「あたりを警戒しながら進んで!慢心しては駄目よ。」
赤城の声と波の音。それしか音は聞こえない。
俺が南一号作戦に選んだのは、赤城、加賀、飛龍、高雄、川内、長門の六人だ。セオリーに沿うなら、この編成は空母が多すぎるかもしれない。だが、それでも俺はこの編成を選んだ。この三人ならば、制空も安定して確保できるし、100機近い攻撃機が敵を襲うことになる。我々は戦う前から有利な状況でいられるわけだ。
「水偵より報告!北に重巡リ級2、雷巡チ級1、駆逐ロ級2!敵はまだこちらを探知していない。」
長門の水偵から報告が上がる。
「戦いは避けます。南側を迂回しましょう」
「なんだと、敵は我々より弱い。何故逃げるのだ。」
赤城の判断に長門が食ってかかる。
「長門さん、貴女が言うこともわかるけど、旗艦は赤城さんよ。随伴艦は旗艦の命令を聞き、それに従い戦うのが仕事。此処で被害を出さないと100%言い切れますか?」
加賀が落ち着いた声で長門を諌める。この人の一言には流石の長門も黙るしかない。
「まあまあ。目的は主力艦隊の撃滅だし。ね?」
飛龍がなんとか場を保とうとする。すると、前を進んでいた川内から、「敵艦見ユ」の報告がはいった。
「いきましょう。第一次攻撃隊、発艦してください!」
「ここは……譲れません。」
「第一次攻撃隊、発艦っ!」
空を埋めつくさんともする艦載機が空に上がる。しばらくすると、川内から報告が入った。「敵編成、軽空母ヌ級2、重巡リ級1、駆逐ロ級2。制空制圧。飛行機の被害軽微。敵、軽空母1、駆逐1撃沈、敵旗艦軽空母ヌ級中破。重巡1小破。」
「私の出番だな。全砲門、斉射!」
戦艦ならではの轟音が海面を轟かす。そして、少し遠方で爆発がきこえる
「敵艦、撃滅。完全勝利!」
遠くから川内の声が聞こえる。
「この勝利に慢心してはダメよ。さあ、進みましょう。」
赤城が冷静な声で言う。
「俺、仕事ねえな……」
「確かに……何もしてないですね。まさか、こんなに秘書艦が暇だとは思いませんでした。計算外です。」
執務室で何もせず、置物と化している指揮官とその秘書。
「旗艦とその周りの取り巻きが優秀過ぎたな……」
「司令官、そろそろ赤城さん達が帰ってくるよー」
執務室のドアが開き、陽炎が顔を出す。
「さて、鳥海。我々が置物でいる間に赤城はどうやら作戦を無事に遂行さしたそうだ。」
「提督、出迎えでも行きましょうか。」
「そうだな、まだ全然早いけど、することないし……」
置物達はその後、30分ほど、港で海をずっと眺めていたそうです。
置物達……このまま主役は赤城になってしまうのか……