絶華   作:雨守学

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第2話

「「独立試験」ですか……」

 

本部からの呼び出しで、俺と山岡は「街」の喫茶店に来ていた。

 

「紅茶です」

 

「ありがとう、榛名」

 

榛名はニコッと笑顔を見せてから、カウンターの方へと戻っていった。

 

「この「街」で働いている艦娘は、「独立試験」を経て、同伴無しでここに来ているのだ」

 

「つまり、その「独立試験」とやらに受かれば、一人で「街」に来ることが出来ると」

 

「そう言うことだ。最初は働く艦娘のみを対象としていたが、駆逐艦や軽巡にも、一人で「街」へ来ることの出来るような年頃の艦娘がいるだろう」

 

「駆逐艦の方は知らないが、軽巡はほとんどの艦娘がそうだな」

 

「うちの寮だと、吹雪がそうかもしれません」

 

「本部は、すべての艦娘に受験資格を与えることを決定した。試験内容は、筆記試験と、実際に「街」へ出る実技試験だ」

 

独立試験用のテキストには、社会常識やマナーなどが書かれていた。

 

「俺たちでも解けるか不安だな」

 

山岡がそう茶化すと、奥の榛名もくすくすと笑っていた。

 

「君たちの寮でも、このことを周知してほしい。多くの艦娘が合格することによって、国民に艦娘が安全だとアピールすることが出来るのだ。頼んだよ」

 

 

 

寮に帰る途中、山岡と試験の件について話した。

 

「うちの艦娘たちも、一人で「街」に行きたいとうるせぇんだ」

 

「軽巡くらいの年頃だとそうだろうな」

 

「試験の合格率は六割と、数字だけ見れば高めだが、内訳はほぼ戦艦だ。あいつらは終戦直前まで、この計画の為に動いていたらしい。それでも六割だ。これを高いと取るか、低いと取るか……」

 

貰ったテキストを見ると、選択問題ではなく、全てが筆記であり、中々難しく仕上がっている。

これを駆逐艦が解けるものだろうか……。

 

「艦娘を社会に出すということが、どれだけ難しいことなのか、改めて知ったぜ……」

 

「やり過ぎだとは思うが、国民はそうしないと納得しないのだろうな……」

 

俺はあいつらの笑顔を思い出していた。

自然と拳に力が入る。

 

「ガム食うか?」

 

山岡はガムを差し出すと、ニッと笑った。

 

「ああ……ありがとう……」

 

「そう力むなって。そんな顔してあいつらに会うのか?」

 

そう言って俺の肩を揉むと、そのまま前に放った。

 

「疲れた顔してっと、あいつら心配するぜ。俺を見ろ。誰も心配しちゃくれねぇ」

 

「フッ……。お前は不真面目だからな」

 

「お前が真面目過ぎるんだ。さて、俺はこっちだ。また時間があったら「街」へ遊びにでも行こう。じゃあな」

 

山岡を見送り、俺は少しばかり疲れた体を休めてから、寮の方へと戻った。

 

 

 

帰ってすぐに、緊急で皆を集め、試験の事を説明した。

ある者は目を輝かせ、ある者は面倒くさそうにしていた。

 

「以上だ。受験したいという者は、申し出るように。テキストは全員に配布する。では、解散」

 

 

 

部屋に帰って早々、鹿島が受験を申し出た。

 

「提督さん、私、試験を受けます。そうすれば、提督さんがいない時に、あの子たちを連れて「街」に行くことが出来ますから」

 

「そうしてくれるか。こう言っちゃなんだが、まだあいつらには早い気がするんだ」

 

「試験も難しそうですから、尚更ですね……」

 

「お前ならすぐに受かるだろう。俺も全力でサポートする。頼んだぞ」

 

そう言って肩を叩いてやると、鹿島は満面の笑みで「はい!」と答えた。

 

「俺も勉強しておくか。将来的には、あいつらに教えないといけないだろうしな」

 

「なら、鹿島と一緒にお勉強しましょう! 朝から晩まで! 二人っきりで!」

 

「寮の仕事はどうするんだよ」

 

そんな話をしていると、吹雪がやってきた。

 

「お話し中、失礼します」

 

「おう、どうした?」

 

「先ほどの試験の件なのですが、受験をしたくて……」

 

あのテキストを見て尚、受けようと思ったのか。

 

「とりあえず、あがったらどうだ?」

 

「はい、失礼します」

 

靴を揃え、そっと正座で座り込んだ。

 

「俺たちもその件で話していたところだ。テキストは読んだか?」

 

「はい。とても難しそうな内容でしたけど……受けてみようかと」

 

「吹雪さんは、どうして受験を? 一人で「街」に行きたいとかですか?」

 

「それもあります。けど、これは外の世界に出るのに必要な事だと思いましたので……」

 

外の世界に必要な事……か……。

やはり吹雪くらいになると、その辺りの事情というのは、ちゃんと理解しているのだな。

そして、ちゃんと俺たち側に歩み寄ってくれている……。

 

「分かった。ちょうど鹿島も受けることだし、俺も勉強しようと思っていたところだ。出来ることはなんでもするつもりだ。合格へ向けて頑張ろう」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

それから、勉強の日々が始まった。

吹雪は学校から帰宅してすぐに勉強を始め、夕食や入浴以外の時間は、ほとんどそれに費やした。

 

「失礼します。司令官、今日もお願いしてもいいですか?」

 

「おう、いいぞ。今、鹿島と勉強していたところだ」

 

時折、吹雪は俺の部屋に訪れ、共に勉強に励んだ。

 

「算数の問題も出るんですね……。学校では少し習いましたが、まだ完璧ではなくて……」

 

「じゃあ、イメージしやすいように絵で表現してみるか」

 

「提督さん、私、結構絵が上手なんですよ」

 

「では、鹿島に描いてもらおうか。まずは……」

 

他の駆逐艦たちも気になるのか、ちょくちょく俺たちの勉強を覗いては、一緒に考えたりしていた。

吹雪も他の駆逐艦に教えていたりして、それによって気づくこともあったようだった。

 

「いい傾向ですね」

 

「ああ。俺が思っていたよりも早く、こいつらは一人で「街」に行くことが出来るかもしれないな」

 

その言葉の通り、吹雪と鹿島は、筆記の模擬試験で合格点をたたき出すほどまで成長した。

そして、受験日まであと数日となった頃、実技試験の予行練習として、俺と吹雪は「街」へと出かけることとなった。

 

 

 

「お待たせいたしました!」

 

寮から出てきた吹雪は、少しばかりおしゃれをしていた。

 

「あれ、いつものマイクロバスは……」

 

「今日はお前一人だから来ないよ。俺の車で駅まで行く」

 

「司令官の車ですか!?」

 

「不満か?」

 

「いえ! その逆です! とても嬉しいです!」

 

吹雪は本当に嬉しそうに喜んでいた。

何がいいんだか。

 

「それじゃあ早速向かおうか」

 

「はい!」

 

 

 

駅までの道中、吹雪は助手席で、車窓からの景色も見ず、ずっと俺の運転する姿を見ていた。

 

「ずっと見られていると気が散るよ」

 

「すみません。でも、懐かしくて。あの頃を思い出します。えへへ」

 

「そうか。あの頃にはもうこの車だったな」

 

「覚えてますか? この車に乗せたのは、お前が初めてだって言ったこと」

 

「そうだったかな」

 

「覚えてないんですか!? 私は鮮明に覚えているのに……」

 

「冗談だよ。覚えてるに決まってるだろう。初めてお前と話したのも、その時だったな」

 

「懐かしいですね……」

 

「ああ……」

 

今の俺がこうあるのも、ある意味では吹雪のお陰なのかもしれないな……。

 

……

………

…………

 

俺が初めて艦娘の誕生を見てからしばらく、本部からの要請で、艦娘の教育係を任されることになった。

 

「私がですか……」

 

「そうだ。君にはいずれ、艦娘を指導する立場の人間となってもらう。その第一歩として、まずはこの前誕生したばかりの艦娘に指導をしてみたまえ」

 

「しかし……私は初めてで……」

 

「艦娘に対しての教育は、君も受けているだろう。知っての通り、私たちも手探り状態なのだ。君なりの教育を見極めるという意味でも、ここは協力してほしい」

 

「かなり重要な任務な気がしますが……」

 

「そう言っている」

 

「……分かりました。最善を尽くします」

 

「いい返事だ。では、君の指導する艦娘を紹介しよう。吹雪、入ってきなさい」

 

俺は、その時の光景を今でも忘れない。

セーラ服に身を包んだその少女は、どこか不安そうな表情で俺を見つめていた。

 

「君は吹雪の誕生に立ち会ったそうだね。これも何かの縁だ。頼んだよ」

 

「……はい」

 

 

 

買ったばかりの車は、まだ新車特有の匂いがしていた。

 

「…………」

 

「…………」

 

気まずい。

吹雪は車窓の景色ばかり見ていて、一言も話さなかった。

俺も何を話していいのか分からなかったし、そもそもコミュニケーションをとれる奴なのかも分からなかった。

……とりあえず、独り言のつもりで話してみるか。

 

「……この車……買ったばかりでさ……。まだ誰も乗せたことが無いんだ。お前が初めてだ」

 

俺が話し始めると、吹雪は車窓から目を離し、前に向いた。

返事は無かったが、話は聞いてくれているようであった。

 

「それからさ……それから……」

 

やがて話題は尽き、俺は椅子に深々と座った。

 

「悪い……つまらない話だったか……」

 

そして、がっくりと肩を落とした。

艦娘の指導か……。

重要な任務を任されたのは嬉しいことだが、こんな感じでは、期待に応えることが出来るのはいつになることやら……。

 

「そ……な……です……」

 

「え?」

 

反射的に聞き返したが、吹雪が何か話しかけて来たのだと理解するまでには時間がかかった。

それほどに驚き、思わず吹雪の方を向き、固まってしまった。

 

「あ……ま、前!」

 

「え? うお!?」

 

間一髪でハンドルを切り、何とかカーブをやり過ごすことが出来た。

 

「す、すまない……。びっくりしてしまったもんで……」

 

「い、いえ……私こそ……急に話しかけてしまって……」

 

しばらくの沈黙が続く。

 

「……ちゃんと、話せるのだな」

 

吹雪は先ほどと違い、どこか申し訳なさそうにしていた。

 

「さっき……何か言おうとしていたようだが……」

 

「…………」

 

「…………」

 

俺は車を停め、吹雪に向いた。

 

「吹雪」

 

名前を呼んでやると、吹雪は反射的だったのか、俺に向いてくれた。

 

「頼む……聞かせてくれ……。車は停めたから、話しても大丈夫だ」

 

少し驚いた表情を見せた後、吹雪はゆっくりと話し始めた。

 

「そんなことないです……って……言いました……」

 

「え?」

 

「お話……つまらないって……。私は……つまらなくなかったです……。むしろ……お話してくれるなんて……思ってなくて……嬉しかった……です……」

 

そう言うと、小さく笑って見せた。

 

「そんなに印象が悪かったか?」

 

「いえ……そうじゃないんです……。私は艦娘で……言うならば兵器です……。兵器に話しかけてくれる人なんて……いると思ってませんでしたから……」

 

兵器……。

 

「だから……黙っていたんです……。でも、貴方は私に話しかけてくれた……。私の言葉を求めてくれた……。私の名を呼んでくれた……。それが……とても嬉しくて……」

 

俺はその時――それはどこから来た感情なのかは分からないが、こいつを守ってやりたいと思った。

そしてそれは、艦娘というものに人と同じ心があると確信したのと同時だった。

 

「お前が兵器だろうが何だろうが、人間と同じ心を持って生まれたのなら、それを差別することはしないよ」

 

「心……」

 

「嬉しいとか、悲しいとか、そう言う気持ちを持てるのは、心があるからだと思う」

 

それを聞いた吹雪は、自分の胸にそっと手をあてた。

 

「心って……ここにあるものでしょうか……?」

 

「誰かにそう教わったのか?」

 

「いえ……」

 

「では、どうしてそこだと?」

 

「ここがキュッて……なったからです」

 

そう言うと、吹雪は目を瞑り微笑んだ。

 

「貴方が私に話しかけてくれた時、ここがキュッてなったんです。きっとこれが、心が嬉しいと感じた時になるものなんだと思いました」

 

「吹雪……」

 

俺はずっと、艦娘というものに対して、全く別の世界の生き物だと思っていた。

人間とは違う「なにか」だと。

だけど、こうして話してみると、俺たちは何も違わないじゃないか。

嬉しいとか、悲しいとか、心の在りかも、心の在り方も、何も変わらないじゃないか。

 

「……あの、ありがとうございます。兵器の私に、こんなにお話してくれて……」

 

「吹雪」

 

「はい」

 

「もう、自分の事を兵器と言うな」

 

「え?」

 

俺は静かに車を走らせた。

 

「でも、私は戦うために生まれて……」

 

「それは昔の話だろう。今……このように生まれて、心を持ったのなら、そう考えてはいけない。お前はお前の為に生きるんだ」

 

艦娘を指導する者として、こんな話をしてはいけない。

だが、もうそんな事は構わなかった。

 

「……それでも戦うというのなら、俺も戦う。お前たちと共に戦う。それで平等だ」

 

吹雪は、何と言ったらいいのか分からないようであった。

 

「……混乱させるようなことを言って悪かった。どうやら俺は、艦娘を指導する人間にはなれそうにない……。本部へ戻ろう……。辞退させてもらえるように頼んでみる……」

 

車をUターンさせようとすると、吹雪がそれを止めた。

 

「吹雪……?」

 

「私は……戦うために生まれてきました……。貴方の言うように……自分の為に生きるというのは……私にとっては、戦うことなんです……」

 

「…………」

 

「でも……それ以外にも私が……私の為に生きることが出来る道があるなら……教えて欲しいんです……!」

 

「吹雪……」

 

「知りたいんです……。心を持って生まれてきた意味を……ただの兵器じゃなく……艦娘として生まれてきた意味を……! 貴方となら、見つけることが出来る気がするんです……!」

 

それが吹雪の本音だった。

自分の存在意義を知りながら生まれ、それに必要のない「心」というものの存在に、動揺した事だろう。

それでも、人の為、国の為に戦おうと、必死に心を殺していたのだ。

 

「だから……私といてください……。お願いします……」

 

俺を引き留めるその手は、小さく震えていた。

まるで、助けを求めるかのように――。

 

…………

………

……

 

「あれから結局、俺たちは戦うことを強いられて、生まれて来た意味について答えを出すことが出来なかったな……」

 

「でも、あの言葉があったからこそ、私はただの兵器じゃなく、艦娘として活躍することが出来たんだと思います。司令官のお陰です」

 

俺が照れくさそうにしていると、吹雪はくすくすと笑った。

 

「司令官は、人間と艦娘の間に違いはないんだって、教えてくれました。人間が生まれた意味を追い求めるように、艦娘である私たちが生まれた意味も、きっとあるものではなくて、同じように追い求めるものなんだと思います。司令官はあの時、そのことを言ってくれていたんですね。今になって気が付きました」

 

「終戦となった今、そのことをもって、今度こそお前だけの答えを見つけてくれ。応援しているよ、吹雪」

 

「司令官……はい!」

 

遠くに、小さな駅が見えて来た。

 

「今は試験の事に集中しよう。考えるのはその後でもいいだろう」

 

「そうですね。えへへ、司令官と「街」へお出かけ。楽しみです」

 

「勉強だってことを忘れるなよ」

 

「分かってますよ。でも、ちょっとくらいは楽しんでも、罰はあたらない……ですよね?」

 

吹雪は何かを期待するような目でこちらを見ていた。

 

「榛名さんの喫茶店、今日も営業しているみたいです。ケーキがすごく美味しいそうですよ」

 

「フッ……分かったよ。その代わり、ちゃんと試験、合格するんだぞ」

 

「もちろんです! 吹雪、全力で参ります! えへへ」

 

全く……本当に分かってるのだろうか……。

 

「楽しみですね、司令官」

 

でもまあ、たまには悪くないか。

 

 

 

「街」に着いた俺たちは、テキスト片手に注意点などについて話して回った。

吹雪が受験することを知っていた「街」で働く艦娘達は、吹雪を見つけるとすぐに声をかけ、エールを送った。

 

「皆、お前を応援してくれているな」

 

「とても嬉しいですけど……うぅ……プレッシャー感じちゃいます……」

 

「そんなもの感じなくていいんだ。皆、純粋に応援してくれているだけなんだから」

 

「そうですけど……」

 

「仕方ない。リラックスするために、榛名の喫茶店に行ってみるか?」

 

「行きましょう!」

 

「現金な奴だな、お前も……」

 

それから結局、受験勉強そっちのけで「街」を楽しんだ。

こんなことで大丈夫かと心配していたが、数日後の筆記試験で、吹雪と鹿島は高得点で合格し、実技試験への切符を軽々と手にしたのであった。

 

 

 

「いよいよ明日だな」

 

実技試験の前日。

最後の見直しの為に、鹿島と吹雪は俺の部屋を訪れていた。

 

「筆記試験の時もそうでしたが、実技試験はもっと緊張しちゃうかもしれません……。提督さん、何か緊張しない方法ありませんか?」

 

「お前が緊張することなんてあるのか」

 

「私をなんだと思ってるんですか!? もう……」

 

「悪い悪い。でも、そうだな。緊張をほぐす方法は人それぞれだが、俺の場合は深呼吸するかな」

 

「深呼吸ですか。いいですね。真似しても?」

 

「別に構わないが……」

 

「えへへ、提督さんと同じ方法なら、それだけで緊張がほぐれそうです」

 

「お前、絶対緊張してないだろ……」

 

ふと、吹雪の方を見ると、どこか辛そうな表情をしていた。

 

「吹雪、大丈夫か?」

 

「え……? あ、はい。大丈夫です」

 

「お前も緊張しているのか? 心配するな。お前なら出来ると」

 

「いえ……ちょっとお腹が痛くて……」

 

「お腹が? 大丈夫ですか? なにか変なものでも食べちゃいましたか?」

 

「もしかしたら、受験ストレスかもしれないな。今日はもう休んで、明日万全の態勢で臨んだ方がいい」

 

「そうします……。ありがとうございました。お休みなさい……」

 

吹雪はお腹を押さえながら、部屋を出て行った。

 

「大丈夫でしょうか……」

 

「少し心配だな……。筆記試験の時もああだったか?」

 

「いえ、むしろやる気に満ちていました。昨日までは元気だったんですけど……」

 

「…………」

 

ここに来て体調が悪くなったか……。

夜遅くまで勉強していたようだし、今までのつけが回ってきたのかもしれないな。

大丈夫だろうか……。

 

 

 

そんな心配を抱えつつ、ついに実技試験日を迎えた。

 

「失礼します」

 

本部の休憩スペースには、山岡が一人いるだけだった。

 

「なんだ、お前だけか」

 

「俺だけだ。本部の連中は皆、会場にいるらしいぜ。俺たちは保護者なのに、こんなところでしか見れないなんて、おかしいよなぁ」

 

「まあ、却っていいんじゃないか? 気を遣わないで済むし」

 

目の前には、普段は無い大型のテレビが置かれていて、そこに「街」のリアルタイムの映像が映し出されていた。

 

「試験、まだだろう?」

 

「ああ。だが、もうすぐ一人目が始まるみたいだぜ。今回の試験、受ける8割がうちの寮の艦娘なんだぜ。優秀だろう」

 

「香取が頑張ったおかげだな」

 

「俺だって頑張ったさ。夜食を作ったんだぜ」

 

「ああそう……」

 

そんな馬鹿話をしていると、一人目の試験が始まった。

 

「見ろ、うちの龍田だ。ハハハ、あいつ、緊張してやがる」

 

あの龍田が緊張……。

ますます吹雪の事が心配になってきたぞ……。

 

「実技試験は30分だ。誰がどの時間に始まるかは俺も聞いていないから、おちおちトイレにもいけねぇな」

 

なんやかんや言って、山岡も自分の寮の艦娘が気になっているんだな。

疲れた顔しても誰も心配してくれないとか言ってたけど、それはそれでこいつが愛されてる証拠なのかもな。

 

 

 

試験が始まって数時間。

やっとの事で鹿島に順番が回ってきた。

 

「残りは鹿島と吹雪か。メインは、駆逐艦として初の受験生、吹雪だな。本部の連中も、それが見たくて出払ってるらしいぜ」

 

「そうだったのか」

 

なるほど、そりゃ緊張もする。

気が付いてやれなかったな……。

 

「ん? おい、鹿島の奴、何だか元気がないようだぜ?」

 

「え?」

 

テレビを見ると、鹿島の表情がアップされていた。

確かに、どこか元気がなさそうに見える。

 

「緊張してるのか?」

 

「いや、そんな表情には見えないが……」

 

その時、休憩室に設置されている電話が鳴った。

 

「俺が出る」

 

山岡は電話に出ると、椅子に深く腰掛け、足を組んだ。

電話をする時に出る、山岡の悪い癖だ。

 

「もしもーし、こちら休憩室。おう、飯田ちゃんじゃん。元気? え? おう、目の前にいるぜ。ちょっと待ってな」

 

電話を保留にし、山岡は俺に受話器を渡した。

 

「飯田ちゃんからだ。愛の告白かもしれねぇぜ」

 

「馬鹿言え」

 

飯田か。

懐かしいな。

一つ下の後輩で、中々ガッツのある女性だったのを覚えている。

 

「もしもし」

 

『お久しぶりです、先輩』

 

「ああ、久しぶりだな。どうした? なにか急用か?」

 

『はい、実は――』

 

 

 

「街」の駅の反対側に、小さなテントが立っていて、その前で飯田が大きく手を振っていた。

 

「先輩、お久しぶりです」

 

「飯田。吹雪の様子は?」

 

「今、テントの中で休ませています。後で医療班が来ますので、詳しく見てもらう予定です」

 

「そうか……」

 

テントの中をチラリとみると、吹雪がスヤスヤと眠っていた。

 

「先輩、ちょっと……」

 

飯田に連れられ、テントから離れた。

 

「電話で話した件ですけど……」

 

「ああ……。まさか、吹雪が生理になるとはな……」

 

飯田によれば、鹿島から、吹雪がトイレから戻って来なく心配だと相談があり、様子を見に行ったら、個室で蹲っていたそうだ。

どうしたのかと聞いてみると――。

 

「すぐに生理だって分かりました。艦娘が生理になったという事例は無く、吹雪さんが初めてです。度々議論はされてましたけど……」

 

確かに、一度だってそんな話は聞いたことがない。

解体し、人間となった体では、高速修復材が効かなかったりはしたが、まさか生理までとは……。

 

「これってつまり、艦娘も、人間と交配することによって、子供を作ることが出来るってことですよね……」

 

「そうなるな……」

 

「不思議です。こうなると、今の艦娘と人間の違いは、生まれ方だけになりますね……」

 

生まれ方だけ……か。

確かに、ここまでくると、本当に人間と何も変わらない。

もっと精神的な意味で、艦娘と人間に違いは無いと思ってきたが……。

 

「吹雪さんの試験ですが……残念ながら……」

 

「そうか……。吹雪には言ったのか?」

 

「いえ……。でも、本人は失格になることを覚悟していたみたいです……」

 

俺はもう一度、テントの方を見た。

あいつの努力を知っているからこそ、心が痛くなった。

 

 

 

翌日になると、全艦娘が一斉に本部に呼び出された。

体の変化についての話があり、その対策についても説明されたようであった。

 

「吹雪さんは、一週間ほど本部の預かりになるそうです」

 

「そうか……。そう言えば、合格したそうだな。おめでとう、鹿島」

 

「ありがとうございます」

 

だが、その表情に喜びは無かった。

 

「……吹雪の事は心配するな。本部へは、ちょくちょく様子を見に行ってくる」

 

「はい……」

 

「そんな顔するな。今は、お前が合格したことを祝おうじゃないか。ほら、榛名に頼んでケーキをホールで作って貰ったんだ。他にも「街」で色々買ってきた。一緒に食べよう」

 

「提督さん……はい!」

 

 

 

消灯後、鹿島と静かに祝賀会を開いた。

 

「提督さん、お酌しますよ」

 

「よせ。お前の祝賀会だ」

 

「させてください」

 

「……分かったよ」

 

そう言えば、昔もこんなことがあったな……。

鹿島もそれに気が付いたのか、くすくすと笑いだした。

 

「覚えてますか? 前にもこうして、お祝いしてくれたこと」

 

「ああ。お前の誕生日の時だろう。艦娘は誕生日が無いから寂しいとか言いだしたから、飯田に頼んでケーキを作って貰ったんだ。お前の進水日にな」

 

「あのサプライズにはびっくりしました」

 

「お前、ずーっとビービー泣いてたよな」

 

「だって、凄く嬉しかったんですよ? 泣いちゃいますよ」

 

あれ以降は忙しくて、全然祝ってやれなかったな。

これからは戦時中ほど忙しくならないだろうし、寮の駆逐艦含め、誕生日ってものを意識させてやるのも悪くないな。

 

 

 

夜も更けてきた頃、鹿島は壁にもたれてぼうっとしていた。

 

「大丈夫か?」

 

「はい、ちょっと酔っちゃいました……えへへ……。まだお酒、慣れませんね……」

 

「無理して飲まなくても良かったんだぞ」

 

「提督さんと飲める機会なんて、滅多にないので……」

 

「それは悪かったな」

 

「いえ……。それに……少しでも提督さんに近づけたらって……」

 

そう言うと、鹿島は膝を抱えた。

 

「……今日……体の変化の事、全部説明を受けました。私も人と同じように……子供を作ることが出来るんですね……」

 

何か思うことがあるのか、鹿島はじっと、空になったコップを眺めていた。

 

「お前たちと俺たちに、もう大きな違いはないな」

 

「でも……私たちはまだ……ここにいます……。外には……出られません……」

 

俺はそれに、何も応えることが出来なかった。

 

「提督さん……」

 

「なんだ……?」

 

「隣……座ってもいいですか……?」

 

その目は、あの日の吹雪と同じものであった。

 

「……ああ、いいよ」

 

鹿島は立ち上がると、俺の隣に座った。

そして、そっと寄り添った。

 

「提督さん……」

 

「なんだ?」

 

「提督さんは……鹿島の事……どう思ってるんですか……?」

 

「どうって……?」

 

「私は……飯田さんとは違いますか……? 艦娘の事……どう思ってるんですか……?」

 

何故飯田の名前が出てくるのか分からないが、やはり鹿島も吹雪と同じような事を思っているのだろうか……。

 

「お前に限らず、艦娘という存在に対して、俺は差別をしない。普通の女性として接するようには心掛けているよ」

 

「じゃあ……鹿島を女として見てくれますか……?」

 

それを聞いて、俺はやっと鹿島の言いたいことが理解できた。

だから飯田の名前が出たのか……。

 

「酔い過ぎだ」

 

「はぐらかさないでください……。またあの時みたいに泣きますよ……?」

 

「勘弁してくれよ」

 

沈黙が続く。

 

「……私が艦娘だから……そういう対象に見れないってことですか……?」

 

「違うよ。そうじゃない」

 

「じゃあ単純に、女性としての魅力がない……とかですか……?」

 

「そうでもない」

 

「なら……」

 

「……正直、お前の気持ちを知って、戸惑っているだけだ。俺は恋とか愛とか、そう言うものに疎いんだ」

 

「…………」

 

「これくらいで勘弁してくれ。今日は祝賀会だろ?」

 

鹿島は頬を膨らませると、より深くこちらに体を預けた。

 

「もう寝るか?」

 

「このまま寝かせてください……」

 

それは鹿島のささやかな抵抗だった。

 

「ああ、いいよ」

 

だから、それがあっさり受け入れられて、鹿島はつまらなそうな表情を見せた。

 

「お休み、鹿島」

 

しばらくすると、鹿島はスゥスゥと寝息を立て始めた。

 

「…………」

 

女として……か……。

そうだよな……。

そういう風に見られたいよな……。

もう、立派な女性なんだから……。

 

「駄目だな……俺は……」

 

まだどこかで、俺はこいつらを人と違う何かだと思ってしまっているのかもしれないな……。

 

 

 

「すみませんでした!」

 

翌朝、鹿島は起きてすぐに頭を下げた。

 

「私、酔っ払ってて……それで、提督さんに変なことを……」

 

「いや、構わない。お前の気持ちを理解できたし、いい勉強になったよ」

 

「でもでも……うぅ……恥ずかしいです……」

 

「とにかく……改めておめでとう。これから大変だろうが、お互いに乗り越えていこう。俺もその……なんだ……女心とやらを勉強してみるよ。お前が近づいてくれるなら、俺もそうしたい」

 

「て、提督さん……うぅぅ……」

 

「お、おいおい……何泣いてるんだ……」

 

「だっでぇ……」

 

鹿島が泣いていると、何事かと駆逐艦たちが部屋を覗いてきた。

 

「あー! 司令官、鹿島さんを泣かしてるー!」

 

「本部へ連絡するぴょん!」

 

「ほら、誤解されてるから。な?」

 

「うぅぅ……はい……ごめんなさい……」

 

 

 

鹿島を泣き止ませ、駆逐艦たちの誤解を解いた頃には、もうお昼を回っていた。

 

「やれやれ……やっと片付いた……」

 

「ご迷惑をおかけしました……」

 

「これから吹雪の所に行こうと思う。留守番を頼めるか」

 

「大丈夫です。吹雪さんに会ったら、これを渡してもらえませんか?」

 

それは、みんなで折った千羽……とまではいかない紙鶴の束と、吹雪への手紙であった。

 

「大げさだな。病気じゃあるまいし」

 

「まだみんな、よく分かってないんですよ。でも、可愛げがあっていいじゃないですか」

 

「そうだな。あいつもきっと喜ぶよ。それじゃあ行ってくる」

 

 

 

本部に着くと、飯田が出迎えてくれた。

 

「先輩」

 

「飯田、お前、本部にいたのか」

 

「先週からここに」

 

「出世したな」

 

「いえ、まだまだです。吹雪さんに会いに来たんですよね。案内します。こちらです」

 

 

 

吹雪は集中治療室のような場所にいた。

 

「随分大げさだな」

 

「ですよね。でも、上が決めたことですから」

 

飯田はカードキーを差し込み、何やらパスワードを打ち込んだ。

 

「これで良し……。私はここまでにしておきます。吹雪さん、先輩と話したがってましたから」

 

「気を遣わせて悪いな。行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

重い鉄の扉を開くと、真っ白な部屋の中の真っ白なベッドの上に、吹雪は居た。

 

「吹雪」

 

「司令官……!?」

 

「調子はど――」

 

言い終える間もなく、吹雪はベッドから飛び降りると、俺に抱き着いた。

 

「吹雪……?」

 

「司令官……司令官……」

 

その体は震えていた。

 

「……怖かったのか? もう大丈夫だ」

 

吹雪を落ち着かせ、再びベッドに寝かせた。

 

「これ、皆からだ」

 

手紙や折鶴を渡してやると、吹雪は少しばかり元気を取り戻した。

 

「調子はどうだ? 本部の連中に、変な事されてないか?」

 

「調子はいいです。本部の方には良くしてもらっています。飯田さんには特に」

 

飯田は艦娘から人気だったからな。

同じ女性として、相談する奴も多かったし。

 

「……試験の事、聞きました。ごめんなさい……」

 

「何故謝る」

 

「だって……あんなに面倒を見てもらったのに……私……」

 

「俺の事はどうでもいい。むしろ、お前がショックを受けていたらどうしようかと心配していた」

 

「…………」

 

やはりショックだったのか、吹雪の表情は曇った。

 

「吹雪……」

 

「……司令官と、同じ世界が見たかったんです」

 

「え?」

 

「司令官は私達の立場を理解してくれて、同じ目線に立ってくれてます。でも……私達はまだ、司令官と同じ目線までたどり着けなくて……」

 

「そんなこと、気にする必要はない」

 

「でも……!」

 

吹雪は俺の袖をつかむと、顔を真っ赤にして俯いた。

 

「吹雪……?」

 

「でも……そうじゃないと……司令官がどこかに行ってしまいそうで……。私は……その……変な意味じゃなくて……司令官が好きで……一緒にいたいと思ってて……」

 

そうか……。

初めて話したあの時も、試験を受けたいと言い出した時も、全ては――。

 

「俺はどこにもいかないよ。むしろ、お前がどこかに行ってしまうのではないか?」

 

「私だってどこにも行きません!」

 

「分からないよ。外の世界は、こんな狭い場所とは比較にもならないくらい、お前にとって魅力的なもので溢れているんだ」

 

「でも……」

 

「言っただろう。お前の為に生きろって。お前がそうしたいのなら止めないけど、焦る必要はないってことだ」

 

「司令官……」

 

吹雪はきっと、無意識の中で、親という存在を求めているのかもしれない。

だから俺を――。

 

「お前が外に出るまでは、俺が傍にいてやる。親のかわりのようなものだ」

 

「出来ることなら……一緒に外の世界を見たいです……」

 

「そうだな……」

 

今はそう思っていても、きっと、子供が親元を離れるのと一緒で、いつかは――……。

……って、何を寂しがっているんだ俺は……。

 

「早く戻ってこい。皆も……その……俺も寂しく思っているよ」

 

そう言って撫でてやると、吹雪はその感触を確かめるように、目を瞑った。

 

 

 

部屋を出ると、飯田が出迎えてくれた。

 

「ずっと待っていたのか」

 

「はい。先輩とお話したくて……」

 

そう言うと、飯田は近くのソファーに座り、缶コーヒーを差し出した。

 

「ありがとう」

 

廊下はとても静かで、俺たちしかいないようであった。

 

「吹雪さん、先輩の話をずっとしてました。まるで想い人みたいに」

 

「今日話してみて、あいつは俺を親のようにみているんだと思った。今は慕ってくれているけど、外の世界に出たら、きっと俺の事なんざ忘れてしまうのだろうな」

 

「先輩、何だか寂しそうですね」

 

「馬鹿言え」

 

窓からは中庭が望めて、整った芝生の中に、小さな木が立っていた。

 

「……今回の件で、艦娘が子供を産めることは分かりました。それに伴って、艦娘が人間に恋をする可能性があることも分かりました」

 

「恋?」

 

「はい。恋は、繁殖機能を備えているという条件がないと成り立たないと思うんです。今回、人間と同じ繁殖機能を持った艦娘は、人間への恋というものを知る可能性が高いです」

 

「なるほど……」

 

「吹雪さんのように、今まで親代わりとして人間を見て来た艦娘の気持ちが、恋というものに昇華する可能性はとても高いです」

 

こういう話を聞いてしまうと、艦娘と人間の溝が深いという奴の気持ちが良く分かる。

共感は出来ないが……。

 

「ある程度歳を重ねた艦娘なら、そう言った感情の変化に対応出来るかもしれませんが、先輩の寮の艦娘達は、きっと戸惑うことだと思います」

 

「ああ……そうかもしれないな……」

 

思えば、吹雪が顔を真っ赤にしていたのも、そのせいかもしれないな……。

すると、鹿島の気持ちも――。

 

「先輩の仕事は、それを正しい方へと導くことでもあります。先輩は女心が分からないから、私も協力しますよ」

 

「ありがとう。俺も今、女心について勉強中だ」

 

「え? どうして?」

 

「まあ、色々あってな……。とにかく、お前にはこれから世話になりそうだな。頼りにしている」

 

「はい! で、先輩。その色々って何ですか?」

 

「色々は色々だよ。言えない事だ」

 

「好きな人でも出来たんですか?」

 

「そうじゃあないが……」

 

「じゃあなんです? 先輩?」

 

「とにかく言えない事だ。今日はありがとう。また会おう」

 

「あ、逃げるんですか!?」

 

飯田の質問攻めをかわしながら、俺は逃げるようにして車に乗り込んだ。

 

 

 

運転しながら、俺は皆の事を考えていた。

あいつらを外に出すには……ということばかり考えていたが、外に出した後の事もあるんだよな……。

 

「恋か……」

 

そう言う誰かを想う気持ちについても教えてやらなきゃいけないが……如何せん自分がな……。

 

「誰かを想う気持ち……」

 

誰かに好かれるよりも、誰かを好きになることの方が、俺にとっては難しいことなのかもしれない。

そこが分からない限り、俺とあいつらの間にある溝は埋まらない気がする。

 

「…………」

 

 

 

寮に帰ると、鹿島が俺の部屋でレポートの作成をしていた。

 

「お帰りなさい提督さん。吹雪さんの様子どうでしたか?」

 

「ああ、元気そうだったよ。皆からの贈り物も喜んでいた」

 

「それは良かったです」

 

それからしばらく、鹿島と共にレポートをまとめた。

 

「飯田さん、本部に配属になったんですって」

 

「ああ、知ってる。今日、吹雪の居る部屋へ案内してくれたからな」

 

「試験の時、提督さんの悪口で盛り上がりましたよ」

 

「本人の前で言うことかね……」

 

「ウフフ。でも、飯田さん、なんやかんや言って提督さんの事が好きなんじゃないですか?」

 

「それは恋の意味でか?」

 

「え? え、えぇ……そうです……。どうしてそう思ったんですか……? 飯田さんに、何か言われましたか?」

 

「いや、別に……。何か変な事言ったか?」

 

「提督さんから恋の話が出るなんて思ってなかったので……。てっきり、飯田さんに告白されたのかと……」

 

「そんな訳ないだろ。昨日言った通り、女心とやらを理解しようとしてるだけだ」

 

「そ、そうですか……。ならいいんですけど……」

 

沈黙が続く。

 

「そうだ。なあ鹿島」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「俺と、恋人になってくれないか?」

 

――続く

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