日記があったら見ちゃうよね!
うちの鎮守府に蒼龍が加わった。なぜか知らないが龍驤が「またデカイのが増えた……」と言い残して倒れたこと以外は、普通の日常が過ぎていた。
「提督、隣りよろしいですか?」
「あ、赤城」
食堂で食べていると、赤城に話しかけられた。
「みんな楽しそうですね」
視線の先には麻雀をしている球磨、多摩と電、響がいた。電の前に大量のスイーツが積まれている。
「あ、それロンなのです」
「クマァーーーー」
「電、少し手加減してあげないと球磨さんがかわいそうだ」
「電って以外と麻雀強いんだな……ってええ?!」
「どうひまひは、へいほふ(どうしました、提督)?」
「いや、あの山盛りのカレーもう食べ終わったのか!」
「今日はあまり多くなかったのですぐに終わりましたけど」
「あ、ああ。そうか……」
「じゃあ、私は失礼しますね」
「赤城って大食いなだけじゃなくて早食いでもあったのか……」
ふと視線を移すと、机の上に日記帳が3冊置いてあった。見てはいけないとわかっていても見たくなるのが心情というものなのである!と、いうことで、のぞいてみることにした。あくまで、誰のものかを特定するために。
『今日は中庭でライブをしたよ!いっぱいファンの人達が来て、大盛り上がりだったー!那珂ちゃんスマイル☆☆』
「……誰のかわからないな。もっと見てみよう」
『今日は姉さん達と次の大きなライブに向けて練習をしたよ!初恋!水雷戦隊とか歌っちゃった!那珂ちゃんスマイル☆☆』
『ライブをしたら、那珂ちゃんよりも神通姉さんの方が盛り上がった……那珂ちゃんはアイドルなのにー!那珂ちゃんスマイル☆』
「いや、スマイル☆じゃないだろ!地味に☆の数減ってるし」
そして、次の一冊を手にとってみた。
『今日は夜戦の演習がいっぱいできた。でも本物の夜戦がしたくなった』
『最近は空母の人達が昼のうちに敵を全部倒すから夜戦が少なくなった。夜戦がしたい』
『夜戦がしたい』
『夜戦がしたい』
『夜戦がしたい』
『夜戦がしたい』
『夜戦がしたい』
『夜戦がしたい』
「……今度夜戦させてやろう。あいつ、夜戦夜戦って言わなければ、字も綺麗だし、女子力高いんだけどなあ」
そして最後の一冊を手にとって中を拝見した。
『今日もいろいろな方から夜におたくの夜戦狂がうるさいと苦情がかた。あと、真夜中に大きい声で歌わないように言っておいてくれとも相当な人数の方から言われた。だがそんなこと言われても私には何もできない』
「なんかかわいそうだな……」
『今、提督に日記を覗かれている。覗いたからには今すぐ屋上に来ていただきます。来なかったら大変なことになりますよ』
「えっ?」
まさかの屋上へ来い宣言。『いい度胸だちょと外にでろ』と同じようなことを言われているのだろうか。
「こういう時こそ私用の飛行機で逃げるべきだ!」
俺は格納庫へと全力で走った。
「この一式陸攻があってよかった。空に上がればこっちのものだ!」
プロペラが回り、機体が上空へと上がった。
「はあー。空はいいよね。空はさ」
「ええ。全くです。これで提督ともしっかりとお話できますしね」
「あ……」
うん。詰んだ。
「お話してくれますね」
「はい……」
「提督、私と那珂は明日は任務があります」
「そ、そういえばそうでございますね」
「まあまあ、そう緊張せずに。もう逃げられないだけですから。まあそれはよいとして。実は、姉さんが風邪をひいています」
「えっ、あの川内が!?」
「はい。なのでですね、提督には明日、一日中姉さんの看病をしていただきたくて」
「なんだ。そんなことならこんなことせずに普通に言ってくれればよかったのに」
「ええ。確かにそうですが、一度、私から逃げることの愚かさをお教えした方がよいと思いまして」
「…………」
「と、いうことでよろしくお願いします。あ、もう着陸していいですよ」
「は、はい……」
翌日---
「提督、今日は面白い一日ですね〜。こんな日があるなんて」
「え?鳥海さん、何かあるの?」
「いえ。実はこの鎮守府、私も含めて誰もいなくなるんですよ。あ、正しくは風邪をひいている川内ちゃんと提督だけになる、ですが」
「え?な、何でだ?」
「みんなこの日に非番か任務か何かで。私も秘書艦研修に行かないといけないので。じゃあ、頑張ってくださいね」
「あ、うん」
「それではお楽しみ下さい」
最後に奇妙な笑みを残して鳥海さんは行ってしまった。
非番非番非番非番任務任務任務非番任務任務出張任務任務非番非番非番非番…………
艦娘達の状況を示すボードにはそんなことが書いてあった。
「何てことだ……」
まさかの二人きり、だとぉ!
「ねえねえ神通姉さん、あそこまでする必要って、あったのかなあ」
「あそこまで、とは?」
「夜戦演習から帰って寝ている川内姉さんの服を全部脱がせてそこにガンガン冷房効かせて、しかもそれを五日も続けて。そして鳥海さんに協力してもらって、艦娘達の日程を調整して、提督と川内姉さんだけにする。ここまでする意味ってあるの?」
「姉さんが一番好きなのは夜戦です。でも、最も好意を抱いているのは、提督です。でもあの提督は気づいていない。風邪をひいたら、体力がなくなるので、夜戦をしようという気力がなくなります。そして、自制心が効かなくなっているので、提督への好意が全面に出ます。そして、『風邪が治ったら一緒に出かける』すなわち、デートの約束をするでしょう。寝ている一人の女の姿を見た後で、その女と共にデートに行く。提督でもブレーキが効かず、そのまま最後までいくかもしれません。そしたら、姉さんの想いは叶う。そもそも今日、誰もいない鎮守府で寝ている姉さんを前に耐えられるかどうかも怪しいですが」
「姉さん、そこまで考えて……」
「私は華の二水戦の旗艦です。私が責任を持って、姉さんと提督を成就させます」
神通の目は決意で溢れていた。
神通さん怖し……