我が新生鎮守府日記   作:文若

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飛龍の反撃

見えるのは空ばかりだった。雲一つない、いい天気。吸い込まれそうな空だ。だが、この体はいつかそれに反して沈んでいくだろう。約束は果たせなさそうだ。

「ごめんね……飛龍。先に楽になって…………」

 

 

 

「飛龍さん、あれ……」

神通が指差した先には、今にも墜落しそうな飛行機がいた。そして、ふらふらと飛龍に着艦した。

「これは……零戦二一型?なぜここに……」

中から妖精さんが出てきて、何かを飛龍に懸命に伝えようと必死になって話した。話を聞いている飛龍の顔がどんどん険しくなっていく。

「……行くよ。皆んな、この先には巨大な装甲空母がいるみたい。気をつけて。取り敢えず索敵を。那珂ちゃん、水偵」

「はい!那珂ちゃん、いっきまーす!」

水偵は零戦が飛んできた経路を逆走するように飛んで行った。もし、装甲空母の艦載機に水偵が見つかったら、たちまち撃墜されてしまう。さらに、こちらの存在も知られてしまう。だが、それでも索敵をしなければ、目を閉じたまま戦うのと同然だ。そして、あくまで目的は味方艦の救助である。味方艦が見つからない事には話にならない。

「飛龍さん、いたよ。味方艦らしきもの、発見!」

「らしき?詳細はわからないの?」

「飛行甲板があるから、空母です!」

「蒼龍、蒼龍だ!この零戦の部隊番号も蒼龍のものだったし。那珂ちゃん、周りに敵は?」

「ありませーん!」

「よし、水偵は帰還。じゃあ行くよ。第六航空隊、発艦っ!」

零戦五二型18機が飛んでいく。こちらにはまだ虎の子の第五航空隊烈風28機がある。今回の作戦で、最強の航空隊だ。第六航空隊と合わせて48機のこの航空隊を抜いて、標的に被害を与えることができた艦攻隊、爆撃隊は演習では遂に現れなかった。艦隊の守護神。人はそう呼んだ。今こそ、守護神の力を見せる時。この負け戦の中で、いかに敵に強い印象を与えるか。飛龍はこれから始まる戦いにわくわくもしていた。

 

 

 

 

向こうから編隊が来るのが見える。ああ、これで終わりか。敵が一発でも当てたら、私は沈むのだ。だが、敵の強力な空母と戦って沈めるのだ。空母冥利に尽きるだろう。ただ一つ、もう一度会って、言葉を交わして、共に笑えたら。そう思わないこともない。さあ、どうせ沈むのだ。全て受け止めてやろうと思ったその時、その編隊は何を思ったか上空をクルクルと回り始めた。よく目をこらすと、敵機ではない。だが、自分が載せたことのある機体でもない。資料でみた、零戦五二型、その機体だった。五二型を使えるほど豊かな航空戦力のある鎮守府などあっただろうか。どんな空母でも、二一型が載せれたらありがたいというレベルなのに。今回の作戦で打撃力ではなく、対空戦力としての役割を持って私は参加したので、艦戦しか載せていなかったが、二一型が足りず、九六式艦戦も載せた。だいたいどこも航空戦力に関しては変わらない。重視されないからだ。だが、目の前を飛ぶ飛行機は五二型だ。

「蒼龍!!!」

懐かしい声が聞こえる。差し伸べられた手。その手を握り返し、起き上がると、懐かしい顔がそこにあった。

「飛龍………………。久しぶり、だね……」

「蒼龍、生きててよかった……」

「あの五二型、飛龍のなの?」

「そうだけど……。私の第六航空隊だけどどうかしたの?」

「飛龍、最後に別れたあと、いい提督さんに出会ったんだね」

「そうだね。いい提督に」

「敵は1時の方向、装甲空母鬼とその周りに浮遊要塞二隻。本当はもう二隻いたけど、金剛型四姉妹の活躍でなんとか、ね。でも、そのあと装甲空母鬼から大量の艦載機が飛んできて、もう散り散り……。装甲空母鬼は無傷で残ってる」

「敵はもう攻撃はないと思っているでしょうね。しかも艦載機からの攻撃なんて。反撃します!第四艦攻隊、護衛で第五航空隊、第二爆撃隊、発艦準備して」

「飛龍、その第四艦攻隊、第五航空隊、第二爆撃隊ってまさか……」

「第四艦攻隊は流星12機、第五航空隊は烈風28機、第二爆撃隊は彗星7機だよ」

「全部新鋭機じゃん!」

「うちの提督はね、艦載機を特に重視してくれてるんだよ」

「そんな提督がいるんだ!知らなかった……」

「お、発艦準備OK?じゃあ、第一次攻撃隊、発艦っっ!」

矢はいつしか飛行機となり、発動機を鳴らして飛んで行った。惨敗の味方に少しでも良いニュースを届けるために、流星達は飛んでいく。

 

 

敵を認め、装甲空母鬼からは慌てたように艦載機が出てくる。しかし、第五航空隊の下に一方的になぶり殺されるだけだった。流星がその吊るした魚雷を投下する。彗星が文字通り彗星となり、急降下爆撃をする。その戦いで、人間がはじめて装甲空母に与えた被害だった。

 

 

 

 

「第五航空隊は被害なし、第四艦攻隊は流星2機撃墜、第二爆撃隊は1機撃墜か、よし。第二次攻撃の要ありと認む。急いで準備!」

「ごめんね。力になりたいけど、飛行甲板はこんなんだし、載せてたのも二一型とか九六式艦戦とかだから……」

「いいのいいの。私が、帰ったら蒼龍の配属をうちの鎮守府にしてもらうよう提督におねだりするからさあ」

「そんな……悪いよ。私はそんなに強くないし」

「そんなことないって。提督、きっと喜ぶよ」

「なら良いけど……。ん?飛龍、あれは……敵機?」

黒い機体。まとう独特のオーラ。敵機だ。

「すぐに第五航空隊と第六航空隊を!発艦!」

「全艦、対空戦闘用意!良いというまで撃ってはいけません。万が一、航空隊が抜かれたら各自使用を自由にします」

神通の号令のもと、軽巡、駆逐の艦娘達が敵機に向けて各々の砲を向ける。25ミリ連装機銃を装備している黒潮、秋雲は機銃を構え、神通、川内、那珂は主砲を構えている。

「この第五航空隊、第六航空隊は絶対に抜けないよ!」

航空隊と敵機が接する。そして、敵は攻撃を仕掛ける前にどんどん撃墜されていった。

 

 

 

「第二次攻撃したかったけど……もう日が暮れるね」

「帰ろ。飛龍」

「帰ろうか。蒼龍」

彼女達は途中で補給隊に出会い、補給隊に守らながら鎮守府へと帰った。海に13つの影をおとしながら。




AL作戦の戦闘シーンは最後です。最後まで結末に困ったところはありました。本当はMIの救援に赤城も行ってもらう予定でしたが、蒼龍との再会シーンがあるのでやめました。どっちが良かったのかな?
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