。便利だなこれ。

 シズハはというと。

 何も言っては来ないけど、顔が硬い。

 どう見ても痩せ我慢をしているので、声をかけた。

 

「寒いの?」

「別に。平気」

 

 そこは強情張らなくてもいいとこだと思うけどね。

 

「コート貸そうか? ユイのだけど」

「いらない」

「本当にいらないか? あと二日はこんな調子だけど」

「……どうしてもと、言うなら」

 

 オーケー。素直じゃないね君も。

 

「余計なお節介かもしれませんが」

「ん。お前がそこまで言うなら、仕方ない。着てやる」

 

 あ、今助かったって顔したぞ。可愛いな。

 表情の変化は小さいけれど、読めるようになってくると中々楽しいシズハさんだった。

 

『いいよね?』

『いいよ』

 

 ユイから快く了承を頂いたので、適当なところでバイクを停めて。

『心の世界』から白いコートを取り出す。モコモコフード付きだ。

 モコの毛は冬用、ムルの皮は夏用の服に需要がある。こんなところでも戦争が起こっている。

 手渡すと、なぜかすぐに着ようとしなかった。

 じーっとそれを見つめて、それからまた俺の顔をじーっと見てきて。

 何かしたかな。俺。

 

「お前着ても、似合うな。女装、可愛かったし」

「ああ……うん。わかったから着てくれ」

 

 コートを着てからは快適そうなので、心配もなく道中は進んだ。

 二日目、三日目とハイペースで走らせて。

 ダイクロップス名物『バリアゲート』が見えたのは、三日目の夕方だった。

 ふう。やっと着いたか。

 疲れた俺たちを歓迎してくれるバリアゲートは、武骨な造りの巨大金属門だ。

 くすんだ金属の色が、歴史の重みを感じさせる。

 ちなみにトリグラーブから通じる側だけでなく、反対方向の都市バスタートラックから通じる側も同じ門で塞がれている。

 ほとんど一定の幅数キロで続いていた谷は、ダイクロップスの辺りだけは丸く広がっている。

 因果関係は逆で、たまたま広がっているところに目を付けられて、町を作られたというのが正しいか。

 広がりが窄まるところをぴったり塞ぐようにして、バリアゲートは成立している。

 グレートが付かないのは、大自然の偉大さに一歩譲ってということだけど。それでも中々のものだ。

 少なくとも、レジンバークを囲むほぼ意味なし外周壁よりかは、随分高く立派に見える。

 でもさすがにディースナトゥラの外周壁ほどは、閉じ込めてやろうって感じはしないかな。

 かつてエルンティアでほとほと困らされた記憶に、内心苦笑いする。

 

「いかにも要塞って感じ、だ」

「同感だよ」

 

 工業要塞都市。確かにぴったりな名前だ。

 町に門があるというより、門に町がくっついてるみたいだし。

 防衛イベントとかやったら楽しそうだよな。『巨大モンスターが現れた! ダイクロップスを死守せよ!』みたいな。

 ……さすがにゲーム脳か。

 でもせっかくだから、気分は盛り上げてみよう。

 

「プレイヤー二名。要塞都市潜入クエスト開始ってところかな」

「いい。それ。いい」

 

 シズハも安定のゲーム脳だった。

 ただしこっちはリアルだ。下手な失敗は許されない。気を引き締めていこう。

 

 大きな戦争がない意味では平和な時代が続いているため、現在分厚い門は基本的に開け放たれている。

 個人が普通に出入りする分には、厳しい制限はない。ただ簡易的な検問があるだけだ。

 天下のトレインソフトウェアに探りを入れようなんて物騒な目的さえ隠しておけば、何も問題ない。

 入口でちょっと身分を示すだけで大丈夫。

 俺とシズハは、検問でバイクを止めて身分証を提示する。

 どうにか日の暮れる前にダイクロップスへ入ることができた。

 まあこの身分証、二人とも偽物なんだけどね。エインアークスすごい。

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