「ふう、疲れたな」
これからもっと大変になりそうだ。長特務参謀を連れてきた事を後悔している俺がいる。
「提督、入るよ」
「あ、川内、来たか」
「提督、何の用なの?」
俺は川内を呼んでいた。用件があっての事だ。
「キス島の件だが、川内に旗艦を頼みたい」
すると、川内は驚いた顔をして、
「ふええええ、わ、私?」
と言った。
「見た所、内の軽巡の中で一番練度が高いからな」
「え、でも、難しい作戦なんでしょ。艦娘として、こういう事言っていいのかわからないけど、私、成功させる自信はないし……」
「川内を選んだのはな、練度だけの理由じゃないぞ」
そして俺は川内にキス島周辺で予想される敵編成を見せた。
「敵の主力では、空母ヲ級のフラグシップや戦艦ル級のフラグシップが予想される。昼間の砲雷撃戦でこれを倒す事は不可能だ。つまりだな。夜戦だよ」
「えっ、なになに、夜戦!」
川内が身を乗り出して食らいついてくる。顔がとても近い。ほぼ、キョリ0だ。他の人が見たら二人きりであんな事やこんな事をしていると誤解されてしまいそうなくらい……
「提督、キス島の現地部隊からの最新の報告が入っていますが……お楽しみの最中のようなので失礼いたします」
「いっ、いや、これは違うんだ。おーい、長特務参謀〜」
呼び止めた時には、もうドアは閉まっていた。
「あーあ、なんか誤解されちゃったね」
「まあ、長特務参謀だからそんなに変な事にはならないだろう。で、話の続きだがな……」
「う、うん」
こんな事があるとイマイチ真面目な話がしづらい。
「そ、そういえば今日は月が綺麗だな」
空には満月が……あるわけではなく、ただ雲があるだけだったが。
「や、夜戦日和だね」
夜戦日和というのが理解できないが。
「あ、そうだ、提督」
川内は思いついたように声を上げた。
「この作戦が終わったら、いい事教えてあげる」
「川内、それ死亡フラグ……」
「まあまあ、気にしない気にしない」
死亡フラグビンビンだし、そんな事言われると余計に気になるのだが。
そして川内は「じゃあね〜」と去っていった。
「終わりましたか?」
長特務参謀がすぐに部屋に入ってきた。
「キス島現地部隊からです。近頃は敵の攻撃は止んでいるそうです。空襲もなくなったと。あと、飛行場ですが、アッツ島に、昔陸軍航空隊が使用していたものがあるそうで、使えるそうです」
「飛行機が使えるのか。それはありがたいな」
そして俺は地図を指して、長特務参謀示した。
「零式艦上戦闘機二一型なら、増槽付きで3000キロは飛ぶ。途中単冠湾を経由していったら十分可能だ」
「しかし」
特務参謀が異議を唱える。
「二一型は零式艦上戦闘機の中でも性能が低い。敵艦載機に通用するでしょうか」
「性能の差は練度でカバーする。これから、キス島に飛ばす部隊は俺が直接指導しようと思うのだが」
「了解しました。多聞中将には伝えないでときますね」
「頼むよ。多聞中将怒ったら恐いから」
作戦は一歩ずつ進んでいった。