「ふー、楽しかったな」
今夜が最後の夜だ。本当ならば、もっとゆっくりしたかったが、今は有事だ。
「提督、何やってんの?」
「ああ、飛龍か」
「ねえ、提督。旅行、楽しかったね」
「そうか、なら良かった。」
「提督ってさあ、意外と優しいよね」
「意外は余計だぞ」
そう言って2人で笑った。
「うまくやっているようですね」
「ええ、さすが私達と共に戦った飛龍です」
少し離れた岩陰からその2人を見る人影があった。
「全く、提督も提督ですよ。なんであそこまで鈍感なんでしょうか?乙女の気持ちがわからないんでしょうね。」
「加賀さん………厳しいのね。」
「あら、私はそうは思わないけど。あ、移動するみたいよ、一旦ここを離れた方が良さそうね」
「そうそう、巷で聞いた噂だが、飛龍ってもう結婚しているんだろ」
「へ?私?私が?」
「してないのか?」
「してないよ、そんなの。変な男とでも結婚しようものなら、恐らくその男、多聞丸によって消えているでしょうね。」
「え、い、今なんと」
「へ?なんか変なこと言ったっけ?」
「空耳かなあ?消えるがなんだとか聞こえたんだが………」
「ちなみに、自分でもよくわからないけど、多聞丸はお父さんみたいなものかな」
「へえ。旦那じゃなかったんだ」
「気づいたら、そばにいたって感じかな」
「えっ、あったことあるの!」
「うん、あるよー。だって父親だよ」
「で、でも……」
山口多聞中将。人殺し多聞丸とまで言われた彼はかの作戦で、飛龍と共に運命を共にしたはずなのだが。
「あ、でももう2年ぐらいあってないかな」
世の中には不思議なことがある。
「提督はさ、なんで飛行機に熱心なの?」
「それは空母が聞くことじゃないだろ」
「でもさー、空母系が持っている飛行機って、彗星だったり、天山だったり、零式艦上戦闘機52型だったりするじゃん」
「え?普通じゃないのか?」
「えっ、普通なの?最近は?」
「元々九七式艦攻とかは、開戦から一年くらいで第一線から退く予定だったからな。後発機の遅れは米軍にも読まれていた。逆に、天山の性能はとんでもないほどの過大評価だったそうだぞ」
そして飛龍はくすりと笑う。
「飛行機の話をするときの提督、とても楽しそう」
「まあ俺航空科の出だから」
「私達艦娘はさあ、自分達でもよくわからない力を持って戦って、そして沈むこともあるわけじゃん。出撃前には楽しく話していた人が帰ってくるといなかったり、自分が沈んじゃって、その会話が人生最後の会話になることもありえるからね。なんかさあ、そういうのに慣れていく自分も怖いよね。」
俺は何も言えなかった。彼女達を生かす、殺すのボタンは、なぜか彼女達自身ではなく、俺がもっているのだから