ゾグマVSガミエル   作:折井昇人

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プロローグ「人類存亡を賭けた戦い」

 闇に包まれた、大きな部屋に一つだけ灯される、人工の光。目の前にはどこを見ているのか分からない、巨大な人型ロボットが、最終調整を受けている。人工の光とは、調整をするためにメインで動かしている大容量ノートパソコンのことだ。ノートパソコンの前に座っているのは、まだあどけなさが残る少女ただ一人。その背後には、高速でノートパソコンに打たれるデータを処理するためのスーパーコンピュータがずらりと並んでいる。

 コンコンとノックが鳴る。しかし少女はそれには気づかない。カードリーダー式の自動ドアが開く。それでもまだ気づかない。ドアのすぐ傍にあるスイッチを押し、部屋に人工の灯を灯す。それで少女はようやくキーボードを叩く手を止め、振り向いた。

「あ、国枝さん。すいません、集中していて」

 少女は椅子から立ち上がり、国枝と呼ばれた男に頭を下げて謝る。

「ああ、別にいい、謝らなくても。それより、こいつの調子はどうだ? 立原主任」

 国枝はそう言いながら、目の前にある巨人に目をやる。

 少女――立原真奈は笑顔で、

「良好です。あともうちょっとで、テスト段階にまでいけます」

 黒い髪の毛を人工の光で輝かせて、ゆわっと少し揺らしながら答えた。

 国枝はそうか、と答えて、フッと笑った。

「しかし、全人類の叡智を結集させて作った兵器の2号機が、まさか完全ではないとはいえ、巨大人型ロボットになるとはな……」

「これも日本のロボット文化に感謝、ですね。国枝さん」

「だからと言って、国連は我々日本に全てを委ね過ぎてはいないか?」

「どうせ撃滅出来ないとでも思っているんじゃないんですか? 国連のふっかふかの椅子にただただ座っているだけのお偉いさん方は」

 真奈の皮肉に、国枝は苦笑した。

「違いない。まぁ、分からんでもないけどな。怪獣という概念がカッチリとした形で存在するのは、この日本だけだからな」

「それともう一つ。毒ガス兵器を使わずに怪獣を撃滅する手段を、サブカルチャーから引用し、それを実現化出来るのも日本だけ」

「その通り。何も知らんやつらは、すぐにガス兵器やら人類全てを焼き尽くすかもしれない炎を使おうとする。同じ人間とは思えないよ」

「仕方ないですよ。今ゾグマは日本にしか攻撃を仕掛けてきていないんですから」

「迷惑な話だ」

「全くです」

 会話は一旦そこで途切れ、真奈は再びパソコンに向かって作業を再開した。国枝はただ、目の前にある巨大人型ロボットを見ているだけだった。

「通常兵器が殆ど効かない怪獣、ゾグマ」

「だからこそ、ぼくたちはこの巨大人型ロボットを開発し、真正面からでも対抗出来るようにした」

「そうだな」

 国枝はまだ覚醒の産声を上げていない、眠っている巨大人型ロボットに近づき、サラッと女性の髪を撫でるような手つきで、ロボットの足に触れた。

「全高55m。対Z兵器2号機『ガミエル』」

 国枝は少し後ろに下がりならが、55m上のガミエルと呼ばれたロボットの顔に目を向けた。少し笑っていた。

「人間が造り出した、正義のロボットとは思えんな」

「そりゃあ、一番効率的なデザイン案がこれだったんですから」

 国枝は笑うのをやめ、ガミエルに語りかけるように言った。

「今度こそ、やつの息の根を止めてやる……」

 

 

 今から5年前の2025年のある日。世界に衝撃と恐怖と戦慄のメロディが響いた。

 アメリカ大陸の大地からの巨大不明生物の突然の出現。

 巨大不明生物は次々と各首脳国を襲撃し、兵器を破壊していった。

 国際連合軍はこれを急ピッチで解析。当初は異星人の兵器ではないかと思われていた。が、それは全くもって違っていた。

 巨大不明生物は、謎に包まれた存在。だが、幾つか解明されたことがある。

 巨大不明生物は、本物の地球の生物であり、体内に酸素を溜めこんだ、危険で究極的な巨大生物。その周囲には、最早バリアーと呼ぶべき電磁波吸収フィールドが展開されており、ミサイルなどは一切効かないどころか、フィールド内に入ればレーダー通信も届かないということ。

 そして巨大不明生物は、遂に日本へと襲いかかった。

 内陸の自衛隊基地を破壊するために、首都を蹂躙。一時日本は国としての機能を失った。

 それから3年。

 応急的に首都機能を修復し、対策本部を設置。どこの国も名前を付けようとしないので、巨大不明生物に名称を付けた。

 その名は、日本の怪獣文化に則って、怪獣「ゾグマ」。

 日本はまだ完全に復興していない東京にではなく、無傷な関西圏の港町がある「神戸」に対ゾグマ用の兵器開発局、及び訓練施設を設立。だが肝心の物資不足で国内だけで製造出来たのは、対Z兵器1号機の無人大型戦闘機「グラインバード」だけであった。テストの結果、グラインバードの超高出力レーザー火器の火力は従来の兵器と比較するまでもないぐらいの高さだった。が、唯一の欠点として、機動力が爆撃機並しかないことであった。

 これでは人類は勝てない。人類はたった一匹の謎の生物に滅ぼされてしまう。

 国際連合軍はゾグマに対抗すべく、最大の知力と最大の技術と最大の物資と最大の人を、全人類の命運を託された日本に集結させた。

 そして時は西暦2030年。遂に人類は、究極の兵器を完成させることが出来た。

 対Z兵器2号機である巨大人型ロボット。

 その名は「ガミエル」。

 しかしガミエルにも、仕方がないとはいえ、欠点と言うべき点があった。

 その巨大さである。ガミエルは、全長72mのゾグマに対抗すべく、全高が55mもあり、輸送手段が限られていた。そこで日本政府は、神戸を要塞都市にすることに決定。神戸市営地下鉄全線と、地下鉄の通ってない地区の地下に、ガミエル運搬用の地下通路を開設。問題を解消した。

 天使に由来されたその巨大人型ロボットは、果たして人類をゾグマの魔の手から勝利へと導くのか……。

 戦いの舞台は日本の神戸。

 全世界から支援を受けた人類の希望のロボットと、大地から目覚めた悪魔との死闘が今、始まろうとしていた。

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