「やっと……着いたか」
この国の中枢機関が一堂に会する都市、東京。そしてその中枢機関の一つ、陸軍省。飛行機から降り立つと軍服を着た一人の若い青年の様な者が迎えに来ていた。
「遠いところからようこそ。陸軍大尉、
長 信人と名乗る青年はニコリとも笑っていなかった。ただただ、その後、
「お越しいただいたところ申し訳ありませんが、参謀本部の方にご移動いただきます。車は用意してあるので」
と言い、有無も言わさず、ずんずんと車の方へと歩いて行った。
用意された漆黒の車の中に微妙な空気が流れる。長と言う人は表情一つ変えず、ただただ一直線に前を向いていた。
そして、初めて口を開いたかと思ったら、
「着きましたよ」
と言っただけだった。
「やあやあ、よく来られた」
参謀本部の参謀総長室にいたのは人当たりの良さそうな老人だった。
こちらが敬礼をすると、それに答え、
「参謀総長、
そこの長君はここの第1部作戦課作戦班として働いている。陸軍推奨の『〜であります』を使う様言ってあるのだが、使わないなかなか頑固な人間だよ」
と言った。長はというと、
「格式ばったものは嫌いなので」
と言うだけだった。
彼らは世間話もそこそこに、声色を変えて本題を話し始めた。その内容に、俺は絶句したのだった。
「日向よ、少し良いか」
「おや、長門か。珍しいな、どうした?」
長門は日向の元を訪れていた。
「よい戦艦とは、常に進化し続ける戦艦の事を言うのだと思う。そこでだ。今求められていることとは、艦載機だ。火力を失わないまま載せられる艦載機はないかと思ってな」
「ふむ。長門も艦載機に目覚めたか。ならばこれはどうだろう」
そう言って日向はおもむろに何かを取り出した。
「これがキング・オブ艦載機、瑞雲だ。これを搭載するために砲塔を一個取り外すことにはなるが、この瑞雲は偵察、制空、爆撃と全てが出来る。補ってもあまりあるぐらいだ。砲塔は敵艦を撃つことは出来ても偵察は出来ないからな」
「おお……素晴らしい」
「よしよし。長門にこの瑞雲法被と瑞雲をやろう。これで、これからは『航空戦艦長門』だ」
「すぐにでも改装したいが、提督の許可が必要だ。提督が帰ってきたら申請しよう」
「ああ。それまでに、瑞雲の良さをたっぷり教授しよう」
「おお、せっかくだから陸奥にも勧めよう」
長門は陸奥に瑞雲を勧めたところで、陸奥に諭され、思い直すのだった。
「ふむ……やはりこうなるか。もっともっと瑞雲の知名度を上げなくてはな」
日向はより一層意識を新たにしたのだった。
ー参謀本部
「あの……それ、本当にやるのですか」
俺は参謀総長から示されたものに驚きを隠せないでいた。
「もちろん、やるさ。やらなかったら君が危ないぞ」
「そうです。大丈夫、だいたいの確率で成功するので」
「……」
「あと、そこの長君を君のところにやるから、参謀として使ってくれ。彼は射撃の腕もいいから、護衛としても使えるぞ」
「私、あまり海は好きじゃないんですけどね」
「はあ……」
前途に不安しかなかった。