俺が鎮守府に着任してからの進撃は凄まじいものだった。妙高型四姉妹や高雄型四姉妹も着任し、戦力も整い始めていた。だが、それは一時のことに過ぎなかった。
「南一号作戦」。前に第一線の先輩方が抑えた海域だったが、再び深海棲艦の活動が活発化してきた南西諸島を防衛する為に発令された。ある程度の戦果を挙げた我が鎮守府に、大本営から命令が来た。
「南一号作戦、か……」
「今の鎮守府なら簡単に成功させることができる。また勝利の酒が飲めるな!」
那智が嬉しそうに言う。
「なあ、大丈夫なのか?そんなに油断して」
摩耶が心配を口にするが、
「まあ、戦いはやってみない事にはわかりませんし」
と妙高が言う。だが、「まぁ、大丈夫でしょう。」と言わんばかりの口調だ。
「よし。旗艦は妙高。二番艦は那智、三番艦鳥海、四番艦川内、五番艦陽炎、六番艦電、この編成で行こう。」
疲労も考慮しての編成だった。
バランスの良い編成だ。火力、速力、雷装。だが、その考えは間違っていた。一つ、欠けていたのだ。いや、もっと言えば全て欠けていたのだ。ただ気付いていないだけで。
「前衛は電、右側を那智、後ろは陽炎が警戒して。私と鳥海は中央を」
旗艦の妙高が指示を出すと、艦隊はその通りに動き出す。日々の訓練の賜物だ。艦隊運動というのは、意外と難しいもので、各々がぶつかると、最悪轟沈してしまうこともある。実際に例があるから、気を特に配らなくてはいけない。訓練については各々に一任している。俺が提督として、何か口出しをすることは無い。
「敵前衛部隊と交戦、これを撃破しました。被弾なし!」
「素晴らしい。進撃せよ!」
「了解」
ん?あれは?川内はふと空を見る。黒い物体がそこにはあった。そしてそれはみるみる近づいてくる。まさか、これは……
「ち、直上!」
川内の声もむなしく、爆弾が降ってきた。目の前が、真っ暗になった。
「と、言うことで……。敵の航空攻撃により、撤退しました……」
自身も中破している妙高が報告した。
「そうか……。取り敢えず、入渠してこい。明日、0900で検討会を開く。」
「…………」
「どうした?」
「……提督…………。申し訳ございませんでした……」
彼女の両目から涙が堰を切ったように流れ出る。
妙高型のネームシップ、妙高。普段からしっかりしている彼女だが、今俺の目の前にいる妙高はいつもとは違っていた。俺はどうして良いのかわからなかった。俺は何もわかっていなかった。艦隊のこと、この鎮守府のこと、そして、艦娘のこと。何一つ、わかっていなかった。俺が提督で、艦娘は幸せなのか?俺は彼女達を不幸にする存在なのだろうか。俺は何もわからなかった。