対魔忍世界に対魔忍♀で転生   作:VISP

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第四話 何時何処にでもフラグはある

 レインコート、と言う傭兵がいる。

 

 凄腕の傭兵で知られる彼だが、やっぱり人間であり、散財する事もある。

 彼?は時折、ヨミハラや東京キングダムの奴隷市にふらりとやってくる。

 そして売れ残りの幼い奴隷を買っていく。

 それは魔族であったり、一般人であったり、男であったり、女であったりと一定ではない。

 だが、総じて大人しく幼い性質の商品であり、つまる所そういった趣味があるのだろう、と関係者は考えている。

 また、毎回少し多めに出して買ってくれるので、奴隷商売関係者からすれば太客ではないが、売れ残りの在庫処分をしてくれる良い客の一人だった。

 

 無論、実務的な理由があるからなのだが。

 

 

 ……………

 

 

 私は魔族のポチと言います。

 犬の獣人で、一応魔族ですが、人間よりも少し頑丈な程度で、特に何かできると言う訳でありません。

 魔界の何処かにある森で暮らしてたんですが、ある日奴隷商人に捕まってしまって、こうして人間の世界に売られてきてしまいました。

 歳はよく分かりませんが…今は大体15歳くらいだそうです。

 奴隷商人の所は今に比べると格段に不衛生で…どんくさい私は何時も殴られたりしてました。

 ご飯も殆ど貰えず、檻の中で絶望しながら、たくさんのオークに興奮した目で見られながら過ごしていました。

 どんくさいし、汚いし、小柄で女性らしい起伏の無い私は当たり前の様に売れ残って、もうすぐオーク達の巣に投げ込まれる所でした。

 そうなったらもう正気ではいられないでしょうし、脱走を試みた他の奴隷の子がどうなったのかも見てますから…きっと沢山犯された果てに、食べられてしまうのでしょう。

 私もきっとそうなると、毎夜ガタガタ震えながら過ごしていました。

 そんな時の事でした。

 ご主人様が市場に現れて、私を買ってくださったのは。

 ご主人様は冷たいけど暖かくて、私をこの家に住ませてくれました。

 それ以来ずっとこのお家に住んでますけど…ご主人様はお忙しいらしく、滅多に帰って来てくれませんので、時々とても寂しくなります。

 それに、お外に出た事はありません。

 食料は何時の間にか補充されてますし、周囲は何もない山の中ですし、ネットもテレビもありますし、この家にいる事だけを言いつけられていますので、私は絶対に外に出る事はありません。

 でも、時々ご主人様と一緒に広い野原を自由に駆けまわってみたいです!

 

 「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 「ただいま。」

 

 そんなちょっと寂しい毎日ですが…今日は久しぶりにご主人様が帰ってきました!

 滅多に帰ってこないご主人様は時折誰もいない筈の部屋から現れたりする事も多いので、こうして玄関からやってくる事は本当に珍しいのです。

 だから、私は滅多に言えない帰宅を迎える挨拶を言えました。

 

 「ご飯ですか?お湯ですか?それとも休憩ですか?」

 「ご飯で。」

 「はい!」

 

 ご主人様は何時もフードやゴーグルで顔を隠してますが、食事の時はフードを取ります。

 自室だけですけど、湯で身体を清める時は裸になる時もあります。

 フードを取ったご主人様は贔屓目に見ても黒髪黒目の美少年なので、ご主人様の雌奴隷としては是非とも全部見たいのですけど…生憎と覗こうにも監視カメラを仕掛けようにも全てばれてしまって出来ませんでした…。

 でもでも、ポチは絶対に諦めません!

 何時か絶対にご主人様からお情けを貰いたいと思ってます!

 

 

 ……………

 

 

 さて、セーフハウスの見回りも終わったし、とっとと学園に帰るとしよう。

 欠伸を噛み殺しつつ、最後のセーフハウスから何時もの様に奥歯に仕掛けてあるスイッチを押し、学園の自室へと死に戻る。

 先日の様な魔界騎士()相手のガチの自爆ではなく、心臓のみを爆破してショック死する事で、装備を消失する事もない。

 まぁショック死する程度には痛いのだが。

 で、セーフハウスなのだが、これは元々能力の制御がまだ甘かった頃、自分を認識できずに意味消失しかけた際に(何とか復帰できたのだが)、その保険として始めたのだ。

 意味消失、これは自分の能力の制御に失敗した場合に陥る状態で、これは「情報の破壊による存在発生源の消去」であり、結果として対象の存在したと言う事実すら消え去ってしまう。

 この対策として、自身を強く認識してくれる者を増やすか、自身の精神にトリガーを設ける事で安全装置としている。

 この辺りはチェ〇ン・皇の「この世界に絶対に戻らなければいけない理由」を記した「鍵」に近いものがある。

 私の場合、能力でうっかり消してしまわない様に保管してある漫画や小説なんかを捨てられたくない、まだ見てないアニメや映画の存在なんかが該当する。

 そのため、各セーフハウスには私のコレクション等が保管してあり、私の生体反応の消失と同時に、各セーフハウスの奴隷達にメッセージが届き、それらを捨ててしまう。

 で、捨てられてたまるか!と私が復活する訳だ。

 まぁ、今の所そこまで追い詰められた事は無いのだが。

 また、能力が封じられた際の予備の兵器保管庫でもある。

 そのため、不定期に巡回しているのだ。

 先程会ったポチが最も古いセーフハウス付き奴隷で、もう2年はあの山小屋から出ていない。

 彼女の今までの人生に比べれば遥かに清潔で安全なのだが、それでも不自由である事には変わらない。

 定期的に行けば、誰かに何がしか気づかれる可能性もあり、そうすれば彼・彼女らに被害が及ぶ可能性が高いので、もう少し甘やかしてやりたいのだが、それもできない。

 そのため、セーフハウスに行く時は必ず顔を変えていくようにしている。

 こうすれば、彼・彼女達が情報目当てで殺される事もないと考えたからだ。

 私に出来るのは衣食住の安定した提供と、私にもしもの事があった場合、彼・彼女らの手に渡る拘束した期間に見合う報酬、そして彼・彼女らの身元を保証してくれる里親だ。

 ほぼ未調教であり、大人しい気質である彼・彼女らなら、何処に行ってもやっていけるだろう。

 

 まぁ、こっちの貞操を虎視眈々と狙ってるのは感心しないがな!

 

 

 ……………

 

 

 さて、今日も今日とて対魔忍のお仕事である。

 今回は情報収集であり、余り厄介なものではなかった。

 存在を希薄にし、情報を握っている標的に近づき、その記憶の中に入り込み、必要な情報のみを抜き出す。

 終われば、標的は怪しまれない様に心不全を引き起こす毒を盛るか、精神そのものを破壊して脳死に近い状態にしてから撤退する。

 いつも通りの、楽な仕事の筈だった。

 

 問題は、同じ仕事を請け負ったらしい魔族?が標的の施設に単独で、正面から、目につく全てを破壊しながらやってきた事だった。

 

 「さぁ、キリキリ吐きな!…ってもう死んでるし。使えねー。」

 

 そう言って警備のためのオークの死体を投げ捨てるのは、ピンクのショートブロンドの少女だ。

 対魔忍染みたピッチリ防護スーツに身を包む姿は、対魔忍と見紛いそうになる。

 しかし、腰裏から生えた機械式触手を見るに、明らかに対魔忍ではない。

 一応対魔忍に於いて人体改造は、医療目的は別として、基本的に御法度となっている。

 これは日本国の法律に則ったものなのだが…となると、魔族特有の魔力が妙に薄い事もあり、何処かの組織の改造人間である可能性が高い。

 以前アサギ校長が遭遇したと言う人造魔族の沙耶との類似点もあるが、差異も多いので、発展型か量産型の実戦試験のつもりで送り込んだのだろう。

 戦闘能力は…腰の触手がやや厄介だが、性能的には精々ベテラン以下と言った所だろう。

 それに格下相手にはしゃいでいる様子を見るに、対魔忍同様知能の方に問題があると考えられるため、脅威度はそこまで高くはない。

 これがきっちりと軍事訓練を受けていたのなら違うのだが、この程度のものを量産しても、喜ぶのは米連位のものだろう。

 まぁ自爆やリミッター解除、暴走や変身等の奥の手や隠し機能位あるのかもしれないが、態々相手をする意味もないし、任務は果たしたし、こうして監視カメラ越しにある程度情報を入手できたので、さっさとずらかるとする。

 

 後日、アサギ校長に報告した折、随分と複雑そうな表情をしていたので、やはり沙耶とやらの量産型か何からしい。

 あれが大量生産されたところで米連が兵隊を使わずにオークや獣人等の下位の魔族を一方的に虐殺出来る程度なのでそこまで問題は無いのだが、アサギ校長としては思う所があるらしい。

 

 

 

 まぁ私には関係ないがな!

 そんな私情満々な任務、一部の人間兵器とかご自分でやっていただきたい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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