対魔忍世界に対魔忍♀で転生   作:VISP

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第五話 敵に捕まって凌辱を楽しむ女教師()がいるらしい

 仕事をしていると、時折ブッキングする場合がある。

 一番多いのは対立した組織の双方からの依頼がほぼ同時期に発生するものだが、表の対魔忍としてのものと裏の傭兵としてのものの場合もあるし、自分が傭兵をやっている時に他の対魔忍が現れる時もある。

 しかも、救い様がないのは、後者の場合は大抵同じ目的で動いている場合が多いと言う事だ。

 標的への情報収集が目的なのに、周囲の人物ではなく、何故標的本人にカチコミをかけ、剰え正面から殺そうとしているのだろうか、この脳筋対魔忍共は。

 

 こういった輩はその内魔族の肉便器かオナホになるのがお決まりとは言え、手加減できる程度の相手なら捕獲して奴隷市に売り捌き、後の任務のために生かさせてもらう。

 場合によっては依頼主に献上し、パイプを作り、そこから情報を吸い出したり、暗殺したりもする。

 その後、奪還任務を組んでもらう様に報告書に記載するのも忘れない。

 

 だが、一番面倒なのは基本能力無しで遂行する傭兵時に、能力無しでは勝てない程度に(戦闘力では)格上の対魔忍と遭遇してしまった場合だ。

 所謂人型兵器と言われる連中で、有名処だとアサギ校長とその妹、若手ではユキカゼや凛子が該当する。

 こういった連中は頭が残念な割に、戦闘能力に全振りしてる連中なので、そこらのオーク100体よりも遥かに厄介だ。

 能力無しの私は精々が中堅どころの傭兵であり、事前に情報収集し、最適な戦術で以て可能な限りリスクを減らして依頼を達成するが故に、高い依頼遂行率を持っている。

 故に、事前準備に引っかからず、引っかかっても準備する前に突撃してくる馬鹿や、引っかかった所でどうしようもないバグキャラとかの対応は出来なくはないが苦手なのだ。

 先日の任務で遭遇したイングリッドはこちらの動向を調べていた事もあり、何とか依頼を遂行したが、米連製と思われる人造魔族に関しては完全に後手だった。

 なお、あの人造魔族に関しては被害が多発したらしく、見つけ次第情報収集を命じられた。

 知能対魔忍と本物の対魔忍と言う知能が低い者同士が激突した結果、性能と物量で勝る方が勝つらしい。

 つまり何が言いたいかと言うと、厄ネタは突発的に訪れるから注意しろ、と言う事だ。

 

 例えば、傭兵としての任務先で、自分の通う学校の女校長と出会うとかな(白目)。

 

 「さて、貴方で最後ね。」

 

 100を超えるオークや獣人等の雇われ下位魔族を悠々と下して、井河アサギは宣言した。

 確かに自分以外はもう雇い主しかおらず、その雇い主も最奥の部屋でガタガタ震えている状態だ。

 まぁその道中に催淫ガストラップがあるから大丈夫だとは思うけどね!

 

 「傭兵レインコート。依頼とは言え、これ以上の任務妨害は目に余るわ。ここで仕留めさせてもらうわよ。」

 「………。」

 

 敵の装備は小太刀一本に腰のポーチのみ。

 なのに通信用のインカムすら無く、腕時計型の端末のみとなると…………。

 

 「往くわよ!」

 

 轟と、風を切り、踏み込んでくるアサギ。

 しかし、自分の内心は白けていた。

 能力も使わず、態々通常の白兵戦を挑んできた井河アサギに呆れていた。

 

 

 この女…………………やはりストレス発散に来やがったな!(激怒)

 

 

 アンタくらいだよ、ストレス発散のために敵に取っ捕まって凌辱されて、満足したから全滅させて脱出するのは!!

 知らずとは言え生徒の邪魔してんなよ校長先生よォ!

 

 「…頭来た。」

 「な!?」

 

 亜音速の斬撃、それを放つ腕の予想軌道上にこちらの腕を割り込ませる事で止める。

 至近距離でその整った美貌を睨みつける。

 一切学習せず、猪突猛進で、力で何でもかんでも解決しようとする馬鹿共のTOPに怒りを視線に乗せて叩き付ける。

 本当に、本当に久しぶりに頭に来た。

 なので、久々に全力で行く事にした。

 大丈夫、ズタボロになってもオークや魔族は貴方を可愛がってくれますよ(はぁと)  

 

 自分はオークや魔族と穴兄弟になりたくないからご免だがな!

 

 

 ……………

 

 普段と同じ、他の対魔忍では難しいと思われる任務だった。

 何てことは無い、自分なら大丈夫だと、この時点まではそう思っていた。

 実際、此処までは予想通りだった。

 

 (こいつ!?)

 

 だが、アサギは自分の斬撃が一切の予備動作無しに止められたと言う事態に衝撃を受けた。

 基本的に自分の斬撃を途中で止められた事は現場に出るようになってからほぼなかった。

 能力無しで放ったとは言え、対魔忍最強の自分の一撃であり、防御や不死性による無力化なら兎も角、自分と同じく業で止められる事は本当に数える位しかない。

 それこそ、あの朧位なものだし、ベテランの対魔忍でも今の様な動きは出来ない。

 

 「光陣華!」

 

 消耗の多い光速化の術。

 視界がモノクロとなると同時、自分以外のあらゆるものが停止する。

 これを用いれば、自分を止められる者はいない。

 あのエドウィン・ブラックならば真祖の不死性と重力制御の能力で対応してくるだろうが、この速さについてこれた者はいない。

 ならばこれは何なのだろうか?

 何故、自分の動きについて来れる!?

 

 「嘘!?」

 「………。」

 

 レインコートは騒がない。

 ただ、右手に握った大振りのコンバットナイフでこちらの斬撃を往なしていく。

 その技量は自分に劣る。

 しかし、防戦に徹すれば即殺は免れる程度には巧い。

 

 (こいつ、生き残りなれている!)

 

 位置取り、足捌き、往なし方。

 その全てが生存のために特化した動きをする。

 これがレインコート、近年稀に見る本当の意味でのプロの傭兵…!

 

 「フゥッ!」

 

 その動きに、アサギは本当の意味で腹を括った。

 何をしてでもこの場でこいつを殺す。

 こいつは生かしていては危険すぎる!

 

 「!」

 

 ギン!と、甲高い音と共にナイフが弾き飛ばされる。

 同時、その動きが宙で停止する。

 それを見て、アサギは相手の能力に見当をつけ始める。

 

 (やはり、こいつは私の速さに合わせる事が出来る。)

 

 レインコートの主兵装は銃火器だ。

 なのに、使い慣れたそれではなく、こちらに合わせる様にナイフを使用している。

 それはつまり、使えない理由がある事を意味する。

 

 (私と同じで、加速中は飛び道具が使えない!)

 

 自分の術、光陣華は亜光速での行動を可能とする術。

 無論、加速と肉体の保護で消費する対魔粒子の量は多いが、その脅威は言うまでもない。

 しかし、欠点として飛び道具は使えない、と言うか役に立たない。

 何せ光速、弾丸等よりも遥かに早く動けるのだ。

 しかもこの術、実は自身から離れたものには効かないのだ。

 そのため、弾丸を発射しても、少し進んだだけで停止してしまう。

 だからこそ、飛び道具は意味がないのだ。

 

 「覚悟!」

 「…!」

 

 首を一刀で切り飛ばす。

 そのつもりで放った横薙ぎの一閃は、しかし突然レインコートの手の中に現れたナイフによって防御された。

 

 「はぁぁぁぁ!!」

 

 内心の驚愕を押し殺しつつ、アサギは刀を振るう。

 少なくとも、剣術でなら自分の方が格上だ。

 その確信と共に、ナイフごと両断するつもりで斬撃を放つ。

 だが、レインコートは異常だった。

 

 「………ッ」

 

 一本、二本、三本…幾度もナイフを斬り、折り、弾いた。

 しかし10を超えてなお、何時の間にかその手の中に握られるナイフに、斬撃は往なされ続ける。

 

 (こいつ、一体!?)

 

 相手の能力に見当がつかない。

 否、恐らくは複数の能力をストックできるか、恐ろしく応用範囲の広いものなのだろう。

 そうなると、このままでは何れこちらが詰む可能性が高い。

 

 「殺陣華!」

 

 光速状態を維持しての分身術の発動に、体内の対魔粒子がごっそりと持っていかれる。

 こちらの数は自分も入れて三人、斬撃の数は単純に三倍であり、自分同士での連携によりその戦闘能力は更に高まる。

 実戦での運用は初めてだが、これなら往ける!

 身体に圧し掛かる喪失感をそんな確信で塗り潰しながら攻撃を再開しようとして…

 

 「流石。」

 「となれば、」

 「こちらも容赦しない。」

 「「「なッ!?」」」

 

 相手もまた、三人に増えていた。

 同時に、今までにない恐怖を感じ、身体が竦みそうになる。

 こいつは何なのだ!?

 得体の知れない存在、未知への恐怖。

 それが今自分が相対しているものの正体だ。

 

 「「「っ、嗚呼アアアアアアアア!」」」

 

 恐怖を叫びで押し潰し、三人全員で突撃する。

 今まで一度も戦場で相対した事の無い事態に、歴戦にして最強の対魔忍であるアサギをして、動揺してしまった。

 全力にして最速の刺突の構え、それによる一斉突撃。 

 自らへのダメージも顧みないその行動はレインコートにとって、能力によって井河アサギの知覚領域に侵入してみせた倉土灯にとって厄介だった。

 井河アサギが灯を知覚・認識する限り、灯は彼女のいる領域に現れる。

 また、アサギの人数が増えたのなら、灯の人数もまた増えるのだ。

 とは言え、彼女の素の防御力は防護スーツとコートで補う必要がある程度であり、対魔粒子の貯蓄・生産量もアサギ程に高くはない。

 となれば、同じだけのダメージを受ければ、耐久力と体力の上限に大きな差がある現状、アサギが一方的に有利となる。

 

 「「「勝った。」」」

 

 だが、灯にとってそもそもダメージは意味が無い。

 三人それぞれが互いに刺突を受け、貫かれた状態で目の前の相手に抱き着く。

 直後、コートの内側に忍ばせていた爆薬が炸裂、部屋全体を爆風が満たした。

 

 

 ……………

 

 

 「く、そ…!」

 

 全身から血を流し、何とか刀を支えにして床に倒れ込むのを防ぎながら、アサギは悪態をついていた。

 最後の最後、あの得体の知れない傭兵は差し違えての自爆と言う回避不能の攻撃によってこちらに大ダメージを与えてきた。

 何とか無理矢理分身をもう一体出し、空蝉の術も併用してそちらを身代わりにして直撃を避けたものの、部屋全体を満たした爆風による少なくないダメージを受けてしまった。

 淫術やガス、洗脳の類で無力化された事は幾度もあれど、正面からの戦闘でここまで深手を負った経験はそれこそエドウィン・ブラック位しかなかった。

 つまり、あの得体の知れない傭兵はそれだけの強敵だったのだ。

 

 (多分、生きてるでしょうね。)

 

 それは勘と言う名の確信。

 あのエドウィン・ブラックの様な、不死者特有の自身の生命を顧みない行動がその証拠だ。

 だからこそ、アサギは重傷を負ってなお、未だ警戒を解かなかった。

 

 「キ、キキキキキキキキキ!予想通り、いや、予想以上だ!」

 

 すると、今まで頑なに閉じられていた奥へと繋がるドアから、小太りの中年男性の魔族が現れた。

 その周囲には部屋一杯のオーク達がおり、皆一様にボディスーツの破れたアサギの姿に興奮し、股間を膨らませていた。

 

 「あの雨合羽男と最強の対魔忍、果たしてどちらが強いかと思ったが…まさか一番良い結果になってくれたとは!」

 

 勝利を確信した魔族の中年は喜色を隠す事なく、べらべらと勝手に話し始めた。

 

 「あの雨合羽も、貴様も!我らノマドにとって目障りだ!故に対魔忍に情報を漏らして誘き寄せ、奴を雇ってぶつけさせた!結果は見ての通りだ!ハハハハハハハハハハハハハハハ、我ながら完璧だ!」

 

 つまり、最初から罠だったのだ。

 それを知ってもなお、アサギは動揺しなかった。

 余りにタイミングが良すぎた。

 

 「さて、あの井河アサギも死に体だ。念のため眠らせてから拘束しろ。私が楽しんだ後はお前達にも好きにさせてやろう。」

 「「「「「プギー!」」」」」

 

 ガスマスクをかぶったオークが五体、火炎放射器にも似たガスボンベを持って進み出る。

 話通りなら、恐らく催眠ガスが入っているであろうそれを避ける術は、今のアサギには無い。

 だが、危機感も抱いていなかった。

 

 「そうか、つまり最初から踏み倒すつもりだった訳か。」

 「そうとも!あんな正体不明の不気味な奴に払う金など一銭も無い!」

 「そうか。ならもう十分だ。」

 

 ガチャリ、と撃鉄の上がる音がする。

 

 「…へ?」

 

 中年魔族が振り向いた先にあったのは、無骨な銃口。

 そして、拳銃を突き付けるレインコート。

 それにアサギは驚かない。

 何故なら、彼は最初からそこにいた。

 ただ、この場では彼女だけがそれに気づいていた。

 直後、銃声と共に発射された弾丸に眉間を貫かれ、魔族は絶命した。

 

 「プ、プギィ!?」

 「………。」

 

 銃声が連続する。

 それと同じ数だけオークが倒れていく。

 中には逃げようとした者もいたが、しかしその後頭部にも容赦なく銃弾が贈られ、汚い脳漿と鮮血の花が咲いていく。

 気づけば、この場には重傷のアサギと無傷のレインコートしかいなかった。

 

 「………。」 

 「く、ぅ…!」

 

 コツコツと、軍用ブーツの音を立ててレインコートが歩いてくる。 

 それに対し、重傷の身体を何とか立て直し、刀を構えようとするアサギ。

 この窮地にあってなお折れぬ精神力と生命力は感嘆に値するが……しかし、意味は無い。

 

 「………。」

 「な…」

 

 レインコートはあっさりと、アサギの真横を通り抜け、そのまま外へと歩き続ける。

 

 「待ちなさい!」

 

 アサギの叫びに、ピタリと軍靴の音が止む。

 両者とも背中を向け合いながら、しかし先程の戦闘とは異なる緊張感があった。

 

 「何故見逃すの!?」

 「依頼が白紙になった。それだけだ。」

 

 あくまでもプロに徹するレインコートの言葉。

 一切の感情を滲ませないその返答に、アサギは言葉を失った。

 そして、振り向いた時には雨合羽は影も形も無かった。

 まるで先程までの事が悪い夢だったかのように。

 だが、この場の惨状が先程までの出来事が現実だと雄弁に語っていた。

 

 「レインコート……。」

 

 彼の通り名と共に、囁かれる言葉がある。

 その雨合羽は例え血の雨が降ろうとも、一切の汚れなく、違う事なく依頼を果たす。

 そして、彼は裏切りを許さない。

 例え依頼人でも、昨日の友軍でも、裏切れば必ず消される。

 汚れなく、違う事なく、裏切り者には死の制裁が訪れる。

 雨合羽を雇うなら、決して裏切ってはならない。

 

 「二度と会いたくないわね…。」

 

 今まで遭遇した敵とは全く異なる不気味さと精神性を持つ傭兵を、アサギは戦慄と共に記憶した。

 

 

 ……………

 

 

 「つっかれたぁ…。」

 

 バフン、と自室のベッドへと倒れ込む。

 えらく消耗した罠依頼だった。

 別に依頼が罠である事はよくある事だが、それでもここまで消耗したのは久々だった。

 光陣華を発動したアサギに認識される事で、彼女の知覚する世界へと潜り込む。

 文章にすれば短い事だが、普段とはまた異なる状態への潜入は神経を使うし、そこからのアサギの最も得意とする距離での戦闘など、冷や冷やものだった。

 無論、よい経験にはなったが。

 アサギが分身する事で、自分は彼女に三重に認識された。

 それを生かし、またも相手の知覚する世界へと潜り込み、こちらも疑似的な分身を可能とした。

 そのお蔭で彼女は動揺し、その隙を突く形で自爆戦法に成功した。

 もし平時のアサギなら、この程度は何と言う事もなく対処していただろう。

 しかし、戦闘中に動揺し、術の多重発動により消耗した状態だったが故に、戦闘続行が極めて難しい程度にはダメージを与える事が出来た。

 これで暫くの間は彼女は事務仕事にかかりっきりになる。

 つまり、現場で自分の邪魔をする事は無くなる訳だ。

 

 「これに懲りたらもう少し組織運営に力を入れてほしい…。」

 

 それが無駄な希望だと分かっていても、灯はそう願わずにはいられなかった。

 実力があるのは分かるけどさ、TOPが肉便器になってストレス発散て駄目でしょう?

 そう思いながら、溜まった疲労による眠気に身を任せ、灯は夢の世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ケーケッケッケ!俺様は夢魔!さぁ今日はこの対魔忍の卵に淫夢をグペ!?』

 

 なお、夢の世界でも休めなかった模様。

 

 

 

 


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