ずっと会いたかった。
やっと。また会えた。
「レンクス!」
彼は心からほっとした顔を見せた。
「間に合ってよかった」
私は胸が熱くなっていた。
また、私を助けに来てくれた。
――あれ。
どうして「また」なんて――。
不思議に思ったとき。
私の中で未だ眠ったままになっている彼女――。
もう一人の「私」の記憶が、ふと流れ込んできた。
「私」として、彼とともに過ごした数々の思い出が、瞬時にして鮮明に蘇る。
そうだった。
下らないことで何度も呼び出されて。
軽い口を叩き合ったり。散々迫られてはかわしたり。
当時大きな問題を抱えていた「俺」を、一緒に何とかしようとしてくれた。
――そうだ。
あの日能力が暴走したときも、レンクスは――。
ようやくすべてを、思い出した。
私はずっと、この「金髪の兄ちゃん」に守られていた。
いつも助けられていたのだ。
胸が一杯になる。
「また」、私を助けに来てくれたんだ。
そのとき、ふっと身体が軽くなった。
抜けていた力が元に戻っている。
【干渉】の効果が、消えた……?
「どうだ。立てるか」
レンクスが、優しく手を差し伸べてくれた。
動こうとすると、もう何も問題なく動くことができた。
すぐに彼の手を取って、立ち上がる。
「もっと早く来てくれてもよかったのに」
親密さを込め、あえて軽いノリでそう言った。
仰々しく感謝するより、彼との付き合い方はこっちの方が合っている。
「ヒーローは遅れてやって来るものさ」
にっと口角を上げて、キメ顔でそう言った彼は。口こそ軽いものの。
額から頬にかけて、びっしょりと汗を掻いていた。
ここまでよほど急いで来てくれたのだろう。
「よく言うよ。また助けてくれて、ありがとう」
「どういたしまして」
いつの間にか地面に降りてきていたウィルは、不機嫌な顔をしていた。
月を落として世界を滅ぼすはずだったのが、すんでのところでレンクスに阻まれてしまったのだ。
よほど面白くないのだろう。
「僕の邪魔をする気か。レンクス」
レンクスは、私を守るように手で制しつつ、一歩前に進み出る。
その背中は実際のものよりも、ずっと大きくて頼もしく見えた。
「この戦いは、ユウの勝ちだった。それを今さら出て来てほじくり返すのは、野暮ってもんじゃないのか」
「ふん。僕がそんなことを一々気にすると思うのか」
「いつもは裏で糸引いて、遊んでる奴の言葉とは思えないな。今回に限ってどうした。お前らしくもない」
レンクスの指摘に、ウィルが一瞬だけ顔をしかめたのを、私は見逃さなかった。
だがそれがなぜなのかは、さっぱり見当も付かない。
「別にどうもないさ。あまりにつまらなかったから、直接出向いてやっただけだ」
「へっ。そうかよ。だがその割にはお前、妙にユウにこだわっているようだな。なぜだ?」
ウィルが、私にこだわっている!? どうして。
ウィルは困惑する私を少しだけ見つめてから、また視線をレンクスに戻した。
「大した理由なんてない。ただ何となくこいつを見てると――気に入らないんだよ」
彼が鋭く目を細めると、瞳に宿る闇がさらに一段と濃くなったような気がした。
対峙しているだけで足が竦んでしまうほどの威圧感が、ますます強まって。
私を心の底から震え上がらせようとしてくる。
一方で、同じプレッシャーを受けながらも、レンクスはまったく動じているようには見えなかった。
「なるほど。よくわかった。だがな」
彼はウィルに指を突きつけて、きっぱりと宣言する。
「ユウはお前の好きにはさせない。俺の大切な人だからな」
嬉しかった。本当に心強かった。
つい、じーんと来てしまう。
するとウィルは、心底愉快に大笑いし出した。
「大切な人だと? こんな奴が」
まるで虫けらを見るような蔑んだ目で、私を見下してくる。
「こんな奴じゃない。ユウだ。俺はユウを愛してる」
レンクスが真顔で言うのを聞いたとき、私は急に顔が熱くなった。
大切な人って、そういう意味かよ!
なんて、恥ずかしいことを……!
はっと横を見ると、固唾を呑んでこちらの様子を見守っていたカルラ先輩とケティ先輩が、驚いて私の方を見つめていた。
目が合うと余計に恥ずかしくなり、すぐに顔を背ける。
ウィルは可笑しくて仕方がないようだった。
こんなに毒気なく笑うこいつの姿を見たのは初めてだ。
「ははは! 愛しているだと! とんだ物好きもいたものだ!」
「こいつは俺の女だからな。手出すなよ」
「くっくっく――いいだろう。いずれ泣いて嫌がるのを無理矢理犯してやろうかと思っていたが、止めてやる」
「そいつはどうも」
さらっと身の毛もよだつ恐ろしいことが取り止めになった。
まあそこは安心したけど。
それよりも私は、たまらず前に歩み出た。
ウィルの威圧に当てられて止まっていた私の足を動かしてくれたのは、意外にも何でもないことだった。
「おい」
横からレンクスの肩を、ちょんとつつく。
「なんだ、ユウ。せっかく今カッコよく決めてるところなんだからよ」
茶化す言葉に呆れつつも、きつく突っ込まずにはいられなかった。
これだけははっきり言っておかねばならない。みんなに誤解されてはたまったものじゃない。
「いつから私は、お前の女になった!」
するとレンクスは、曇り一つないにこやかな笑顔で即答した。
「そりゃあよ。いついかなる時も、お前は俺の心の女だぜ!」
はあ……。ほんとに呆れた。
何言ってんのこいつ。本当に変わらないな、お前。
「相変わらずきもいね」
「相変わらず良い響きだ」
彼はけなされたにも関わらず、全然気にしないで、むしろ嬉しそうにしている。
忘れてた。こいつ。私のことなら罵倒でも何でも喜ぶド変態だった。
異常なまでの、私に対する執着心。
まったく。それさえなければ、もう少し気を許してあげてもいいのに。
でもレンクスというのは、不思議な人だと思う。
チート級の力を持ちながら、それを決して驕らない。
持ち前の茶目っ気のある性格でもって、場の緊迫感をふっと和らげてくれる。
どんな絶望的な状況にも、光を差し込んでくれる。
本当に頼もしくて、心強くて。
気付けば、あれほど怯えていた私の心は、すっかり上向いていて。
こんな他愛のない突っ込みができるまでになっている。
たとえウィルが相手であっても。
彼がいれば何とかなるような、そんな気がしてくる。
「ところで、もう一人のユウは元気か?」
レンクスは「私」の安否を尋ねてきた。
きっと「私」だって、心から彼に会いたいことだろう。
でも、「私」は……。
「それが……ずっと眠ったままなんだ」
「なに!? ちょっと調べさせてくれ」
そう言うとすぐに、彼は私の瞳の奥をじっと覗き込んできた。
やはりこうすれば、何かわかるのだろうか。
「ちっ」
ウィルが不機嫌そうに舌打ちしたのが聞こえた。
間もなく、はっと目を大きく見開いたレンクスは、激しい怒りの表情をあいつに向けた。
「てめえ、ウィル……! よくも、ユウを……!」
こいつの怒りようから察するに、やっぱりあいつに何かされていたのだろうか。
ウィルは激昂する彼に取り合うことなく、つまらなさそうに言った。
「なんだ。もう終わりか。せっかく何も知らないユウを、もっといじめてやろうかと思っていたのに」
なんだと。
あいつの散々人を舐め切った態度に、もう心の余裕を取り戻していた私は、憤りを覚えていた。
レンクスは私に向き直ると、一転して心配そうな表情で語りかけてくる。
「お前、何度かあっちのユウが寝ている状態で、無理に能力使っただろ」
「うん……」
一度目は、拘束から外れるために《魔力許容性限界突破》を。
二度目は、研究所から脱出するために《転移魔法》を。
三度目は、クラムを倒すために「二つの身体の同時使用」を。
特に一度目と三度目は、かなり無理をした。
クラムに時を止められたとき。
アーガスを助けようと必死になっていた私は、気付いたんだ。
時の止まった世界でも、『心の世界』の中まではなぜか影響を受けないことに。
どうやら『心の世界』と現実世界では、時間の流れが違うらしい。
『心の世界』にいる限り、いくらか考える時間があった。
『心の世界』では自由に動けることを利用して、何かできないかと必死に考えた。
この世界にあるものならば、原理上何でも利用できるというなら。
男女二つの身体だって、例外ではないのではないかと思い至る。
そこで試しに、二つの身体を同時に動かそうとしたら……できてしまった。
……かなり無理をすれば。
他にも、『心の世界』でも気力や魔力が利用できることがわかった。
それで、命懸けの作戦は決まった。
《アールリバイン》を現実世界で発動させて、クラムの注意を引き付ける。
直後、やはり時間停止をかけてきた。
現実世界では何もできない間、予め『心の世界』では、男の身体に気力強化をかけておく。
クラムが止めを刺しに迫ってきたとき、入れ替わりの形で男の身体を表に出す。
女の身体は、ほぼ準備された状態の《アールリバイン》ごと、『心の世界』に引っ込む。
『心の世界』でも魔法はそのまま残るから、発動させたことは決して無駄にならない。
そして現れた男の身体が、辛うじて剣を防いでくれた。
あとはもう一度身体をスイッチして、もう放つだけの状態になっていた《アールリバイン》を当てたのだ。
そこまでして、さらに奴が心臓を狙うという確証のない想定までして、やっと虚を突けた。
間違いなく実力では勝てなかった。
「そのせいで、今にも能力が暴走しかかってた。危ないところだったぜ」
「危なかったの?」
「ああ。待ってろ。今、起こしてやるからな」
彼の手が、私の頭にそっと触れたとき――。
私たちは、目覚めた。
***
ここは――。
気付けば、俺は男の肉体に収まった状態で、『心の世界』の中にいた。
「ユウ」
「君は――」
声がして振り返ると、目の前には、もう一人の「私」の姿があった。
彼女はもう、研究所で見たときのような、淡い光に包まれた精神体ではなかった。
きちんと女の身体に入り込んで、確固とした肉体を持っている。
「私」は、優しく微笑んでいる。
「やっと。また会えたね」
「うん」
長かった。
君にもずっと会いたかった。
「あれから、本当に色んなことがあったんだ」
話そうとした俺に、「私」はそっと目を瞑り、小さく首を横に振った。
「全部知ってる。私は、あなただから」
確かに。言葉は不要だった。
この場所では、むき出しになった心を隠すものは何もない。
二人の心は繋がっていた。望めばそれだけで、すべてのことは互いに伝わる。
俺がこの世界に流れ着いてからのこと。女として苦労しながら、大切な仲間に囲まれて過ごしてきた日々も。すべて。
「私」は、すっと左手を差し出した。
「これからは、ずっと一緒だよ」
「ああ。一緒だ」
手を繋いだとき、俺の精神がふっと肉体を離れた。
抜け殻になった俺の身体が、その場に取り残される。
精神体として飛び出した俺は、そのまま「私」の中に融けるように入り込む。
「私」は俺のことを包み込むように、ぎゅっと抱きしめてくれた。
初めて俺のことを慰めてくれた、あのときのように。
身も心もくっついて、己のあり方が少しずつ変わっていく。
俺は「私」と融和して、「私」の協力を受けて、女の私という存在に変化していく。
やがて、完全に「私」と一つになった私は、そっと自らの胸に手を当てた。
温かい。身も心も、「私」が満たしてくれる。
***
現実世界に戻ると、優しいレンクスの声がした。
「どうだ。目覚めた気分は」
ゆっくりと目を開けた私は、こちらの顔を心配そうに覗き込んでいた彼に、静かに答えた。
「本当に、目が覚めたような気分だよ」
心のもやが晴れたように、すっきりとしていた。
今までの私は、ある種の混乱状態だったのだと、はっきりわかるほどに。
「私」が眠っていたために、心の融和が上手くいっていなかったようだ。
精神的に不安定になりやすい状態が、ずっと続いていたらしい。
だから、必要以上に色んなことに振り回されて。
男にも女にもなり切れない自分に、自信を持つこともできなかった。
だけど、もう大丈夫。
これからは「私」が一緒にいるから。
この身体でいる限り、私は胸を張って女だと言える。女としていられる。
気付けば、ほぼ空っぽになっていたはずの魔力は、全快の約半分ほどまでに回復していた。
いや、回復したわけじゃない。
「私」が目覚めたおかげで、使える容量が二人分になったみたいだ。
これまでよりも、基本値が二倍に上がっている。
「ようやく【神の器】が目覚めたか」
「やっぱり能力のこと、全部知ってたのか」
「当然だろう」
ウィルは大いに呆れたように、肩をすくめてみせた。
「よく知っているとも。お前の本来持つべき力は、まだまだそんなものではないことも」
そう言う彼の口調からは、どこか皮肉めいたものを感じる。
彼は私の全身を忌々しげに眺め回して、いらいらした口調で続けた。
「にも関わらず、その屑みたいな女、自ら創り上げた紛い物にどこまでもべったりと甘えやがって。だからいつまで経っても、そんな情けない体たらくなんだ。どうしても己と向き合いたくないらしいな」
「どういうことなの!?」
それは、私の内にいる「私」が言わせた台詞だった。
「こんなにかわいい女の子のユウを紛い物と呼ぶとは、聞き捨てならねえな」
レンクスも言い方はあれだけど、一緒になって問い詰める。
ウィルは両手を広げて、やれやれと気取ったポーズを取った。
だが目はまったく笑っていない。
「何も知らない振りをして、自分だけはのうのうと過ごしている。そんなお前は、特に痛い目を見るくらいでちょうど良いということさ」
「一体何が言いたいの!? はっきり言え!」
「言っただろう。僕は――お前が嫌いなんだ」
ぴしゃりと。
有無を言わさぬ威圧を込めて、そう告げられた。
「で、誰が僕の相手をしてくれるんだ?」
不機嫌なウィルは強引に話題を打ち切って、辺りを見回した。
こうなればもう、何も話してはくれないだろう。
色々知ってそうだし、どうしても気にはなるけど……仕方ない。
すぐに気持ちを切り替えた私は、期待を込めて、先ほど啖呵を切ったレンクスの方を見た。
あの化け物とまともに戦えるのは、こいつ以外にいない。
だが彼の表情は浮かないものだった。
「ユウ。悪いが、しばらくあいつとは戦えない」
「え……」
「月を元の位置まで押し戻さなくちゃならないんだよ」
あ、そうか。そんな大事な仕事があるんだった!
既に重力圏に達しているから、少しでもほったらかしにすれば落ちてしまうのだと、レンクスは語る。
「月を押し上げるには、【反逆】を全開にする必要がある。残念だが、戦っている余裕がない」
「じゃあ……!」
「ああ。月を戻す作業が終わるまでは、誰か別の人があいつの相手をしなきゃならない」
やっぱりそうなるよね……。
「心苦しいが、今それができるのはお前しかいない。すげえ無茶言ってるのは山々なんだが……何とかしばらくの間だけでいい。持ちこたえてくれないか」
確かにこの状況でそれができるのは、私しかいなかった。
カルラ先輩やケティ先輩を、あの危険極まりない破壊者と戦わせるわけにはいかない。
私はフェバルだ。
他のみんなと違って、最悪……死ぬことも、できる。
「私に、やれるかな」
それでも不安が身を包む。
何しろ相手はあのウィルだ。
ようやく能力が目覚めたとはいえ、まだその差は歴然。
冷静に考えて、私に何かできることがあるとは思えなかった。
俯く私の頭に、彼は優しくぽんと手を置いて言った。
「もちろんできるだけの援助はするさ――中にいるユウ。聞こえてるよな」
「うん。聞こえてるよ」
私の口を使って、「私」が答えた。
「いいか。今から【反逆】で、各種許容性の限界を解除する。お前の高い潜在能力は、一時的に開放されるはずだ」
「それって……!」
《魔力許容性限界突破》を使ったからわかる。恐ろしく強力なバフなのは確かだ。
私の精神と身体が耐えられれば、だけど。
レンクスは、そこもしっかり勘定に入れていた。
「お前の身体が耐えられるように、色々と補助もかけてやる。それでもかなり『心の世界』は乱れるだろう。だから暴走しないように、中でしっかり抑えててくれ。できるか?」
「もちろん。任せて」
「私」のきっぱりとした返事に、彼は満足したように頷いた。
「よし。いくぜ」
すると、途端に身体中に力が漲ってきた。
全身の隅から隅までが、急激に魔素を取り込んで、底なしのように魔力が上昇していく。
世界が定めた人としての限界を遥かに超え、一段レベルの違う存在へと引き上げられていく。
自分でかけたときと違って、穏やかに制御された彼オリジナルの能力は、決して私を傷付けることはなかった。
やがて、本来のキャパシティの数百倍はあろうかという、凄まじい量の魔素が私の全身を満たしていた。
まるで自分の身体じゃないみたいだ。
羽のように軽く感じられる。信じられないような力に満ち溢れている。
「それじゃあ、頼んだぜ」
それだけ言うと、レンクスは空に手をかざし、意識を集中し始めた。
動きを止めていた月が、徐々に地表から離れ始める。
私は意を決すると、前に歩み出た。
ウィルと対峙する。
彼は、意外だと言いたげな顔をした。
「ほう。お前がこの僕に立ち向かうつもりか。ユウ」
「そうだ」
「多少力は得たらしいが、その程度でどうにかなると思っているわけじゃあるまいな」
「別に思ってはいないよ。それでも、お前だけには負けるわけにいかないから」
こいつはあくまで、暇潰しや遊びのつもりでここにいる。
もしかしたらそうじゃないのかもしれないけど、今の私にはわからないことだ。
とにかく。
こいつがもっと早くその気になっていれば、とっくに世界は消えてなくなっていただろう。
腹が立つし悔しいが、それが現実だ。
すべてがこいつの気分次第。
だがどうであれ、ここで負ければ世界が終わってしまう。
そうはさせない。
みんなを守るために。
私は戦う。
どんなに相手が強くても恐ろしくても、諦めるわけにはいかない。
たとえそれが、あのウィルだって。
――「私」もいるんだ。
今こそ乗り越えてみせる。こいつに植え付けられた恐怖を。
今こそ。こいつから逃げ続けてきた自分自身に、打ち勝ってみせる!
闘志を燃やす私を見たウィルの目は、ほんの少しだけ興味の光を宿したように見えた。
「面白い。この僕に一発でもまともに当てられたら、お前の勝ちにしてやってもいいぞ」
「約束だよ」
「いいだろう」
『一緒に戦おう』
『うん』
「行くよ」
私が構えると、ウィルも不敵な笑みを浮かべて構えた。
「来い。圧倒的な力の差というものを、思い知らせてやろう」