フェバル〜TS能力者ユウの異世界放浪記〜   作:レストB

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251「ユウ、シェリーの捜索を任せる」

 ダンのところへ向かい、彼の手を借りてトレヴァークへと帰還する。

 戻ってみると、何でも屋のオフィスルームだった。

 ダンの近くでは、リクが難しい顔でPCのタッチボードを弄っている。

 俺の姿を見るなり、リクは「おかえりなさい」と声をかけてきた。

 

「どうでした? 収穫は」

「ばっちりだよ。たくさんの力をもらってきた」

「さすがっすね。ところで、心配なことがあるんですけど、報告してもいいですか?」

「もちろん。どうした」

「その。色々あったので、知人の安否を確認してたんですけど……」

 

 幸運にも、彼の知人はほとんど全員無事だったのだという。

 ただ一人を除いては。

 

「シェリーさんと繋がらなくて」

「そうだ。シェリー!」

 

 言われて思い出して、狼狽える。

 前に彼女の反応を探ってみたとき、反応が薄くてよくわからなかったんだよな。

 それだけなら必ずしも危険というわけではなく、ただ近くにいないということなんだけど。

 でもこのご時勢、トリグラーブにいないというだけで心配だから。

 近いうちに探そうとは思っていたんだ。そのときは。

 けれど、明らかに危機に陥っていたシズハの救出から、エルゼムの襲撃、ヴィッターヴァイツの襲撃と。

 一連の事件が続いたせいで、すっかり頭から抜けてしまっていた。

 危ない状況かもしれない。手遅れでないといいけど……。

 

「ユウくん」

「ハル。あれ、どうしたの!?」

 

 焦りを覚えているところに、ハルが"普通に歩いて"部屋に入ってきたので、思わず目を丸くする。

 

「ふふ。びっくりしたかい? 君がたくさん繋いでくれたおかげで、ほらこの通りだよ」

「驚いた。常時パワフルエリアばりの補助がかかっているのか」

 

 むしろ単純にパワフルエリアにいるより遥かに強い。気力だけでも常人を優に超えている。

 ハルは強く繋いでいるから、恩恵も大きいのだろう。

 

「うん。で、今度はボクのところからフェルノートに行くつもりだったんだろうけど……。もっと優先したいことがあるみたいだね」

「ああ。時間がないのはわかっているんだけど、シェリーを探したい」

「キミならそう言うと思ったよ。だからね」

 

 ハルがリクに目配せして、彼が言葉を継ぐ。

 

「既にエインアークスの方や、ランドさん、シルヴィアさん、アニエスさん、J.C.さんに捜索してもらっているんです」

「マジか。助かるよ」

「で、僕は捜査状況を取りまとめていまして。彼女……どうも聖地ラナ=スティリアに向かったみたいなんですよね」

「そうか。被災地だからってことで向かおうとしたんだろうな」

 

 けど俺たちが行ったときには既にいなかった。

 死体も――幸いにして見つかっていない。

 

「結局行かなかったのか。入れ違いになったのか」

 

 最悪の可能性は考えないようにして、推測を述べる。

 

「というわけで、ランドさんたちには、聖地からここまでの範囲で見てもらっているんです。見つかる可能性が一番高いので。あと、全然ついでじゃないですけど、皆さんには他の被災者の救助活動も同時にしてもらっています」

「だからね。こっちのことはボクたちに任せて、キミはキミにできることを優先して欲しいんだ。みんなの力を借りるとか、世界の記憶のこととか」

 

 ハルは俺に手を差し伸べて微笑む。

 

「時間は限られているから。ね」

「……そうだな。わかった。シェリーや他の被災者のことは頼む」

 

 確かにリクやハルの言う通りだ。

 俺一人が加わるよりも、ここはみんなを信頼して任せた方が効率が良いだろう。

 きっとシェリーは見つかるはずだ。アニエスやJ.C.さんがいるなら、「多少の手遅れ」は取り戻せるかもしれない。

 みんなの力とシェリーの無事を信じよう。

 

 俺は意を決すると、ハルの手を取り、フェルノートへと向かった。

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