表紙を開くと、「MI・AL作戦」と書かれていた。空母四隻を失ったあの海戦と同じ名前。
「この作戦は、東部、北部の敵艦隊の殲滅を目指すものである。東部には敵の本拠地とされる火山諸島群がある。そして北部の列島、ここをAL列島と呼称するが、敵の有力な水上打撃部隊の存在が確認されている。ここを先に攻撃し、壊滅させ、火山諸島群の本拠地から、ALの救援の為に北上しようとする敵主力艦隊を火山諸島群からやや北東にある、諸島群、ここをMIと呼称するが、このMI沖で迎撃する。そして、後方からの増援を得て、敵の本拠地を攻撃し、全滅させる。結果として、東部、北部戦線は終了し、我々は西部戦線に全力を傾けることができる。各々の担当は後で言い渡す。以上!」
つかつかと出て行く元帥に対し、敬礼を済ましたあと、それぞれが話す言葉もなく、散っていった。 俺は辺りをキョロキョロとしていたが、その作業は目標が後ろに歩み寄ってきたことで中止された。
「またまた、思い切ったことをするねえ」
「多聞中将……」
「あの元帥、砲術科の卒業だったよな」
「ええ、砲術科の首席だったそうです」
「さあ、どうなるかねえ。おい、ところで君は儂の存在を不思議だとは思わんのかね」
「不思議、ですか?」
「ふふ、君も鈍ったな。おい、忘れたかもしれんが、儂はMIで死んだんだぞ」
「まあ艦娘が現れて世界を救おうとする時代ですし」
「おいおい、やけに達観しているな。面白くない」
「艦娘がいないと成り立たない我々の職業も不思議なものですけどね」
「全くだな。いや、本当に君に飛龍を預けられることを嬉しく思うよ」
「いや、ですからそんなことはなくてですね……」
「君、そこらでその敬語をやめないか。儂は君のお義父さんなんだから」
「はあ……」
「九七艦攻だって、九九艦爆だって、零二一だって、いい機体だ。でもな、国の運命、ましてや人類の運命をその機体に賭けるなんてもってのほかだし、第一、その機体が可哀想だ。敵はどんどん強くなるんだ。我々も強くならんといけぬのだ」
やはり、多聞中将は熱い人で、そして、素晴らしい人だった。流石に、「お義父さん」とは呼べないけど。
「君はよくやってるじゃないか、飛龍の格納庫にも、彗星、流星、烈風、天山。第一線の提督でもここまで揃えているのはいないぞ」
「第一線はだいたい元帥の子飼いの人がなりますからね。だから、今は大艦巨砲の時代」
「その中で如何に輝くかが君の仕事だ。ほら、元帥がお呼びのようだぞ」
背後には、おどおどした目の男がいて、「元帥がお呼びです……」と言っていた。元帥が作戦を決心した以上、それは絶対。それが軍隊という組織だ。我々に選択権がある道は一つ、進む道ももちろん一つ。その先に、栄光を創るのが、この仕事だ。多聞中将に、「では」と言って、赤絨毯を歩き出す。再び、あの任命の時以来に一対一で出会う、元帥の元へと。