多くの人に見てもらえて本当に執筆の励みになります。
では続きをどうぞ
もくもくと立ち籠める黒煙。響き渡る甲高い鐘の音。巨大な爆発。耳に届くは悲鳴、泣き声、怒声。人波が我先にと港に向かって流れていく。アイラ、秋人、ジェイ、ユキの四人は波に逆らうようにして門のほうへと走った。多くの初級・中級ハンターが彼らに続く。
アイラが門までたどり着くとそこには戦場が広がっていた。足元には村民やアイルー、モンスターの死体が有象無象に転がり、民家からは火の手が上がり、血の匂いが漂い、ハンターとモンスターの戦闘が目につく至るところで繰り広げられていた。まさに門前は地獄絵図と化していた。
アイラは店先で腹を押さえて倒れ込む一人の門衛に気づく。生死を確認する。門衛は負傷していた。腹部の傷口から血がとどまることを知らず流れていく。遠のく意識の中、門衛は近づく足音に恐怖し震える手で必死に「来るな来るな来るな」と叫びながら砂や石ころを投げつける。相手の定まっていない物は在らん方向へと飛んでいく。
恐怖で門衛は人かモンスターかの区別がつかない。
アイラは門衛の手を抑え込むと頬に平手打ちを叩きこむ。
「落ち着いた?なら状況を教えて、いったい何があったの?この混乱は何!?」
「へ、え、ああ。行商アイルー達がクルペッコに追われているのを確認できたから規定通り村に入れるためにも門を開けて、彼らを招き入れて門を閉めようとしたら突然アイルー達が仲間の門衛に切りかかったんだ。俺もその時一発もらっちまって。その間にクルペッコが強引に門を開き破壊した。そうしたらまるで待っていたかのようにモンスターたちがなだれ込んできて」
「村と友好的関係のアイルー達がなぜ?」
「分からない。分からないんだ。あのアイルー達が一体なぜ………」
「たぶんだがそのアイルー達はもう死んでるだろうな」
「「え?」」
秋人が周囲の警戒をしながら推測を口にする。
「いつも友好的なアイルーが突然襲い掛かってきて、クルペッコが門をぶち破り、クルペッコだけならいざ知らず他のモンスターもなだれ込んできた。明らかにタイミング良すぎる。まるで何者かに計画されていたかのように」
「馬鹿な。モンスターにそんな知能があるわけない」
「モンスターらしからぬ知能か。アイラ、例のクルペッコならそれが可能だろ?違うか?」
「あいつならあり得る」
「ありえない。ありえないけど、もし、万が一そんな奴がいたら、俺達じゃ勝てるわけないじゃないか!」
「だから俺たちハンターがいるんだよ。無理じゃない。やるんだ。おいアイラもう行くぞ」
「うん。じゃあ私たちはもう行くから。一人で港まで逃げれる?無理ならどこか物陰に隠れておいて」
アイラは立ち上がると新しい相棒を構える。鮮血に染まりたくてうずうずしている血に飢えた相棒を制しながらその顔に笑みを浮かべた。一体相棒はクルペッコ相手にどこまで戦えるのか?クルペッコに傷を負わせられるのか?クルペッコの息の根を止められるのか?緊迫した状況でアイラ自身は気持ちを引き締めているつもりだった。だというのに、どこかこの状況を楽しんでいる自分にアイラは気づかない。
「行くよ!」
「うん」「はい」
「あの、俺が一応リーダーなんだけど」
アイラ達は手近で戦っている中級ハンターに加勢する。そんな彼らを門の上から見下ろすモンスターがいた。クルペッコだ。ひとしきり様々なモンスターを呼び寄せるために鳴き終えたクルペッコは傍観していた。クルペッコはアイラに気づくと口元を緩める。
(あの小娘この前の。武器が変わっているようだが………。そうか。くっくっくそうかそうか前の系統の武器では勝てないと踏んで小ぶりのものに変えたというわけか。面白い面白い面白いぞ、娘。飽きさせないな)
クルペッコは大きく翼を羽ばたかせる。そしてアイラと激闘を繰り広げるモンスター、ドスファンゴを廃屋へと弾き飛ばしアイラ達の目の前に降り立つ。突然のことにアイラの顔には驚愕の色が浮かべる。
「久しいな、小娘」
「な、人の言葉を!?」
「当の昔にな。さぁ、楽しいゲームを始めよう」
クルペッコは咆哮を上げる。
「全員作戦通り動けよ」
「「「了解」」」
秋人は正面からクルペッコに対して切りかかった。合わせてアイラはクルペッコの死角へと回り込み、ジェイとユキは距離をとると各々身体強化の笛を吹き、遠距離から弓を射抜く。クルペッコは一度に四人の動きを捉えることができない。加えてアイラ達がお互いの距離を考えて動いているため、クルペッコにとっては非常に厄介だった。
不利と見たクルペッコは大きく後ろに飛ぶ。そして考えを巡らせる。
(厄介なものだ。さてどうしたものか)
クルペッコは後ろに後ろにと下がる。追撃するアイラと秋人。
「二人とも行き過ぎです!」
二人は夢中で後衛との距離ができたことに気づくのが遅れた。
前衛と後衛の距離が離れ、笛の効力は薄くなり弓の射程外に出た。
好機。クルペッコは攻めに転じた。
地面を踏み込むと秋人との距離をつめ、口を大きく開く。
走り出した人は急には止まれない。今更ブレーキをかけたところで止まれない。秋人の目の前にはクルペッコの無数の鋭利な歯が顔を覗かせていた。
「秋人!」
避けることは不可能に等しかった。
鮮血が辺りに飛び散る。
「何!?」
驚きの声を上げたのはクルペッコだった。
なんと秋人は回避不可能と思われていた攻撃避けてみせたのだ。それだけではなくクルペッコの頭部に傷を負わせた。クルペッコ大きく大きく距離をとった。
「いやー、危なかった危なかった。今頃体に穴という穴を増やされてるところだったぜ。ん?おいおいどうしたよクルペッコさん。そんな驚いたような顔を浮かべて。何が起こったかわからないってか?簡単だよ。お前がモンスターと思えない知能を持ち合わす特殊なモンスターなら俺は特殊な人間ってだけだ」
神代秋人。この世界らしからぬ名を持つ者。彼自身が特殊な人間である部分は脳にあった。秋人の脳は自身が危機的絶体絶命的状況に陥ると活性化し、その働きを通常の何倍何十倍にも跳ね上げる。結果として秋人の目にはスパースロー映像のような景色が広がり、無意識に体が最善の動きで攻撃を避けカウンターを加えたのだ。
「さぁゲームを楽しもうぜ」
秋人は不適に笑った。