1900 モニタールーム
「まず、俺皆に謝らなければいけないだろう。機密保持の関係から、結果的に嘘をつくことになった。申し訳ない。そして、先日の提督会議において、AL・MI作戦の遂行が決定された。我々は目的として、東部、北部における敵の一掃がある。我々はAL方面の主力艦隊であり、この鎮守府はAL方面司令部と一時的になる。作戦の方は多聞中将に説明をお願いする」
流石に艦娘達に動揺が広がっている。少し急過ぎかと思わないこともなかったが、仕方がないのだろう。
「率直に言おう。これから言うことは勿論、危険が伴う。危険が回避したいものはこの話は聞かぬが得だ。部屋を出ることを勧める」
そして誰も動かないのをみて、ニヤリとして、
「ここはバカばっかりだな。いい。バカは好きだ」
と言ったと思うと、真面目な顔に戻って、
「目標とするAL方面には、戦艦タ級フラグシップを中心として、戦艦ル級エリート、重巡リ級エリートなどの高火力のがよく停泊している。そして、正体不明の飛行場型深海棲艦がいる。とんでもない量の飛行機を飛ばしてくるそうだ。こいつらに対して、日の出と共に敵戦艦の射程外から艦載機による奇襲をかける。水上艦に対しては艦攻で雷撃、飛行場に対しては艦爆、艦攻で穴をあける。第一次攻撃で、水上艦は撃沈してもらわなくてはならない。最悪でも、一部艦が機関停止、航行不能、ほか撃沈。飛行場には取り敢えず穴を開け、第二次攻撃隊が発艦できるまで、使用不能にする必要がある。第一次攻撃隊発艦後、船速を上げて一気にALに近づき、収容を速めて、二次を速く発艦させたい。危険は承知だ。それでもやる。以上」
奇襲。それが俺と多聞中将が二ヶ月かけて出した答えだった。鎮守府にある優秀な空母戦力。これをいかに活用するか。航空支援の元でいかに高火力の長門をはじめとする戦艦を活用するか。無茶なことを求めているのはわかっている。ただ、これでもギリギリなのも事実なのだ。
「最後に俺から編成を発表する。空母については、搭載機も伝えるので、今後はその艦載機を重点的に頼む。
空母機動部隊、
まず、旗艦、赤城。第一航空隊、烈風18機。第一爆撃隊、彗星18機。第一艦攻隊 流星27機。第二航空隊、零戦五二型10機。
第二艦、加賀。第三航空隊、零戦五二型18機。第二艦攻隊、天山18機。第三艦攻隊、流星45機。第四航空隊、零戦五二型12機。
第三艦、飛龍。第四艦攻隊、流星12機。第五航空隊、烈風28機。第六航空隊、零戦五二型18機。第二爆撃隊、彗星7機。
第四艦、軽巡神通。第五艦、軽巡川内。第六艦、軽巡那珂。第七艦、軽巡長良。第八艦、重巡妙高。第九艦、駆逐陽炎、第十艦、駆逐不知火。第十一艦、駆逐黒潮。第十二艦、駆逐秋雲。
水上打撃部隊、
旗艦、戦艦長門。第二艦、戦艦陸奥。第三艦、戦艦伊勢。第四艦、戦艦日向。第五艦、重巡高雄、第六艦、駆逐漣。以上だ。呼ばれなかった艦娘も、戦時ではどのようなことが起きるかわからない。いざというときはすぐに出撃できるようにスタンバイしておいてくれ。出撃は年を越して、2月1日。これにて終了だ。解散!」
ざわざわと艦娘達が去っていく。各々が数多の思いを抱いていることだろう。だが、もう賽は投げられたのだ。後には退けない。帽子をかぶりなおして、部屋を後にする。外はもう暗い。
眠れない。まさか、またあの作戦が始まるなんて。元々は巡洋艦として造られ、空母、赤城となり、東へ、西へと戦い、加賀と共に無敵を誇ったあのころ。でも、あの海戦で全てが変わった。隣で炎上する加賀。迫る爆弾。首を振って振り払おうとしても付いて回るあの瞬間。
足音がする。後ろを振り向くと彼がいた。
「眠れないのか。俺もだよ」
「提督……」
「不安か?」
「そうなのかもしれません。私はこの大事な作戦の旗艦には向いていません。飛龍ちゃんの方がよっぽど肝が座っています」
「飛龍は多聞中将を得て強くなったな。でもな、俺は空母機動部隊の旗艦には赤城が相応しいと思う。無理強いはできない。今までの経験、艦載機運用、そして艦娘からの信頼。その全てにおいて、赤城が相応しい。この作戦は編成も含めて相当悩んだ。でも、『旗艦、赤城』はすぐに書くことができた。赤城を信頼しているのは艦娘だけじゃないんだぞ」
「提督……」
「不安になったらそのポケットに入っているお菓子でも食べたらいい。甘いものはどんな事も解決してくれるからな」
「わあ、提督も甘党なんですか!」
「あ、ああ。甘いものは好きだぞ」
「そうなんですね!私と一緒です! あ、提督、そろそろ行った方がいいですよ。だれか人が近づいてきています」
「ありがとう。多聞中将だったら大変なことになるからなあ」
「流石だな。気づいたか」
「一航戦は伊達ではありませんから」
「惚れたか、あの男に」
「どうなのでしょう。経験にないことですから。でも……」
「どうした」
「勝てる気がしません。今のあの子はまさに飛ぶ龍が如く、です」
「……なあ、搭載機に何か疑問は抱かなかったか」
「言われた機体を最良の形で運用するのが私の仕事ですから」
「ああ、もちろんその通りだ。だが、それでも第一次での相当な攻撃力が必要とされるなか、艦爆25機、艦攻102機を護衛して、艦隊を敵の航空戦力から守る艦戦は103機だ。奴はな、相当あの飛行場型の敵を恐れている。あれだって、結構臆病なんだよ。儂だったら護衛も付けずに艦攻だけ飛ばすかもしれないのによ」
「流石にそれは……」
「まあ、頑張れ。その気持ち、大事にしな」
月の照らす、影二つ。
あけましておめでとうございます!