また次回、次々回で完結する予定なので待たせる形になってしまいますが、ご了承ください。では楽しんでください。
向かい合うは二人のハンターと一匹のモンスター。一人はレウスシリーズで全身を包み、その特殊な身体能力で獲物の剣先をクルペッコの体液で染めたクルペッコ自身と肩を並べるほどの実力の持ち主神代秋人。一人は戦闘経験を踏まえ、新たな武器新たな装備で格段に強敵へと変貌した少女アイラ。それに加え、後衛には弓使いと笛使いが待機している。数的優位はハンター側にあった。
クルペッコは圧倒的不利な状況に半ば焦りつつも、この状況を大いに楽しんでいた。クルペッコはあえて鳴き真似をしてみせる。これには様子見の意味合いが込められていた。クルペッコが発した声音は優しい少年の、でもどこか聞き覚えのある、そんな声だった。
「アイラさん下がって!秋人さんクルペッコの攻撃が来ます」
戦闘中クルペッコが一番耳にした声が狩猟笛のジェイの声だった。これで動きに迷いが浮かれ攻撃のチャンスが生まれるかに思えた。しかしアイラも秋人も下がろうとはせず、そのままクルペッコに切りかかる。間一髪でクルペッコは斬撃を避けてみせる。
(む、聞かぬか。後衛の指示を聞くことをやめたか、あるいは本当に聞こえていないか)
戦闘が開始してから既に数十分近くの時が経過していた。その間クルペッコは一度の攻勢以外はすべて守りに徹していた。それもハンターたちの手数の多さに翻弄されていたからだ。前衛の攻撃をかわしカウンターを仕掛けようとすると、後ろから飛んでくるは的確に射抜かれた弓矢。後衛をつぶそうと距離を詰めるとユキをかばうようにしてジェイが狩猟笛を振り回し、死角から追いついた秋人とアイラの斬撃が襲う。思った以上に数的優位がクルペッコの動きを制限している。
しかし心なしか人の喧騒よりかモンスターの咆哮を耳にする。
どうやら全体的にモンスター側が押しているようだ。村を押さえるのも時間の問題だろう。とクルペッコは思考を巡らせる。
ならばとクルペッコが次に真似たのは大地を震え上がらせるほど巨大な咆哮。方向から発生した衝撃波で辺りの瓦礫は吹き飛び、クルペッコの周りはぽっかりと瓦礫の穴が開いたかのように地面が顔を出す。
アイラと秋人は大きく距離をとると身構える。空気が震え、地面が震え、全身をしびれが包む。クルペッコが咆哮し終えたというのに揺れは止まる気配を見せない。それどころかどんどんと揺れが大きくなるように感じた。
まずい。これは揺れではない。秋人が気づく。
しかし時すでに遅し。壊れた廃屋を破壊して現れたのはティガレックスだった。
ティガレックスはアイラと秋人を吹き飛ばすと辺りを見渡す。そして一匹のクルペッコに気づく。ティガレックスはクルペッコを目の片隅に置くとハンターとクルペッコを見比べ、そしてハンターたちに襲い掛かった。クルペッコとは比べ物にならない圧倒的暴力が二人を襲う。
とっさに盾を構えたものの、足の堪えが足りずアイラは家壁に叩きつけられた。
突如現れたティガレックスの存在によって形勢は逆転した。加えて突進によって前衛のアイラと秋人は大きな深手を負う。深手といっても戦闘は続行できるほどのものだ。しかしクルペッコならまだしも、万全でもティガレックスが相手では勝ち目はない。
いま考えることのできるもっとも最善な手は一つ。撤退だ。しかしこれには問題がある。全員で島から脱出しようにもティガレックスを撒けるほどの手段は持ち合わせてはいない。全員は逃げられない。誰かティガレックスを食い止めなければ。
秋人は考えた。そして答えを口にする。
「撤退だ。アイラ、ジェイとユキを連れて港まで走れ」
「秋人はどうするの!?」
「お前らが逃げた後にすぐ追いつく。任せろ、女を抱くまでは死ぬ気ない」
「そんなこと言っても、今の状況じゃ………ひとりで二匹を相手にするなんて無茶だよ!私も残る」
「お前じゃ足手まといだ!無駄死にして結局全滅する。いつ奴らが攻撃してくるかわからないんだ!いいから早く行け!」
秋人は怒声交じりにアイラに言った。
「分かった。絶対戻ってきてよね」
アイラは秋人の背を見つめ、その瞳にたまる涙をふくと走り出した。
ユキは抵抗し何度も何度も秋人の名を呼び、彼の下に向かおうとする。そんな彼女をジェイとアイラは必死に抑え、連れていく。
残った秋人は溜息を吐くと太刀を構えた。
「なぁ、クルペッコ。聞きたいことがある。一つ冥土の土産に聞かせてくれないか。なぜお前達、いやお前はこんなことをするんだ?」
「なぜだと?愚問だな。お前達ハンターが理由もなくこちらに危害を加えたからに決まっておろう。ここは本来我々自然界に生きる者の楽園だったというのに、人々が住まい初めてからいつしか自然界のバランスが崩れ始め、ハンターたちがのさばるようになった。ここにいる者達は皆、子を父を母をハンターに狩られた者達だ。彼らもそして我も我慢の限界だったのだ。皆復讐の一心で我の呼びかけに応じ、今この場に集ったのだ。この現状は誰でもないお前たちが招いたものだ人間」
「………そうか」
秋人は咆哮を上げティガレックスへと切りかかっていくのだった。
アイラは島を後にした。船には秋人の姿はなかった。