切歌と別れた後、あたしはどうしたらあのカルマノイズに勝てるか考えていた。それと同時に、切歌と調の事を考えていた。
「ああぁー、わっかんねーなー」
数十分たった後、あたしは気分転換に廊下を歩き始めた。
角を曲がろうとした時、その先にメディカルルームに切歌を運んでいる調の姿があった。
あたしは中に入った調に気づかれないように扉の横の壁に寄りかかり腕を組んで耳を澄ませたが、特に話し掛けるような事は無く調が出てきた。あたしは調を呼び止める。
「お前は何がやりたいんだ…?」
「今は……言えないですね…切歌さんには内緒にしてもらえますか…?」
調はこの事を切歌には内緒にして欲しいらしいがそうもいかない。
「それは無理な話だ、お前がアイツをここまで運んだ事は言わせてもらう」
「はは…ケチですね…」
と言うと調はそのまま去ってしまった。
「あー!なーんか気が向かねぇな…」
あたしは気晴らしのためトレーニングルームでひと暴れすることにした。
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トレーニングルームから出て、切歌の様子を見に行こうとした時、切歌が向こうから走ってくるのが見えた。
「おぉ、どうしっ………」
声をかけたが、切歌は無視して走り去ってしまった。
(アイツとなんかあったか……)
と思い、あたしは切歌を追いかける。
クリスは(切歌はいつもの倉庫にいる)と予測し、倉庫の部屋へと足を踏み入れる。
しかし、そこには切歌の姿は無かった。
感じるのは微かな風の音だけ…
「風……?」
この空間で風を感じる事は多々ない。
だが、今風を感じるということは倉庫の部屋を出てすぐのベランダのような場所に出る扉が開いている可能性が高い。つまりそこに切歌が居てもおかしくない。
クリスは外に繋がる扉をゆっくりと開く。
クリスの目の先には壁に寄りかかり上を見上げている切歌の姿。クリスの考えに狂いは無かった。
「ここに居たか…」
「あぁ、クリス先輩デスか…」
切歌の声は涙に堪えながら発してる声ではなく、ただ悲しい雰囲気の声でも無かった。
聞こえたのは気力が無い声…
「何があった、アイツと…」
「調に嫌われた、私はもう何もする事は出来ない…」
いつもならば語尾に「デス」を欠かさず付けていた切歌だが、今回は付けていなかった。
「デスって言わないと切歌って感じがしねぇな…嫌われたなら何とかして仲直りしようとするのがあたしの知ってる暁 切歌だぞ?」
「デス…か、なんかバカバカしく感じてきたデス」
「お前……」
「もう私は諦めたデス、調は今記憶を無くしているからそれだけで迷惑掛けたくないって言ってる……」
「でも、あと1日でまた上書きがー」
「されてないんデスよ、記憶の上書きなんて…」
「はぁ?」
クリスは切歌の発した言葉に戸惑っていた。
「調の記憶は上書きなんてされてなかった、つまり3人で一緒に思い出作りしたことだって覚えてる。にも関わらず、記憶の上書きで記憶がまた無くなったフリをしてる…」
「じゃ、じゃあなんでエルフナインは上書きなんて言ったんだ!!」
「きっと手を組んでるんでしょうね、何が目的なのかはわからないけれど…」
「なんだよ…それ……」
「私はカルマノイズを倒します。それだけに専念すればいい…」
「1人じゃ無理だ!お前も体感したろ!?」
「私は、もうカルマノイズを倒す事ぐらいしか出来ませんから……」
「アイツ…調の手伝いはしないってことか……?」
「そういうことに……なりますね」
そう言うと切歌は中に入ろうとクリスとすれ違おうとする。
切歌が横に並んだ瞬間クリスは切歌の手を取る。
そしてクリスは切歌を目の前に引っ張り出し…
パァァァン!!
と切歌の頬に1発ビンタを食らわせた。
「ふざけるな!!」
怒鳴るクリスだがそれに一歩も動揺せず、切歌は目線を下に逸らすだけだった。
「お前が居なきゃ、アイツがもし記憶が戻った時どーするんだ!!」
「………」
切歌は目を瞑り、暫くして目を開き、
「ごめんなさい…」
と呟く、その瞬間ー
クリスは切歌に鳩尾を殴られた。
切歌には多少の力があっても、莫大な力は無いだろうとクリスは殴られた瞬間思ったが、クリスは徐々に視界がぼやけていき、瞼が重くなってくる。
「きり…か………お……まえ……」
辛うじて声を出したが限界だった。
クリスはその場で気を失ってしまった。
ウィィン!ウィィン!
タイミングよく、サイレンが鳴る。
切歌は指令室へと歩きながら向かった。その背中は楽しげな雰囲気や悲しげな雰囲気など一切無かった。
切歌の背中には何も連想させるものなど無かったのだ。
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切歌が指令室に入ると、そこにはエルフナインと調の姿もあった。
だが、切歌にとってもうどうでもいい事だった。
そこまで切歌は可能性を捨て、諦めていた。
「?クリス君はどうした?」
指令が切歌に問う。
「どうやらお腹が痛いらしいデス」
切歌がそう言うと指令の指示も待たずに出撃に向けて指令室を出てしまった。
「おい待て!!」
指令に呼び止められるが切歌はそれをも無視し出ていった。
「くっ!クリス君が来たら即出撃させる!!準備しておけ!!」
「切歌ちゃんなんか様子がおかしかった…?」
「そうですね…クリスさん不在も気になりますし…」
友里と藤尭はそう言うと、調とエルフナインはクリスを探しに行くと言い、トイレへと向かった。
だがそこにはクリスの姿は無く、調とエルフナインはトレーニングルーム、メディカルルーム、クリスが使っている部屋など探した。
しかしどこを探してもクリスの姿は見当たらない。
「どうして……」
調が考え込もうとした時、
「倉庫にいるかもしれません、行ってみましょう」
とエルフナインが調を連れ出す。
倉庫に来た調とエルフナインは、壁を背にお腹を抑えながら座っているクリスを見つけた。
「クリスさん!!」
エルフナインがクリスの元に駆け寄る。
「悪ぃ……うっ、ちょっとばっかし気絶してた」
「どうして…誰がこんなことを!!」
「切歌だ………アイツは今さっき何か引っ張っていた糸が切れた……」
「切歌さんが……?」
調は指令室で見た切歌の表情の意味が分からず、今さっきまでも分からなかった。だが、クリスの言葉を聞いて気づいた。
切歌は全てを諦めたのだと……
「……!!切歌さん…!!」
エルフナインは何か気づき、指令室へと向かった。
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「切歌ちゃんの居場所にエネルギー反応多数!!数は……っ!!500!?」
「500……だどォ!?」
「幾ら何でも切歌ちゃん1人では…!!」
「クソッ!!」
「大丈夫です」
指令室にエルフナインとクリスを抱えた調が入ってきた。
「クリス君…!何故そんなダメージを…!!」
「話は…後だ……それよりエルフナインがなにか気づいたようだ」
「今現在切歌さんは絶望の底の下居ます。救い出すことの出来ないほどの深い…深い底に……。切歌さんはその底よりも下の領域に達してしまった。つまり全てを諦め、自分の一番の願いだけを強く思う事で力を何100倍も引き出す。つまり、今の切歌さんなら対カルマノイズだとしてもイグナイトに打ち勝つことが出来る。そして尚、纏うことが難しくなったイグナイトを纏えるのならばイグナイトも強化されるはずです」
「イグナイトに打ち勝つことが、今の切歌君に出来る…のか…」
指令が言葉を繰り返す。そのままエルフナインは話し続ける。
「下手したら絶唱よりも上の存在かも知れません、イグナイトは可能ならばいくらでも段階を上げることが可能なので」
「でも、イグナイトのカウントは高速で減っていくだろ?そんなに持つのかよ!」
「それは切歌さん次第です。切歌さんが受けたダメージはきっとイグナイトなんかでは打ち消されないと思いますし」
「私は……失敗してしまった…」
調は少しだけ切歌に落ち込んで貰って、どうにかして自分で記憶を取り戻そうとしたが、記憶の無い調には切歌がどれだけ調を大切に思っているかしっかりとわかっていなかった。
その結果が、今の状況だ。
「アイツにとってお前は人生の1つみたいなモンだ……それを、お前はぐちゃぐちゃにした……相当な事がない限り…アイツは戻らねぇぞ…」
クリスはエルフナインに捕まりながら調に言う。
「切歌ちゃん……」
調はモニターを見て呟いた。
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ノイズ出現場所にいた切歌はシンフォギアを纏わずノイズまで寄る。
数が多いため、すぐに切歌はノイズに囲まれてしまう。
「カルマノイズは……?」
切歌は辺りを見渡す。
しかしこれも数が多いためカルマノイズが居るのか確認する事はできなかった。
「カルマノイズのエネルギー反応あります!!」
友里がエネルギー探知して伝える。
すると切歌はこくりと頷き、ペンダントを取り出す。
「ーZeios igalima raizen tron」
詠唱を唱え、切歌はイガリマを纏った。
そして、切歌とノイズ約500体の戦いが始まる
ご覧頂きありがとうございます。
次回は戦いメインとなり、今後の切歌についても触れるつもりです。