「全く役に立たない海軍だ。足を引っ張りおって」
「作戦の結果、北部、東部の多くのところで戦線が後退。選挙への利用は難しいでしょうな」
政権与党の本部の一室。政党幹部のみが入ることを許されるその部屋の中で、現総理大臣と党の幹部らが話をしている。
「報道の方に敗戦はばれているのか?」
「いえ。まだ知っているのは海軍と総理と我々だけです。陸軍も知りません」
「陸と海はどこまでも仲が悪いな。敵どうしのようじゃないか」
「しかし、海軍で周知となれば、外に漏れるのも時間の問題ですな」
「いや、そうでもないかもしれんぞ。総理、確かにMIは大局的に見ると敗戦ですが、緒戦での勝利はつかんだと海軍の友人から聞いております。海軍とて、自ら恥はかきたくないでしょうし、その勝利の部分だけをピックアップして公表すれば良いのでは」
「敗戦を教える必要はない、ということか。しかし、どちらにしろしばらく海軍には口を閉じていてもらわねばならんな。しかしあの負け戦のどこで勝利したと?」
「AL方面では戦線の押し上げに成功したようです」
「しかし、作戦前の線まで撤退するよう指示が出たのではなかったのかね」
「命令を聞かずにそのまま続行したそうです。それどころか、その後、MIまで赴き、敵の主力に攻撃もしたとか」
「暴れ馬だな。強いことには強いが、扱うのが難しい。無理に手中に収めようとしたら手を噛みちぎられてしまう」
「海軍上層部は相当お怒りのようですよ。そこの鎮守府を強化指定から外すと鼻息を荒くしているそうで」
「だが我々にとってはありがたいことじゃないか。あとで海軍に罰しないように言っておこう。彼は我々の選挙の勝利の女神となってくれそうだ」
「面白い者ですな。海軍にいるとはもったいない」
「全くだ。この永田町にいれば将来は良いところまで行っただろうに」
「今この国は人材が枯渇していますからね。どんな暴れ馬でも欲しい」
「将来海軍で出世してくれれば、そのうちここにくるかもしれんぞ。最近の我が党の新人議員の情けないことと言ったら……」
「やらせてみたいですな。その男に将来元帥を」
「見てみたい気がするな。だがその時まで人類が生きていればよいが」
「ところで総理、隣国の方はどうなりました?」
「単独での軍備の増強は昔の帝国主義の復活を意味するものであり断固抗議する、とか言ってきたところか。全く、時代をわかっていないのかね。世界は強者を必要としているのだ。昔は世界の警察と呼ばれたかの国も、今や自国警備員じゃないか。我が国は今の敵との戦いが終わった後の次の戦いへと備えなければいけないのだ」
「しかしこれで今の戦いの終わりが見えなくなりましたな」
「それは軍の仕事だ。我々は迫る選挙にて必ず単独で三分の二を獲得し、憲法を改正するのだ。近いぞ。帝国復活のXデーが」
翌日の新聞のトップにMI作戦のことが掲載された。曰く、
「一歩も退かぬ!敵の猛攻に戦線を維持!北方では敵を返り討ちに」
ALはこれで終わりです。次回は番外編の予定。