「……何でこんなにたくさん一式陸攻と隼がいるんですか?ええと、長さん?」
飛行場には俺の一式陸攻以外にも11機の一式陸攻と21機の隼があった。
「自分のことは『特務参謀』で結構です。ちょうど一式陸攻の編隊が4つ、直掩の隼の編隊が7つ組めます。ただここから鎮守府に帰るだけなんて、航空燃料の無駄です。これだけあれば、輸送船の四隻は沈められるでしょう。大丈夫、パイロットは相当鍛えてあります。見たところ、提督のところの妖精さん?とやらもなかなかの腕です。もう魚雷は抱かせてあります。行きましょう」
「え?出撃するんですか?」
「自分に敬語を使わないで下さい。海軍がMIとやらいう所でやらかしたお陰様で近海にも敵の輸送船団が出るようになったんですよ。陸軍が知らないとでも思いました?海軍は秘密にしておくつもりだったのでしょうが、陸軍の諜報をなめてもらっては困ります。海軍の尻拭いをしているのは我々です」
「……」
とんでもない人を抱え込むことにはなってしまったと思った。頭はキレるのだろうが、一言一言に棘がある。また一つ頭痛の種が増えた気がした。
「南西方向に敵の輸送船団を発見。直ちにこれを壊滅させます。船団に軽空母がいるようですから、ある程度迎撃が上がってくることは覚悟した方が良いですな」
「特務参謀、大丈夫なのか?」
俺が不安を口にしたが、そんな事を留めることもなく、
「あなたはただ座って見ていれば良い。あなたの後部銃手は私がやります。敵に絶対に一機も墜とさせません。ほら、来ましたよ」
隼が綺麗な編隊を維持しながら、迎撃に向かう。うちの一航戦や二航戦に勝るとも劣らない技術だ。
「高度下げますよ。魚雷投下準備」
高度がどんどん下がっていく。高度5メートルまで降りてきた。今にも二つのプロペラが水面を叩きそうだ。魚雷が投下される。抱えるものがなくなっだと言えど、一式陸攻は双発機だ。高度がなかなか上がらない。ギリギリの所で船の上へと上がる。すぐ横に輸送船の艦橋があった。しばらくして轟音が上がった。深海棲艦の悲鳴とも聞こえる声とともに、輸送ワ級が沈んでいった。隣でも、その隣でも同じような状況だ。上空では、隼が敵機を駆逐し終わったらしい。高度を下げて、また何事もなかったかのようにまた直掩へと戻った。
「被撃墜機0か、すごいな」
「当たり前です。こんな事でボーキサイトを失うようでは困ります」
そして、今度こそ鎮守府へと俺たちは向かったのであった。
「提督、お帰りなさい。随分と護衛が多いですね」
「ははは」
まさか出迎えに来た鳥海さんに「ちょっと輸送船沈めてから来た」とか言えるはずがない。
「ちょっと輸送船沈めてきたので多いだけです。全て私の責任です。特務参謀の長です。よろしくお願いします」
……言っちゃうのね、長特務参謀。
「何々?新しい人?」
艦娘達がどんどん集まってくる。
「ほう。噂には聞いていましたが本当に女だらけなんですね」
長特務参謀が物珍しげに見ていると、
「おい、お前は何者だ」
と多聞中将が喧嘩腰でつかつかと寄ってきた。
「おや、物騒な。陸軍より派遣された長と言います。以後よろしくお願いします」
「……正直に言え。お前は陸軍の諜報か?」
長特務参謀はと言うと微笑を保ちながら、
「いえ。キス島の撤退の件で、サポートの為にやって参りました」
と言った。
「まあいい。その内化けの皮が剥がれるだろう」
「ちょっと、多聞丸、そこまで言わなくても……」
「多聞中将、長特務参謀はきっとこの作戦において、我々の利益になります」
飛龍と俺がたまらず入った。これ以上はまずい、と思ったからだ。
「いえ、いいんですよ。陸と海とは基本わかりあえませんから」
長特務参謀はちゃっかり多聞中将との、この状況を正当化した。もうそれ以上は誰も何も言えなかった。