フェバル~TS能力者ユウの異世界放浪記〜   作:レストB

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211「シズハ救出作戦 3」

「で、ユウさんが言ってたアルトサイドってとこに行くにはどうするんだっけ」

「空間に開いている穴を探して侵入するんだ。魔獣が異常に多い所の近くを探していけばいずれ見つかると思う」

「なるほど。じゃあ基本魔獣とぶつかる想定をしとけばいいわけだな」

「ああ。でも魔獣と戦うのが目的じゃないからなるべく戦闘は避けよう」

「了解」

 

 無駄に体力を消耗しない程度の速度で走る。ハルを通じてレオンと繋がっているおかげで、音に近い速度で走っても息切れすることはない。ランドも朝飯前の様子で着いてきている。改めてラナソール人の身体能力の高さを感じるところであった。

 

「なあランド。君の他にこちらの世界に来た人間を見かけなかったか」

「いやー誰も見てねえな。魔獣ばっかりさ」

「どうしてなんだろうな」

 

 ラナソールは人間が暮らしている土地よりも魔獣だけの土地の方がずっと多いし、数も魔獣の方が圧倒的に多い。だからほとんど魔獣ばかりというのは納得がいくんだけど……人間がランド以外誰一人としてこちらに来ていないという事実は考えさせられるものがあった。

 

「さあなー。でも俺さ、ユウさんの話聞いてると、たぶんシルと一緒でアルトサイドってとこには落ちてたんだよな」

「よく無事でいられたね。ナイトメアにやられる前に偶然こっちに繋がる穴を見つけたとか?」

「いやー……そういうわけじゃねーんだよな」

 

 思い出す素振りを見せるランドは、どこか歯切れが悪い。

 

「たぶん俺、危なかったと思うんだわ。そのときは自分が消えちまうような気がして、正直すげー怖かったんだけどよ。ふと感じたような気がしたんだよな――ラナ様を」

「ラナを?」

「おう。まあ姿を見たわけじゃないし、はっきりしたことは言えねーんだけどさ。ラナ様が守ってくれたような……で、気付いたらこっちにいたんだ」

「そうだったのか……」

 

 中々示唆に富む話だ。

 殺されたはずのラナは、それでもまだ世界と人々を守っているのか?

 それと、仮にラナソールの人たちが穴を通るときに一度アルトサイドを中継するなら……みんなトレヴァークに辿り着く前にアルトサイドに囚われてしまっている可能性はないだろうか。

 穴に落ちた人はたくさんいるけれど、こちら側に辿り着けた者がランド以外にいないのだとしたら。急増した夢想病患者とも整合的だ。

 一方で魔獣は問題なしにこちら側に辿り着いている。人と魔獣を隔てるものはなんだ。

 

「ユウさん。難しい顔してどうしたよ」

「ちょっと考え事をね。どうして魔獣だけがこちらに来るんだろうって」

 

 もう少し考えを巡らせていると、答えと思える予想がふと浮かび上がった。

 

 そうか。心か。

 

 ラナソールの人は完全な創造物ではなく、トレヴァークの人の心を土台にしている。一方でラナソールの魔獣はトレヴァークの動物を拠り所にしているわけではない。

 クリスタルドラゴンの強い怒りを感じたように、心がないとは思わないけど、実体に紐付けられたものではないんだ。

 おそらくアルトサイドのナイトメアは実体のある心に取り憑く。だからラナソールの人はすぐに取り憑かれてしまう。けれど魔獣は取り憑く対象にはならないのだろう。だから素通りできてしまうんじゃないだろうか。

 そう考えてみると、今ここにいるランドはとても貴重な存在なのではないかと思えた。本人の言葉によればラナに守られたという幸運。それにもしかしたら世界の果てという現実世界に近い場所にいたことも味方したのかもしれない。現実のリクに引き寄せられる形でトレヴァークに辿り着くことができたのだろう。

 

「そんなことよりも俺はシルが心配だぜ」

「……そうだな。一刻も早くアルトサイドへ行こう」

「おうよ」

 

 魔獣の溜まり場と穴は数時間ほど走り回ったところで見つかった。特別に運が良かったわけではないだろう。一日足らずで見つかってしまうほど穴が増えてきており、現実と夢想の境界が弱まってきていることだ。

 いつの間にかパワフルエリアに突入し、力が漲ってきたのもその証拠だった。

 レオンの恩恵とランドの協力もあり、普通なら問題にならないところだが……。

 今、俺たちの目の前に立ちはだかる魔獣のうちの一体が大問題だった。

 

「あいつは……!」

「おいおい……やべーのがいるぞ!」

 

 それは体長約10メートルと、このクラスの魔獣にしてはむしろ小さい部類に入る。

 だが等身大のフェバルたちが規格外であるように、大きさがそのまま強さを表すわけではないという良い見本の代表がそいつだった。

 自身の膨大な魔力によって常に宙に浮かぶそいつは、身体の左右でまったく異なる特徴を持つ。

 右半身は浅黒い肌に真っ黒な外套を纏い、顔はまるでドクロの仮面を張り付けたようである。一方で左半身は真っ白な肌に純白の布を巻き付け、顔はまるで人間の女性のようだ。

 

 破壊と再生の偽神『ケベラゴール』。

 

 標準「挑戦推奨」レベル……318。

 

 特S級ともSS級とも呼ばれるそれは、ラナソールで最強格の魔獣――魔神と呼ばれるものの一体だ。

 S級魔獣クリスタルドラゴンの標準「討伐可能」レベルが110であることを考えると、いかに桁外れの強さであるかがわかる。

 ゲームのラナクリムにおいて誰一人討伐できたことがないという偉大な実績を持つ。ラナソールでも確かレオンが倒したことのない一体だったはずだ。

 

『若気の至りで挑んでみたことはあるんだけどね。とにかく攻撃力が高いし回復力はすごいしで、限界が来る前に諦めたよ。一人や少人数で挑むものじゃないね。アレは』

 

 本人からありがたくないお墨付きも頂いたところで、偽神もこちらに気付いた。左右まったく異なるいびつな顔で、ケタケタニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。

 もしかするとバラギオンを凌ぐ実力を持つそれを前にして否応にも緊張は高まるが、ひとまずランドに呼びかける。

 

「再確認だ。あいつを倒す必要はない。やり過ごして穴へ突っ切るぞ」

「了解! 言われなくたってあんなのとまともにやらねーよ!」

 

【気の奥義】

【反逆】《不適者生存》

『セルニエス』

《マインドリンカー》

 

 俺がフェバルの能力を二つ、さらにレオンが風の加護を施す。加えてランドと一時的に心を繋ぎ、能力を共有する。重ね重ねのドーピングだ。

 

「おお。急に身体がすげー軽くなったぞ!」

「パワーアップをたくさんかけた。しばらくはもつはずだ」

「すげーすげー。これならあいつだって倒せそうな気がするぜ」

「こら。すぐ調子に乗らない。ところであいつの弱点は火属性だったな――ランド」

「おう。アレだな! 修行の成果を見せてやるぜ!」

 

『ハル。火の魔力を頼む』

『わかった。いくね』

 

 俺はまず左手に気剣を創り出した。

 まばゆい純白に輝くそれに、レオンから送られてくる火の魔力をブレンドする。

 気力と魔力。相反する二つの力は荒ぶるが、俺はそれらをまとめ上げて一つの形に結集させた。

 白かった刀身は紅く輝き、ゆらゆらと熱く燃えている。

 魔法気剣。火の気剣だ。

 ユイがいないのでずっと使えなかったが、ハルを通じてレオンと繋がったことで、精霊魔法を媒介にして創り出すことができた。

 

 一方、ランドも魔法剣を右手に創り出す。

 俺との(本人曰く厳しい)修行の末に、彼は一つ殻を破って次のレベルへと到達した。

 純魔法剣。

 すべてが火の魔力でできた剣を彼は手にしていた。もはや彼に媒体となる金属の剣は必要ない。

 ランドはそれを得意気に見せびらかして来る。

 

「どうっすか俺の剣は。ワールド・エンドに向かう旅でさらにレベルが上がったんだぜ」

「確かに一段と腕を上げたね。でも気を引き締めろ――来るぞ」

 

 偽神が破壊の右腕を振り上げると、千を超えるおびただしい数の暗黒球体が放たれた。

 奴の得意とするクラッシュの魔法だ。一つ一つが半径数メートルもあるそれらのどれか一つに触れただけでも、触れた部分が問答無用で握りつぶされてしまう。

 

「かわしながら前に! 他の魔獣の動きにも気を付けて!」

「おう!」

 

 当たる位置に飛んで来るものだけを冷静に見極め、スレスレよりは少し余裕を持って、しかし大きく動き過ぎずにかわす。あまり大きく動くと他の球体に当たってしまう。

 ランドの方も上手く対処しているようだ。

 第一波は捌いたが、まだまだ穴とは距離がある。

 直接声をかける余裕はないので、ランドに念話を送った。

 

『かわして終わりじゃないぞ。次が来る』

 

 クラッシュの魔法は威力こそ恐ろしいものがあるが、素直に飛んでくるのをかわすだけならS級冒険者なら多くの者ができるだろう。

 問題はこの後だ。偽神の攻撃は時間が経つにつれ重層的になり、どんどん凶悪なものになっていく。

 かわされることは想定済みとでも言うのか。展開された暗黒球体は彼方へ飛び去ることなく、俺とランドを包囲するように静止した。

 再生の左腕が振られる。暗黒球体の一つ一つが大きさを保ちながら数個ずつに分裂する。既に万を超える数となったクラッシュの球体は、奴だけに有利な固有フィールドを形成する。

 そして奴が指揮のように左腕を振り下ろすと、それらは俺たちを目掛けて不規則な軌道で襲い掛かってきた。

 

「うおっ!? いっぱい来たあああああ!?」

『落ち着いて。一度に近づいてくる数には限りがある』

 

 絶叫するランドに冷静な対処を呼びかける。

 

『わかってらあ。ちょっと驚いただけさ!』

 

 そこはランドも一流の冒険者。大袈裟なリアクションとは裏腹にしっかりと攻撃を見切って避けていく。

 その様子を見て大丈夫だと踏んだ俺は、自分がかわすのに集中する。

 こういうとき一番やってはいけないのは、無駄に動き過ぎることだ。攻撃にびびって必要のない動きをすると、避けた先に攻撃がきて余計に対処が厳しくなる。

 必死に避けているうち、まるで弾幕シューティングゲームでもやっているような気分になってきた。

 ただし動かすキャラは自分で、弾は恐ろしく高速で、しかも自機は一つしかない。

 いや、フェバルだから自機は無数にあるのか?

 ……とにかく、今やられてはランドにかかった強化が切れて彼が殺されてしまう。死ぬわけにはいかない。

 それにしても激しい攻撃だ。ハルと繋がってなかったら確実にやられてたな。

 

『ランド。大丈夫か?』

『ひやっとするがまだまだいけるぜ』

『少しずつでいい。穴の方へ近づけそうか』

『やれるかじゃなくてやるしかねーだろ』

 

 攻撃を避けつつ穴の方へ向かう意識で動く。前へ進むという制約が付き、さらに針の穴を通すような動きを強いられるが、穴までの距離は着実に迫ってきた。

 俺たちはどうにか避けているが、他の魔獣にとっては死に等しい攻撃だった。逃げ遅れた無数の雑兵はあわれ圧殺の餌食となり、血肉をまき散らして果てていく。

 

 あるとき、若干攻撃が緩んだような気がした。

 

 違和感を覚えて偽神の方に目を向けると、スパークを散らす球体を両手で創り出している。見た目から雷撃魔法を放つつもりのようだった。

 

『アレを撃たせちゃダメだよ。途中で枝分かれして黒い球体で乱反射するんだ。大変なことになる』

 

 ハルから恐ろしいことを聞かされた俺は、急いでランドに呼びかける。

 

『ランド。あの攻撃をそのまま撃たせたらまずい。魔法剣を構えて。例のやつをやるぞ』

『協力技だな! わかったぜ!』

 

 俺は左手の魔法気剣に力を込め、ランドは右手の純魔法剣に力を込める。紅い刀身がさらに真っ赤に燃え上がる。

 

『今撃っても黒い球体に削られてしまう。あいつの雷撃に正面からぶつけよう』

『よし。タイミングが大事だな』

『タイミングは任せてくれ』

 

 自分の攻撃が自分に向かって反射される間抜けなことにならないよう、雷撃の軌道上だけは邪魔な球体は避けるはずだ。

 そこを突く。あいつの攻撃の瞬間が最大のチャンスだ。

 

 魔法を十分に溜めた偽神は、両手を胸の前に突き出して発射の体勢に入る。

 挙動から放たれるタイミングを見極めようと試みる。雷魔法は光魔法に次いでとにかく速い。撃つ瞬間を認識してからでは遅い。

 黒い球体が奴の正面を避けるように動き始めた。

 だがまだだ。焦るな。まだフェイントの可能性がある。

 嘲るような悪意を感じる。

 そこに殺意が混じった瞬間。

 

 ――来る。

 

『今だ! 撃て!』

『おりゃあああああっ!』

 

()()()()()()()()

 

 火の魔力を纏った剣閃を二人同時に放つ。ランドが教えを乞うてきたので伝授したのだ。

 ラナソール基準でもハイレベルな一撃は、それぞれが山を斬り飛ばすにも十分な威力だろう。

 そして俺たちが自分の攻撃を撃ち出したと思ったときには、雷撃は放たれていた。

 大気を揺るがすほどの電気の奔流。横方向に飛来する大自然の雷――もはやそんなものすらも遥かに超越した極大の電子光線は、大地を砕きながら俺たちを焼き尽くす死の轟音を立てて迫る。

 だが。

 雷撃とぶつかる直前。息を合わせて放った二つの剣閃は交わり、一つに合流した。

 

()()()

 

『いけ!』『いっけー!』

 

 相乗効果によって数倍以上の威力に強化された双剣閃と雷撃が激突する。

 勝ったのは俺たちの攻撃だった。

 剣閃の交差点を中心に、雷撃が斬り裂かれていく。雷を砕きながら、真紅のクロスは偽神に一撃を下さんとなおも突き進む。

 同時に、攻撃の通った跡は黒い球体のない安全な進路となっていた。

 

『走れ!』

 

 わずかな時間も無駄にはできない。俺はランドに呼びかけて剣閃の進路に沿うように駆け出した。

 穴は偽神の右後方にある。途中で道を逸れる必要はあるが、かなりの近道になる。

 俺たちが進み出したのと、双剣閃が敵に激突したのはほぼ同時だった。

 強烈な閃光と爆発が奴を包む。巻き起こった土煙によって姿が隠れ、同時に黒い球体の動きが止まった。

 それを見て、即座に進路を穴への最短進路へと舵を切る。ランドもすぐ後ろからついてくる。

 

 偽神を覆っている土煙が徐々に薄れていくのを横目に、穴の方へとひた走る。

 穴から身体を突き押されるような抵抗を感じるようになってきた。もう少しだ。

 

『なんて奴だ……。アレを耐えやがった!』

 

 ランドの驚愕が『心の世界』を介して伝わってくる。

 見れば――胸部を大きくバツ字に斬り裂かれ、黒白の衣装は消し飛んでいたが、なお偽神は健在だった。

 弱点属性を重ね撃ちしてもダメなのか。

 さすがにあれで倒し切れるとは思っていなかったが、もう少しこたえるかとは思っていた。改めてラナソール上位生物の強靭さをまざまざと見せつけられ、背筋が寒くなる。

 そればかりではない。

 カカカ、と不気味な笑い声を発し、奴は左手を胸に傷にかざす。するとみるみるうちに傷が塞がっていくではないか。

 脅威の耐久力と回復力。奴が破壊と『再生』の偽神たる所以を見た。

 だが回復に集中している間、攻撃の手は緩んでいる。チャンスはまだ終わっていない。

 同時に嫌な予感がした。偽神は回復しながら、明確な憎悪をもってこちらを睨んでいたからだ。

 

 ここまで穴に近づけばいけるか。さっさと逃げ切ってしまおう。早く行かないとまずい気がする。

 

『こっちへ来て手を繋いでくれ。一気に抜ける』

『ユウさんのとこに行けばいいんだな!?』

 

 俺はほんの少しだけペースを緩め、ランドが追いつけるようにした。穴はもう内部が見えるほどの距離だ。

 

「クカカカ……」

 

 骨を鳴らすようなおぞましい偽神の声が耳に届く。

 無数に分かれていた暗黒球体がみるみるうちに寄せ集まっていくのが見えた。

 振り返って確認するまでもなくわかる。

 でかいのをぶっ放してくるつもりだ。ガチで俺たちを殺しにかかっている。

 

「ユウさん!」

 

 ランドが追いつき、俺の手を取った。

 一刻の猶予もない。もう出し惜しみはしていられない。

 穴からの斥力を無視して強引に突破するため、何度お世話になったかわからないショートワープの連続使用に入る。

 

《パストライヴ》

《パストライヴ》

《パストライヴ》

《パストライヴ》

《パストライヴ》

……!

 

 急げ。急げ! 追いつかれる前に!

 

 瞬間移動とは言っても、一度の移動距離は限られており、次の使用までには一瞬の溜めが要る。その間にも背後から何かを巻き上げる音と凄まじい風がぐんぐん迫ってくる。振り返って見ている余裕などない。

 

 ――これで!

 

 穴の中――薄暗闇の世界へ飛び込んだ俺たちは、最後の一回のショートワープで、穴から逸れる方向へと飛んだ。

 間一髪、穴を極大のクラッシュ魔法が貫き、俺たちが一瞬前までいた場所を呑み込みながら闇の向こうへと消えていった。

 

「はあっ……はあっ……!」

「ぜえっ……ぜえっ……!」

 

 死の危機を辛うじて乗り切った俺たちは、激しく息を切らしながらも生を勝ち取った実感を噛み締めていた。

 危なかった。魔神があんなでたらめな強さだったなんて。

 まだ強さの底が見えなかった。本当にバラギオンより強いんじゃないか?

 あいつが暴れてトレヴァークに甚大な被害をもたらしたりしないだろうかと心配になる。

 もしロトー村が見つかったら、いくらエーナさんの魔力を利用した魔法でも……。

 ……考えても仕方がないな。どうなるかわからないし、どうしようもないのだから……。

 

『間一髪ってところだったね。ハラハラしたよ』

『君の力がなかったらやばかった。助かったよ』

『まだまだ先は長いからね。逆にボクがキミの力を借りることもあると思うから、そのときは頼んだよ』

『ああ。任せてくれ』

 

 呼吸が落ち着いてきたところで、ランドに軽口を叩く。

 

「大丈夫か。腕とか足とか取れたりしてないか」

「ちゃんと五体満足っすよユウさん」

 

 見ればわかり切っていることだが、無事な膝と腕を叩いてランドがニッと笑った。

 

「ふう……。思ったより随分苦労したけど、本番はここからだよ」

「来たな――ここが薄暗闇の世界アルトサイドか」

「ナイトメアには光属性しか効かない。剣の属性を切り替えておこう」

「了解だぜ」

 

 一寸先は闇の世界を二本の剣から溢れる光がわずかに照らす。危険な旅は続く。


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