フェバル〜TS能力者ユウの異世界放浪記〜   作:レストB

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3-314"トレヴァーク防衛作戦会議”

 合同会議が始まった。

 とは言えラナソールなき今、一般人のリクたちでは《マインドリンカー》による強化を付与しても、とても肩を並べて戦うわけにはいかない。

 英雄メンタルを持つハルも、現実ではリハビリ中のか弱い身。気持ちはリルナとともにユウの隣で戦いたくとも、想いだけで託すしかないところはあった。

 ミズハも【無限の浸透(インフィニティ=ペネトレーション)】こそ持っているが、戦うにはまるで向いていない。

 したがって、彼らのうちでまともに戦力と胸を張れる者は。ユウ、リルナ、そして受付のお姉さんのみである。

 

「こればかりは仕方ないな。お前たちの分もわたしたちが背負うとしよう」

「まあまあ。荒事はお姉さんたちに任せておきなさい」

 

 リルナと受付のお姉さんが、改めて闘志を漲らせる。

 ユウは他のみんなには、大事な別の役回りを頼むことにした。

 

「代わりにリクたちには、作戦本部や後方支援の役目を果たして欲しいんだ。この先、星々を跨ぐ戦いになると思うから」

「わかってますよユウさん。それぞれの活躍できる場所で、ですよね」

「ああ。頼んだよ。リク、みんな」

 

 面々から、頼もしい返事が返ってくる。

 

『市民の保護は任せて下さい。ユウさん』

『がっはっは! 大船に乗ったつもりでいるがいい!』

 

 モニター越しではエインアークスのボスと大ボスの漢親子、シルバリオとゴルダーウが肩を寄せて心強い台詞をくれた。

 

「お願いします。と、そうだ。みんなにもかけておくよ」

 

 ユウはその場の全員にも《マインドリンカー》を施した。

 想いの力が高まり、この技にも『異常』な質的変化が起こっているため、力のみならず種々の能力や概念耐性までも付与される。

 高度な『異常生命体』が特殊能力云々に耐性を持つのと同じ理屈である。

 

「アイの洗脳なんかにも耐性ができたはずだ。自分の身を護るくらいはできると思う」

「確かに前に繋いでもらったときとは、だいぶ感じが違いますね」

「身体が、軽い」

 

 リクとシズハは、ランドとシルヴィアにかけてもらったときのことを「思い出し」つつ、内を満たす不思議な温かさと力強さに驚いていた。

 

 想いの力が全面に出てくる段階になると、むしろ見かけの気力や魔力にはほとんど影響を与えない。

 穏やかな海のように静かで。しかし心から思い描くだけの「理想的な」動きへ近付いていく。

 フェバル級の超越者たちが、溢れるばかりのパワーをもって戦うならば。こちらはロジックとしてまったく異なる質の「強さ」。

 現実の力はそのままでありながら、想いの力が現実の限界を突破する。

 実のところ、ラナソールの者たちに近付いていると解釈することができる。

 彼らには感じられる気力や魔力が一切ないが、しかし不思議な力には溢れていた。

 極限に高まる想いの力がついに現実へ到達し、現実改変にも等しい重大な変化をもたらす。

 俗に夢想化――ラナソーライゼーションと呼ばれることになる現象である。

 人の想いを汲み、繋ぐことを追い求めた今回(・・)のユウだけが到達した――【神の器】の新たな一つの到達点と言える。

 

「わ、なんだ。すごいや!」

「これ、楽しい!」

「ユウも!」

 

 名も無き世界三人組は無邪気にはしゃいでおり、特にアーシャと小さなユウは飛び跳ねたり駆けっこのじゃれ合いを店内で始めてしまう始末だった。

 緊張とは無縁のほのぼの家族風景は、一同にとってひとときの癒しである。

 そして唯一、リルナはユウにも迫るほどの凄まじいパワーアップを遂げていた。

 

「すごいな。バラギオンと戦ったときとは、まるで次元が違う。今なら何でもできそうな気がしてくるぞ」

「君は元々深く繋がっている上に、設計段階で俺との相性抜群に造られているから、特に恩恵が大きいだろうね」

「よし。これならわたしも十分戦えそうだ」

「頼りにしてるよ。リルナ」

「お互い様にな」

 

 リルナとユウは気合いのグータッチを交わす。その光景を「いいなあ」と羨ましそうに見つめるハルであった。

 そして受付のお姉さんは元々虹色の謎オーラを纏っているので、見た目には変化がわからなかったが。

 本人的にはしっかり効いているらしい。

 

「あーーー効くわ~~~」

「あはは……」

 

 実は素で一番とんでもないのはこの人じゃないかと、ユウは地味に思ったりしている。

 

 と、そのとき。エインアークス本部に緊急通信が入った。

 ダイラー星系列が撤収するとき、有事のために残していった連絡用端末からである。

 シルバリオがこちらに繋ぐと、ホログラムが浮かび上がり。

 約半年前までこの星を統括していた、ブレイ・バードその人が話しかけてきた。

 

『トレヴァーク諸君。こちらダイラー星系列である。……と、どうやら準備万端という顔ぶれだな』

 

 一同、然りと頷く。

 

『もしや、そこにユウがいるのか?』

『はい。います』

 

 威勢良くユウが乗り出して返事をすると、ブレイは安心から溜息を漏らした。

 

『信じてはいたが、こうして直接見るとほっとしたよ』

『すみません。とんでもない奴に力をほとんど奪われてしまって。色々とご迷惑を』

『お前のせいではないさ。もっとも、本星はそうは考えていないようだが』

 

 ダイラー星系列より全宇宙指名手配がかかっていることを告げると、さすがにユウも苦い顔になった。

 

『マジですか。これからずっとお尋ね者ですか……』

『散々苦労する星の下に生まれたものだな。お前も』

『まあ【運命】らしいですから』

 

 さらっと受け入れるあたり、困難への覚悟はとうにできている。

 そこへ、別のホログラムががっと割り込んできた。

 

『おう。その様子だと立ち直ったようだな!』

『あ、トーマスさん。お久しぶりです。いったいどうしたんですか』

 

 ユウの認識では、最初の異世界エラネル以来の再会である。地味に『ありのまま団』に混じっていたことは知られていない。

 なおかつ元ダイラー星系列のエリート役人であることも知らないので、彼がそこにいることがまだ結び付いていなかった。

 そんな背景はさておき、トーマスはとりあえず真実の気持ちだけを伝える。

 

『なあに、今回ばかりは『傍観者』気取ってもいられなくなったんでな。力になるさ。今回だけだぞ』

 

 細かい事情はよくわからないが、フェバルとして強い力を持っていることをユウは知っている。

 正直に心強かった。

 

『ありがとうございます。助かります』

『それでな。我々は今、艦隊を率いて宇宙で小競り合いを続けているんだ』

 

 ブレイが状況を手短に伝え、トーマスが補足する。

 

『俺たちも力を尽くしているが……アイの奴め。恐ろしいバフをかけていてな』

『正直言えば戦力不足だ。取りこぼした連中がじきそちらへやってくるだろう。すまないな』

『いえ、助力だけでも感謝します。残りはこっちで迎え撃ちますよ。任せて下さい』

 

 迷いなく言い切ったユウに、ブレイは目を細める。

 

『……ほう。いやに頼もしいな。何かを掴んだか?』

『それなりには。まだアイと直接戦うには、足りないですが』

 

「ただ……もう少しで何か、掴めそうな気もするんです」と。

 ユウは正直に感じているところを添える。

 

『ならば。これからの戦いの中で掴めばよかろう』

『ええ。そうですね』

 

 力強く返事をして。

 それから数言話すと、再び向こうでは激戦が始まったようで。通信は切られてしまった。

 いよいよトレヴァークにまた大きな戦いが迫っている。

 緊張が場を包み、皆がいそいそと動き出したところで。

 

「そうでした。私からも一つ、伝言がありました」

 

 ミズハは地球の戦友から受け取った言葉を、そのままユウに伝える。

 

『故郷で待つ。そのうちテメエで会いに来いってな』

 

「……えっと。母さんのお友達、でしたよね?」

「ええ……。まあ」

「あの。とりあえず、わかりましたと。はい」

 

 それはもう、まったく面識はないものね!

 これがユナとセカンドラプター――戦友同士だったら、マジで激熱演出だったのにね……。

 

 ユウからの微妙に乗り切れない反応に、「ですよねー」と苦笑いするしかないミズハであった。

 

 そしてリルナはハルを連れ、時間の許される限りで恋バナを楽しんだ。

 

 

 ***

 

 

[地球 東京のとあるセーフハウス]

 

 化け物の魔の手は、ついに裏球から地球へ。

『女神』アイの『響心声』が、瞬く間に地上全体を包み込む。

 そうして実に容易く、この星もほとんどが掌握されてしまった。

 まこと凄まじきは【侵食】の力であるが。

 

 ここに、まるで効かない者が二人(・・)

 一人は当然に彼女である。

 数々の世界で知り合ったダチに能力バフを重ね掛けしてもらい、さらに【干渉】による概念防御も付与してもらった。

 かねてより「やがてくる」この日に備え、ガチガチにメタを張って強化・対策している。

 そのため、魔性の声も今のセカンドラプターにとってはそよ風に等しい。

 

「へっ。とうとう来やがったな。シャイナ(バケモン)の妹め」

「すみません。俺まで匿ってもらっちゃって」

 

 彼女の隣では、ユウの従兄のケンが「お情け」で洗脳から護ってもらっていた。

 もちろんウィルは相当に嫌な顔をしたが、そこは真剣に頼み込んだ。

 セカンドラプターはにっと笑って、彼の肩を叩く。

 

「いいってことよ。せっかくあいつが帰ってきてもよ。『家族』が誰もいなかったら、寂しいじゃねーか」

 

 ひとりぼっちの寂しさをよく知る彼女には、これができる限りの贈り物だった。

 

「まだ俺のこと、そう思ってくれてますかね」

「心配すんな。あいつは受けた反省と愛情は忘れない。そんな薄情な性格してねーよ」

「そうか。そうだといいな……」

「んな下らねー心配より。こっからが本番だぞ」

 

『彼女』の肌を刺す脅威をひしひしと感じつつ、一人の戦士と一人の一般人は孤軍奮闘を開始する。

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