対魔忍世界に対魔忍♀で転生   作:VISP

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ちょい短いけどお気にせず!


番外編 終わりの始まり

 魔族側の活動が大幅に縮小した事を確認した対魔忍と米連の多くは、自分達と覇権を争う相手が勝手に脱落した事を無邪気に喜んだ。

 それに対し、事態を把握していた者達は一様に顔を青ざめさせた。

 やがて、これは嵐の前の静けさ、本気の大攻勢の前の準備期間なのだと誰もが悟った。

 これに対し、各勢力は相変わらず一致団結する事など無く、一時的に勢力争いを止めて、戦力の拡充へと走った。

 しかし、如何に人員と資金源の大きい米連でも、如何に優秀()な対魔忍でも、畑から兵(オーク)が採れるレベルの魔族の本気での総動員には勝てる訳も無く。

 事態を重く見た日本国政府上層部の一部は、この事態の解決のために本物のプロを動員する事を決断した。

 

 

 ……………

 

 

 「各員、聞いているとは思うが、事態は極めて深刻だ。」

 

 日本国内某所。

 薄暗い会議室とテレビ電話で繋げられた先へと、彼らの長の静かな声が響く。

 団長である伝説の傭兵が直々にミーティングを開くと言う異常事態に、誰もが覚悟を決めていた。

 この傭兵団が始まって以来の、本当の大仕事が始まるのだと。

 

 「魔族側の本腰を入れた大侵攻。今まで我々はこれを防ぐために活動してきたが……遂に恐れていた事態が現実となってしまった。」

 

 コツコツと、靴底に金属板を仕込んだブーツ特有の硬質な足音が響く。

 

 「日本国政府はこの事態に遂に国防軍の動員を決定。名目上は対テロ演習と言う事だ。」

 

 勿論、こんな事態になってすら未だ騒ぎ立てる馬鹿はいるが、生憎とそういった連中はこの国に限って言えばつい先日消えた。

 無論、何者の仕業なのかは公式には不明だ。

 

 「米連も本国に泣き付きつつ、旧中華時代から秘匿されていた核弾頭の使用を決定。魔界とのゲート境界線で起爆し、何もかにも吹き飛ばす予定だ。」

 

 それはつまり、ゲートのある日本に再び核を落す事に他ならない。

 その屈辱、その憤怒、その憎悪。

 日本国に生まれ、生きた者にとっては絶対に許せない暴挙だった。

 

 「対魔忍は…まぁいつも通りなので省くぞ。」

 

 いつも通り、魔族など何する者ぞ!と気炎を上げる無能な老害と未熟者と学習能力のない連中。そして極一部の理性ある者だけが真っ青になっている事だろう。

 うん、実に平常運転だネ☆

 

 「依頼主は日本国政府首相。内容はこの事態の収拾だ。」

 

 ごくり、と誰もが唾を飲んだ。

 レインギア。

 裏の業界においてなお超一流とされる彼・彼女らにしても、余りに大き過ぎるミッションだった。

 

 「現在、情報収集を進めているが……現状のまま推移すれば、大侵攻の開始は一ヵ月前後だと思われる。」

 

 これはオーク等の数を担当する下級の魔族の動員(と言う名の強制徴兵)に時間がかかるからだ。

 ブラック達吸血鬼一派の治める魔界の領域に住まう全ての下級魔族を戦力として徴兵する。

 集めた後は出番までそのまま放置で、集め切ったら進撃を開始する。

 そんな簡単な事だが、数が数百万ともなれば、その間に消費される食糧を始めとした物資も凄まじいだろうし、局所的な飢餓により最悪は共食いのために殺し合いが始まる。

 数を集めた上でそうした混乱状態を抑えつけ、進撃するにはどれだけの手間がかかるか分からない。

 それでいて、指揮官である中級・上級魔族達は楽しむ暇も獲物も無くなるので、彼らとしては得らしいものが土地位しかない。

 それでも大侵攻を実行すると言うのだから、覇権以外の何らかの別の目的があるのだろう。

 

 「今回の我々のミッションは、魔族側の大侵攻及びそれに付随して起きる日本国へと降り掛かるあらゆる災害の排除だ。」

 

 団長の纏ういつも通りの雨合羽が薄暗い部屋の中で鈍く照明を反射する。

 そこに隠された顔は絶対に見る事は出来ない。

 変装も隠蔽も完璧にこなす団長の本当の姿なんて、決して知る事は出来ない。

 だが、そんな事は瑣末事だとばかりに、団員達は団長を信頼していた。

 

 「作戦内容はゲートの接続先の変更だ。対象はヨミハラと東京キングダムの二大ゲート。第一段階として、ゲート周辺を掃討し、陣地構築。第二に術者総出で接続先を変更。変更先はまた別の異世界の予定だ。その間、支援要員は周辺防御に、戦闘員は中級以上の魔族及びネームドの対処。」

 

 はっきり言って無茶苦茶だった。

 どれ程の人員が犠牲になるか分かったものではない。

 だがしかし、現状ではそれ以外のらしい手はない。

 

 「が、次善の策として、米連及び対魔忍内の『分かり易い連中』には話を通しておいた。」

 

 あ(察し)と言う空気が団員達の間に広まった。

 団長、暫く見かけないと思ったら、そんな事してたんですね…。

 

 「また、作戦開始前に魔界側でも妨害工作を行う。オーク共は兎も角、指揮官連中は多少だが足も鈍るだろう。」

 

 あ(察し)二回目。

 やはりこの団長を敵に回してはいけない。

 団員達は何度目になるかも分からない誓いを立てた。

 

 

 「まぁ、そのオーク連中にも餌を撒く予定ではあるが…。」

 

 ぼそりと呟かれた声に、この人は何処まで入念なんだろうか、と何度目になるかも分からない疑問が湧くが、団員達は賢明にも何も問う事は無かった。

 

 「作戦開始まで未だ時間があるとは言え、悠長に構えていては間に合わん。今までの諸君らの訓練と経験はこの時のためにあったと言っても過言ではない。各員、己が最善を尽くせ!」

 「「「「「「了解!」」」」」」

 

 こうして、レインコート率いる傭兵団レインギアはこの一大作戦「ターンアウト」に挑む事となった。

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

 なお、その頃の他勢力

 

 「あ、あれ?核弾頭は何処に…」

 

 米連では折角隠し持っていた核弾頭が何処かへと持ち去られていた。

 他にも、核弾頭を隠匿していた事が米国本国へと漏洩、この事態にあって政治的泥沼に陥り、貴重な時間を消耗してしまう。

 

 「おい、オーク共の間で疫病が広がってるぞ。」

 

 医療技術こそあるものの、そんなものを利用できるのは知性や資産を持った中級以上の魔族のみ。

 下級魔族として獣同然に生きてきたオークに衛生や医療の概念等ある筈もなく、あっと言う間に感染拡大して大きな被害となってしまった。

 

 

 「……………。」返事がない、ただの屍の様だ。

 

 語るに及ばず。

 精々国防軍と連携していつもより多めに武器弾薬を融通してもらった。

 

 

 

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