周りの視線が痛い。向けられる視線の内、四割は飛龍へと、残りの六割は俺への殺意に満ちた視線だ。それもそのはず、飛龍が「私、デートするの初めてなんだよねー♪」とか言いながら、手を握ってきているからだ。いい加減にしないとそろそろ俺は最悪の最期を迎えそうだ。だけどこのシュチュエーションで人生終わるならそれもいいと思ったり思わなかったり。
「ほら、あの店だ」
「お、なかなかいい趣味してるじゃん!これ、いいかも……」
結局、飛龍は3着買った。費用は俺が持った。これ、経費で落ちるかな……
「ねーねー、提督。お腹すいたんだけど」
「確か、あの店が美味いぞ」
「そーなの?」
「そうだ。栞に書いた、『旅行の準備をしに外に出かけた時の昼ご飯にオススメの店地域別十選』のうちの一つだ」
「そんなことまで……」
「この後はどうするんだ?」
「後、水着とか買ったらお終いかな」
「そうか。ん?今、なんと言った」
「へ?」
「いや、聞き間違いかもしれないのでな」
「この後、水着買いに行くって言っただけだよ」
「そうか、なら間違っていなかった。良かった。ん?いやよくないだろ!」
「何が?」
「俺もその買い物に付き合うのか?飛龍の水着に?」
「当たり前じゃん、なんで今更」
「いや、でもそれは……どうなんだ」
「だってさ、旅行いったら周り皆んな水着着るよ。勿論私だって。いつ、どこで見るかの話じゃん」
「ああ、忘れてた……」
すると飛龍はクスッと笑って、
「提督って、意外と初心なんだね。誘ったら簡単におちそう」
「そ、そんなことはない!」
「じゃあさ、私の好きな人、当ててごらんよ」
「……そんなんわかるかー」
「自分の心に問いかけてみてよ。じゃあ、わかったら教えてねー」
「なあ、ヒント、ヒントくれよ」
「嫌だー。教えたらすぐわかっちゃうし」
「えー」
「まあ、いいじゃん、根気よく考えてよ」
「いつか教えろよ」
「当てたらその時教えてあげる」
「全く……さ、行こうか。ん?飛龍?どこだ?」
「Heyそこの可愛い姉ちゃん、俺と一緒に楽しいことしないか」
「皆んなで楽しいとこ行こうぜ」
「んー、私はいいや。これから旅行いくし。」
「旅行よりももっと楽しいとこさ」
「だからー、いいって。もー、しつこいなぁ」
「俺達は狙った獲物は逃がさないぜ。こうなったら強引にでも……ん?何だ?」
「貴様ら、俺の彼女に何の用だ……知り合いか?」
「い、いやその、人違いで……す、すみませんでした!」
三人のチンピラは逃げていった。
「すごーい。提督、なんかスポーツしてたの?」
「いや、まあ、そんなところかな。一応、部長でエースだったぞ。」
「へー。何部?」
「全国で最も部員数が多い、その名も……」
「その名も?」
「帰宅部だ!」
「は?」
「家に早く帰ることが活動内容。時間や、バス、電車の遅れや、所要時間をただちに加味して、いずれのルートで帰るのが早いか考え、走ることもある、頭脳も、身体能力も必要な難しい競技だ」
「何で部長でエースなの?」
「ふふ、よく聞いてくれた。それはな、帰宅部とは、『全員部長で全員エース、全員スタメン、全員MVP』だからだ」
「………」
「因みに、これを専門用語で、4allと言う。」
「………」
「そして、帰宅の事を『帰らん闘」とも言っていたな。って、飛龍、飛龍、起きてるか?生きてるか?」
これが俺の初デート(?)だった。