知らない町だった。
魔法都市フェルノートと同じかそれよか賑やかだってのに、まったく見覚えがねえ。
ラナソールのどこにもこんなところはねーぞ。
どうなってんだ。さっぱりわからねえ。
あの真っ暗闇に落ちていったとこまでは覚えてるが。
普通に考えるとよ。ずっと落ちてったら、いつの間にかここに着いてたってことなるんだよなー。
てことは、果てに着いたと思ってた世界のさらに向こう側ってことなのか?
そう考えたら、興奮を抑え切れなかった。
だとしたらすげえよ! すげー発見だよ!
俺たちの冒険はまだ終わっちゃいなかったってことじゃんか!
でも大事なことをすぐに思い出して、一気に落ち込む。
けどシルがいないんだよな……。
あいつが一緒じゃなきゃ、やっぱ素直に喜べねーや。
シルはどこ行っちまったんだ?
俺が無事ってことは、きっとあいつも無事なんだよな……?
心配だぜ。のんびりしちゃいられねえ。シルを探さないとな。
……で、当てどもなく探し回ってはみてるんだけどよ。
ダメだ。どこにいるかさっぱりわからねえ。そもそも人が多過ぎる。
それによ。どいつもこいつも俺のことが珍しいのか、レア魔獣でも見るような目でじろじろ見て来るんだよ。
確かにこの辺で俺みたいな恰好したヤツいねえけどさ。歩きにくいったらないぜ。
でも、そんなに珍しいかよ。剣と鎧のれっきとした冒険者スタイルだぜ?
俺からしたら、真っ白でぴしっとした服着てるヤツらの方が珍妙だぜ。あれモコの毛でも使ってんのかな。
あー。もし想像通りだとすると、俺の全然知らねえ文化とかなのかもしれねーな。
「郷に入れば郷に従え」だったか? ユウさんが教えてくれた言葉だ。
よその土地ではよその土地のルールに従っておけ、くらいの意味だったと思う。
見たとこ武器持ってるヤツはいねーし、ここは大人しくしとくか。
さすがにじろじろ見られるのは気持ちわりーし。
つい人目を避けるように歩いてたら、いつの間にか中心街から外れてた。
明らかに歩く人が減ってきたな。道も狭くなったしよ。
建物も派手なのが多かったのが、地味な四角い箱みたいなヤツがずらっと並んでる光景に様変わりだ。
んー。妙だな。
俺は不思議と、既視感を覚えていた。
知らない町だと思ってたけど、やっぱどっかで見たことあるような気がするんだよなー。
――そうだ。夢でさ、しょっちゅう見るヤツ。
あのうじうじした情けないヤツが見てた風景と、そっくりなんだ。
何となくで歩いてきたけど、無意識で覚えてんのかな?
ちょうどこんな四角い箱みたいな形した建物がたくさんあってよ。そのうちの一つに住んでんだそいつ。
で、近くの昼でも夜でも明るい妙な店で買い物したりよ。
そうそう。例えば目の前のこんな……。
「おい待て」
思わず声が出ちまったぜ。
マジか。マジであったぞ。
例のいつも明るい妙な店。そっくり同じじゃねーか。
どうなってんだ。夢にしちゃ出来過ぎてねえか。
興味がそそられる。
ちょっと入ってみるか? 中じゃ確か食品とか色々売ってんだよな?
ちょうど小腹も空いてきたしよ。
けど金は大丈夫か? 一応ジット札は持ってるけど、ここで使えんのかな。
わからねえ。
まあいいや。とりあえず入って様子でも――ん?
店に入ろうとしたとき、ちょうど出てきたヤツとばったり対面した。
辛気臭い顔をしたヤツだ。溜息も吐いてやがる。
なんか心配事でもあんのかな。
ん、待てよ。こいつ……!?
「「あ」」
目と目があったとき、疑念は確信に変わった。
相手はぎょっとしていた。
「「ああああああーーーーーっ!?」」
俺と件の情けない面をした青年は、互いを指差し合って叫んだ。